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【鈴鹿8耐応援企画】Team KAGAYAMAが鈴鹿8耐優勝宣言!?

加賀山選手がMoto2優勝のエガーター選手を呼んだ理由とは

ドミニク・エガーター選手(左)と加賀山就臣選手(右)

 7月24日、つまり明日から始まる「“コカ・コーラ ゼロ”鈴鹿8時間耐久ロードレース」の開催を前に、プライベーターとして参戦するTeam KAGAYAMA&VerityがCar Watch編集部を訪問。チーム監督兼第1ライダーである加賀山就臣選手に加え、直前の7月13日に開催されたロードレース世界選手権のMoto2第9戦で初優勝を果たしたばかりのドミニク・エガーター選手にもインタビューすることができた。

 Team KAGAYAMAは、2013年の鈴鹿8耐でケビン・シュワンツ選手を招き、加賀山選手と芳賀選手の3人体制で挑んで3位表彰台を獲得したのが記憶に新しいところ。2014年の今年は、Moto2で頭角を現し始めている若手スイス人ライダーのエガーター選手を起用し、表彰台の頂上を狙う。加賀山選手がエガーター選手を招いた理由、エガーター選手のチームや鈴鹿に対する印象などを聞いた。

 ちなみに、エガーター選手のMoto2でのゼッケンは77で、優勝したのは77戦目とのこと。加賀山選手いわく「持ってる男」だというエガーター選手の速さの秘密にも迫ってみた。

“コカ・コーラ ゼロ”鈴鹿8時間耐久ロードレースは、鈴鹿サーキットを舞台にフリー走行が行われる7月24日からレース本番の7月27日まで4日間の日程で開催。前売り観戦券は大人5700円、中・高生1700円、小学生800円、幼児600円。

2014 FIM世界耐久選手権シリーズ第2戦 “コカ・コーラ ゼロ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第37回大会
hhttp://www.suzukacircuit.jp/8tai/

“ワールドクラス”の3人が集まるチーム

全日本などでの優勝を弾みにして鈴鹿8耐での勝利を目指す加賀山選手

──さっそくですが、優勝宣言したい、というお話を耳にしました。その自信の理由は?

加賀山選手:チームとして僕らも勝てる準備をしてきました。普段は全日本ロードレース選手権で活動していますが、直前に菅生(宮城県)であったレースで優勝できたんですね。それで気分よく鈴鹿8耐に乗り込めるのと、ドミニクもテストで来てくれて、その後にMoto2のレースで優勝してくれた。

 優勝、優勝と来たので、よい流れが来ているなと(笑)。ホップ・ステップ・ジャンプで、3連勝目は一番大きな耐久レースである鈴鹿8耐で実現したいと思っています。

──エガーター選手がTeam KAGAYAMAから参戦することになった経緯は?

加賀山選手:2013年はケビン・シュワンツを呼んだんですが、それとはまったく違う発想で、今年は世界で活躍する若手で一番勢いのあるライダーを誘いたいと思ったのがきっかけです。ということで、この2、3年安定して上位に入賞しているドミニクにオファーしたら、気持ちよくOKしてくれました。

──彼をどんなライダーとして見ていますか?

加賀山選手:彼は2013年から全戦でポイントをゲットしています。1年間通して安定した成績を残すのって、すごく難しいんですよ。だけど彼は、予選がわるくても常にトップ6以内でゴールするんです。Moto2は、勝てるライダーであってもすぐに10位以下に落ちてしまう激戦クラスなんですが、どんなサーキットでも、どんなコンディションでも、最終的にそれに走りを合わせる技術があるから、毎戦安定して結果を残している。

 それと、全戦でポイントを獲得しているということは、つまり転倒が少ないということ。どんな状況でもベストのレースをして上位に入って、転倒率が少ない。この2つから、耐久レースでも安定感があって状況に合わせて走れるだろう、というのが大きな武器だと思っています。

──加賀山選手自身と芳賀選手とエガーター選手、このトリオの強みといえば?

加賀山選手:全員が世界選手権での優勝経験があることじゃないですか。優勝経験者がいるチームはいくつかあると思いますが、(3人全員というチームは)少ないんじゃないでしょうか。僕と芳賀は鈴鹿8耐で優勝したことがあって、芳賀はスーパーバイク世界選手権で日本人最多勝利数を記録していますし、僕も何度か勝っています。そして、ここに来てドミニクもMoto2で優勝しましたので、世界での勝ち方を知っている人間という意味では、3人ともワールドクラスと言っていいんじゃないかと思うんですよね。

耐久レースのトラフィック対応にも自信を見せるエガーター選手

7月13日のMoto2第9戦で初優勝したドミニク・エガーター選手

──エガーター選手にお聞きします。まずはMoto2での初優勝おめでとうございます。最高の気分で鈴鹿8耐に臨めるのではないかと思いますが、鈴鹿に向けてどういった気持ちですか?

エガーター選手:Team KAGAYAMAというチームで、経験豊富な2人のライダーとともに参戦できるのはすごくうれしい。鈴鹿8耐はもちろん、鈴鹿サーキットも、(8耐向けの)バイクも初めて尽くしだけれど、Moto2で優勝してから日本に来られたのは本当によかった。もうすぐレースが始まってバイクに乗れるんだと思うとわくわくするよ。

──鈴鹿8耐に招かれたとき、どう思いましたか。

エガーター選手:加賀山選手が来てチームに加わらないかという話があったときは、最初はびっくりした。地元のスイスでは耐久レース自体はよく知られているけれど、今のMoto2ライダーの世代だと鈴鹿8耐のことはまったく知らない人が多い。僕は鈴鹿8耐の名前を聞いたことはあったけれど、鈴鹿を走るチャンスもないし、詳しくは知らなかった。

 どんなレースか知りたかったので、2013年の鈴鹿8耐のDVDを取り寄せて見たら、すごく面白かったし、Team KAGAYAMAがどういうチームかもよく分かった。加賀山選手や芳賀選手の実績も知ることができて、すごいオファーを受けたんだなと実感したよ。2人とも偉大な選手だし、一緒のチームで走れるのは光栄だと思った。

──ということは、2013年にTeam KAGAYAMAでケビン・シュワンツ選手が走っている姿も見たわけですよね。今年は入れ替わる形でエガーター選手が加わることになるわけですが、シュワンツ選手の走りはどう感じましたか。

エガーター選手:ケビンについては世界選手権での走りは見たことがないけれど、鈴鹿8耐ではバイクにしっかり合わせていたし、レースでも速くて、(現役から長く遠ざかっていたにもかかわらず)あれだけの走りができることに驚いた。

 結果的に3位でフィニッシュしていたし、すばらしい仕事をしていると思った。そのケビンの代わりに今年自分がチームに加わることに、ちょっと重圧を感じているところもある。でも、僕はMoto2を現役で走っているわけだから、今年は少なくともそれ以上の成績を残したいね。

──優勝ではなく?(笑)

エガーター選手:できるかな?(笑)耐久レースは何が起こるか分からないけれど、チームのためにベストの力を発揮するつもりだし、自分のキャリアにとっても重要なレースになるから、よいレースをして楽しみたいとも思っているよ。

──先日、シュワンツ選手にインタビューしたときには、エガーター選手のことを高く評価していました。ただ、耐久レースの経験は少ないのではないかという話もありました。“耐久レース独特のトラフィックへの対応が難しいのでは”と。そのあたりについて、エガーター選手自身はどう考えていますか。

エガーター選手:たしかに頻繁に遅いライダーをかわしたりする技術は耐久レースで必要だと思うけれど、すでにその技術を僕は持ち合わせていると思う。というのも、ヨーロッパでは“Trackday”というたくさんの一般ライダーと混走するレースがあって、それを経験しているから。

 トラフィックをかわすのは、バイクの挙動を自分がコントロールできていれば問題ない。バイクをコントロールできない状態のときに遅いライダーがいると破綻してしまうけれど、先日鈴鹿でテストした感じでは、バイクのコントロールについては自信を深めることができている。だから、トラフィックについてはあまり心配はしていないよ。

──その初めての鈴鹿サーキットで、しかも初めてのマシンだったにもかかわらず、7月上旬のテストではいきなり2分10秒台を出しました。このテスト結果には満足していますか?

エガーター選手:チームワークがよくて、バイクも自分のライディングスタイルに合っていた。ライディングポジションは3人共通だけれどわるくなかったし、鈴鹿サーキット自体もすばらしかった。ロングサーキットでいろんなコーナーがあって、なかなか学習するのが難しいけれど、とても気に入ったよ。

 テストでは2日目に雨が降って、ほとんど1日、正味2時間とか3時間くらいしか走れなかったものの、初めてのわりにタイムはまあまあ。もっとプッシュできるだろうから、今週末のレースではさらにタイムを縮められると思う。

──普段はMoto2の600ccマシンを走らせているわけですが、鈴鹿8耐では1000ccクラスのスーパーバイクです。どんなところに違いがあって、どこに気を付けるべきと考えているか、教えていただけますか。

エガーター選手:バイクは完全に別物。特にパワーはすごい。Moto2ではもっとパワーが欲しいと思うくらいなんだけれど。タンクが大きいこともあって、ポジションも全然違う。タイヤについてはMoto2と同じダンロップで、フィーリングはそれほど変わらないし、ほかに気になるところは特にないかな。

──今回の鈴鹿8耐で注目しているチーム、もしくはライダーがいれば教えてください。

加賀山選手:すべてのチームがそうですけど、F.C.C TSR Honda(秋吉耕佑選手ら)とMuSASHi RT HARC-PRO(高橋巧選手ら)、それからヨシムラスズキ シェルアドバンス、MONSTER ENERGY YAMAHA with YSP(中須賀克行選手ら)が今年のレースを引っ張っていくんじゃないかなと。この4チームの牙城を、僕らがどう戦略で崩していくか、というところですかね。

──エガーター選手はいかがですか?

エガーター選手:Team KAGAYAMAかな?(笑)。日本のライダーは走り慣れているから速いよね。秋吉選手にはありえないようなオーバーテイクをされて驚いた(笑)。ほかにもよいライダーはいると思うけど、僕にとっては最初の耐久レース。速さだけが求められるわけじゃないし、ケビンが言っているように、たくさんのオーバーテイクが必要で、コンスタントに速く走る必要もある。しかも休みを入れながら、暑い状況で何時間も走らなければならず、休憩で体力を素早くリカバリーできるかどうかも重要だ。誰に注目しているかというのは、まだわずかなテストしかしていないし、分からないよ。

エガーター選手がセッティングにノーコメントの理由

ほかのライダーの好みに合わせてセッティングを進める、チーム責任者でもある加賀山選手

──マシンは2013年の鈴鹿8耐で使ったものと年式違いのGSX-R1000です。ベースマシンについては2013年とほとんど違いはないと思いますが、カスタマイズ面で前回から変更した部分は何かありますか。

加賀山選手:進化は毎年いたるところに施していますが、大きいところではサスペンションをショーワに変えました。それからサブフレームについても、これまでとは作り方を変えたものを使っています。オートバイレースのこういった上のカテゴリーになってくると、シーズン中かどうかを問わず常にアップデートしていますね。

──ポジションを変えていたりしますか?

加賀山選手:ポジションはセッティングの1つなんですよ。3人乗るときは自分の好きなポジションではなく、ほかの2人が好みそうなものに変えています。

──加賀山選手が好きなポジションとは?

加賀山選手:ハンドルをもっと遠くしている状態ですね。でも、ヤマハで育ってきた芳賀は、そういうのはわりと嫌いなポジションなんです。育ってきた環境によってスタイルが違うので、そこは僕のほうが(いろいろなマシンの)経験があるし、普段から乗っていて余力も多少あるので、できるだけ芳賀やドミニクに合わせようと思っていますね。

──エガーター選手から要望はありませんか。

加賀山選手:彼はセッティングに関してはほぼノーコメントですね。というのはわるい意味ではなくて、まだまだこのマシンで走り込めばどうにかなる段階だと言ってくるし、コメントはあっても、こうしてくれ、ああしてくれとはまだ言ってこない。

 そこが限界点じゃないのが自分で分かっているんですよね。そのあたりはやっぱり能力が高いなぁと思いますよ。ぱっと来て、鈴鹿を1日、いや数時間しか走っていないなかで2分10秒2までタイムを上げたんですけど、僕の知るなかでそんなライダーは今までにいない。期待以上のパフォーマンスですね。

──先ほどエガーター選手から、鈴鹿はすばらしいサーキットだという話がありました。具体的にどういうところがすばらしいんでしょうか。

加賀山選手:鈴鹿サーキットは(コースが)8の字だって知ってますか? 世界で1個所だけですね。8の字、イコール左右のコーナーが同じ数。ほかの世界のサーキットはすべて時計回りか反時計回りなので、右コーナーか左コーナーのどちらかが多いんです。鈴鹿はそうじゃないので、コーナーの大小はあれど、旋回している時間は左右でイーブンなんですよ。人間の感性として、左右両方を鍛えられるというのは、世界で鈴鹿だけが唯一なんです。

 西コースと東コースとで戦略の取り方も異なります。オールジャンルというか、低速コーナーもあり、高速コーナーもあり、細かい切り返しもあって、オートバイにおけるすべての動作が必要なサーキットだと思いますね。

Team KAGAYAMAは“思い”によって集まっている

エガーター選手は、Team KAGAYAMAに居心地のよさを感じているようだ

──ほかの2人に合わせてセッティングしているとおっしゃっていましたが、チーム責任者としてはどこに気を遣ってチーム運営しているのでしょう。

加賀山選手:みんなに支えられているプライベートチームなので、スポンサーさんは大事にしたいというのが第1にあります。チームとして集まっているスタッフ、ライダー、マネージャーももちろん大事ですが、彼らは仕事というより“思い”で集まってくれていますね。僕もメーカーチームやヨーロッパのトップチームなど、いろんなチームにいましたけど、それとはちょっと違うんです。“思い”だけ、ファミリー的な仲間だけしか集まっていないので。

 スタッフの一部は別に仕事を持っていて、肉屋さんだったりアメ車屋さんだったり鞄屋さんだったり、普段はバイクとはまったく関係ない仕事をしている人も鈴鹿8耐のときに集まってくれるんです。そういうファミリー感がすごくあるので、それを崩したくないというのが僕のモチベーションの1つですね。

──エガーター選手はその空気になじんでいそうですか?

加賀山選手:たぶんうちのチームは楽しいと思いますよ、ほかのチームより絶対に(笑)。メーカーさんも、スポンサーさんもいっぱい協力してくれていますけど、ある程度は線を引いています。世界のトップチームではありえない雰囲気だと思いますね。

──レースチームとしては資金調達が最も大切だと思うんですが、その線引きをどうするかというのは、なかなかバランスの難しいところではないのでしょうか。

加賀山選手:難しいですね。難しいけど、恥ずかしながら、最終的なボスは僕なので(笑)。和を乱す人はいらないって言っちゃうし、そもそもそういう人は集まってこない。自分で言うのは嫌なんですが、僕が決めたことにはみんな反対せずに協力してくれますし、「就臣が言うなら手伝いたい、応援したい」と言ってくれる人ばかりなんです。

 僕の原点は、若いころ、ノービスのころにやっていたような楽しいレース。楽しいレースをやっているとよい成績が出るんですよ。そういうレースができるチームにするのが目標の1つでもあるんですよね。

──ちなみに、エガーター選手から見た加賀山選手の印象は? 人間として、ライダーとしての両面から教えていただければ。

エガーター選手:加賀山選手は人間的にはすごく親切だし、チームをまとめる力もすばらしいと思う。ライダーとしては、あらゆる経験を積んでいてとても速い。僕にとっては映像でしか見たことがなかった人なのに、今はチームメイトとして走れることに驚いているし、感謝してもいます。

 僕はここ数年、ほとんど同じ人としか仕事をしていなかったこともあって、まわりが全員日本人の中に(外国人として)1人だけいるというシチュエーションが珍しかった。だから最初は不安で、いつものメカニックやマネージャーを連れていこうと思っていたけれど、テスト1日目を終えたところで、次は1人で来てもいいや、と思うくらいなじむことができたよ。

加賀山選手:そういう環境にしているのは、全部僕が逆のシチュエーションで、同じことを経験していたからなんです。1人で海外に行ったことがあって、そこでよい扱いをしてくれたこともあったし、嫌な思いをしたこともあった。それを経験しているから、海外に行くときに何が心配で、何をしてくれたらうれしくて、何をされたら嫌で、というのが分かる。せっかくチームメイトになるんだったら、そういうところに気を遣いたい、できれば嫌なことは避けてあげたいな、というだけなんですけどね。

──加賀山選手が海外にいたときに最も嫌だったこと、というのは?

加賀山選手:ひとりぼっちで知らない言葉のなかに長時間いるというのが、けっこう辛かったですね。だから今は、なるべく普段から英語を使いたいなと思いながら行動しています。ただ、チームの自分への対応というのは、成績なんですよ。速いか遅いかで全部決まってくるので、自分が遅ければ対応がわるくなるのは仕方がない。自覚しなければいけないことなんです。

──例えば、日本のライダーが海外にチャレンジするとき、重要なのは現地の言葉を話せるかどうか、ということでしょうか。

加賀山選手:言葉は覚えてなくてもいいんです、コミュニケーションができれば。僕は結局英語はあまりしゃべれなかったんですけど、現地に行ってからコミュニケーションの仕方を覚えた。言葉じゃないコミュニケーションというものですね。それを覚えてからは、辛くはなくなったかな。

 どういうコミュニケーションの仕方か、というのは言葉では表現しにくいけれど、態度とか、顔つきとか、気持ちとか、国を問わずそういうので人って動くんだなと思いましたね。言葉で苦労した分、そういう身体での表現の仕方、感情の出しかたでコミュニケーションを覚えていったところがありました。

エガーター選手を通じて日本のライダーにメッセージを届けたい

加賀山選手は「鈴鹿8耐で日本のライダーとエガーター選手に変化を与えたい」と話す

──今年はシュワンツ選手ではなく、若手の勢いあるライダーに決めたのは、ほかに何か理由が?

加賀山選手:2013年にケビンを呼んだのはわりとイベント的な要素が大きかったんですけど、今年はまったく違う発想なんです。

 今、世界で通用する日本人の若いライダーが、僕のなかでは少ないと思っている。パンチ力や勢い、根性が見えないライダーが多くて、彼らは目標をどこに置いているのか見えない人ばかりなんですよ。そういう人たちに、世界トップレベルのライダーが、知らないサーキット、知らないバイクをどう攻略していって、どんなペースで走って、どこにたどり着くのか、というのを伝えたい。

 この前のテストでは、ドミニクは2/1000秒くらい僕より速かったんです。僕が伝えたいことを、1発目からドミニクはやってくれた。コースやバイクを知っているかどうかなんて関係ないんですよ、世界レベルのセンスある人間には。

 日本国内で条件がそろえば勝てる僕のような人間と比べても、1回で同等レベルで走っちゃうわけです、鈴鹿サーキット初走行なのに。こういうポテンシャルを持つ世界レベルのライダーになりたいのであれば、そこを日本の若いライダーたちも目指しなさい、と。

──目標をもっと大きく持てというわけですね。

加賀山選手:ドミニクが日本で走る姿を見てもらって、日本の若いライダーに今持っている目標値をもう1度見直してほしい、という思いもあるんです。日本のトップライダーになりたいんじゃなくて、世界に行きたいんだったらこういうレベルなんだよ。それができないんだったら諦めろ、というのを伝えていきたい。

 僕らが若いころは、先輩より遅いバイクで先輩をどれだけ食うか、乗り越えていくかだったんですよね。Moto2でもドミニクたちは目上のライダーを食おうと努力している。どんなバイクでもとにかく勝ちたい、という気持ちでやっているわけだけれど、日本のライダーはバイクの差を真っ先に口にする。バイクには差があって当然なんですよ。速いヤツが速いバイクに乗るのは当然。それを越えないと先はないんです。

──そんななかで、エガーター選手も初優勝を果たしました。

加賀山選手:僕としては、ドミニク自身にも変化してほしかった。実力はトップライダーなんだけれど、何かがあってずっと勝てなかった。それは、技量ではなくて、ちょっとした何か自分のなかでの変化なんですよ。違う車両に乗ったり、違うチームで走ったり、センスがある人間はそういうのを自分のなかで変換して、スピードに活かせるんですよね。鈴鹿でのテスト後に、Moto2の第9戦で初ポール、初優勝でしょ。きっと、彼のなかで何かが変わったはずです。

※この会話中、エガーター選手と会話をしていた通訳の人が、「Moto2の第9戦で勝てたのは、走ったことのないバイクで初めて鈴鹿サーキットを走った経験がブレークスルーになったのではないかとエガーター選手がコメントした」と打ち明ける。

加賀山選手:ほら来た、ほら出た(笑)。僕が言わせたんじゃないよ。昔から鈴鹿って、世界への登竜門だったんです。間違いないですね、センスのある人間は鈴鹿を経験すると成績が出ます。ケビン・シュワンツ、ワイン・ガードナー、ミック・ドゥーハンもそうです。この3人も無名時代に鈴鹿に来て、そこから上がっていきましたからね。

 これで鈴鹿8耐で結果が出て、今後Moto2でもドミニクの調子が上がってきてくれたら、僕としては2つのことは達成できたことになる。若い人にもメッセージを伝えられたし、ドミニク自身も鈴鹿8耐で変化してくれたし、ということで。

──とはいえ、鈴鹿8耐の本番はこれからです(笑)。どんなレース、どんなライディングを見せたいと思っていますか。

加賀山選手:やっぱり勝ちにこだわりたい。タイムが出るバイクを作っちゃうとどうしても燃費やタイヤの消耗に影響が大きくなって、勝つためのバイクじゃなくなってしまうことがあるんです。なので、タイムが出にくいという意味ではドミニクにストレスがかかるかもしれない。

 芳賀と僕はそういう状況を経験しているので、“鈴鹿8耐に勝つため”ということでそこは許せる。そのへんをうまくコントロールして、鈴鹿8耐で勝つにはこうするんだ、ということをドミニクには教えていきたいですね。

エガーター選手:長いレースなので速く走るだけじゃなくて、集中してミスしないようにして、チームのためにベストを尽くせるようにしたい。僕にとって厳しいバイクになるかもしれないということだけれど、そういうのも含めて、経験あるライダーの話を聞いて適応すべきところは適応して、よいチームワークを保つことが一番大事。いったんバイザーを下ろせば、僕は100%の力で走れる。2013年は3位なので、それ以上の成績が残せればハッピーだよ。

──本日はありがとうございました。

鈴鹿8耐ではライダーとコラボしたグルメメニューにも注目!

 7月24日からスタートする鈴鹿8時間耐久ロードレースだが、今回のインタビューで同席した鈴鹿サーキットのスタッフから、レースに参戦するトップライダーとコラボした「8耐ライダーご当地グルメフェア」が実施されることも合わせて紹介された。

 このグルメフェアは鈴鹿サーキット内のビュッフェレストラン「そら・たべよ」が会場になり、レース開催期間中の各日数量限定で特別メニューが提供される。今回インタビューした加賀山選手のほか、ケビン・シュワンツ選手、高橋巧選手、中須賀克行選手など6人とコラボしており、例えば加賀山選手は横浜出身ということから「特製焼き餃子」、ケビン・シュワンツ選手はアメリカンな雰囲気を漂わせる「スパイシークリスピーチキン」といったように、選手の出身地などをテーマにしたランチ、ディナーが用意される。

 ランチビュッフェは大人(中学生以上)が1950円、子供(小学生)1410円、幼児(3歳~未就学児)650円。ディナービュッフェは大人(中学生以上)3030円、子供(小学生)1950円、幼児(3歳~未就学児)650円となっている。Webサイトでは予約も受付中。長時間サーキットを走り続けるバイクやレース展開だけでなく、レースに参戦するトップライダーとコラボした限定メニューにも注目したい。

S-PLAZA 8耐ご当地メニュー案内ページ
http://www.suzukacircuit.jp/8tai/foods/collabo.html#splaza

(日沼諭史)