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高橋敏也の「カーオーディオミーティング」に参加してきた

CYBER DRIVE LAB研究員限定のカーオーディオミーティング

ハイ、こちらが我が愛車のサイバーナビ。音に関してはこれからで、今後どうしようか悩み中でもある。それもあってカーオーディオミーティングに参加してみました

 考えてみればクルマの中、車内は音楽を好き放題楽しめる空間だ。まあ、同乗者がいる場合はそうも行かないだろうが、1人で運転している時なら大音量で聴いても文句は言われない。また、人に聴かれると恥ずかしい曲であっても、1人なら問題ない。例えば50歳を過ぎたおっさんが、アニソンを大音量で再生しても(常識の範囲内で)眉をひそめられる心配はないのだ。そういった意味でクルマの中は、最高のサウンドスペースになり得ると言っていい。

 問題はその際に使用するカーオーディオシステムである。自室では結構凝ったオーディオシステムを使っている人でも、カーオーディオのシステムには無頓着などという場合も多い。せっかく大きな音量で、好きな曲を聴き放題なのに、カーオーディオが貧弱ではさすがにもったいない。ならばカーオーディオを見直して、ちょっと上のシステムを狙ってみよう。そう思っても、今度は何をどうすればいいか分からない。そもそも今使っているカーオーディオシステムが、ちゃんと設定されているのだろうか? そしてクルマの中で聴く音、どういった「音」がいいものなのだろうか?

 そういった疑問にズバリ答えてくれそうなイベントがあったので参加してみた。そう、パイオニアが主催するCDL、CYBER DRIVE LABの研究員限定カーオーディオミーティングが9月13日に幕張メッセ国際展示場で開催されたのだ。CDL研究員限定ではあるが、私はCDLの研究員であり、参加資格を満たしている。という訳でパイオニアのサイバーナビを搭載した愛車ハチロクに乗って、幕張メッセを目指した高橋であった。

カーオーディオを見直し、進化をうながすミーティング

 パイオニアと言えばカロッツェリアのカーナビ、サイバーナビや楽ナビで知られたメーカー。とだけ思っていたら大間違い、というかこのあたりは皆さんの方がよく知っていることだと思う。そう、パイオニアはカーオーディオの世界的な「パイオニア=開拓者」であり、カロッツェリアはそもそもカーオーディオのブランドとして誕生した。それが今ではカーナビも含めたブランドとなった訳だ。ちなみに同社の誇る世界最高峰のカーオーディオブランドは、カロッツェリアχである。

 さて、ミーティングのオープニング、挨拶に立ったマーケティング部部長の蒲生宣親氏はスライドを使いながら、カロッツェリアブランドの歴史などを紹介した。そこでは「カロッツェリア」の語源である「カーデザイン工房」に込められた思いに始まり、サイバーナビやカロッツェリアχなどの話が続く。そして本題、カーオーディオミーティングに関しての話が始まる。そもそもCDLとは何か? 「CYBER DRIVE LAB=CDL」は、パイオニアが主催する「ドライブをエンタテインメントする研究所」である。カーライフの喜びと楽しさを「研究員」として、エントリーした一般の人々がミーティングなどを通して追求する訳だ。

 ちなみにCDLの1st MEETINGは今年6月、秋葉原で開催されている。そして今回「研究テーマの展開という意味では、今回が初のミーティング」と蒲生氏が語る、CDL研究員限定のカーオーディオミーティングが開催された訳だ。1st MEETINGはキックオフイベント的な意味合いが強かったのだが、今回のカーオーディオミーティングは研究所の研究である。内容としては「秋にピッタリなオーディオ」がテーマとなり、同社が主催するカーサウンドコンテストに合わせて催された。

●高橋敏也の「CYBER DRIVE LAB - 1st MEETING in Akihabara」に参加してきた
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140728_657663.html

●「第18回 パイオニア カーサウンドコンテスト」開催
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140916_666791.html

 ここで登場した「カーサウンドコンテスト」というのはいったい何なのか? 蒲生氏によればパイオニアの創業者である松本望氏の志である「よりよい音を、より多くの人に。そして感動をお届けしたい」を具現化したものということ。そんなカーサウンドコンテストも第18回となり、今回も200台以上のクルマが参加したという。このコンテストに関しては後述するが、参加者もクルマも相当に中身が濃い。そのコンテスト会場の脇で開催されたカーオーディオミーティングも、充実した内容のものとなった。

CDLミーティング、2枚目の参加シールを貰って嬉しそうなおっさんの図
「第18回 パイオニア・カーサウンドコンテスト」に近いスペースがミーティングの会場
ミーティング会場に展示されていた機材。「RS-D7χIII」ということは、カロッツェリアχかっ!
一番左手前にあるのはハイエンド・オーディオ、「TS-Z172PRS」。このあたりなら手が届くけど……
何やら凄いというのは分かるのだけど、それ以上は分からない
パイオニア マーケティング部部長 蒲生宣親氏

カーオーディオの基礎を知ろう!

カーエレクトロニクスコンサルタント、三宅健氏。話が実に面白い

 ミーティングはオープニングを除き、大きく3つのセクションに別れていた。最初にカーオーディオセミナー前半があり、昼食をはさんで後半、そして最後にサウンドクリニック(参加者はグループ分けされ、セミナー後半とクリニックは入れ替えとなった)。そしてカーオーディオセミナー前後編を担当したのは、カーエレクトロニクスコンサルタントの三宅健氏である。主な内容はクルマの中で聴く「音」に関するもの、そしてデジタルチューニング、スマートフォンのアプリケーションを駆使したカーサウンドクオリティの追求などなど。

 なお、三宅氏は開催中のカーサウンドコンテストにも詳しく、コンテストに関しての解説、さらにはカーナビに関する解説なども行った。そもそもこの三宅氏、全国のカーショップでオーディオシステムに関するセミナーを行っている人物である。プロを相手に講師を務めるだけあってトークは軽快なのだが内容はかなり濃く、そして実践的だ。前後編のすべてをここでリポートすると大変なことになってしまうので(文字数的に)、いくつかのポイントを紹介して行きたい。

 その前に知っておいてもらいたいのが、サイバーナビに搭載されている機能「AUTO TA & EQ」だ。この機能の「TA」は「Time Alignment」の略称で、意味的には「時間の整合性」となるだろうか。例えば運転席にいるドライバーから見て、車内にある左右スピーカーそれぞれへの距離は異なっている。距離が違えば音の到達スピードも異なるため、音源に記録されたボーカルや楽器の位置が適正にはならない。そこで登場するのがタイムアライメントだ。左右のスピーカーから音が到達する時間を調整し、音に整合性を持たせるのである。

 もう1つの「EQ」は「Equalizer」、イコライザーのことだ。車内には音を吸収したり、逆に反射したりする部材が様々に使われている。このためある周波数帯が弱くなったり、逆に前へ出たりする。それを調整、均等にするのがイコライザー機能だ。そして「AUTO TA & EQ」は「AUTO」とあるとおり、タイムアライメントとイコライザーの調整を自動でやってくれる便利な機能なのである。だが、あえて三宅氏は「自分でやってみよう」と言うのだ。これは決して自動設定を否定しているのではなく、自分で設定を変更することで、チューニングなどへの理解が深まるからだろう。

 タイムアライメントはサイバーナビなら自分で設定するのも簡単だし、そもそも自分でやってみれば、それがどういった機能でどういった効果があるのかを容易に把握できる。タイムアライメントを調整する際のポイントは、まず主に聴く人のポジション、運転席なのか助手席なのかを決めること。あとはサイバーナビの場合、タイムアライメントを調整しながらリニアに曲をコントロールできるので、しっかり調整してやればいい。実際、三宅氏がサイバーナビを使って調整のデモを行ったのだが、確かにボーカルの位置が移動しているように聞こえた。三宅氏曰く「タイムアライメントの調整は自分でやると音の動きがよく分かる。人にやってもらうとよく分からないのは心理的なものなのかも」。いえいえ、最前列で聴いていた私には、ボーカル位置の移動がしっかり分かりました。

 このほか三宅氏のセミナーでは、オシロスコープや標準信号発生器、iPhoneアプリケーションを使ったデモやチューニングが紹介された。なお、重要なポイントはタイムアライメントの調整を、イコライザーの調整より先に行うこと。こうすることでイコライザーの調整は最小限で済むという。また、イコライザー調整は手早く済ませること。そうしないと耳が“バカ”になってしまい、うまく調整できないらしい。もしイコライザー調整で何が何だか分からなくなった時には、とにかく耳を休ませるというのもいいアドバイスだった。

 思わず笑ってしまったというか、なるほどと感心したのは「音源がよくなければ何をやってもダメ」という三宅氏の話である。そのデモとしていくつか曲を聴かせてもらったが、三宅氏の勧める音源(音楽CD)は確かにいい音をしていた。その音源と比較するため聴かせてもらった音楽CDが、またなんともノイジーな雰囲気……。ここでそのノイジーな音楽CDのアーチスト名を出したら、恐らく私は大変な目に遭うと思うので自粛しておきたい。いずれにしても前後編100分が短く感じる、実に興味深いセミナーだった。

実演はサイバーナビを使って行われた
基本的には誰でも入手可能な機器、タブレットなどを駆使して解説
三宅氏が解説に使用した機材たち
やはり目立っていたのはこれ、中国製のオシロスコープ。「飾ってあるだけで“こいつできる!”をアピール」と三宅氏
セミナー前編終了後、三宅氏と記念撮影。お疲れ様です!

圧巻の「第18回 パイオニア・カーサウンドコンテスト」

「第18回 パイオニア・カーサウンドコンテスト」ディーラーデモカー部門で1位となったサウンドステーション ジパングのBMW 535i

 セミナー前後編の合間に用意された自由時間では、隣の会場で開催されていた「第18回 パイオニア・カーサウンドコンテスト」を見学することができた。というより今回のミーティング自体、このコンテストに合わせて開催されたのである。

 ちなみにミーティング前日の9月12日にはディーラーカー部門の審査結果が発表されており、受賞車両も展示されていた。プロフェッショナルであるディーラーが、カーオーディオの最高峰カロッツェリアχを駆使して構築したオーディオシステムである。どれほどの音がするのか是非体験してみたかったのだが、そんな思いは誰もが同じ。受賞車両の試聴はコンテストの一般参加者と見学者で長蛇の列、残念ながら諦めざるを得なかった。まあ、パイオニアのデモカーでカロッツェリアχの試聴は出来たのでよしとしよう。それに挨拶に立った蒲生氏も言っていたとおり、カロッツェリアχのシステムは「ちょっとお高い」訳だから、私にとってはまだまだ先の目標である。

 しかしこのカーサウンドコンテスト、とにかく凄い。参加台数の多さもさることながら、参加者の気合いが違うのだ。ディーラー部門にしろ、一般部門にしろ、参加者はカーオーディオの頂点を目指してある意味、命懸けで挑んでいるのである。セミナー講師である三宅氏が「コンテストは本当に音だけの勝負。だからパネルとかは木がむき出しでも構わない」と解説していたのだが、集まった車両はどれも新車のような輝き。そしてもちろん、搭載されているカーオーディオシステムは力作揃いというか、一般のレベルを超えたモノ揃い。まさに「世界が違う」ということを見せつけられた。

 いや、機器だけなら同じ物を買えばいい。しかし、コンテストの参加者たちはそれを独自にセットアップし、さらにチューニングしているのである。三宅氏が語っていたことで印象的だったのは「課題曲をどう表現するかが問われるコンテストでもあり、作曲者や曲の背景まで調べた上でシステムを構築する」という点。要するにそこまでしないと上位には入れないコンテストということなのだ。

ズラリと並んだ参加車両たち。どれもピカピカ。長時間展示を行うため、電源はAC100VをDC12Vに変換して供給している

とりあえず目標はできた!

オートサウンドWebの編集を担当している長谷川圭氏と私のハチロク車内で談笑……ではなくてアドバイスをいただいているところ。いや、雑談しているな、これは

 自由時間にカーサウンドコンテストを見学し、最後に待っていたのは「サウンドクリニック」。参加したCDL研究員のクルマ、そのカーオーディオシステムを実際にチェックしてアドバイスしてもらえるというプログラムだ。担当したのはカーオーディオ評論家の石田功氏、そしてオートサウンドWebの編集を担当している長谷川圭氏。ちなみに私のハチロクをチェックしてくれたのは長谷川氏である。

 さて、私のハチロクのオーディオシステムは「サイバーナビ+ハチロク純正スピーカー」、音源としてiPod touchを使用している。主に聴くのはロックミュージック、おっさんらしくDeep PurpleとかLed Zeppelin、AC/DCなどか入っている。ちなみにお気に入りのアニソンが「少し」だけ入っているのは、ここだけの秘密である。

 そんな私のハチロクの音を聴きつつ、長谷川氏からアドバイスをもらう。最近は純正のスピーカーもよくなって来ているが、やはり音質向上を目指すなら交換した方がいいということ。例えば現状のシステムだとボリュームをフルの半分以下しか使えない。それ以上にすると音が割れてしまって、どうしようもないとのこと(実際にそう)。スピーカー、アンプなどを交換し、サブウーファーを追加すればかなりの音質向上が見込めることなど。余談ではあるが長谷川氏、AC/DCのコンサートに行ったことがあり、アンガス・ヤング(AC/DCのギタリスト)の話で盛り上がったりもした。

 よし、私が目指すところはほぼ決まった! まずはパイオニアのデモカーが搭載しているカーオーディオシステムを「パクろう(身も蓋もない……)」! コアになるのはもちろんサイバーナビ、そこにカロッツェリアのTS-V172Aでバイアンプ接続を行う。TS-V172Aはウーファーとトゥイーターがセットになっているので、これで基本システムはでき上がる。そこに長谷川さんもお勧めのTS-WH1000A、HVT方式(これから勉強します)の超薄型サブウーファーを組み合わせる。まずはここからスタートしよう。そしていずれはカロッツェリアχにたどり着ければいいなあと思ったりもする。

 今回のミーティングは正直な話、いい刺激になった。どうも自分はカーライフの大きな楽しみの1つ、カーオーディオのことをすっかり忘れていたらしい。「音なんて鳴ればいい」。確かにそういう考え方もあるだろう。だが、よい音は人を気持ちよくさせるものだし、よい音を手に入れればもっともっとカーライフが楽しくなるはずだ。そう思いながらパイオニアのWebサイトをチェックするのが、実に楽しい今日この頃である。もちろんカーオーディオシステムのページね。いや、カロッツェリアχのページを見てため息をついたりしてませんてば。

 不肖・高橋、今回のカーオーディオミーティングへの参加で、CDLネームカード裏のシールが2枚になった。9月末には神戸で関西の研究員を集めたミーティングも行われた。日本全国にCDLの研究員が広がっていきそうだ。

サウンドクリニックの会場で、カロッツェリアの旗を見つけて喜ぶおっさん
サウンドクリニックは幕張メッセの駐車場、その一角を貸し切って行われた
カロッツェリアχのデモカーも展示されていた。でも「ちょっとお高い」んですよ
こちらはハチロクにサイバーナビを搭載し、スピーカーやアンプを搭載したパイオニアのデモカー。私のライバルである
パイオニアのハチロクデモカーに搭載されていた超薄型サブウーファー、TS-WH1000A。助手席の下に入っている
ピラーに埋め込まれたトゥイーター。このあたりの仕上げのよさは、やはりデモカーならでは
さて、おっさんはどこを目指そうか? とりあえずパイオニアのハチロクデモカーのシステム構成をパクってみようか

(高橋敏也/Photo:安田 剛)