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日産、2013年度上期決算報告で販売台数予測を520万台に下方修正

「新型インフィニティ Q50やエクストレイルなどが稼ぎ頭になる」とカルロス・ゴーンCEO

2013年度上半期の決算内容について解説する日産自動車 社長兼最高経営責任者(CEO)のカルロス・ゴーン氏
2013年11月1日開催

2013年度通期のグローバル販売台数予測を10万台減の520万台に見直し

 日産自動車は11月1日、2013年度の上半期決算を発表した。連結売上高は前年同期比14.7%増の5兆2154億円、営業利益は同7.8%減の2647億円、経常利益は同15.8%減の2320億円で、当期純利益を1898億円としている。グローバル販売台数は244万台で、北米市場と日本国内での販売増加はあったものの、低迷する欧州市場、複数の新興国市場での大幅な販売減によって相殺され、前年同期比で1.5%減となっている。

2013年度上半期の販売実績
2013年度上半期の財務実績
2013年度上半期の通期見通し

 決算発表の記者会見には日産自動車 社長兼CEO(最高経営責任者)のカルロス・ゴーン氏が登壇。ゴーンCEOは国内市場では発売以来健闘を続けるノートや新規投入した軽自動車のデイズなどが好調で前年同期比3.6%増の31万5000台を販売。北米市場でも市場占有率を7.7%まで上昇させ、販売台数が前年同期比14.5%増の62万3000台に達しているほか、メキシコ市場では12万6000台を販売して市場の首位を維持し、カナダ市場も前年同期比14.8%増の5万台を販売したことを紹介。

 逆に販売が低調となった新興国市場では、まずブラジルは通貨安となっていることに加え、新たに設定されたブラジルに対する輸出制限で現地生産でなければ販売できない状況になっており、ブラジルの工場が完成するまでは苦戦すると予想。ただし、新工場は2014年の初頭に生産をスタートする予定となっており、その後は是正の方向に向かうとの見解を示した。また、ロシアでは当初見込んでいた新型アルメーラの投入が生産の遅れによって停滞し、市場で唯一好調な低価格帯の商品を拡販できなかったことを理由として上げている。インド市場では工場、商品ともにそろっているものの、販売網の整備が追いつかなかったことが勢いを欠く結果につながっている。ただし、いずれも短期的な問題で、販売戦略の見直しなどは必要ないとしている。

 このほか、日産1社に限らず販売に影響を与えた部分として、中国市場での尖閣諸島問題などによる政治的な影響、タイ市場での政府による補助金打ち切りなども販売台数の減少要因として紹介しているが、中国市場ではほかの国内メーカーとくらべていち早い回復を実現しており、2013年度末までには市場シェアを尖閣諸島問題の発生前のレベルに戻せるだろうとの予測だ。

 こうした上期の実績と下期に想定される市況により、2013年度通期のグローバル販売台数を当初の530万台から10万台下方修正し、520万台に変更している。

6カ年計画として進行中の中期経営計画「日産パワー88」の重要性に変わりはなく、今後も必要な投資計画として維持していくとアナウンス
進行中となっている9つの大規模生産プロジェクトのうち、今年度中に7プロジェクトが完了予定。その後は新設された工場の生産能力によってこれまで投入してきた多額の投資を回収する時期に入ると説明
日産パワー88で新たに市場投入のタイミングを迎える新型車「インフィニティ Q50」「エクストレイル」は、グローバル成長モデルとして大きな利益を日産にもたらす車種になると解説された
計画の未達によって販売予測を下方修正するなどの影響が出ているが、すでに問題点のチェックと対応策の策定を迅速に進めており、大きな問題ではないと説明している

 このほかに記者会見では、連結営業売上の減少要因として日本、アメリカなどで起きたセレナやエクストレイルなどのリコールに関連する費用が想定より増加したことも説明。これについてゴーンCEOは「さまざまな要因からリコールに至ったものの、リコールを出すことに対して妥協するつもりはなく、不安や懐疑的な部分があればリコールを選択します。ブランドと消費者の信頼を守ることが我々の優先課題です。もちろんリコールをすれば代償が必要になりますが、問題点を消費者の手に残すのではなく、調査によって問題の内容を解析し、私たちが対処するという姿勢です」と語る。さらに「アメリカで起きた問題は新型のCVTに起因していますが、現在、この問題発生の要因をCVTに対して行ったマイルストーンの履歴を調査して、どの変更が問題を生んでいるのか調べています」と同社の品質管理体制の一端を紹介した。

 また、同日に公表された役員人事の変更内容を解説。従業員が永遠に働き続けられないのは当然であり、年齢を重ねることに合わせて組織の若返りを図ることは企業にとって避けて通れない部分。市場動向に呼応した適切な人員配置が大切で、バランスを崩さないよう計画を立てて進めることが重要になるとゴーンCEOは語り、販売台数予測の下方修正を受けた懲罰的な人事ではないかという見方を否定した。

上半期の決算報告と連動して、役員体制の変更も明かされた。これまで最高執行責任者(COO)を務めていた志賀俊之氏は新たに副会長になり、COOの職務は西川廣人氏、アンディー・パーマー氏、トレバー・マン氏の3人の役員が引き継いでいく。このほかにも組織の若返りを目的に、グローバル規模で人事を刷新。ゴーンCEOは「新体制による行動と実行を迅速化し、経営計画のコミットメント完遂に集中する」と語っている
質疑応答では複数の記者から人事について厳しい質問が飛んだが、ゴーンCEOは「経営の中心メンバーにしばらく動きがないと“人材が滞留している”と指摘され、変えたときには“懲罰的ではないか”と言われる」とマネジメントの難しさを口にしたほか、「自動車産業では経験や知識、コンピテンスが必要であり、グローバル展開する現代ではさまざまな市場に対する理解を深める必要がある。私としては2~3年で配置変更するというより、安定したマネジメントのほうが好きだ」とコメントしている

(編集部:佐久間 秀)