日産、2011年度上期は減益も、通期見通しを上方修正
タイ工場は14日から一部生産再開

志賀COO

2011年11月2日発表



 日産自動車は11月2日、2011年度上期(2011年4月~9月)の中間決算を発表した。

 これによると売上高は4兆3674億円(前年同期比1.1%増、以下カッコ内は同)、営業利益は3097億円(7.5%減)、純利益は1834億円(12%減)。同社は中期経営計画「日産パワー88」で、2016年度までに営業利益率とグローバルのシェアを8%に引き上げる目標を掲げているが、2011年度の営業利益率は7.1%、シェア6%となった。

「欧州は順調」
 同期の全世界の販売台数は222万5000台(10.7%増)。地域別の内訳は次の通りで、いずれも地域別の全体需要の伸びを上回っている。

地域日産全体需要
台数前年同期比台数前年同期比
日本28万300014%減194万23.7%減
北米64万200010.8%増777万6%増
欧州33万900022.6%増934万5.1%増
中国59万500018.2%増856万4.3%増
その他36万600013.9%増973万7.5%増

 同日、神奈川県横浜市の同社グローバル本社で開かれた決算説明会において、志賀俊之COOは「10月までに一切の制約のない生産体制に戻すという目標を見事達成することができた。当社は東日本大震災から力強い回復を遂げた」と説明。

2011年度上期実績日本以外の地域は販売台数が増加した

 日本は震災の影響を受け台数減となったが、早期の生産再開と、「セレナ」の好調により、シェアを1.7ポイント増の14.6%に伸ばした。

 欧州は「ジューク」と「キャシュカイ」(日本名:デュアリス)が好調なこと、ロシアでの販売台数が前年比61.8%増と伸びたことなどから、台数、シェアともに伸ばした。

 中国は「サニー」「キャシュカイ」「ティーダ」が好調で、シェアを7.8%に伸ばした。

営業利益の増減要因

タイは14日から生産再開、クロスファンクショナル/リージョンで即応
 好調な販売にもかかわらず営業利益減となった理由を志賀COOは、震災と円高、原材料費高騰を上げた。営業利益の増減要因として、販売台数増で291億円、購買コスト減で1009億円の改善があったが、円高で1057億円、原材料とエネルギーのコストで733億円の影響を受け、減益となった。

 現在の問題はタイの洪水被害。日産の工場は浸水せず、今後もその心配はないと言うが、120のサプライヤーが浸水し、さらに120のサプライヤーが今後浸水するリスクがあると言う。

 これらのサプライヤーが供給する部品は3500にのぼるが、代替部品や代替ソースの手配、型の引き上げ、2番型の作成などの救援措置により、同社タイ工場は11月14日から一部生産再開の目処が立ったという。

 タイで生産しているパーツは欧米や中国でも使われているが、これらには影響を与えずに済みそうな一方で、日本での生産と、日本向けの「マーチ」には影響が及んだ。台数では、タイ生産分が4万台減、日本が2万台減で、ディーラーではマーチを求める顧客に対し「納期が最低2週間遅れる」と案内していると言う。

 この問題への対抗策を、日産は「クロスファンクショナル」「クロスリージョン」といったキーワードで語る。

 志賀COOは「震災が起こった後、例えば“これはサプライチェーンマネジメント(SCM)の仕事、これは購買の仕事”と決め付けるのではなく、クロスファンクショナルに生産も開発もSCMの部門も、あるいは営業部隊も、お客様に最大限ご迷惑をおかけしない供給をということで、迅速に立ち上がり足並みを揃えて行動し、生産に持ち込むということをしてきた」と言う。

 タイの洪水に対しても「上海の生産、購買、品質、開発の担当者が一緒になって、タイで生産できない部品を中国で調達し、タイから供給している国々に輸出する準備をしている」といった例を挙げる。「情報が日本だけでなく、随時世界中に流れていく。世界のどこにいても今どういう状況が起こっていて、それぞれの国の人達が、自分たちが何をしなければならないのか理解できていて、部品の取り合いのようなつまらないことでエネルギーを使わず、みんなが同じ方向で仕事ができている」と、部署や国境を超えて事態に対応できることを日産の強みとした。

通期見通しは上方修正
 上期の業績を受け、同社は2011年度通期見通しを上方修正した。

(円)前回予想
6月23日
今回予想
11月2日
増減対前期増減
売上高9兆4000億9兆4500億+500億+7.7%
営業利益4600億5100億+500億-5.1%
純利益2700億2900億+200億-10.7%
設備投資4100億4100億0
研究開発費4600億4400億-200億

 前提となる為替レートは1ドル=80円。現状よりも楽観的な数値だが「政府の積極的な円高対策への応援の気持ちもあるし、正直に言って異常な70円台のレートで予算を組みたくない。ドル以外のいろいろな通貨のレートの影響も入れている。加えて下期はタイの影響、欧州、米国での市場の不安も慎重に見ての見通し」とした。また「国内のコスト削減、現地生産車の部品の現地調達化、日本の生産車に輸入部品を使うなど、さまざまな円高対策をしている」と、事業活動では円高を楽観視していないことをアピールした。

 信用不安などから経済鈍化の兆しが見られる欧州だが、同社のアンディ・パーマー副社長は「問題は、キャッシュカイとジュークを十分に作れないということだけ。イタリアなどで若干の市場の軟化は認めているが、他の顧客は堅調。欧州経済が弱体化したとしても、ジュークとキャシュカイのお客様は他にもいる。欧州は順調」と自信を見せた。

通期見通しは上方修正

(編集部:田中真一郎)
2011年 11月 2日