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自律型無人航空機の新会社「エアロセンス」、事業戦略説明会を開催
クラウドサービスを組み合わせた産業用ソリューションを2016年前半から提供開始
(2015/8/25 16:35)
- 2015年8月24日発表
エアロセンスは8月24日、自立型無人航空機とクラウドサービスを組み合わせた産業用ソリューションを2016年前半から提供していくことを発表した。同社はソニーモバイルコミュニケーションズ(出資比率50.005%)と、自動運転技術などの開発、応用、展開を行うZMP(出資比率49.995%)の合弁会社で、8月3日に設立された新会社だ。
発表会では、ソニーモバイルコミュニケーションズ 代表取締役社長 兼 CEO 十時裕樹氏が登壇。合弁会社設立の経緯とソニーモバイルにとっての新事業の重要性について語った。
まず、経緯についてはもともとソニーのR&Dでドローンを研究しているチームがあり、共同開発の打診を受けたことから2014年11月からソニーのチームがZMPに常駐。そこから共同研究、共同開発が本格的にスタートしたという。ZMPでは2015年3月からソニー製超高感度CMOSイメージセンサーを2つ搭載したステレオビジョンシステム「RoboVision2」の受注をスタートしているが、これも共同の成果だとした。また、ソニーにとってのジョイントベンチャーの意味は、スマートフォン中心のビジネスからの脱却を挙げた。つまり、今後大きな成長が望めない可能性があることから、新規事業への積極的な取り組みを経営方針として掲げており、今回のジョイントもその一環であるという。
そうした中でエアロセンスへの期待として「ソリューションを求める企業に新たな付加価値を提供するのがエアロセンスの役割」とし、「ZMPの自動運転、ロボットにおける技術ノウハウ、産業ビジネスの経験が強み」であり、ソニーモバイルの持つカメラ、センシング技術、ネットワーク通信サービス、クラウドサービスの経験を融合することで、新たな価値を創り出すことができると強く期待していると述べた。最後に「エアロセンスはスタートしたばかりだが、事業の開始から今後の成長に向けて積極的にバックアップして支援していきたい」と締めくくった。
次いでZMP 代表取締役社長 兼 CEO エアロセンス 代表取締役社長 兼 CEO 谷口恒氏が登壇。ZMPはこれまで家庭用自立移動ロボット、自動車の自動運転を中心に開発、蓄積したロボット技術をコア技術としている。これらの技術はすべて陸上のものだが、エアロセンスにより「空へフィールドを広げ、陸上ではできなかった新たな価値を提供したい」と述べた。
また、「エアロセンスはZMPとソニーモバイルコミュニケーションズ、両社のDNAが混ざった会社。それぞれ単独ではできない新たなチャレンジができる、素晴らしい会社にしていきたい」と今後の展開にも言及した。事業戦略については産業用UAVに共通なワークフローをプラットフォーム化して多方面に提供するとし、クラウドを使ったデータ解析により価値あるデータを提供できるほか、UAVの運用についてもフライトパスの生成から離着陸、撮影など一貫して自動化できる技術が同社の強みだと語った。
開発中の自立型UAVについては、エアロセンス 取締役 兼 CTO 佐部浩太郎氏が紹介を行った。まずマルチコプター型の「AS-MC01-P」については「全長50cmぐらい、重さ2.5~3kgぐらいの非常にコンパクトなUAVになっておりますが、非常にパワフルで、屋外で風速10mの強風の中でも安定して飛ぶことができる。基本機能としては上部に付いているGPSレシーバーを使って自律飛行を行うことが可能で、地図上の経路に合わせて自動で飛びます。また下に付いておりますカメラがソニーのレンズスタイルカメラ“DSC-QX30”を搭載しておりまして、非常に高画質な静止画像を撮ることができます。自動飛行にあわせて自動的に撮影することができます」と解説。
さらに「フライトコントローラー以外にも高性能なCPUを搭載しておりまして、前方に付いているカメラ、下向きの小型カメラの情報をリアルタイムに処理することができます。これにより画像を使って自分の位置を把握して飛ぶといった用途に使うことができます」と、特長をアピールした。
次に実際の運用方法について説明。自立型だと飛行経路の設定が面倒になるが、手元の操作端末で飛行する領域を選び、測定したい場所や高度を指定すると、機体の性能やイメージセンサーの性能に合ったフライトプランが生成されるという。それを機体に転送すれば、あとはUAVが自律飛行し、自動的に撮影を行ってくれる。飛行中は手元の操作端末で機体の現在位置、バッテリー残量などを確認できるものの「オペレーターは見守るだけで操作をする必要はない」という。撮影後のデータ処理もほぼ自動化されている。
まず、操作端末に機体を近づけることで高速無線伝送技術「TransferJet」を使ってデータが転送され、操作端末からクラウドサーバーに自動的にアップロード。サーバー上ではユーザーアカウントごとにデータが管理され自由に閲覧可能となる。さらにデータがある程度収集されるとクラウド上でデータ解析が行われ、俯瞰地図や3Dモデルまで自動生成されるという。同時にフライトログもリアルタイムでクラウド上にアップロードされるため、現場で運用等のサポートに活用できると至れり尽くせり。UAVのオペレータはもちろん、データ処理を行うエンジニアも不要と、魅力はあるもののコスト面から手を出しづらかったという企業にはかなり魅力的なソリューションに映るはずだ。「このようなハードウェア、ソフトウェアを活用して実際の業務に活用していただきたいと思っている」とした。