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「自動車産業の体質は想像以上に傷ついている」
自工会2月定例会見より
(2013/2/15 15:31)
自工会(日本自動車工業会)は2月15日、会長定例記者会見を開催した。
税制改革を評価も「ユーザー負担は同じ」
かねてから自動車ユーザーの税負担軽減を訴えてきた豊田章男会長は、税制改革大綱において自動車取得税の廃止が決まったことを「画期的」と評価。しかし、廃止のタイミングが“消費税が10%になる時点”であることから「消費税が増税されることを考えれば、ユーザーの負担レベルは現状維持」と問題点を指摘。引き続き重量税の廃止など、ユーザーの負担軽減に向けた活動を続け、2014年度の抜本的改革実現を目指すとした。
また、春の労使交渉(春闘)に際して、政権から企業へ賃上げの要請が出ていることについては「日本企業はこれまで労使間で議論を重ね、お互いに問題点を出しあい、共有してきた。このプロセスに大きな意味がある。労使間の信頼関係の基本は長期安定雇用を確保するためにお互いが努力をすること。いろいろな立場からの議論になるが、建設的な議論が深まることを期待する」と述べるにとどめ、「インフレ目標が出て給料が上がらないと困るという論理はよく分かるが、今、まさにこれから話し合いを始める時期。超円高が是正され、日本の底力を見せる競争力を着ける大事な年。金額はこれから話し合うところ」と、賃上げの可否には言及しなかった。
円高是正も、急速回復には慎重
円安となった安倍政権の施策については「スピード感を持って取り組んでいる。しかし“失われた20年間”に株価が下がり、日本全体で失われた資産価値は約300兆円と言われている。今回の円安で株価が3割上がったが、これでもまだ80兆円で、まだ1/3にも満たない回復状況ということが、日本経済の現状を正しく表している」と、現状は回復の入口に過ぎないと指摘。「政権には、短期的に成果の現れるデフレ脱却はもちろん、中長期的な展望のもとに成長戦略を実行し、失われた20年を取り戻す気概で取り組んでほしい。自動車業界も日本経済の回復に向けて全力で取り組むが、円は安定的に推移することを期待している」とした。
円安によって、海外に移転した製造業や雇用が回復し、国内産業の空洞化に歯止めがかかることが期待されているが、これについても「自動車産業は裾野が広く、為替レートに応じて海外生産から戻れる会社と、そうでない会社が混在している。また製造業はすり合わせなど現場での実務が多いので、(海外に)出たものが戻ってくるには大変な時間を要する」「現在は超円高が是正されている局面で、しかもデフレ脱却を目標としている。企業の決算では、第4四半期のみ円安の影響を受けているのが実態。1年を通じてどういうトレンドになっていくか、安心感を得るにはまだ時間がかかる」と、国内への回帰には慎重な見方を示した。
また「あまりにも長く続いた円高で、自動車産業の体質は想像以上に傷ついていると認識してほしい」と、急速な回復を期待する声を牽制した。
情報発信のチャンスの年
自工会は2013年の内需予測を前年比11.7%減と予測しているが、これについては「2012年は補助金の影響もあり、9月くらいまでは追い風効果があった。13年は、前年を超えるのはなかなか難しいというのが、各社のトータルの考え方ではないか」と補助金終了の影響を示唆しつつ、「今年は東京モーターショーやITS世界会議が日本で開催される。世界への情報発信ができるチャンスであることを考え、昨年以上が難しいまでも、できるだけ1台でも多くの積み重ねをがんばっていきたい」とした。
また、市場の傾向として、“新車から中古車へ”“登録車から軽自動車へ”という傾向があるのではないかという指摘には「それは事実。中古車への動きを上回るような、魅力的な商品開発に努力していく」とした。