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グッドスマイルレーシング、2016年のSUPER GT参戦マシン「メルセデスAMG GT3」をシェイクダウン

筑波サーキットを丸ごと借り切った「初音ミクGTプロジェクトファン感謝祭」で初走行

2016年2月19日 開催

 グッドスマイルレーシングは2月19日、茨城県下妻市の筑波サーキットで「初音ミクGTプロジェクトファン感謝祭」を初開催。2016年シーズンにSUPER GTのGT300クラスに参戦する「メルセデスAMG GT3」を公開シェイクダウンを行なった。

 SUPER GTのGT300クラスに「GOODSMILE RACING&TeamUKYO」として参戦しているグッドスマイルレーシングは、メルセデス・ベンツ「Mercedes-AMG GT3」をベースとした2016年シーズンの参戦マシン「グッドスマイル 初音ミク AMG」の車体カラーリングを、2月7日に幕張メッセで開催された「ワンダーフェスティバル2016[冬]」で公開。すでにCar Watchでも記事として紹介している。

 当初の予定では実際の車両が公開されるはずだったが、ドイツからの空輸中に航空会社のミスから途中で飛行機から降ろされてしまうというトラブルが発生したため、ワンダーフェスティバル当日に車両が日本に到着していないという事態になった。そこで2月13日~14日にイオンモール幕張新都心ACTIVEモールで行なわれたTeamUKYOの発表会の場で、改めて「グッドスマイル 初音ミク AMG」が公開され、次いでシェイクダウン走行が「初音ミクGTプロジェクトファン感謝祭」で実施された。

 実はこの2月19日には、岡山国際サーキットでSUPER GTの合同テストが行なわれていたのだが、そちらをパスしてファンミーティングを優先させるところは「ファンと共に走るレーシングチーム」をコンセプトとするグッドスマイルレーシングならではの選択と言える。

Mercedes-AMG GT3を使った「グッドスマイル 初音ミク AMG」。デザインのアイデアは投稿サイト「ピアプロ」で公募し、選ばれた作品をアートディレクターのコヤマシゲト氏が仕上げてマシンに合わせ込んだ

 当日は7時からホームストレート上で「グッドスマイル 初音ミク AMG」のメディア向け撮影時間を設定。マシンデザインのコンセプトは「不死鳥、勝利、炎」がテーマで、ベースとなるデザインアイデアをCGM型コンテンツ投稿サイトの「ピアプロ」で公募。数百点に及ぶ応募の中から選ばれた作品を、チームのアートディレクターであるコヤマシゲト氏が形にした。そして2016年の「レーシングミク」は、アニメーターの米山舞氏がイラストとして完成させた。

2016年の「レーシングミク」を描くのはアニメーターの米山舞氏
6色に色分けされたフロントフェンダー上部のエアアウトレット。タイヤが巻き込む風はタイヤハウス内で車体を持ち上げる力になるので、これを抜くために設けられている
フェンダー後方にもタイヤハウス内から空気を抜くダクトを設置。マフラーは左右サイドから出ている。熱対策のためかスリットが多く用意されている
フロントウィンドウ上部の通称「ハチマキステッカー」。上段にはグッドスマイルカンパニーの代表である安藝氏からのコメントが入っていた
リアウイングはスワンネックタイプのステーで固定。このタイプのステーを使うと、ウイング位置を通常取り付けより後方にできる
リアのタイヤハウス後方に大型ダクトをレイアウト。左側には「うーさーのその日暮らし」に登場する「うーさー」のイラストが貼られている。穴に向かって飛び込んでいるのか、ダクトからの強い風に飛ばされないようしがみついているのか、どちらにも解釈できるポーズだ

「グッドスマイル 初音ミク AMG」のベースになっているMercedes-AMG GT3は「FIA GT3」の規定に合わせて作られたクルマで、自然吸気のV型8気筒6.3リッターエンジンを搭載している。スタイルにはロードカーの「Mercedes-AMG GT」のイメージが残るものの、エアロダイナミクス向上やタイヤサイズ拡大のため、形状や材質などに大幅な改良が施されている。

 朝一番の走行ではエンジンがスタートしないというシェイクダウンらしいトラブルが出てしまった「グッドスマイル 初音ミク AMG」だが、メカニックの手によって無事復旧。スケジュールから遅れはしたが、いよいよコースインとなった。ドライバーは谷口信輝選手が担当。シェイクダウンの走行は5周行なわれたが、その走行フィーリングについてはかなり好印象だったようで、とくにコーナーでの動きのよさについて谷口選手から好意的なコメントが出ていた。レースでの期待値については「BOP(バランス・オブ・パフォーマンス:マシンの性能調整規定)次第だけど期待できる」とのことだった。

ホイールはエンケイ製でタイヤはヨコハマタイヤだ。FIA GT3車両は基本的にパーツ交換が禁止なので、AMG製のブレーキキャリパーをそのまま使っている
AMG GTのロードカーは同じV型8気筒でも4.0リッターのツインターボだが、GT3は自然吸気の6.3リッターを採用。AMGロゴが入るサージタンク部には担当エンジニアの名前が入ったプレートも貼られている
SUPER GTの規定に合わせるための吸気制限装置(エアリストリクター)。左右につながる元のパイプ径と比較して、大幅に絞り込まれているのが分かる
ボンネット裏には前方からの走行風を取り入れるダクトがあるが、ここから取り入れた外気は車内のダクトまでつながり、ドライバーを冷やすために使われる
センターコンソールには多数のスイッチ類が並び、シフトレバーなどは見当たらない。最新のレーシングカーという雰囲気の車内。ドアのインナーパネルやステップ部にもAMGのロゴが入っていた
オープニングでエンジンをスタートさせる演出だったが、エンジン始動ができずピットまで戻されていく「グッドスマイル 初音ミク AMG」。その後、メカニックの対処によって無事エンジンは始動。そのドライブフィーリングに谷口選手は十分満足していたようで「安藝さんありがとう」というコメントが出た

 さて、このイベントでは「グッドスマイル 初音ミク AMG」のシェイクダウンに加えて、ほかにも多くのプログラムが用意されていた。なかでも注目を集めていたのが同乗走行イベントで、これが実に豪華な内容。コースは4種類あり、最も豪華なものは「初音ミク グッドスマイルBMW スープリーム・エクスペリエンス」。このコースでは、過去にSUPER GTに参戦にしていた「初音ミク グッドスマイルBMW」に取り付けた助手席に同乗するものだが、ただ走るだけではなく、レースさながらの進行まで体験できるという内容。

 まずは谷口選手のドライブでピットスタート。そこから2周のレーシングラップを行ない3周目にピットイン。そこでグッドスマイルレーシングのピットクルーによるタイヤ交換作業と片岡龍也選手へのドライバーチェンジが行なわれる。ピットアウトして2周のレーシングラップをさらに体験し、チェッカーフラッグを受けてピットまで戻るという流れで実施される。実際のレースで走行したクルマに乗り、ピット作業まで車内で体感するという経験はきっと刺激的だったに違いない。

 このほかにも、小林可夢偉選手がドライブするレクサス「IS F CCS-R」の助手席に乗るコースやタイヤ交換などがない初音ミク グッドスマイルBMW同乗走行、さらに片山右京監督と谷口選手がドライブするワンメイク仕様のトヨタ「86」の助手席同乗といったコースも用意されていた。ちなみに、すべてのコースはチケット販売の開始直後に完売したという。

2014年の「初音ミク グッドスマイルBMW」。シリーズチャンピオンも獲得したマシンだ。レーシングミクはおぐち氏が描いたもの。ボディのグラフィックス類はこの日のために貼り直されている。
2011年の「初音ミク グッドスマイルBMW」。こちらもシリーズチャンピオンマシンとなっている。レーシングミクは村上ゆいち氏が描いたもの。こちらもボディのグラフィックが貼り直されていた
2009年仕様の808号車「初音ミク Studie GLAD BMW Z4」も展示された。こちらの走行はなく車両展示のみ。このころはまだレーシングミクではなく、通常の初音ミクのイラストを使用していた
FIA-F4に参戦する「グッドスマイル 初音ミク F110」も展示されていた。ドライバーは「グッドスマイル 初音ミク AMG」のメンテナンスガレージ、RSファインの河野氏のご子息である河野駿佑選手
GAZOO Racing 86/BRZ Raceで谷口選手がドライブしてシリーズチャンピオンになった「KTMS 86」。イラストはsaitom氏が描いた2013年仕様のレーシングミク
筑波サーキットを丸ごと使ったファンミーティング。SUPER GTのレーシングチームとしては史上初の試みとなり、歴代ドライバーも参加した。また、メルセデス・ベンツの協力により、AMG-GTロードカーでの同乗試乗も行なわれた
初音ミク グッドスマイルBMWに同乗し、レースさながらのアタック走行。そしてドライバー交代やタイヤ交換などを助手席で体験できる「スープリーム・エクスペリエンス」は、15万円という価格ながらすぐに売り切れたという。そのほか、小林可夢偉選手ドライブのレクサス「IS F CCS-R」への同乗や初音ミク グッドスマイルBMWの通常の同乗走行などもあったので、各レースカーとドライバーはほとんど1日走りっぱなしだった

 イベント最後のプログラムとして、「初音ミク グッドスマイルBMW」の2011年モデルと2014年モデル、グッドスマイルレーシングがサポートするRSファインのFIA-F4マシン、そしてワンメイクレース仕様の86の4台による「ドリームレース」が開催された。

 参加ドライバーは2011年モデルが谷口選手、2014年モデルが片岡選手、F4は河野選手、86は片山監督が務めた。レースに先駆けて予選を行なったが、GTマシンやF4とのタイム差があまりにも大きい86には、ハンディキャップとして5周レースのところ1周減算の4周でのフィニッシュとなった。グリッド順はタイムが遅い車両が前になるリバースグリッド方式を採用したので86がポールポジションになったが、性能差が大きすぎるためすぐに抜かれてしまう。その後はF4も引き離した2台の「初音ミク グッドスマイルBMW」の接近バトルとなるが、各コーナーをテールスライドさせながら本気で攻めていた片山監督の86を5周以内に捉えることができず、優勝は片山監督の86となった。

リバースグリッドを採用し、片山監督の86がポールスタート。しかし、GT300マシンやF4とは性能差が大きすぎてすぐにパスされる。ところが、性能差によるハンディキャップで86のみ4周でのゴールとなり、単独走行になりながらも懸命に攻め続けた片山監督の86が、迫る谷口、片岡両選手の乗るZ4にラップされないままチェッカーを受ける。Z4やF4マシンの走りも迫力だったが、片山監督による86の本気ドライブがこのレースの見どころだったかもしれない

 このほかにも、メルセデス・ベンツの協力によるMercedes-AMG GTロードカーの同乗試乗やステージでのトークイベント、ドライバーの私物なども含めたプレゼント抽選会などが行なわれ、ファンにとって充実した1日になった。フィナーレでは今期の活躍が宣言され、ファンから大きな拍手がチーム全員に贈られた。

フィナーレの終了後、集まったファンのなかをハイタッチしながら退場するメンバー。グッドスマイルレーシングらしい光景と言える

(深田昌之)