ツインリンクもてぎ、データロガーの活用方を解説するワークショップ
フォーミュラ・ニッポン第4戦の予選日に

データロガーの説明に編集部を訪れてくれた畑川治氏(左)と山本尚貴選手(右)

2010年8月7日開催



 日本のフォーミュラカーレースとして最高格式を誇るフォーミュラ・ニッポンは、先日富士スピードウェイでの第3戦を終え、開幕戦をNAKAJIMA RACINGの小暮卓史選手が、第2戦をMobil 1 TEAM IMPULのJP・デ・オリベイラ選手が、そして第3戦を同じTEAM IMPULの平手晃平選手が優勝した。昨年はNAKAJIMA RACINGの独走状態と言ってもよかったが、今年はその独走状態をTEAM IMPULが阻む形になっている。

 第4戦は8月7日、8日に第2戦の舞台でもあったツインリンクもてぎに戻って行われることになる。この第4戦の予選日となる8月7日には、これまでとは少し異なったイベントが行われる。それが、現代のレーシングドライバーなら誰もがツールとして使っている“データロガー”に関するワークショップで、FCJ(Formula Challenge Japan)アドバイザーの畑川治氏がデータロガーの効用について一般のレースファンにも分かりやすく解説してくれる。

 今回は、そのイベントに先立ち畑川氏と、FCJ出身で今季フォーミュラ・ニッポンにNAKAJIMA RACINGからデビューした山本尚貴選手の2人が編集部を訪れ、データロガーに関する紹介を行ってくれた。

FCJアドバイザーの畑川氏は、パソコンを使ってデータロガーの簡単な解説を行った

上位カテゴリーへのステップアップの鍵となるデータロガー活用
 FCJは本田技研工業、トヨタ自動車、日産自動車の3メーカーが協力して創設した若手ドライバー育成カテゴリーで、従来はメーカーそれぞれが別々に行っていた育成カテゴリー(例えばホンダならフォーミュラドリーム、トヨタならフォーミュラトヨタなど)を1つにまとめ、世界に通用する若手ドライバーを育成しようという理念で2006年から開始されている。すでに多数の有能な若手ドライバーを輩出しており、2007年のFCJシリーズチャンピオンで2008年マカオGPウィナーの国本京佑選手(今年はワールドシリーズ・バイ・ルノーに参戦)をはじめ、山本尚貴選手、安田裕信選手、中山友貴選手、井口卓人選手、ケイ・コッツォリーノ選手など、SUPER GTやフォーミュラ・ニッポンに参戦している多数の若手ドライバーがこのFCJ出身なのだ。

 そのFCJでアドバイザーを務めているのが、畑川治氏だ。畑川氏は全日本F3選手権を開催しているF3協会の会長を務めるなど、さまざまなカテゴリーで若手ドライバーにアドバイスをする立場にあり、今回一緒に編集部を訪れてくれた山本選手にもFCJ時代にアドバイスをしていたのだと言う。畑川氏によれば「FCJではすべてのドライバーが自分のデータだけでなく、ほかのドライバーのデータも見ることができる。それにより、自分と他者を比較して、自分のだめなところはどこなのかをデータ上で確認できる」と、FCJではデータロガー情報の共有が若手ドライバー育成の鍵となっていると言う。

 データロガーとは、車の各部に取り付けられた各種のセンサーを通じて取得されるデータ(速度、ギヤ比、アクセル開度、ブレーキの踏み量、ステアリングの切り角)を記録(ログ)し、走行終了後にそれをパソコンに読み込んで、専用のソフトで確認できるもの。走行時の車がどのような状態にあったのかを確認でき、ドライバーはそのデータを見ることで、自分の運転をグラフなどで理解することができるのだ。

FCJは、ホンダ、トヨタ、日産の3メーカーによる若手ドライバー育成カテゴリーマシンの各部にデータロガー用のセンサーが取り付けられるデータロガー画面。赤、青、緑で3人のドライバーを比較している。横軸は距離になり、サーキットのどこの個所で、どのような操作を行ったか分かる

 データロガーがあれば、例えばあるコーナーで自分がほかのドライバーよりも遅かった場合に、その原因をすぐに確認できると言う。「ツインリンクもてぎのヘアピンでのデータで見てみると、優勝した赤線のドライバーに比べて、青線のドライバーはブレーキでの減速が早く、早めにアクセルを開けるというスローイン・ファーストアウトの運転をしている。しかし、その分コーナーの中でアンダーを出してしまって結局アクセルを開けるのが遅くなっている。ここに改善点があると読み取ることができる」(畑川氏)と、データロガーの画面を元に具体的に説明してくれた。

今シーズンからフォーミュラ・ニッポンに参戦した山本尚貴選手。練習走行や予選など各セッション終了後に、欠かさずデータロガーを確認していると言う

 実際にデータロガーを活用してきた山本選手は「自分1人で走っていると分からないドライビングの問題点を洗い出すことができる」とそのメリットを語る。とはいえ、いつもデータとにらめっこしていればよいことがあるという訳でもなく「自分が納得できていないところを抜き出して、自分より速い人と比較して問題点を探っていく」と、ポイントを押さえた活用が重要だと語ってくれた。

 なお、畑川氏によれば「ロガーに縛られすぎてもよくないし、かといってあまりにも無視する子は伸びない」とのことで、実際FCJでもデータロガーを活用できた選手がよい成績を残し、上位カテゴリーへと上がっていったのだという。

予選日にデータロガーのワークショップを開催
 2日間にわたり開催されるフォーミュラ・ニッポン第4戦では、予選日の8月7日17時15分ごろからHonda Collection Hall オリエンテーション室で、データロガー活用に関するワークショップが行われる。講師は今回簡単な説明を行っていただいた畑川治氏が務め、より詳しい内容での開催となる。予選が終わってからになるので、じっくりと気になるデータロガーの情報を聞き込むことができそうだ。

 また、この第4戦から近藤真彦監督のKONDO RACINGが、2007年と2008年の年間チャンピオンを獲得した松田次生選手とチームを組んで本格的に参戦するのも大きな話題となっている。混戦模様のフォーミュラ・ニッポンが、さらに激戦となっていくのは間違いないだろう。

 なお、フォーミュラ・ニッポン第4戦のチケットは、ツインリンクもてぎチケットセンター、オンライン販売(MOBILITY STATION)および各種プレイガイドから販売が行われている。応援しているチームが優勝するとその祝勝会に参加できるチームサポーターズシートなど、魅力的なチケットをも用意されているので、詳しくはツインリンクもてぎのWebサイトにおいて概要を確認していただきたい。

(編集部:谷川 潔)
2010年 7月 21日