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自動運転用車載SoC「Tegra X1」を開発するNVIDIAの研究所を訪ねてみた
「GPU Technology Conference 2015」に先がけ、NVIDIA本社をちょっとだけ公開
(2015/3/18 00:00)
- 2015年3月16日(現地時間)実施
半導体メーカーのNVIDIAは、3月16日~20日(現地時間、以下同)の5日間に渡り、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンノゼ市のSan Jose McEnery Convention CenterにおいてGTC(GPU Technology Conference)を開催している。初日となった3月16日には、ポスターチャットと呼ばれるNVIDIAのエンジニアと直接話せるセッションが行われたが、イベントの本番は3月17日に予定されている同社CEOのジェン・スン・フアン氏の基調講演からスタートすることになる。
テスラのイーロン・マスクCEOも登壇する「GPU Technology Conference 2015」参加者募集中
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20150216_688397.html
それに先立ちNVIDIAは報道関係者などを対象にした同社本社ツアーを開催し、同社が本社内に開設している半導体のシミュレーション研究所、半導体解析研究所などを公開した。半導体のシミュレーション研究所では、半導体をシミュレーションするシミュレータを利用して開発中のGPUを実現し、ソフトウェアの互換性などを確認することで、後述するテープアウト前の半導体のバグ出しを行う様子などが公開された。
シリコンバレーのサンタクララ市に本社を構えるNVIDIA
NVIDIAは1993年に設立された比較的若い半導体メーカーで、グラフィックス処理に強みを持つ半導体を作るメーカーとして知られている。創業以来の主力製品となっているのは、GPU(Graphics Processing Unit)と呼ばれる、グラフィックス処理を行う半導体で、PCやワークステーションといったグラフィックス処理能力が必要な製品で採用されている。近年は、HPC(High Performance Computing)と呼ばれる、いわゆるスーパーコンピュータなど科学演算に利用される高性能なコンピュータ市場向けの半導体でもシェアを伸ばしており、同社が展開するTesla(テスラ)は、多くのHPCに採用されている。さらに、現在はTegra(テグラ)のブランドで知られる低消費電力のSoC(System On a Chip)のビジネスに進出しており、自動車向けにも採用が進んでいる。
そうしたNVIDIAの本社は、アメリカ合衆国カリフォルニア州のサンタクララ市にある。シリコンバレーと総称されることが多い、サンタクララ、サンノゼあたりを中心としたIT関連企業が集中しているエリアで、NVIDIA本社はシリコンバレーを南北に貫く101号ハイウェイからほど近い場所にある。
オフィスは元々、A棟、B棟、C棟、D棟の4棟から構成されていたそうだが、現在では業務拡張により手狭になったため、道路を挟んだ場所にもオフィスを設けるようになり、合計12棟の建物で本社は構成されている。
メイン棟となるA~D棟には、オフィス、研究所、食堂などが集中しており、フアンCEO以下の経営陣や事務方の社員がいる棟がD棟になるという。なお、A棟からD棟は建物自体が円状に配置されており、どの建物からも他の建物に行きやすいようになっているという。
半導体ができる前も、そしてできた後も解析し、高品質な製品を作り出す
ここNVIDIA本社内には複数の研究所(Lab、ラボ)があるが、今回はその中で“半導体シミュレーション研究所”と、“半導体解析研究所”の2個所が公開された。
半導体シミュレーション研究所とは、実際に半導体を製造する以前にシミュレーションでさまざまなテストを行う場所になる。半導体というのは、マスクと呼ばれるシリコンに焼き付ける回路図原版を作って実際に製造するまで、通常であればテストすることができない。そうしたマスクを作る前段階を、最終的な回路図原版図面を出力するためテープアウトと呼び、1つ大きな作業完了の節目となっている。
マスクを作るコストは膨大で、仮にテープアウト後にマスクを作り直すなどの大きな問題が発生したりすれば、それを修正するには大きなコストがかかる。
そこで、実際にテープアウトする前に大きな問題を潰しておく必要があるので、半導体の設計図を元に、シミュレータ上で半導体相当の機能を作り出し、それを利用して機能に問題があるかどうかテストするのだ。NVIDIAが所有しているのは、Cadence製のシミュレータで、ゲートと呼ばれる半導体の最小単位のレベルで半導体を再現する機能を持っている。
といっても、このシミュレータ上の半導体は、性能で言えば実物に比べるとものすごく遅い状態なので、あくまでテストは、半導体としての機能を確認するためのモノだ。例えば、OSが起動するか、ソフトウェアの互換性が問題ないか、そういったテストをシミュレータ上で行う。そうすることによって、発見されたバグは開発チームへフィードバックされ、半導体の設計図に反映されることになる。そうしたシミュレータのテストが数カ月にわたって行われ、設計図が製造工場のある台湾に送られ、テープアウトして実際のサンプルの製造を行うというプロセスに入る。
実際にサンプルができてきた後は、半導体解析研究所でさまざまな解析が行われる。例えばできあがった半導体で何らかの問題が発生しているときには、X線を3D的に照射して内部の構造を確認したりなどの作業を行う。台湾の製造工場で製造された半導体は、パッケージと呼ばれるケースの中に封入され、封入後は外部からはアクセスができないためだ。このほか、温度を測る装置を利用して、半導体の内部に用意されている温度計との誤差を計測したりなど、さまざまな解析が行われていた。