SUPER GT最終戦もてぎは、ZENT CERUMO SC430が優勝
GT300のチャンピオンは、エンドレス TAISAN 911(峰尾恭輔/横溝直輝)に

SUPER GT最終戦で優勝した38号車 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)

2012年10月28日決勝開催



 10月28日、2012 AUTOBACS SUPER GT第8戦「MOTEGI GT 250km RACE」の決勝レースがツインリンクもてぎ(栃木県茂木町)で開催された。前戦と同様に雨模様の天候が続く中、GT500クラスはポールポジションからスタートした38号車 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)がすでに年間チャンピオンを決めた1号車 S Road REITO MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)の追い上げを振り切り優勝した。GT300クラスはポイントランキング3位だった911号車 エンドレス TAISAN 911(峰尾恭輔/横溝直輝)が今季初優勝し、逆転で年間チャンピオンを獲得した。

 全8戦で争われるSUPER GTシリーズの最終戦の舞台はツインリンクもてぎ。予選が行われた土曜日は快晴となったが、決勝はスタートからゴールまで弱い雨が続くウェットレースとなった。最終戦は2人のドライバーが全戦参戦してればウエイトハンデなし。開幕戦と同様、実力で順位が決まるレースとなる。

GT500
 GT500クラスは前戦のオートポリスで1号車 S Road REITO MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)が2年連続となるシリーズチャンピオンを獲得したため、このレースは駆け引きなしで純粋に速さを競い合う戦いとなる。すでにチャンピオンは決まったが2位以下は最終戦の結果で順位が入れ替わる可能性を残している。第7戦までのドライバーズポイントは以下のとおり。

GT500クラス ドライバーズポイント

順位マシン名(ドライバー名)ポイント
1位1号車 S Road REITO MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)78
2位38号車 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)54
3位39号車 DENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一/石浦宏明)49
4位12号車 カルソニックIMPUL GT-R(松田次生/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)44
5位100号車 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴)41
6位36号車 PETRONAS TOM'S SC430(中嶋一貴)37
7位18号車 ウイダー HSV-010(小暮卓史/カルロ・ヴァン・ダム)36
8位23号車 MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ミハエル・クルム)35
9位6号車 ENEOS SUSTINA SC430(伊藤大輔/大嶋和也)33
10位19号車 WedsSport ADVAN SC430(荒聖治/アンドレ・クート)30
11位17号車 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大)30
12位36号車 PETRONAS TOM'S SC430(ロイック・デュバル)29
13位35号車 KeePer Kraft SC430(国本雄資/アンドレア・カルダレッリ)28
14位24号車 D'station ADVAN GT-R(安田裕信/ビヨン・ビルドハイム)22
15位32号車 EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴)15
16位8号車 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/小林崇志)12
17位36号車 PETRONAS TOM'S SC430(リチャード・ライアン)8

 前日の予選では38号車 ZENT CERUMO SC430(立川祐路)がポールポジションを獲得。自身の持つ通算ポールポジション獲得回数記録を17回に更新した。予選2位は6号車 ENEOS SUSTINA SC430(伊藤大輔/大嶋和也)、3位は23号車 MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ミハエル・クルム)とブリヂストンタイヤ勢が続いたが、ドライコンディションで行われた予選に対し、決勝は路面コンディションがウェットとなったため波乱が予想される。

 ウェットコンディションになると、ミシュランタイヤを履く予選7位の1号車 S Road REITO MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)、予選9位の39号車 DENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一/石浦宏明)、ヨコハマタイヤを履く予選6位の19号車 WedsSport ADVAN SC430(荒聖治/アンドレ・クート)、予選15位の24号車 D'station ADVAN GT-R(安田裕信/ビヨン・ビルドハイム)、ダンロップタイヤを履く予選14位の32号車 EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴)が追い上げを見せる可能性が高い。

 14時、シリーズ最短250km、53周の決勝はセーフティカー先導で走行を開始、3周目からレースはスタートした。オープニングラップで38号車 ZENT CERUMO SC430(平手晃平)はトップをキープ、2位にいた6号車 ENEOS SUSTINA SC430(伊藤大輔)が90度コーナーの立ち上がりでスピン、大きく順位を落とした。

セーフティカー先導で走行を開始したGT500クラスのスタートシーン(Photo:Burner Images)
2位の6号車が90度コーナー立ち上がりでスピン序盤、38号車は後続を引き離した

 序盤でポジションを上げたのはミシュランを履く1号車 S Road REITO MOLA GT-R(ロニー・クインタレッリ)。7位からスタートし5位でオープニングラップを終えると4周目(事実上の2周目)に入るストレートで18号車 ウイダー HSV-010(カルロ・ヴァン・ダム)を抜き4位に浮上した。

1号車はスタート直後の3コーナーで19号車をパスし6位へ1号車は18号車も抜き4位

 1号車 S Road REITO MOLA GT-Rは6周目の90度コーナーで100号車 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也)を抜き3位、10周目の1コーナーで23号車 MOTUL AUTECH GT-R(ミハエル・クルム)を抜き2位にポジションアップ、7秒前を行く38号車 ZENT CERUMO SC430を追った。

100号車を抜き3位23号車も抜き2位1号車は徐々に38号車との差を縮めた

 ヨコハマタイヤを履く19号車 WedsSport ADVAN SC430(アンドレ・クート)も快走を見せた。スタート直後は6位から9位へ順位を落とすが、5周目に7位、6周目に6位、7周目に5位、8周目に4位と毎周ポジションを上げ、11周目のヘアピンで23号車 MOTUL AUTECH GT-Rを抜き、1号車 S Road REITO MOLA GT-Rに次ぐ3位に浮上した。

19号車はスタート直後に6位から9位へ順位を落とした36号車を抜き7位17号車を抜き6位
12号車を抜き5位に浮上。4位の100号車に迫る19号車100号車を抜き4位
19号車が後続を引き離し23号車に迫る23号車を抜き3位までポジションアップした

 前戦オートポリスでほぼ最後尾からトップまで登りつめ、残り半周までトップを快走した32号車 EPSON HSV-010(道上龍)もダンロップタイヤが雨に強いところを見せた。14番手からスタートし、5周目に10位、10周目に8位、12周目に5位、16周目には4位まで浮上、14周で10台抜きの快走を見せた。

14位からスタートし13位の8号車を攻める32号車8号車、35号車を抜き10位へ9位の39号車に迫る32号車
スピンで遅れた6号車に抜かれるが再び抜き返した12号車を抜き5位の100号車に迫る32号車

 その後方、5位には9番手スタートでミシュランを履く39号車 DENSO KOBELCO SC430(石浦宏明)が続き、ブリヂストンを履くトップ38号車 ZENT CERUMO SC430の後方からミシュラン、ヨコハマ、ダンロップ、ミシュランが追い上げる構図となった。

 レース折返しとなる27周目の順位はトップが38号車 ZENT CERUMO SC430。2秒差の2位が1号車 S Road REITO MOLA GT-R、トップから6秒差の3位が19号車 WedsSport ADVAN SC430、14秒差の4位が32号車 EPSON HSV-010、22秒差の5位が39号車 DENSO KOBELCO SC430となった。

 レース折返しを過ぎた31周目に32号車 EPSON HSV-010がピットイン、リア2輪交換を行った。33周目に1号車 S Road REITO MOLA GT-Rがピットイン、タイヤ無交換でコースに復帰。34周目に19号車 WedsSport ADVAN SC430がピットイン、4輪タイヤ交換を行った。

 35周目には38号車 ZENT CERUMO SC430と39号車 DENSO KOBELCO SC430がピットイン。両チームともタイヤ無交換作戦をとった。トップ38号車 ZENT CERUMO SC430(立川祐路)と2位1号車 S Road REITO MOLA GT-R(柳田真孝)の順位は変わらず。タイヤ無交換の39号車 DENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一)が3位にポジションアップ。2輪交換の32号車 EPSON HSV-010(中山友貴)が4位、4輪交換の19号車 WedsSport ADVAN SC430(荒聖治)は5位に後退した。

 ピット作業を終えた36周目の上位陣のトップとのギャップは、2位の1号車 S Road REITO MOLA GT-Rが3秒、3位39号車 DENSO KOBELCO SC430が18秒、4位32号車 EPSON HSV-010が24秒、5位19号車 WedsSport ADVAN SC430が28秒となり、トップ2台はマッチレース、3位表彰台を3台で争う構図となった。

 3位争いは32号車 EPSON HSV-010がタイヤ無交換の39号車 DENSO KOBELCO SC430に迫りテール・トゥ・ノーズの展開に。44周目の3コーナーでが39号車 DENSO KOBELCO SC430がわずかにコースアウト。背後からプレッシャーをかけていた32号車 EPSON HSV-010が3位に浮上した。

トップを走る38号車と追う1号車、2台のマッチレースとなった終盤、表彰台をかけ32号車は39号車に迫る

 トップ争いは残り15周で1秒以下の争いとなり、GT300クラスのマシンを掻き分けながら緊張感に溢れたバトルが続いた。開幕戦で歴史的バトルを制した38号車 ZENT CERUMO SC430が最後までポジションをキープ、0.138秒差で逃げ切り今季2勝目を挙げた。

GT300マシンを掻き分けトップ争いをする38号車と1号車僅差のトップ争いは最終ラップまで続いた

 2位はシリーズチャンピオンを獲得した1号車 S Road REITO MOLA GT-R、3位は32号車 EPSON HSV-010が2戦連続の表彰台を獲得しブリヂストン、ミシュラン、ダンロップが表彰台を分けあった。

優勝しウィニングラップを走行する38号車GT500クラスの表彰式(Photo:Burner Images)

 4位にはミシュランを履く39号車 DENSO KOBELCO SC430、5位にはヨコハマタイヤを履く19号車 WedsSport ADVAN SC430となった。最終結果と最終のドライバーズポイントは以下のとおり。

GT500クラス 最終順位

順位マシン名(ドライバー名)
1位38号車 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)
2位1号車 S Road REITO MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)
3位32号車 EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴)
4位39号車 DENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一/石浦宏明)
5位19号車 WedsSport ADVAN SC430(荒聖治/アンドレ・クート)
6位23号車 MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ミハエル・クルム)
7位18号車 ウイダー HSV-010(小暮卓史/カルロ・ヴァン・ダム)
8位36号車 PETRONAS TOM'S SC430(中嶋一貴/ロイック・デュバル)
9位100号車 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴)
10位12号車 カルソニックIMPUL GT-R(松田次生/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)
11位24号車 D'station ADVAN GT-R(安田裕信/ビヨン・ビルドハイム)
12位6号車 ENEOS SUSTINA SC430(伊藤大輔/大嶋和也)
13位8号車 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/小林崇志)

GT500クラス ドライバーズポイント

順位マシン名(ドライバー名)ポイント
1位1号車 S Road REITO MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)93
2位38号車 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)74
3位39号車 DENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一/石浦宏明)57
4位12号車 カルソニックIMPUL GT-R(松田次生/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)45
5位100号車 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴)43
6位18号車 ウイダー HSV-010(小暮卓史/カルロ・ヴァン・ダム)40
7位36号車 PETRONAS TOM'S SC430(中嶋一貴)40
8位23号車 MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ミハエル・クルム)40
9位19号車 WedsSport ADVAN SC430(荒聖治/アンドレ・クート)36
10位6号車 ENEOS SUSTINA SC430(伊藤大輔/大嶋和也)33
11位36号車 PETRONAS TOM'S SC430(ロイック・デュバル)32
12位17号車 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大)30
13位35号車 KeePer Kraft SC430(国本雄資/アンドレア・カルダレッリ)28
14位32号車 EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴)26
15位24号車 D'station ADVAN GT-R(安田裕信/ビヨン・ビルドハイム)22
16位8号車 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/小林崇志)12
17位36号車 PETRONAS TOM'S SC430(リチャード・ライアン)8


GT300
 GT300クラスは最終戦で上位3台がシリーズチャンピオンを争うこととなった。第7戦までのドライバーズポイント上位は以下のとおり。

GT300クラス ドライバーズポイント

順位マシン名(ドライバー名)ポイント
1位33号車 HANKOOK PORSCHE(影山正美/藤井誠暢)71
2位66号車 triple a Vantage GT3(吉本大樹/星野一樹)67
3位911号車 エンドレス TAISAN 911(峰尾恭輔/横溝直輝)62
4位3号車 S Road NDDP GT-R(千代勝正)48
5位11号車 GAINER DIXCEL R8 LMS(田中哲也/平中克幸)47
6位3号車 S Road NDDP GT-R(関口雄飛)46
7位0号車 GSR 初音ミク BMW(谷口信輝/片岡龍也)44
8位43号車 ARTA Garaiya(高木真一/松浦孝亮)33
9位88号車 マネパ ランボルギーニ GT3(織戸学/青木孝行)28
10位31号車 apr HASEPRO PRIUS GT(新田守男/嵯峨宏紀)26

 ポイントトップの33号車 HANKOOK PORSCHE(影山正美/藤井誠暢)と2位の66号車 triple a Vantage GT3(吉本大樹/星野一樹)はこのレースで優勝すればチャンピオンを獲得できるが、3位の911号車 エンドレス TAISAN 911(峰尾恭輔/横溝直輝)は優勝しても上位2チームの成績によってはチャンピオンを獲得できない。上位3チームの順位ごとのポイントは以下のとおりだ。

現在の順位マシン名現在のポイント優勝2位3位4位5位6位7位8位9位10位
1位33号車 HANKOOK PORSCHE7191868279777675747372
2位66号車 triple a Vantage GT36787827875737271706968
3位911号車 エンドレス TAISAN 9116282777370686766656463

 例えば911号車 エンドレス TAISAN 911が優勝、66号車 triple a Vantage GT3が2位、33号車 HANKOOK PORSCHEが3位となると82ポイントで3チームが並ぶ。この場合は上位入賞回数の多いチームにシリーズタイトルが与えられる。911号車 エンドレス TAISAN 911はここまで優勝なし、66号車 triple a Vantage GT3と33号車 HANKOOK PORSCHEはともに優勝2回だが、66号車 triple a Vantage GT3は3位が2回、33号車 HANKOOK PORSCHEは3位が1回なので66号車 triple a Vantage GT3がチャンピオン獲得となる。まさに最後まで目が離せない僅差のチャンピオン争いだ。

 チャンピオン争いをする3チームは土曜日の公式練習から火花を散らす戦いを見せた。公式練習は1位911号車 エンドレス TAISAN 911、2位66号車 triple a Vantage GT3、3位33号車 HANKOOK PORSCHEと3チームが上位に並んだ。

 公式練習の途中で66号車 triple a Vantage GT3はウォーターポンプのプーリーにトラブルが発生。セッション途中で走行を中止した。修理には時間を要するため、応急処置で予選に臨むがセッション開始早々にトラブルが再発、タイムアタックすることなく予選Q1敗退となった。

 予選トップは33号車 HANKOOK PORSCHE、2位は911号車 エンドレス TAISAN 911とチャンピオン争いをする2台のポルシェがフロントローを獲得。66号車 triple a Vantage GT3は22番グリッドからスタートすることとなった。

GT300クラスのスタートシーン(Photo:Burner Images)

 決勝朝のフリー走行は1位33号車 HANKOOK PORSCHE、2位911号車 エンドレス TAISAN 911、3位66号車 triple a Vantage GT3と再び3チームが上位を独占、午後の決勝が激しいバトルになることを予感させた。

 小雨が降り続く中、決勝レースがセーフティカー先導で始まった。3周目にレースがスタート、ポールポジションの33号車 HANKOOK PORSCHE(影山正美)はトップをキープ、2番手スタートの911号車 エンドレス TAISAN 911(横溝直輝)がこれに続いた。

 22番手スタートの66号車 triple a Vantage GT3(星野一樹)は序盤から怒濤の追い上げを開始した。オープニングラップで4台を抜き18位にポジションアップすると4周目(実質2周目)に16位、5周目に12位、6周目に10位、7周目に9位、9周目に8位まで浮上した。

66号車はスタート直後の3コーナーで21位へ4号車と360号車を抜き18位へ52号車、61号車を抜き16位へ
5号車を抜き12位へ31号車を抜き9位へ16号車を抜き8位へ浮上した

 トップの33号車 HANKOOK PORSCHEはウェット路面とハンコックタイヤが合わなかったのかペースが上がらず、後続に蓋をする形となりトップから7位までが数珠つなぎの展開。粘りの走りでトップを死守するが、8周目のヘアピンで911号車 エンドレス TAISAN 911に抜かれ2位、10周目には87号車 JLOC ランボルギーニ GT3(山西康司)に抜かれ3位に後退した。このままの順位なら911号車 エンドレス TAISAN 911が優勝しても同点でチャンピオンを獲得できるが、これ以上順位を落とすとシリーズチャンピオンは遠のいていく。

トップ33号車の後ろ7位までが数珠つなぎとなる911号車が33号車を抜きトップに立った
すぐに後続を引き離す911号車33号車は87号車に抜かれ3位へ後退

 しかし、その後もペースは上がらず、12周目の5コーナーで88号車 マネパ ランボルギーニ GT3(青木孝行)、S字の進入で0号車 GSR 初音ミク BMW(片岡龍也)に立て続けに抜かれ5位。さらに13周目のヘアピンでオーバーランし7位へ後退、チャンピオン争いから脱落した。

 怒濤の追い上げを続ける66号車 triple a Vantage GT3が7位に落ちた33号車 HANKOOK PORSCHEに迫ったところで6位の11号車 GAINER DIXCEL R8 LMS(田中哲也)がコースアウトし1つポジションアップ。33号車 HANKOOK PORSCHEは2周に渡り抵抗を見せるが、16周目のS字2つ目でアウトから大外刈りで抜き66号車 triple a Vantage GT3は6位に浮上した。

 66号車 triple a Vantage GT3の次のターゲットは3号車 S Road NDDP GT-R(関口雄飛)、前戦オートポリスでは終盤までトップ争いをした強敵だ。18周目に背後に迫るが簡単に抜くことはできず23周目のダウンヒルストレートでようやく抜き去り5位へポジションアップした。

33号車に迫る66号車3号車がなかなか抜けない66号車

 24周目に前を走る0号車 GSR 初音ミク BMW(片岡龍也)がピットインし見かけ上の順位だが4位、26周目には2位の87号車 JLOC ランボルギーニ GT3もピットインし3位、2位を走る88号車 マネパ ランボルギーニ GT3(青木孝行)に4秒差に迫ったところで66号車 triple a Vantage GT3も29周目にピットインを行った。

 3号車 S Road NDDP GT-Rは66号車 triple a Vantage GT3と同じ周にピットイン、88号車 マネパ ランボルギーニ GT3は30周目にピットイン。トップ911号車 エンドレス TAISAN 911以外の上位陣は全てピットに入った。

66号車と3号車は同じ周にピットへ向かった

 レース前半の上位陣のギャップを911号車 エンドレス TAISAN 911とのタイム差でグラフにしてみた。7周目までは33号車 HANKOOK PORSCHEに蓋をされ上位集団が僅差の争いをしているが、33号車 HANKOOK PORSCHEを抜くとそれぞれのペースで走行していることがわかる。

 911号車 エンドレス TAISAN 911に対し87号車 JLOC ランボルギーニ GT3、88号車 マネパ ランボルギーニ GT3、0号車 GSR 初音ミク BMWは同等なペースだが、3号車 S Road NDDP GT-Rはやや遅め、33号車 HANKOOK PORSCHEはかなりペースが遅い。

911号車の後方に87号車。はるか後方は3位争い88号車と0号車の3位争いは結局終盤まで続いた

 66号車 triple a Vantage GT3は10台抜きをした5周目まではペースが遅いが、その後はトップとの差を縮めながら順位を上げている。33号車 HANKOOK PORSCHEと3号車 S Road NDDP GT-Rを抜く際にペースダウンしているが、このペースを維持できれば88号車 マネパ ランボルギーニ GT3の前には出られそうな勢いが感じられる。

 たられば、の話しをすれば、88号車 マネパ ランボルギーニ GT3の前に出れば3位。実質2位の87号車 JLOC ランボルギーニ GT3はかなりのハイペースで抜くことは難しそうな雰囲気だが、87号車 JLOC ランボルギーニ GT3の今シーズンの完走率(正しくは上位入賞率)は極めて低い。ほぼ毎戦スタート直後は上位争いをするがコースアウトなどで順位を落とすことが多く過去7戦の入賞は7位が1回だけ。3位に上がり87号車 JLOC ランボルギーニ GT3が自滅すれば2位となり、911号車 エンドレス TAISAN 911と同ポイントで並びシリーズチャンピオン獲得となる。

 33周目にトップの911号車 エンドレス TAISAN 911もピットイン、34周目に33号車 HANKOOK PORSCHEがピットインし上位陣のピット作業が終了、コース上での後半戦の争いが始まった。

 しかし、22番手スタートから奇跡のチャンピオン獲得まで後4秒に迫ったかと思われた66号車 triple a Vantage GT3だったが、ピットロードのスピード違反でドライブスルーペナルティが課せられた。タイムロスは約10秒。逆転チャンピオンが遠のいていった。ピットロードのスピードリミッターは作動させていたが、不具合により速度を超えてしまったらしい。

 ピット作業を終えた35周目の順位とトップ911号車 エンドレス TAISAN 911(峰尾恭輔)とのタイム差は、4秒差の2位に87号車 JLOC ランボルギーニ GT3(山内英輝)、12秒差の3位に88号車 マネパ ランボルギーニ GT3(織戸学)、13秒差の4位に0号車 GSR 初音ミク BMW(谷口信輝)、32秒差の5位に3号車 S Road NDDP GT-R(千代勝正)、38秒差の6位に66号車 triple a Vantage GT3(吉本大樹)、39秒差の7位に33号車 HANKOOK PORSCHE(藤井誠暢)となった。

 911号車 エンドレス TAISAN 911が優勝した場合、66号車 triple a Vantage GT3のチャンピオン獲得の条件となる2位までは34秒差。残り17周で1周2秒ずつ縮めなければならずかなり厳しい状況となった。7位に後退した33号車 HANKOOK PORSCHEも3位まで27秒差、ペースが上がらない状況で可能性はほぼ消滅したと言えよう。

 終盤までトップを快走した911号車 エンドレス TAISAN 911だが、残り4周で2位の87号車 JLOC ランボルギーニ GT3が急速に差を縮めてきた。その差は残り4周で1.9秒、残り3周で1.1秒、残り2周で0.4秒と縮まりテール・トゥ・ノーズの争いとなった。

レース終盤も3号車とバトルをする66号車911号車と87号車は残り4周で1秒以下の争いとなった

 2位に後退しても66号車 triple a Vantage GT3が3位にならなければチャンピオン獲得となる。しかし911号車 エンドレス TAISAN 911は今季2位表彰台は3度獲得しているが優勝していない。後半のステアリングを握る峰尾選手はGT未勝利。是が非でも優勝してチャンピオンを獲得したい。

 峰尾選手は重いプレッシャーの中、ノーミスで最後まで走りきり今季初優勝、峰尾選手はGT初優勝を飾った。2位は87号車 JLOC ランボルギーニ GT3、3位は88号車 マネパ ランボルギーニ GT3、4位は最後まで接戦を続けた0号車 GSR 初音ミク BMW、66号車 triple a Vantage GT3は5位でチェッカーを受けた。

優勝してウィニングラップで手を上げる峰尾選手表彰台を獲得した織戸選手はドアを開け手を振りながらウィニングラップを周回したGT300クラスの表彰式(Photo:Burner Images)

 後半も911号車 エンドレス TAISAN 911と上位陣のタイム差をグラフで確認すると、最終版で2位の87号車 JLOC ランボルギーニ GT3が一気にトップに肉薄したことが分かる。3位表彰台争いは88号車 マネパ ランボルギーニ GT3と0号車 GSR 初音ミク BMWがレース序盤からゴールまで僅差の争いだったことも分かる。

 もしドライブスルーペナルティがなければ66号車 triple a Vantage GT3はチャンピオン獲得が可能だったのか、という疑問はグラフを見れば答えはNOだ。後半のスティントはドライブスルーペナルティにより8周ほど3号車 S Road NDDP GT-Rに前を塞がれたことは大きいが、フリーで走行した周回のラップタイムも前半にタイヤを消耗したのか、ペナルティの精神的ダメージなのか上位陣より遅く、2位までポジションを上げることは不可能だったと思われる。レース終了後にチームから活動停止、チームの解散が発表された。66号車 triple a Vantage GT3は今シーズンのGT300クラスを大いに盛り上げてくれただけに非常に残念だ。

 GT300クラスの最終結果と最終のドライバーズポイントは以下のとおり。最終戦はGT500クラス、GT300クラスとも最終ラップまでテール・トゥ・ノーズの争いが繰り広げられるSUPER GTらしい好レースとなった。

GT300クラス最終順位

順位マシン名(ドライバー名)
1位911号車 エンドレス TAISAN 911(峰尾恭輔/横溝直輝)
2位87号車 JLOC ランボルギーニ GT3(山西康司/山内英輝)
3位88号車 マネパ ランボルギーニ GT3(織戸学/青木孝行)
4位0号車 GSR 初音ミク BMW(谷口信輝/片岡龍也)
5位66号車 triple a Vantage GT3(吉本大樹/星野一樹)
6位3号車 S Road NDDP GT-R(関口雄飛/千代勝正)
7位33号車 HANKOOK PORSCHE(影山正美/藤井誠暢)
8位52号車 GREEN TEC & LEON SLS(竹内浩典/黒澤治樹)
9位21号車 ZENT Audi R8 LMS(都筑晶裕/リチャード・ライアン)
10位30号車 IWASAKI MODAクロコ apr R8(岩崎祐貴/坂本雄也)


GT300ドライバーズポイント

順位マシン名(ドライバー名)ポイント
1位911号車 エンドレス TAISAN 911(峰尾恭輔/横溝直輝)82
2位33号車 HANKOOK PORSCHE(影山正美/藤井誠暢)75
3位66号車 triple a Vantage GT3(吉本大樹/星野一樹)73
4位3号車 S Road NDDP GT-R(千代勝正)53
5位0号車 GSR 初音ミク BMW(谷口信輝/片岡龍也)52
6位3号車 S Road NDDP GT-R(関口雄飛)51
7位11号車 GAINER DIXCEL R8 LMS(田中哲也/平中克幸)47
8位88号車 マネパ ランボルギーニ GT3(織戸学/青木孝行)39
9位43号車 ARTA Garaiya(高木真一/松浦孝亮)33
10位31号車 apr HASEPRO PRIUS GT(新田守男/嵯峨宏紀)26

 今回のレースの模様はテレビ東京系列で毎週日曜23時30分からの「SUPER GTプラス」(BSジャパンでは毎週日曜10時30分から)で放送される。シリーズ戦はこのレースで終了したが、SUPER GT、フォーミュラ・ニッポンが競演する「JAFグランプリ 富士スプリントカップ」が11月16日~18日に富士スピードウェイで開催される。66号車 triple a Vantage GT3などラストランとなるマシンもあるので、見逃せない1戦になりそうだ。

(奥川浩彦/Photo:奥川浩彦/報道専用レースフォトデータベース Burner Images)
2012年 11月 6日