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自工会、車体課税の見直しを継続して政府に要望

自工会が7月度定例記者会見を実施

会見の出席者は豊田会長、名尾副会長兼専務理事の2人
2013年7月11日開催

 自工会(日本自動車工業会)は7月11日、7月度の会長定例記者会見を開催した。今回は自工会側からのあいさつや発表などはとくに行われず、冒頭から集まった記者との質疑応答によって進められた。

「税負担で自動車業界を優遇してほしいというのではなく、あくまで不公平を直してほしいとお願いしています」と語る豊田会長

──日本経済は回復基調にあるが、自動車産業から見てどうか。実感はあるのか。政府は設備投資を増やしたいとの意向だが、国内での設備投資についてどう考えているか。

豊田会長:4月1日に発表された日銀短観では、設備投資が2013年度は前年度比で1300億円、7.8%の増加です。製造業全体で見ると5.5%なので、自動車は国内製造業の設備投資を牽引しているといえます。設備投資は成長力強化、エネルギー効率の改善、新技術・新製品の開発といったイノベーションなどが多く含まれますが、安倍政権の「3本の矢」の成長戦略につながる設備投資だと考えています。今後は中小企業にも波及していくと思います。自動車という商品は、5~6年というサイクルでモデルチェンジするビジネスモデルです。この期間で同じ商品を改良し、原価低減など競争力強化に取り組む時間があるということで、努力をしたものが結果を出す商品です。ほかの産業に比べて、研究開発投資、設備投資などの計画を立案しやすいのが自動車産業になると思います。

──6月に政府が打ち出した成長戦略に燃料電池車の普及促進、自動運転車両などが含まれているが、これに自動車業界としてどのように臨むのか。

豊田会長:成長戦略に日本の強みである製造業の復活という方針が示されたことは、大変にありがたいことです。自動車がほかのモビリティと違うのは、ドライバーの意志で自由に道を選び、自由に止まれて、自動車ならではの魅力になると思います。今年は東京モーターショー、ITS世界会議もありますので、各社が出してくるであろう「クルマ屋が考える自動運転」にぜひご期待ください。

──1~6月の国内販売台数をどう評価するか。自動車産業にアベノミクスがどのように波及しているのか。

豊田会長:アベノミクスで製造業が成長戦略の真ん中に据えられ、今まさに活動が始まったところだと思います。国内市場はキャパ的に余裕があると思いますが、もう少し通常のサイクルで自動車を買い替えられるよう法整備をお願いしたい。これがなければ、設備投資は日本国内より海外の優先順位が高くなるのは現実的なところだと思います。先日、ライプツィヒで「技能五輪」が行われました。イノベーションという言葉を聞くと先端技術ばかりイメージしますが、この技能五輪であらためて「匠の技」がこれから重要な役割を担っていくと感じました。どんな自動化技術も、いかに人間の技に近づいて再現するかが基本になるので、元になる匠の技がなければ自動化は進まないと思っています。そんな匠の技を競う技能五輪で、日本からの参加者で5つの金メダルを獲得しました。ただ、私は金メダルの数だけでなく、どんな匠の技を維持して国際大会の場で評価されるか、プロセスが大切になると考えます。参加した選手たちは競争の中で世界の厳しさを知り、人間的にも成長して将来はものづくりのリーダーになっていくのです。そんな日本的な匠の技、NC旋盤に頼らず精度を出す手の技術といったものに、関心を持って注目してほしいと思います。

──超円高の是正で輸出企業の業績は伸びているが、まだ給与に結びついていない。経営者側から見てどうすれば給与増に結びつくのか。

豊田会長:現時点では給与が増減するというより、雇用を守ることで精一杯というのが現実です。超円高が改善されたとはいえ、製造業に対する6重苦は今でも続いています。リーマンショック以降の動き、日銀短観の動きといった短期的な視点も大切ですが、自動車は1回地域に根づいた場合、そう簡単にあちらにこちらにと動けない産業で、20年単位で見る必要があります。日本はこの20年デフレスパイラルが続き、リーマンショックや震災の影響を受けています。その視点で、今は正常に戻ろうというタイミングだと見ています。言い方を変えれば、日本経済は今がゴールではなく、新たな価値創造フェーズに立つスタートラインにいるというのがモチベーションにつながる見方でしょう。今後が重要になってくるので、世界のマーケットや生産拠点を見て、中長期視点でお客様に喜んでもらえるクルマづくりに向けてしっかり弾込めし、ものづくりの真の競争力を高める努力が重要になると思います。

──この数年は海外で売れる自動車に各メーカー苦心してきたと思うが、経済好転に向けて今後日本でどんな自動車を作っていくべきだと考えるか。

豊田会長:“クルマは道が作る”と考えています、世界にはいろいろな道があって、日本は国土が狭くて山岳地帯も多いです。地域ごとの道にあった自動車が必要です。一方で自動車メーカーはグローバルでの競争が激しくなっていて、どうグローバルに通用する自動車を造るかが求められています。その中で「日本で造るから一番競争力があるんだ」という状況に持って行かなければ需要の伸びは期待できず、難しいところです。かつての生産量を伸ばしていた時代には売れる所で生産するという考え方でしたが、より競争力がある場所で造るという方向に各社動いているのではないかと思います。そこで、日本の競争力というのがどんなものなのか模索し、各社で努力している段階だとお考えいただきたい。また、税制面でいうと、日本の軽自動車のレベルが国際水準ぐらいなのだと思います。なんとかその水準に合わせた税制改正をお願いしたいです。国際的に見て、軽自動車と登録車が対立するような構造がすでにおかしいのではないでしょうか。軽自動車が一番のベーシックカーとして、それに合わせた形に税体系を合わせることが、日本市場を再び活性化させ、海外勢もより入りやすくなってくると期待しています。

──中国の発表した統計で輸出がマイナスになったが、今後の中国経済をどう見るか。

豊田会長:私たちも中国に拠点を持ち、最近では開発も現地で行うようになってきました。これは中国のパートナーと協力して進めていることで、各社とも中国にとってよき企業市民になるべくいろいろと動いています。政治問題に左右されることなく、あせらず持続的成長ができるフェーズにみんなで努力して進めていくことが大切だと思います。

名尾副会長

──2013年1~6月の販売台数が-8%になったが、以前に自工会が出した需要見通しを変更する予定はあるか。

名尾副会長:2013年も半年が経過したので、私たちも国内市場の需要見通しについて今後の議論をしましたが、おおむね当初の想定通りの動きだということで、現時点では需要見通しを変更することは考えていません。

(編集部:佐久間 秀)