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【GTCJ2015】クルマ関連のセッションで一番人気だった、ZMP 技術開発部長 三原寛司氏のプレゼン
「自動運転を支える画像センシング技術とGPUの活用例」
(2015/10/13 08:30)
半導体メーカーのNVIDIAは、9月18日に東京 虎ノ門ヒルズフォーラムでGPUテクノロジーをテーマにしたセミナーイベント「GTC Japan 2015」を開催した。このイベントでは、同社のGPUで実現する高速計算機能やその言語環境のほか、ディープラーニング、自動車といったテーマで数々のセッションが用意されていた。
自動車関連のセッションで一番人気となっていたのが、ZMP 取締役 技術開発部長 三原寛司氏が行った「自動運転を支える画像センシング技術とGPUの活用例」。ZMPはDeNAと共同で自動運転車を運用する新会社「ロボットタクシー」を設立したほか、ソニーモバイルとは自律型無人航空機の新会社「エアロセンス」を設立し、ロボット開発で培った自律技術を急速に自動運転へと展開している。自動運転車の開発キットも広く発売するなど、自動車メーカー以外では自動運転の分野で突出しており、会場に聴講者が入りきらず、多くの立ち見が発生していた。
三原氏のセッションは、ZMPの事業の紹介から始まった。現在ZMPが手掛けている事業をひと通り紹介した後、これまでの自動運転車の歴史を紹介。同社は「RoboCar」というシリーズで自動運転車を発展させてきているが、最初の製品は2009年の「RoboCar 1/10」。そして最新はロボットタクシーの発表会でも紹介されていた「RoboCar MiniVan」になる。
自動運転車では自車の周囲の環境認識が大きな要素となるが、三原氏は画像認識技術が重要になるという。その理由として挙げていたのが、「ディープラーニングの技術発展」「センシングシステムのコストダウン」「人間に近い動作原理」だ。
ディープラーニングの技術発展により、前方障害物の認識や歩行者検知などが容易に実現でき、そのために必要なデジタルカメラはレーダーなどと比べて相対的にコストが安い。また、映像を認識するというのは人間に近い動作原理のため、人間のために作られている道路との親和性も高いという。例えば、信号の色や道路の白線は、レーダーやソナーなどでは認識できず、画像認識が自動運転には必須となっている状況だ。
ZMPでは、すでにソニー製CMOSセンサーを2基使った超高感度ステレオカメラ「RoboVision」によるADASの技術開発環境を提供。PC向けのSDK(ソフトウェア開発キット)において、視差画像生成、歪み補正、ステレオ平行化処理を用意している。今後は、NVIDIA Tegra K1向けの画像処理ユニットを提供し、計算能力の高い開発環境を整えていく。
ディープラーニングの自動運転への応用は3段階で
三原氏は、ディープラーニングの自動運転への段階的応用についても、その筋道を示した。第1段階としては、画像をディープラーニングで認識させ、オブジェクト検出を実現。歩行者、自動車、白線をオブジェクトラベルとして抽出していく。第2段階としては、動きの検出。動画をディープラーニングによって認識し、急ブレーキや危険運転を動作ラベルとして抽出する。そして第3段階が自動運転となり、動画と目的地、地図により適切なアクションでクルマの運転を行う。現在は、この第1段階に適用できる技術の報告が行われている状態だという。
ディープラーニングによる認識がこれまでの技法より優れている点は、特徴量抽出と分類が1度にできる点。これにより、歩行者検知と車両検知が同じアルゴリズムで行えるとのことだ。
三原氏は実際に学習を行った後の画像認識を示し、矩形領域ではなく画素単位で認識することや、クルマが何台いても計算量が変わらないということが優位点になると語った。
今後ZMPは、NVIDIAの車載用開発キット「DRIVE PX」で動作するディープラーニングを応用した画像認識ソフトウェアを開発・販売。さらに、自動運転開発車であるRoboCarシリーズとDRIVE PXを組み合わせたものの販売も目指していく。
これらを入手することで、自動運転のアルゴリズム開発やディープラーニングの学習などができ、多くの企業や団体がこの分野に参入しやすくなり、自動運転の開発が加速していくだろう。