スタッドレスタイヤ「BLIZZAK REVO GZ」レビュー【ドライ編】
高速道路と一般道のドライ路面で試す


 昨年、雪のテストコースでのレビューをお届けしたブリヂストンの最新スタッドレスタイヤ「BLIZZAK REVO GZ(ブリザック レボ ジーゼット)」。レボ発泡ゴムGZや、このところブリヂストンが積極的に採用しているサイドウォールの非対称形状などを採り入れた最新スタッドレスタイヤだ。開発コンセプトとして挙げられていた項目に、圧雪路や氷結路はもちろん、ドライ路面やウェット路面での性能向上があり、今回そのドライ路面での違いを、旧モデルとなるREVO 2(レボ ツー)と実走比較してみた。

 REVO GZについての詳細は、昨年11月の記事「ブリヂストンのスタッドレスタイヤ『BLIZZAK REVO GZ』レビュー」を参考にしてほしいが、REVO 2からの変更点で、ドライ路面において影響の大きい技術が、Playz(プレイズ)などから採用されているサイドウォールの非対称形状と、トレッド面に採用された非対称パターン。非対称形状は直進時において、非対称パターンはコーナリング時において、REVO 2より性能を向上させていると言う。

REVO GZのトレッドパターン。左がアウト側で、右がイン側。非対称パターンを採用しており、アウト側のブロックがイン側より大きなものになっている。なお、丸い突起状のものは、タイヤの成型時に発生するヒゲの跡。比較走行はいずれのタイヤも約1000km走行した後に行っているREVO 2のトレッドパターン。REVO GZではタイヤの偏平率によるトレッドパターンの大きな違いはないが、REVO 2の場合、55以下の偏平率を持つロープロファイルタイヤは、このパターンになる60以上の偏平率のREVO 2は、このマルチZパターンを採用している。今回のテストではこの偏平率のREVO 2は使用していない
200倍のマイクロスコープで拡大撮影したREVO GZのトレッド面。REVO GZでは新素材配合のレボ発泡ゴムGZを採用している同じ拡大率のREVO 2のトレッド面。発泡ゴムはレボ発泡ゴムZ。左のGZと比べると穴の大きさが小さいように見える。いずれの写真にも見られる白い粒は、路面にまかれていた凍結防止剤

 スタッドレスタイヤというと、さまざまな雪道での性能が大切には違いないが、ドライ路面での性能も気になるところ。たとえば、都内などからスキー場へ行く、雪の多い地方に行くという場面では、ドライの高速道路を長距離走行し、その後雪道を走行するということになるだろう。

 そのため、今回比較に用いた道路は、多くのスキー場を周辺に抱える関越自動車道と国道17号を、群馬県から新潟県にかけて走行してみることにした。大雪が降った翌日の深夜から明け方にかけての走行となったのだが、この辺りは豪雪地帯のため除雪作業が行き届いており、路面にほとんど雪は残っていない状態。凍結防止剤(塩)もまかれていたため、路面が凍結している部分もなかった。

 比較に用いた車両は1997年式のスバル「インプレッサWRX STi Version III」(以下STI 3)。フルタイム4WDのセダンで、5速MTのトランスミッションを搭載する。タイヤサイズは、ノーマルと同じ205/50 R16、空気圧は規定空気圧でREVO 2とREVO GZを小林、谷川の2人の編集部員で履き比べた。

高速道路&一般道での実走比較
 高速道路は関越道の赤城IC(インターチェンジ)~湯沢ICの間。高速道路は路面の舗装が一般道よりもよい道路がほとんどだが、この区間はチェーン規制がしばしば行われ、冬期は路面が荒れた状態になることもしばしば。走行日もチェーン規制日の翌日ということもあって、路面は荒れている部分が多かった。

 一方、一般道は国道17号の関越道 湯沢IC入口~月夜野IC入口までの区間を中心に走行した。この区間は新潟県と群馬県の県境をにある峠を越えるため、つづら折れの道が続く。一般道も除雪がしっかり行われており、雪は路肩に残る程度であった。

 騒音計測については、高速道路では100km/h走行時の音を、一般道では50km/h走行時の音を、騒音計「Digital Sound Level Meter AR834」を運転席と助手席の間に配置し計測した。

騒音計測にはDigital Sound Level Meter AR834を使用。写真のように運転席と助手席の間に配置し計測した明け方の関越道。路肩に雪は残るものの、走行車線内はドライ路面。凍結もしていなかった一般道も雪は路肩に残る程度。路面に白く見えるのは、主に凍結防止剤。気温は-3~0℃程度となっていた

●Car Watch編集部:小林隆
 スタッドレスタイヤは、ドライ路面ではロードノイズが大きく、ブロック剛性が低そうでコーナーが怖い。自分は、そんなイメージを抱いていた。

 そのイメージを覆してくれたのはREVO 2だった。昨年のちょうど今頃、REVO 2を使って雪道での性能テストを行うため、東京~新潟~長野を走っていた際、凍結路面での安定感は無論のことドライ路面での直進安定性能や静粛性能、コーナリング性能の高さに感動したことを今でも覚えている。

 そしてREVO 2の後継モデルとなるREVO GZ。雪道での比較はすでに記事として掲載したため、今回は雪道でこそその性能を発揮するはずのスタッドレスタイヤを、ドライ路面でテストしようというやや本道から外れた企画でもあるのだが、ほとんど雪の降らない東京に住む自分にとっては興味のあるものだった。

 テスト車両はSTI 3で、まずはREVO 2から試した。冒頭で述べたとおり、相変わらず印象がよい。ルートは関越道の赤城IC~湯沢IC、そして国道17号で行ったのだが、高速レンジにおける直進安定性能や静粛性能は、並のコンフォートタイヤと比較しても遜色ないという感じ。スタッドレスタイヤを装着していると聞いていなければ、記者レベルではおそらく一般的なサマータイヤと間違えてしまうのではないかと思うほどだ。また、一般道での雪のない峠道(とはいうものの、当日の外気温は氷点下)で、コーナリング時にラフな進入をしても、タイヤが破綻しない。REVO 2で走行している分には、ドライ路面だろうがウェット路面だろうが、文句のつけどころがないというのが正直な感想だ。

 これだけREVO 2の印象がよいだけに、ドライ路面においてREVO GZの進化を自分が体感できるかどうか不安だったのだが、実際に走ってみるとその違いにすぐ気づいた。これもREGNO(レグノ)やPlayzにも採用する非対称形状の恩恵か、高速走行時における直進安定性はさらに磨きがかかり、レーンチェンジ時や緩やかなカーブなどを不安定な印象を感じることなくクリアできる。

国道17号の新潟県側は、180度回り込むコーナーが連続する区間が多い

 さらに、一般道に降りてからの峠道での印象がすこぶるよい。REVO 2で走ったときも不満を感じることはなかったが、R(曲率)のきついコーナーにオーバースピードで進入してもREVO GZはブロックのよれをまったく感じさせない。それに比べるとあれだけ印象のよかったREVO 2が柔く、そして頼りなく感じてしまう。剛性を感じると言っても決して硬いというわけではなく、路面の凹凸をしなやかにいなすイメージ、と言ってしまうと言い過ぎかもしれないが、それくらいの差がある。

 それと、静粛性能についてもREVO GZのほうが一枚上手の様子。これもまたREVO 2に乗っていたときにはまったく感じなかったが、REVO GZはスタッドレスタイヤにありがちな「シャー」というノイズがより抑えられている気がする。騒音計で計測するとわずかの差だが、数値以上の違いを感じることができた。

 結果として、ドライ路面においてもREVO GZは進化していたわけだが、それほど雪の降らない地域に住んでいる身としては、スタッドレスタイヤでもドライ路面を普通に、またはそれ以上に走れるというのは大きなメリットがあると思う。豪雪地帯のユーザーもさることながら、降雪地域に行くことのあるユーザーにも強くすすめたいタイヤだ。

●Car Watch編集部:谷川潔
 以前はREVO 2の前モデルとなる「REVO 1(レボ ワン)」でよくスキー場に出かけていた。REVO 1発売時のブリヂストンのスタッドレスタイヤは、雪道走行を重視したMZ-03、高速走行も考慮したREVO 1に分かれており、スキー場までの長距離走行を考えてREVO 1を使っていた。当時ブリヂストンのスタッドレスというと、「雪道は素晴らしいけど、高速走行はもうひとつ」という定評があり、それを払拭する製品として発売されたのがREVO 1だった。

 このREVO 1は、確かに高速走行時の性能はMZ-03より優れていたものの、雪道性能で劣り、なおかつ高速走行時の性能で優れる他社製タイヤと比べて飛び抜けた性能とはなっていなかった。REVO 2になって、雪道性能が大幅に引き上げられ、なおかつ高速性能も改善されたことで、REVO 1とMZ-03がブリヂストンのラインアップから外された(REVO 1は在庫限りとしてスタッドレスタイヤカタログには掲載されている)。

関越自動車道にある関越トンネルではチェーンを装着しての走行が禁止されている。夏タイヤの場合、チェーン規制時には前後にあるPA(パーキングエリア)でチェーンの取り外しや取り付けが必要になる。スタッドレスタイヤであれば、その必要はない

 このREVO 2の高速走行時の印象はとてもよいもので、剛性感などは夏タイヤと比較してしまうと劣る部分はあるが、通常の速度域であれば不安もない。単純な急ブレーキ時などは、低温域でも硬くならない柔らかめのゴムを使っていることもあり、トレッド面がゆがむ感触があるが、スタッドレスタイヤであれば仕方のない部分だろう。

 つづら折れの道などについても、180度回り込むようなコーナーでアクセルを強めに踏み込むと、さすがにリアから限界を超え出すものの、唐突な感じはなく運転に気をつければよいだけだ。

 では、REVO GZとはというと、REVO 2とはまったく異なる考え方で作られているタイヤという印象だ。たとえば高速走行時の直進性については、REVO 2がコンフォートタイヤのような一般的な直進安定性があるのに対して、REVO GZは1本筋の通った直進安定性を感じる。どこまでもタイヤ自身が真っすぐ走ろうとしている印象と言えばよいだろうか。Playzに代表されるブリヂストンの非対称形状を採用したタイヤに共通する“サイドからしっかり支えてくれる”という安定性を感じ、直進時におけるステアリングの修正も少なくてすむ。

 これだけ直進安定性が強いと、車線変更などが不安になるところだが、ステアリングを切るとスムーズにヨー方向の力が発生し、REVO 2より楽に車線変更を終えることができる。タイヤのサイドサポートがしっかりしている印象を受け、ステアリングを切る際のタイヤの追従がしっかりしている感じだ。

 また、一般道の回り込むコーナーリングでは、ヨー方向の力が素早くスムーズに発生するだけでなく、アクセルの踏み込みに対してもしっかり支えてくれる。とくに上り坂においては、リアタイヤから崩れていくのだが、REVO 2よりも高い速度域までリアタイヤのゆがみを感じることはない。REVO 2より大きなコーナリングフォースを得ることができるわけだ。この余裕が、同じ速度ならよりコンパクトに曲がるれることや、同じ曲率ならより高い速度で曲がれることにつながっている印象だ。

 ドライ路面の騒音に関しては、REVO GZは一段と静かな感じ。とくに高速域で顕著であったが、数値には表れなかったものの、一般道においても静かな印象を受けた。

高速道路(左)と一般道(右)で、1秒ごとに20秒間測定した騒音データをグラフ化した。青い線がREVO 2、赤い線がREVO GZの結果。グラフの縦軸は64.0~74.0dB(A)と、どちらも同じにしてある。高速道路では音量の差が出ているものの、一般道では顕著な差が出ることはなかった

 今回タイヤ交換のために訪れたのは一昨年の記事「スタッドレスタイヤへの交換はこんなに簡単」でも紹介した、「タイヤ館 パドック246」。スタッドレスタイヤ商戦期ということもあって、店頭にはREVO GZなどが積まれていた。スタッフに売れ行きを聞いてみたところ「確かにREVO GZも売れていますが、旧モデルとなったREVO 2の価格は同サイズで安価なこともあって、ほぼ半々の割合で売れています」とのこと。

 当初暖冬との長期予報が気象庁から出されていたが、このところの激しい降雪などで平年並みの寒さとの予報に修正されている。降雪地域に出かける際は、チェーンの携行はもちろんのこと、着実な進化をし続けているスタッドレスタイヤの装着を検討してみてほしい。

国道246号に面するタイヤ館 パドック246。REVO GZを中心にした販売を行っていたパドック246の店内には、REVO GZのさまざまなポップや、REVO GZで採用されたレボ発泡ゴムGZの体感ツールが置かれていた。店頭の価格を見て、REVO 2にする人も多いと言う

(編集部:谷川 潔)
2010年 1月 15日