フォード、コンパクトSUV「KUGA」を今秋日本導入

「KUGA」に乗り込むティム・タッカー氏

2010年7月23日発表



 フォード・ジャパン・リミテッドは7月23日、都内で記者会見を行い、6月1日に代表取締役兼最高経営責任者(CEO)に就任したティム・タッカー氏より、コンパクトSUV「KUGA(クーガ)」を今年の秋に国内導入すると発表した。

6月1日に日本法人のCEOに就任したティム・タッカー氏

フォードをアメリカのシンボルとして認知してもらう
 日本法人のCEOに就任したばかりのティム・タッカー氏はフォードに約25年間在籍し、北米、中東、アジアの各地に赴任してセールスやマーケティングを担当してきた。日本のCEOに就任する前はフォード・インディアでセールス担当副社長を務めた。

 タッカー氏は日本における基本方針として、グローバルプロダクト化を進めるなどの「ワンフォード」という原則のもと、ブランドポジショニングを明確化し、フォードをアメリカのシンボル、アイコンとして認知してもらう活動をしていく。具体的には新規顧客を育成するため、さまざまな活動を行い「日本のお客様に受け入れられ、購入意欲をかきたてられる魅力のある商品体系を構築することが重要」と話した。

 商品ラインアップについては“コアボリュームプロダクト”とする「エクスプローラー」は日本のSUVの柱となる商品とし、「マスタング」はフォードのイメージリーダーで、アメリカンスピリット、アドベンチャースピリットなどを受け継いだモデルと説明した。

 そして、今秋の国内導入が発表されたKUGAの導入によって、フォードのSUVラインアップを拡充する。さらに「KUGA」投入の後、2012年までモデルチェンジを含む5車種を投入すると発表した。


フォードの現在の状況フォードのアジア・パシフィック圏での状況2012年までに5車種を日本国内に導入予定

 残念ながらタッカー氏からKUGA以外の具体的な新型車の投入予定は公表されなかった。フォードのグローバルボリュームを活用して、日本市場において求められているものを提供できると説明するにとどめ、北米市場で発表されたハイブリッドカーの導入などについても明言を避けた。

 なお、当面はSUVをはじめとする、日本市場におけるフォードのイメージに沿った商品展開を行う見込みだ。

SUVの「KUGA」を今秋に日本導入
 今秋の導入が発表されたKUGAは、直列5気筒2.5リッター ターボエンジンを搭載、インテリジェントAWDシステムを搭載した4WDのSUV。今回は導入予定を発表しただけで、国内での価格など詳細は発表されなかった。

 KUGAはフォードC-carプラットフォームを採用。ボディーサイズは4443×1842×1710mm(全長×全幅×全高・欧州仕様車)。2.5リッターエンジンの出力は147kW(200PS)/6000rpm、トルクは320Nm(32.6kgm)/4000rpm(参考値、欧州仕様)となる。トランスミッションは5速AT、サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアが独立懸架式マルチリンク。

KUGAは、グローバルプロダクトと言いながらも欧州車らしさを感じるスタイリング。先行導入車のため秋の国内導入時とは仕様が異なる可能性がある
フロントグリル下の形状は欧州フォード各車のスタイリングに通じるものがある短いオーバーハングのデザイン
ヘッドライト、フォグライトはプロジェクタータイプリアコンビネーションランプリアゲートまわり
タイヤは前後とも235/50 R18。タイヤはコンチネンタルのContiPremiumContact2で、SUV用ではなくセダン用となる5気筒エンジンはフロントに横置きされる
国内導入時の仕様は未定だが、この日展示されたKUGAはレザーシート仕様オーソドックスなデザインの運転席まわり
正式な国内導入車ではないので、メーターはマイル表示マニュアルモード付きの5速ATが組み合わされる予定。展示車のオーディオは国内市場から撤退して久しいソニー製リアシート
大型のグラスルーフが装着されるラゲッジスペース。この下にはスペアタイヤが収納される

 4WDのシステムは、エンジン、ABS、ESP(Electronic Stability Program)、TCS(Traction Control System)などの各種システムからの信号を演算、加速や減速時に最適なトルクを各車輪に配分するシステム。発進時にも最大10%のトルクを後輪にも配分することで、ホイールスピンを防止するなど機能を持っている。

 安全装備では、ESPにARM(アンチロールオーバーミティゲーション)が組み込まれる。前輪の制動時にはエンジントルクをゼロにまで弱め、車体のロールを低下させて横転の可能性を最小限に抑えるという仕組みだ。

 また、6つのエアバッグ、シートベルトプリテンショナー&ロードリミッター、アンチサブマリンシートなどが相乗的に作用する独自のIPS(インテリジェントプロテクションシステム)を備え、万一の事故に備える。ボディには超高張力鋼(UHSS)を多用し、AおよびBピラーには二相鋼を採用して安全な室内空間を確保している。

KUGAはフォードのSUVに共通するブランド価値を持つKUGAのパワートレーン4輪トルク配分システムのインテリジェントAWD
デザインはキネティックデザインリアは、独立懸架式マルチリンクサスペンションドライビングを実現する技術
安全装備内装はアレルギー発症の発生リスクを抑えたものになる
KUGAの商品説明をするフォード・ジャパン・リミテッド マーケティング部ディレクター 木下洋氏

 フォード・ジャパン・リミテッド マーケティング部ディレクターの木下洋氏は「フォードのSUVの価値をきちんと受け継ぎ、さらに、新しい価値を提供できる」とKUGAを評価。スタイリングについては「デザインコンセプトはキネティックデザイン。フォードの様々なグローバルプロダクトに採用され、動的という言葉のとおり、ドライビングダイナミクスを表現しようとした形」と説明した。

 KUGAの製造国はドイツで、いわゆる“欧州フォード”のカテゴリーとなるが、従来のような北米と欧州を区別せず「ワンフォード」という戦略のもとでグローバルプロダクトとして展開していくと言う。


(正田拓也)
2010年 7月 23日