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ロボットタクシー、2016年から神奈川県藤沢市で公道実証実験を実施
小泉進次郎政務官「神奈川県を自動運転の実験の場に」
(2015/10/1 23:42)
- 2015年10月1日発表
内閣府、神奈川県、およびロボットタクシーは10月1日、横浜スタジアムで会見を開き、2016年初頭から藤沢市の公道上で一般の利用者を乗せて走行する、自動運転タクシーの運行を開始することを発表した。あわせて仙台市と名古屋市においても、自動運転に関わる実証実験を行うことを明らかにしている。
これまでの自動運転に関わる取り組みでは、国内外の自動車メーカーやIT企業などが公道上で無人走行に向けた実験をたびたび行ってきているが、一般の利用者が乗車できる形で実施されるのは世界でも珍しい。神奈川県は2014年に国家戦略特別区域として指定されており、同実証実験は国家戦略特区プロジェクトの1つとして、無人の完全自動運転の実現を目標に行われる。
なお、この日に横浜スタジアムで行われる予定だった横浜DeNAベイスターズ対読売ジャイアンツのゲームで、国家戦略担当の小泉進次郎内閣府大臣政務官が実証実験で使われる自動運転車に乗ってマウンドへ向かい、始球式を務めることになっていたが、雨天のため順延となった。10月2日のゲームで改めて始球式を行う。
実証実験を通じて、ジュネーブ条約の改正へ
藤沢市の実証実験では、公道における無人の完全自動運転(レベル4)の環境整備を目的に、公道における有人の自動運転(レベル3)を実施する。利用者はモニターとして選ばれた50名ほどの周辺住民で、自宅と近辺にある大手スーパーとの往復ルートを、約3kmほどの公道上で走行する想定。主に買い物の際の往復や荷物の運搬が困難と思われる高齢者らがターゲットになるとしている。
実験期間は2週間を目処とし、その後は利用者からの意見を集めつつ、断続的に実施する計画。ただし、自動車の無人運転はジュネーブ道路交通条約および日本の道路交通法により禁止されていることから、運転席には運転手が付くほか、実験担当者も乗車し、安全確保や緊急時の対処を行う。
自動運転車両は、DeNAとZMPが共同で設立した合弁会社ロボットタクシーが運行する。トヨタ自動車の「エスティマ ハイブリッド」をベースに、ZMPが自動走行のための各種センサーやシステムを搭載するなどの改造を加えたもので、営業車両2台、待機車両2台の計4台体制で実証実験に臨む。
一方、仙台市の実証実験では、災害危険区域として指定されている荒浜地区の道路と小学校校庭内での無人走行を前提に、2015年度内に実施する予定。名古屋市では、2015年初めに同市内で行った公道上の実証実験の結果を踏まえ、3Dセンサーなどを用いたより高度な実証実験を2015年度内に行うとしている。
会見では小泉氏が、この日の始球式で自動運転車両を使うことになった経緯を説明。1カ月ほど前にロボットタクシーの谷口氏に「ピッチャー交代のリリーフカーが自動走行で出てくる姿を実現してください」と要望したのがきっかけだと語り、今回の3地域における実証実験を通して「最終的には国連で議論されているジュネーブ条約の改正に積極的に貢献し、道路交通法の改正に向けて頑張っていきたい」と宣言した。
さらに、国内・国外にかかわらず、自動走行のプロジェクトに意欲を示す企業に対して「全力で後押ししていきたい」とも述べ、神奈川県内に研究開発施設を設置する計画がある米Appleをはじめ、世界中のテクノロジー企業にラブコールを送った。
なお日本政府は、6月30日に閣議決定した「『日本再興戦略』改訂2015」において、「日本産業再興プラン」の1つとして「完全自動走行を見据えた環境整備の推進」を挙げている。自動走行システムについては、「レベル4(完全自動走行)までの技術開発を目指し、適切に実証実験を実施し、その効果を検証していくことが必要」と明記しており、今回の藤沢市をはじめとする自動運転の実証実験も、その一環として展開していくことになる。