日産、2011年度第3四半期は増収減益
販売好調も円高の影響大きく、上方修正もなし

田川執行役員

2012年2月8日発表



 日産自動車は2月8日、2011年度第3四半期の決算を、神奈川県横浜市の同社グローバル本社で発表した。

 これによると、第3四半期累計(2011年4月~12月)の売上高は6兆6,984億円(前年同期比4.3%増、以下カッコ内同)、営業利益4,278億円(4.7%減)、純利益2,661億円(7.7%減)の増収減益となっている。

 しかし、第3四半期のみ(2011年9月~12月)で見ると、売上高2兆3,310億円(10.9%増)、営業利益1,181億円(3.6%増)、純利益827億円(3.2%増)の増収増益となった。

 田川丈二執行役員はその要因として「東日本大震災から迅速に生産活動を再開、タイ洪水被害による現地での生産影響台数も10月~12月の3カ月間で3万3,000台の最小限に留めることができ、同国以外での生産影響も出なかった。今の日産には素早く足並みを揃えて難題を克服する勢いがある」と、震災などの影響からのいち早い回復のほか「今年の業績は、特定の市場・地域に偏らないバランスのとれた成長に支えられている。おかげさまで日産の商品は世界中でご好評をいただいている。サニー、アルティマ、ジューク、キャシュカイ、リーフと、日産車の販売は好調だ。クルマの信頼性と、情緒に訴える魅力があらゆる市場で台数増に寄与している」と、日産車の商品力の高さをあげた。

2011年度第3四半期累計の実績グローバルの販売実績

 市場別の第3四半期累計の販売台数は次のとおり。各市場で全体需要を上回る増加率を記録し、シェアを拡大している。

市場全需日産販売台数市場占有率
グローバル5,578万台
(3.9%増)
342万9,000台
(13.6%増)
6.1%
(+0.5P)
日本307万台
(11.3%減)
42万900台(2%減)14%
(+1.3P)
中国1,260万台
(4.7%増)
90万7,000台
(20.1%増)
7.2%
(+0.9P)
北米972万台
(7.5%増)
75万7,000台
(11.3%増)
7.8%
(+0.3P)
欧州1,381万台
(4.1%増)
51万4,000台
(20.8%増)
3.7%
(+0.5P)
その他58万1,000台
(14.2%増)

 日本は震災等の影響を脱せず減少しているが、セレナとジュークにより2%減にとどめた。

 中国はティアナ、サニー、キャシュカイ(デュアリス)が好調。GDPの成長が鈍化した2011年10月~12月も、日産の販売台数は26.8%増を記録している。

 北米はアルティマ、ローグ(デュアリスと同じプラットフォームの小型SUV)、ヴァーサ(ティーダ)が貢献。

 欧州はジューク、キャシュカイが好調。特にロシアでは販売台数が59.5%増、シェアも0.9ポイント増の5.4%に拡大した。

減益要因で最も大きいのが為替影響

 好調の一方で減益となった要因で主なものはやはり円安。「対ドルで1円動くと、年間営業利益に200億円の影響」ということで、為替影響による減益額を1,501億円としている。

 「ある一定規模の生産を日本に置くことには意味がある」との考えのもと、国内の生産力は維持する方向だが、中南米、中国などの海外工場での生産能力を増強し、国内生産でも輸入部品の割合を引き上げるといった対策は講じる。またルノーやダイムラーからパワートレーンを調達するなど、アライアンスも活用する。

 このほか原材料やエネルギーのコストが1,061億円、研究開発費が158億円の減益要因としてあげられている。さらに販売費の増加も951億円の減益要因となっているが、これは販売台数増に伴うもので、1台あたりの販売費はむしろ減っていると言う。

 通期予想は営業利益5,100億円、純利益2,900億円のまま見直さない。第3四半期の好調を見れば情報修正が期待されるところだが、欧州金融危機や円高の影響を慎重に見た結果、修正しないことを選択した。また、「急激に伸びているブラジル、ロシアも今後、競争が厳しくなる。またVプラットフォーム(マーチなどのプラットフォーム)でコンパクトカーには先手を打ってきていると思っているが、競合他社からも出てくるだろう」と、競争の激化も第4四半期や来期に向けての慎重な姿勢に繋がっている。

アライアンスを活用するほか、海外での生産能力を増強する

(編集部:田中真一郎)
2012年 2月 9日