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日産、2013年度第3四半期の決算報告。当期純利益は843億円

「デイズ ルークス」などの新型車投入で通期見通し達成を目指す

2013年度第3四半期の決算報告を行う日産自動車 執行役員の田川丈二氏
2014年2月10日発表

 日産自動車は2月10日、2013年度の第3四半期決算を発表した。連結売上高は前年同期比25.1%増の2兆5224億円、営業利益は同68.6%増の787億円、経常利益は同14.6%増の955億円で、当期純利益を843億円としている。グローバル販売台数は123万4000台。日系企業最大の販売台数を誇る中国市場では前年同期比23.3%増の29万4000台を販売し、2013年暦年の販売台数を過去最高の127万台に到達させている。このほかの地域では、タイ市場での政府による補助金打ち切りと政情不安などによってアジア地域全体で同0.2%減の38万8000台となったほかはいずれも販売台数を伸ばし、為替レートの改善なども大きな要因となって全体の業績評価としては増収増益となっている。

「2013年度通期業績予想の達成はチャレンジングな目標だが、実現不可能な目標ではない」と語る田川執行役員

 神奈川県横浜市にある同社のグローバル本社で行われた記者会見では、執行役員の田川丈二氏がプレゼンテーションを実施。このなかで田川執行役員は、中期経営計画「日産パワー88」が目指す高い市場占有率と売上高営業利益率という目標に変更はなく、第3四半期に発表したコモン・モジュール・ファミリー(CMF)を採用する新型「エクストレイル」、新型「ローグ」が日産とアライアンス・パートナーのルノーで合わせて年間160万台規模を販売する見込みであるとコメント。

 また、成長市場における集中的な取り組みを進めて日産が得意な市場としてきている中国市場は政情が安定したことで販売を回復。パートナーである東風汽車と共同生産する「シルフィ」「ヴェヌーシア R50X」などの新型車が好調に推移していると紹介したほか、このところ低調な欧州市場も底打ち感を見せ、とくにロシア市場ではこの3カ月で販売台数が25.7%伸びるなど回復傾向であると語った。

 このほか、2013年度の9カ月累計の売上高は、前年比1兆1804億円増の7兆9356億円となっており、大幅な円高是正による増収、購買コスト削減などにより、純利益も17.9%増となる2741億円になったことも紹介。2013年度通期見通しでは、北米と日本国内で好調な販売が続き、中国やロシアといった成長市場でも回復傾向であること、すでに投入した新型車に加え、CMFを採用した新型「キャッシュカイ」やダットサンブランドの「GO」、日本市場でデビューを控える「デイズ ルークス」といったニューモデルの登場と販売の季節性などにより、第4四半期は大幅に収入が拡大する見込みであるとアナウンスしている。

2013年度の第3四半期における主要財務指標(9カ月)
日産の中期経営計画「日産パワー88」が目指す3つの目標
この第3四半期で大きな目玉となったコモン・モジュール・ファミリー(CMF)の第1弾製品。市場ごとに車名を変えて販売されている
メキシコではすでに稼働している第3工場に加え、さらなる拠点が開設予定。年間生産台数を25%増やした年間85万台以上とする計画
尖閣諸島問題の影響から立ち直りを見せた中国市場では、グローバル展開する「シルフィ」や独自ブランドで販売している「ヴェヌーシア」などが販売を牽引
2013年7月にルノー・日産アライアンスとして累計10万台を販売したゼロ・エミッション車も、商用車やカーシェアリングなどの分野でさらなる拡大を目指す
販売地域ごとにトップを任命する「6リージョン体制」で市場ごとの細かなニーズに対応する新体制を確立している
15年にわたって続いているルノーと日産のアライアンスでは、さらにシナジー効果を創出し、2016年までに年間43億ユーロまで高める計画を立てている
ルノー日産アライアンスとして2013年暦年で830万台を販売。この販売スケールのメリットでさらなるコスト削減、クロスファンクションの効率向上を目指す
2013年度の第3四半期のグローバル販売実績(9カ月)。北米市場における日産車の好調が見て取れる
2013年度の第3四半期の日本国内における販売実績(9カ月)。ノートの好調と新規車種のデイズによってマーケットシェアを高めた
2012年後半から2013年にかけて落ち込んだ中国市場での販売台数も、とくにこの3カ月は好調に販売を増やしている
全体需要が好調な北米市場でも販売を加速させ、市場占有率を上積みして増収増益に大きく貢献
ノート、ジューク、キャッシュカイといった車種が販売を支える欧州市場。ロシア市場ではこの3カ月で販売台数が25.7%増え、マーケットシェアも向上するなど今後を期待できる市場となっている
そのほかの市場では、アジア・オセアニアと中南米で販売減、中東で販売増で、合計すると8.9%のマイナス。ここにはタイで行われたエコカーに対する減税措置によって増えた販売が、2013年度になって政策終了したことで減少した反動減の要因が含まれている
2013年度の第3四半期財務実績(9カ月)。対米ドルで19.4円、対ユーロで30.2円の為替レート改善が大きく寄与している
営業利益を為替とコスト削減で押し上げ、逆に販売インセンティブなどの販売費、リコールやサービス保証などの品質関連コストが減収要因として分析されている
2013年度の第3四半期財務実績(9カ月)を、中国合弁会社を比例連結ではなく持分法ベースで計算した東証届出値
2013年度の第3四半期の自動車事業実質有利子負債。月末為替レートの円高基調で大きく向上させている
この先の2013年度第4四半期に向けた新型車も多数投入予定。日本市場でも「デイズ ルークス」が“まもなく”デビュー予定となっている
「日産パワー88」に変更はなく、2013年度通期業績予想も据え置きとしている

 プレゼンテーション後に行われた記者との質疑応答では、通期業績予想の達成に向けた進捗率が低いなか、業績予想を維持して達成させる目処について質問され、田川執行役員は最終的にグローバルで520万台の販売を目標としており、残りの3カ月で全体で152万台を販売する必要があるが、第3四半期で約123万台を販売しているところから29万台の上積みが必要になると回答。これを地域別に考えると、すでに第4四半期を終了している中国市場で約9万台の販売増が確定している。日本国内でもニューモデルの投入や景気回復、消費税の増税による駆け込み需要などで10万台増加を見込み、残る10万台を欧米とそのほかの地域でカバーしていきたいとしており、「例年の傾向やロシア市場の回復などを考えて決して不可能なレベルではなく、タイ、オーストラリア、ブラジルなどの市場は厳しい半面、中東やインド、カナダなどは販売が好調な傾向にあり、このあたりのプラスマイナスがうまく推移すれば約30万台の上乗せも実現できる」と語っている。

(編集部:佐久間 秀)