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マクラーレン、サーキット専用モデル「マクラーレン P1 GTR」のデザイン・コンセプトを公開

ドライバー向けトレーニングやサーキット走行などをセットにした「マクラーレン P1 GTRプログラム」についても紹介

2014年10月31日開催

「マクラーレン P1 GTR」デザイン・コンセプト

 英マクラーレン・オートモーティブは10月31日、同社ショールームであるマクラーレン東京で、「マクラーレン P1 GTR」のデザイン・コンセプトを報道陣向けに日本初公開した。公道向け市販車「マクラーレン P1」のサーキット専用モデルにあたり、マクラーレン P1のオーナー向けに限定販売される。

 公開されたデザイン・コンセプトは、8月に米カリフォルニアで行われたペブルビーチ・コンクール・デレガンスで世界初公開したモデルそのもの。今回は、同時提供される専門家によるドライバー向けトレーニングやサーキット走行などをセットにした専用プログラム「マクラーレン P1 GTRプログラム」についても紹介された。

マクラーレン P1 GTRの説明に先立ち、車両のアンベールが行われた

P1オーナーだけに提供される究極のサーキット専用モデル

 今回展示されたマクラーレン P1 GTRはデザイン・コンセプトで、最終仕様には至っておらず現在も開発が進められている。

 シャシーはP1と共通でサスペンションのパーツにも共通部分がある。しかしボディーは別パーツとなり、ガソリンエンジンと電動モーターを組み合わせたパワーユニットもモータースポーツ用にチューニングされ、最高出力はマクラーレン P1の916PSから1000PSに引き上げられた。重量もマクラーレン P1に比べて100kg軽量化されている。

 デザインの特徴はフロントのトレッドが80mm拡大され、GTレーシングカースタイルのフロント・スプリッターを装着、ラジエーターの排出ダクトはホイールアーチとシームレスにつながっている。フロントのホイールアーチ後方にはエアロダイナミクス・ブレードを装着し、フロントタイヤからのエアを整流、リアのラジエーターまで空気を流している。

 サーキット専用となるため車高はP1よりも低くなり、ルーフには「マクラーレン F1」のオリジナル・デザインを参考にしたシュノーケル・エアインテークを装備した。

 リアまわりでは2層構造の大型リアウイングを装着。加速性能を高めるために油圧式のDRS(ドラック・リダクション・システム)を採用している。エクゾーストエンドはセンター2本出しとなり、「マクラーレン・サウンド」を強調した。インコネルとチタンの合金製で耐熱性に優れているという。

 パワーユニットについては、V型8気筒3.8リッターツインターボエンジンが800PS、電気モーターが200PSを発生する。IPAS(インスタント・パワー・アシスト・システム)のパワーデリバリーの向上などが図られている。ホイールは19インチで軽量アロイホイールを採用。クイックリリース式のセンターロック・ナットで固定され、内蔵エアジャッキでタイヤ交換をより容易にしている。

「マクラーレン P1 GTR」のデザイン・コンセプト。カラーリングはシルバーとオレンジで、オリジナルのシャーシナンバーを示す「01」ゼッケンがつく
大型のフロントスプリッターを装着したフロント
フロントホイールのリム幅は10.5インチ、すべてセンターロック・ナットでクイックリリースできる
リアまでのエアの流れが計算し尽くされたデザイン
特徴的なシュノーケル・エアインテーク
リアタイヤのリム幅は13インチ
大型のリアウイング
マクラーレン・サウンドを強調するエキゾースト
ラジエーターも見える
発表会はマクラーレン東京で行われた。会場にはF1マシンや公道モデルのマクラーレン P1も展示されている

マクラーレン P1 GTRはパッケージの一部に過ぎない

マクラーレン P1 プログラム・ディレクターでマクラーレン・スペシャ ル・オペレーションズ(MSO)エグゼクティブ・ディレクターのポール・マッケンジー氏

 今回の紹介に合わせて、マクラーレン P1 プログラム・ディレクターでマクラーレン・スペシャル・オペレーションズ(MSO)エグゼクティブ・ディレクターのポール・マッケンジー氏が来日し、車両とプログラムの説明を行った。マッケンジー氏は「クルマは今回のパッケージの一部に過ぎない」とし、マクラーレン P1 GTRプログラムの説明に多くの時間を割いた。

 このプログラムはサーキット走行の一切をセットにしたもの。「お客様がイベントに来ていただくサーキットには、到着した段階ですべてのものが揃っている」とマッケンジー氏がいうように、サーキットまでの車両の輸送と現場でのガレージ、ユーザーごとに専用エンジニアやドライビングコーチ、使用するタイヤまでがセットになるのはもちろんのこと、オーナー自身がサーキット走行ができる技術やメンタルを習得するトレーニングもプログラムに含まれる。

 マッケンジー氏は「マクラーレン P1 GTRを所有していただくお客様は、マクラーレンならびにマクラーレンのテクノロジーにこれまでにない形でアクセスができるようになる」と強調するように、これまで外部の顧客に提供することがなかったマクラーレン独自の「ヒューマンパフォーマンスプログラム」と「シミュレーター」のトレーニングが受けられる。

 ヒューマンパフォーマンスプログラムは、マクラーレンが年月をかけてF1ドライバー向けに特化して作ったもので、レースの場で高機能のクルマを走らせることで生じるさまざまなストレスに対して訓練を行うプログラム。レースに向けメンタル面でも適用できるようにしている。

 招待されるサーキットイベントは2015年9月から2016年末まで行われ、著名なF1レースが行われるサーキットを中心とした10回の中から6回分を選ぶことができる。1回のイベントの参加人数は最大15名(15台)。

 プログラム自体は2015年2月から開始し、マクラーレン P1 GTRのオーナーはイギリスのマクラーレンに行き、シートやレーススーツのフィッティングを行う。車両についてはデザインディレクターのフランク・ステファンソン氏とともに車体色を決めることができる。と同時に、ヒューマンパフォーマンスプログラムとシミュレーターの紹介を受ける。

 その後、再びマクラーレンへ行きサーキット走行の練習をする。オーナーごとにサーキット走行の習熟度は大きく異なるため、それぞれのレベルに合わせた個別のトレーニングメニューが用意され、シルバーストーンサーキットでマクラーレン 650Cを使って専任のドライビングコーチからトレーニングを受けることになっている。

 最後にマッケンジー氏はこのプログラムについて、「世界中にある著名なF1のサーキットを使ってドライビングを楽しむプログラムに参加できる、まさに、もっとも素晴らしい、世界で類を見ないクラブに参加できる」と、プログラムの優位性や独自性を強調した。

実車のインテリアは公開されなかったが、レース仕様のシートを装備し、テレメトリーのシステムも装備して走行データのチェックが可能という
ステアリングは2008年のF1シーズンで使われたMP4/23のステアリングをベースとした
現在も車両の開発テストを継続中。写真は最新のプロトタイプをバーレーンのサーキットでテストしたときの様子

(正田拓也)