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4月23日~24日開催「トライアル世界選手権 日本グランプリ」

棚田などを使った新セクションが登場。10連覇を目指すボウ選手に暗雲か?

2016年4月23日~24日 開催

トライアル世界選手権が4月23日~24日に開催。写真は2015年のもの

 4月23日~24日の2日間、ツインリンクもてぎ(栃木県芳賀郡茂木町)において「2016 FIM トライアル世界選手権 第2戦 ストライダー 日本グランプリ」が開催される。オートバイによるトライアル競技は、高い崖、ガレ場、水流、ぬかるみなどのある困難な山岳コースを足つきせずにクリアしていく派手なアクションと、ライダーと観客との距離の近さが魅力のモータースポーツだ。

 Car Watchでは2014年、2015年とツインリンクもてぎでのトライアル世界選手権の様子をお伝えしてきたが、2016年4月23日~24日に開催予定の同選手権をおよそ1週間後に控え、ここで改めて今年の見どころを紹介しておきたい。

トライアル世界選手権のルールについて

 まずはトライアル競技のルールについてざっくりおさらい。トライアル世界選手権は、1つの開催地で決勝レースが通常2日間連続で行なわれ、1日ごとに独立したレースとして表彰される。大会によっても異なるが、1日に12セクション(コース)前後を2回か3回程度周回するのが基本で、今回の日本グランプリも12セクションを3ラップ、つまり1人のライダーが36セクションを走行することになる。

さまざまな難関を止まらず、足をつかずにクリアしていく

 1つのセクションでは1度に1人のライダーのみが走行し、設定されたスタートからゴールまで、セクションマーカーと呼ばれるカードや、コースを区切るセクションテープで示されたルートに沿って通過する。セクションの中は自然の地形を活かした岩や急坂があったり、丸太などの巨大な障害物、滝のような水流、池なども存在する。それらのセクションの中で足を付いたり、車両を後退させたり、その場で停止させたりすると加点され、計5点になると失敗となる。そのため、ライダーはあらゆるテクニックを駆使してミスなくクリアしていかなければならない。

ところどころにある白いカードのようなものがセクションマーカー

 例えば1回足つきすれば1点加点され、3回までは1点ずつの加点。その後さらに足つきした場合でも加点はされないが、他のペナルティを犯して5点(以上)となった時点で失敗とみなされ、セクションのチャレンジ継続は不可能となって次のセクションに向かわなければならない。また、車両の後退や停止があった場合は即座に5点となり、同様に走行継続不可能になる。逆に一切の加点がなく、0点でクリアできた時は“クリーン”と表現される。最終的に、その日に全セクションを規定周回走行し終えた時点で、最も加点の少なかったライダーが勝者となるわけだ。

0点であれば“クリーン”となる

 なお、2013年に「ノンストップルール」というセクション内での車両の一時停止が事実上禁止(停止すると即5点で失敗)となる比較的大きなルール改正のあったトライアル世界選手権だが、その後は大きな変更はなく、2016年もセクション走行時における目立ったルール改正はない。ただし、小さな変更点としてカテゴリー名称が一新されている。従来のトップカテゴリーだった「World Pro」クラスは「TrialGP」に、「World Cup」クラスは「Trial2」に、「125cc Cup」は「Trial125」にそれぞれ呼称が変更となった。

 ルール改正と関係ないところでは、休眠状態だったFacebook公式ページが2016年から本格的に活用されるようになり、スマートフォンアプリ「FIM Trial」のiOS版Android版を通じて最新のレースリザルトや関連ニュースなどを配信する動きも始まっている。トライアルのファン獲得に向け、運営側としてはコミュニケーション手段の拡充を図っているようだ。

「FIM Trial」アプリ。レースリザルトなどを素早く確認できる

5つの新セクションを森の中に設定。観戦箇所を絞った方がいい?

 日本グランプリの12あるセクションのうち、5つが新たなエリアに設定されるのも楽しみの1つ。昨年までは主にツインリンクもてぎのロードコース側の崖を中心にセクションが設けられていたところ、今年はセクション7から11までが反対側の森の奥の方へ移動している。特に最も奥まったところにあるセクション9と10は、棚田から観戦できるコース設計となっている模様。日本らしさも感じさせるこれまでにない地形で、ぜひ観戦しておきたいポイントだ。

日本グランプリのセクションマップ(ツインリンクもてぎのWebページから)

 ただし、観戦時には注意しておきたい点がある。それは、全てのセクションを見て回ろうとすると移動距離が大変長くなってしまうこと。レース時間は1日に正味5~6時間はあり、注目している選手について回るような形で移動しながら観戦することも可能だが、歩行路は土やウッドチップで整備されているが、急な坂道もある山の中を歩くことになるため、かなりの体力が必要になる。ある程度固まって配置されているセクション1から6までと、セクション7から12までの大きく2つのエリアになっているので、観戦ポイントを絞るのも手かもしれない。

ボウ選手負傷で10連覇に黄信号。藤波選手は上位進出なるか

 注目すべきライダーについても解説しておきたい。トライアルにおいて、近年神がかり的な強さを発揮しているのが、スペイン人ライダーのトニー・ボウ選手(Repsol Honda Team)。2015年に世界選手権9連覇を達成し、2016年の今年は10連覇への期待がかかる。ところが、今シーズン開幕直前に右肩の腱を“完全に壊す”アクシデントに見舞われ、連覇に暗雲が立ちこめている。4月9日~10日にスペインのカル・ロザールで行なわれた第1戦では、初日が2位、2日目が1位と、結果から見ればほっとひと安心といったところではあるが、今後の怪我の回復状況いかんによっては2016年シーズンは苦戦を強いられる可能性もあるだろう。

10連覇がかかるトニー・ボウ選手

 日本人としては、世界選手権に唯一フル参戦する藤波貴久選手(Repsol Honda Team)にも注目したいところ。2015年は足の怪我の影響もあってか本来の実力を発揮できない場面もあり、総合5位。これで4年連続の総合5位ということになったわけだが、2016年はその怪我の状況も改善してきていると伝わっており、ライバルでありチームメイトでもあるボウ選手の独走を阻止する勢いをぜひとも見せてほしいところ。第1戦では初日7位、2日目5位と振るわなかったが、母国グランプリでの挽回に期待したい。

フジガスこと藤波貴久選手

 昨年はボウ選手に続く総合2位で、2016年第1戦では3位、2位と連続表彰台を獲得したアダム・ラガ選手(TRS Factory)がいかにしてボウ選手と戦うかも見どころ。また、第1戦初日でボウ選手を抑えトップを奪ったアルベルト・カベスタニー選手(Sherco Factory)も気になる存在だ。デビュー20年目のベテランライダーである同選手は、近年じわじわと総合順位を上げ、2014年は3位、2015年は4位という結果を残しており、実力は十分。第1戦2日目で3位を獲得した英国人ライダーのジェームス・ダビル選手(Vertigo Factory)ら他のライダーとともに、ボウ選手の牙城を崩せるかどうかに注目が集まる。

アダム・ラガ選手
アルベルト・カベスタニー選手

 今回は日本グランプリということもあり、全日本トライアル選手権で活躍している多数の日本人ライダーもワイルドカード参戦する。TrialGPクラスには小川友幸選手、黒山健一選手、野崎史高選手、小川毅士選手、野本佳章選手、斎藤晶夫選手、砂田真彦選手、吉良祐哉選手、柴田暁選手の9名がエントリーしており、Trial2、Trial125の各クラスのエントリーリストにも、合わせて14名の日本人ライダーが名を連ねている。特に3月に行なわれた全日本選手権の第1戦、僅差で表彰台に立った小川友幸選手、黒山選手、野崎選手の世界を相手にした走りをぜひ見ておきたいところ。

小川友幸選手
黒山健一選手
野崎史高選手

レース以外にもイベントの多いもてぎ。お祭り気分で楽しみたい

 日本グランプリの会場となるツインリンクもてぎでは、レースだけでなく会期中にさまざまなイベントが予定されている。まず初日23日には、レース終了後の16時以降、準備が整い次第ライダーによるサイン会が実施される。また、23~24日の両日ともに、8時30分~9時30分と16時~17時まで、ライダーやマシンを間近で見られるピットウォークもオープン(大人1500円)。さらに現役日本人トップライダーの藤波貴久選手によるトークライブがレース終了後となる24日17時30分からスタートする。

 子供用のランニングバイク「ストライダー」が日本グランプリを公式スポンサードしていることもあり、会場内では無料でストライダーを借りて走らせることができる子供向けのエリアが設けられる。同じく子供向けにクライミングなどのアトラクションを楽しめる「森のアドベンチャー広場」が設置され、レーシングカートや電動モトレーサーにチャレンジできる常設のモビパークでも遊べる。

2015年のストライダー試乗エリアの様子

 それ以外にも多数のトークショー、展示、観戦ツアーが実施され、グッズ販売はもちろん、藤波選手監修の「フジガスカツカレーバーガー」などの限定メニューをはじめとしたフードも充実している。観戦券は2日間通しの前売りで4200円から(中学生以下は無料、高校生以上の学生は2100円)とレースイベントとしてはリーズナブルな価格帯。1人ではもちろん、友達同士や家族でも楽しめるイベントだが、例年天候に恵まれ日差しが強い時間帯が多いため、熱中症に注意しつつ、万が一の悪天候にも備えて雨合羽なども用意して観戦してほしい。

【お詫びと訂正】記事初出時、ルール紹介の部分に間違えがありました。お詫びして訂正させていただきます。

(日沼諭史)