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ホンダ、次世代650ccエンジンと新開発スクーター「Dunk(ダンク)」を国内発表

次世代650ccエンジンは「CBR650F」などに搭載し4月ごろ発売

新開発スクーター「ダンク」と次世代650ccエンジン
2014年2月3日発表

 本田技研工業は2月3日、新開発、新コンセプトの50ccスクーター「Dunk(ダンク)」を2月20日から国内発売することを発表した。同社の「eSP」技術を50ccクラスで初めて採用した水冷4ストローク OHC 単気筒エンジンを搭載し、高い燃費、環境、動力性能を達成した。価格は20万8950円。

 また同時に、次世代の新型650ccエンジンの詳細についても発表。低・中速域の扱いやすさと高回転域のスムーズな伸びを両立した水冷4ストローク DOHC 直列4気筒エンジンで、搭載車両は4月ごろの発売を見込む。価格は未定。

eSP採用の50ccスクーター「Dunk」
新型650ccエンジン

10代の若者をターゲットに、デザインと機能にこだわった「ダンク」

「ダンク」について解説した本田技研工業 二輪事業本部 コミューター領域 事業統括 今田典博氏

 50ccスクーターの「ダンク」は、“プレミアムスニーカー”というコンセプトで主に10代の若者をターゲットにして開発した。シンプルさと質感にこだわったソリッド感のあるボディーで、乗車時のシルエットの美しさを目指した。背負ったバッグの重さを感じにくい広めのロングシートを備え、居住性、座り心地のよさを追求している。

 また、時計や燃料計、DC12Vの電源を取り出せるアクセサリーソケットを標準装備。ヘルメットを収納可能な容量約23Lの大きなラゲッジボックスや、前方左右にグローブボックスとポケット型のインナーラックも用意するなど、日常の使い勝手にフォーカスしている。

コンパクトな車体
メーターパネルに時計、燃料計を備える
前方左側にグローブボックス。中には12Vのアクセサリーソケットがある
前方右側にあるインナーラックは500mLの紙パックも入るという
メットインにもなる容量23Lのラゲッジボックス

 エンジンは、低燃費と高度な環境性能を誇る同社独自の「eSP」技術を採用。これまで「eSP」は125ccもしくは150ccクラスでのみ採用されていたが、「ダンク」においてもそれらと同様にアイドリングストップ機構やPGM-FIによる効率的な燃料噴射、その他エンジン内部のフリクションロス低減といった技術を受け継ぐ。これにより、従来の50ccモデルと比べ約10%の燃費向上とエンジンユニットの小型化を達成しつつ、最高出力は3.3kW/8000rpmとし、50ccとしては比較的高い動力性能を得た。

eSPを採用したエンジン
従来50ccモデルと比べ約10%燃費向上
エンジン自体も小型化した

 足まわりは、デザイン性の高い12本スポークのアルミキャストホイールとし、フロントはディスクブレーキを装備。前後連動のシステムコンビブレーキとなっており、安全性にも配慮した。テールランプは視認性の高いLEDランプを採用している。

12本スポークのアルミキャストホイールにディスクブレーキを備える
テールランプにはLEDを採用

 車体色はマットアーマードグリーンメタリック、ポセイドンブラックメタリック、パールジャスミンホワイト、アーベインデニムブルーメタリック、キャンディーノーブルレッド、マットギャラクシーブラックメタリックの6種類をラインアップする。

マットアーマードグリーンメタリック
ポセイドンブラックメタリック
パールジャスミンホワイト
アーベインデニムブルーメタリック
キャンディーノーブルレッド
マットギャラクシーブラックメタリック
モデルチェンジした125/150ccのPCXについても言及があった。新モデルでは駆動ベルトの外側にこぶ状の“コグ”を設けることにより、屈曲ロスを低減
冷却フィンの形状も変更
低燃費タイヤの採用で転がり抵抗を約20%減少
ライトのLED化と以上の変更により、トータルで約5%の燃費向上を果たした
モデルチェンジしたPCX
同じeSP採用のエンジンを搭載する「ダンク」と

安心感とパワフルさを堪能できる新型650ccエンジン

新型エンジンについて説明する本田技術研究所 二輪R&Dセンター CB、CBRシリーズ開発責任者 後藤悌四郎氏

 新型の水冷直列4気筒650ccエンジンは、日常でよく使われる低・中回転域の扱いやすさと、高回転域の加速感を味わえるよう設計された、安定性とスポーツ性の両方を高めたパワーユニット。ワールドワイドで販売される車両への搭載を前提として開発されている。

 特にインドネシア、ブラジル、タイのような新興国では、大排気量車のニーズが高まっており、趣味あるいはステータスとして所有するユーザーがここ数年で大幅に増えてきている。新型の650ccエンジンはこの需要に対応するべく開発されたが、国内向けには「ようこそ直列4気筒CBワールドへ」というテーマで、400ccのユーザーや、バイクの操作に不安があるリターンライダーなどをターゲットとしている。

 コンセプトは「広範囲で楽しめること」。ミッション付きのバイクで緊張しがちな発進時のクラッチ操作をはじめとする低・中回転域の扱いやすさを高め、これまではその分抑えられがちだった高回転域のパワー感不足も排除した。

 具体的には、CBRなどスポーツタイプの車両と同様にエアクリーナー内部を「ダウンドラフトレイアウト」とし、さらに同社として初めて、吸・排気工程両方のバルブの開き時間を極力短くする「ネガティブバルブタイミング」の手法を採用している。

 一方、エキゾーストパイプは中間部分に整流板を設け、4-2-1の集合型としたことにより、低・中回転域の粘りと高回転域での伸びを両立。全域で滑らかに吹け上がるリニアでスムーズな出力特性を実現し、最高出力64kW/11000rpm、最大トルク63Nm/8000rpmの「使い切れる性能」に仕上げた。

新興国での大排気量車の人気が高まっている
スポーツタイプの車両と同じ「ダウンドラフトレイアウト」を採用
「ネガティブバルブタイミング」により吸気と排気それぞれの工程でバルブの開き時間を短縮
整流板を組み込んだ4-2-1の集合管とした

 また、ライダーの足下に排気口が位置するショートタイプのマフラーによって、迫力あるエキゾーストサウンドも得られるとしている。EURO 3の排出ガス規制に対応しているほか、タイにおける6次排出ガス規制に適合しているのも特徴だ。これらエンジンの構造やマフラーのショート化などにより、ユニット全体の前後方向の大きさをシュリンクし、マスの集中化にもつながっているとのこと。

新型650ccエンジン

 なお、本田技術研究所の後藤 悌四郎氏によると、現状、同社の国内現行二輪製品は、400ccと600cc、その上に700ccと750ccがラインアップされているが、今回発表した650ccエンジンの車両は、400ccに乗るユーザーの次のステップアップとして、あるいはリターンライダーが安心して扱える大型二輪として最適な選択肢だとしている。600ccのスポーツタイプではハードルが高く、700ccや750cc以上では重すぎるといった部分の隙間を埋めるモデルのようだ。

 新型650ccエンジンと搭載車両の生産は、タイおよび日本国内の熊本で行われることになる。搭載車両は4月頃、カウル付きスポーツタイプの「CBR650F」とネイキッドタイプの「CB650F」の2車種が登場予定。

「CB650F」(左)と「CBR650F」(右)
「CBR650F」
カウル付きのスポーツタイプだが、比較的楽なハンドルポジションとしているようだ
大径ディスクブレーキを備える
エンジン部
直線的なイメージのフロントカウル
2画面に分かれたメーターパネル
シートはかなり絞り込まれ、足つきに配慮
「CB650F」
特徴的なエギゾーストパイプが見えやすい
基本的な装備は「CBR650F」と変わらない
前後サスともに特別な調整機構は備えていないようだ
足下にあるショートタイプのマフラーは最近の流行
ストリートファイターチックなフロントマスク
よりポジションの楽なバーハンドルとなっている

アジア諸国は大幅な伸び。国内市場は「ダンク」で活性化へ

本田技研工業 取締役執行役員 二輪事業本部長 青山真二氏

 発表会では本田技研工業 二輪事業部本部長 青山氏による二輪車の販売状況についての解説もあった。

 2013年の世界における二輪車販売台数は約1680万台で、2012年比で9%増、台数でいうと130万台以上増加したことになる。成熟市場である日本は前年並み、欧州は前年割れという状況にあるが、全体的に見れば「二輪マーケットは緩やかな拡大方向にある」という。

 特にASEAN、および南西アジア諸国の潜在需要は高く、2013年、インドネシアでは約470万台、インドでは前年比27%増となる320万台以上をそれぞれ販売した。インドにおいては研究開発、生産技術、購買、品質管理機能を集約したテクニカルセンターの本格稼働、第三工場の建設も行い、将来の需要増に対応できるよう体制を整えている。その他、アフリカも市場として大きくなりつつあり、2013年にはケニアに現地法人を設立するとともに、2つ目の工場も建設した。

 国内向けには、2014年の前半までに20車種を新たに販売予定。なかでも今回発表した「ダンク」は「50cc市場の活性化を図るモデル」としており、「エンジンからボディーまで新開発した50ccスクーターを日本国内市場に投入するのは、2002年の『トゥデイ』以来12年ぶり」で、ホンダとして注力しているモデルであることを強調した。

ホンダモーターサイクルジャパン代表取締役社長 井内正晴氏

 また、国内の二輪車を取り巻く状況について、ホンダ車の国内販売を担うホンダモーターサイクルジャパンの井内氏が解説した。

 経済産業省は、2020年に国内の二輪車市場を100万台とすることを目標に掲げているが、同氏は「この目標を達成するには一層の規制制度の改革、若年層を中心とした新規事業の喚起が必要」だとし、普通自動車免許で125ccの二輪車までカバーする免許制度の改正について、今後も積極的に行政に働きかけていく方針を確認した。

 消費税増税による影響については、実施直後の4月は販売が大きく落ち込むと見られているものの、「経済アナリストや企業トップの景気予測では、夏以降に回復する」とのことから、不安視はしていない。また、2014年の干支が甲午(きのえうま)であり、「前回の甲午である1954年は日本の高度経済成長が始まった年」であること、そして「午年は革新の年でもある」と述べ、国内の二輪車市場の回復に期待を寄せた。

 2013年の国内における二輪車の総出荷台数は約42万台。全体では前年比4%増で、原付二種や軽二輪はそれぞれ前年比12%、22%増と健闘しているものの、原付一種は3%減と振るわない。この理由として、同氏は「最高速度30km/hや二段階右折といった制限が、都市部の交通環境にそぐわなくなっている」と見ている。

消費税増税で一時的に消費は冷え込むが、夏以降は回復すると予測
2013年の二輪車出荷台数は42万台。原付一種のみマイナスとなっている

 しかし、公共交通機関の少ない地域では原付一種が依然重要な移動手段であること、大排気量車や四輪自動車など「“上級モビリティ”への足がかりとなりうる」ことから、高校などにおける“3ナイ運動”からマナーアップ運動への転換が必要と訴えた。

 原付一種は高校生(16歳)から乗ることができ、ファミリーバイク特約のような優遇制度もあるため、「ダンク」の投入が原付一種市場に対するカンフル剤となって、モビリティ全体の活性化へつながることに期待をにじませた。

(日沼諭史)