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ルネサス、次世代のハイエンド車載情報端末向けSoC「R-Car H2」
ARMの最新CPUコア「Cortex-A15/A7」やbig.LITTLE技術を車載向けSoCで初採用
(2013/3/25 17:42)
ルネサス エレクトロニクスとその子会社であるルネサス モバイルは3月25日、次世代のハイエンド車載情報端末向けSoC(Sytem on Chip)「R-Car H2」を発表した。同日からサンプル出荷を開始しており、量産は2015年6月からで、2016年6月には月産10万個を計画している。
同日、R-Car H2の説明会を都内で開催し、営業マーケティング本部 自動車事業統括部 自動車情報システムソリューション部 担当部長 吉田正康氏が概要を説明した。
同社は2011年に第一世代のハイエンド車載情報端末向けSoC「R-Car H1」を発表しており、今回のR-Car H2は第二世代にあたる。R-Car H1は2013年~2014年、R-Car H2は2015年~2017年に登場するクルマをターゲットに開発されたものとなる。すでに2018年以降に登場するクルマをターゲットとした第三世代の「R-Car H3」の開発にも着手していると言う。
同社は2015年以降に登場するハイエンド車の車載情報端末において、高精細ディスプレイやリアシートモニターへのマルチディスプレイ出力、車載に特化した操作性とレスポンスの向上、クラウドサービスの対応などとともに、車内の高級感と調和するより質感のあるデザイン表示や、車両周辺の状況を表示するトップビューといったドライバーの視界支援への要求がより高まっていくと見ている。
そこで、従来のR-Car H1からR-Car H2に進化させたわけだが、R-Car H2では「世界最高の応答性能」「快適なドライブを実現する運転支援機能」「ソフトウェア開発の大幅な効率化」を目指したとしており、特長点はいくつか挙げられる。
まずR-Car H2では、ARMの最新CPUコア「Cortex-A15/A7」を車載向けSoCで初めて採用し、車載情報端末向けSoCとして業界最高性能を謳う2万5000DMIPS(R-Car H1比で2倍以上)以上を実現。この最高性能を実現するために、もう1つ必要な要件として電力が挙げられるとし、「これまでのクルマはジェネレーターを搭載するのが通例だったが、電気自動車はバッテリー駆動となるで少しでも電力を抑える必要がある。また、車載器の中でも発熱というのは大きな課題だった」(吉田氏)ことから、動作状況に応じて動的に高性能CPU/低消費電力CPUを切り替えることが可能な「big.LITTLE」技術を、車載情報端末向けSoCとして初めて搭載。これにより、消費電力効率を6倍以上改善できたと言う。
また、グラフィックスにはImagination Technologies Limitedの最新アーキテクチャ「PowerVR G6400」を車載向けSoCとして初めて採用。これにより、R-Car H1に比べ約10倍のシェーダー演算処理を実現した。グラフィックスの性能について、吉田氏は「クルマの中でさまざまなディスプレイやHMI(ヒューマンマシンインターフェイス)の多様化、高機能化が進んでおり、カーナビの地図においても従来のアニメーションのようなものからよりリアルなものにすることが求められている。グラフィック性能は世代ごとに3~4倍の進化が一般的だが、それを超える10倍の性能向上を提供する」と述べ、これらにより応答性能を改善できたとしている。
一方、運転支援の強化を図るべく、R-Car H1比で約4倍の処理性能を持つ高性能リアルタイム画像認識エンジン「IMP-X4」を搭載した。IMP-X4の採用により、「例えば道路標識や車線、対向車といったものを同時に認識するのに十分な性能を持つ」と述べるとともに、「従来は画像認識の開発に専用の開発ツールが必要だったが、業界標準の開発環境であるOpenCVに対応する。これによってアプリ開発も用意になる」と吉田氏は解説。
また、「サラウンドビューアシスタンス機能」も搭載。これはR-Car H2に内蔵する画像補正機能と4つのカメラで実現するもので、「この機能により、車体周辺の状況を1つの画面で4方向を見ることが可能になる。4つのカメラを1つのプロセッサーで統合するインターフェイス、それからカメラから入ってきた画像を補正して1枚の絵につなげる技術を新たに開発した。これにより車体周辺の動きや危険物を察知できるようになる」と、その特長点を述べた。