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トライアルトップライダーらが記者会見。ホンダ青山本社ビル前でデモ走行

世界選手権日本グランプリは4月26日から2日間の日程で開催

ホンダ青山本社ビル前でのデモ走行
2014年4月23日開催

トライアル世界選手権に参戦しているトニー・ボウ選手と藤波貴久選手

 本田技研工業は4月23日、オートバイ競技のトライアル世界選手権に参戦しているRepsol Honda Team所属のワークスライダー、藤波貴久選手とトニー・ボウ選手らによる公開記者会見を本社ショールーム「Honda ウエルカムプラザ青山」で開催した。世界選手権第2戦となる日本グランプリを前に、それぞれがレースに向けての決意を語った。

 また、記者会見後には、会場となったホンダ青山本社ビル前にて、トライアルバイクのデモ走行も行われた。全日本トライアル選手権にレギュラー参戦し、世界選手権第2戦にスポット参戦する柴田暁選手による妙技が披露され、思わず足を止めて見入る通行人も多く見られた。

 「2014 FIM トライアル世界選手権 第2戦 STIHL 日本グランプリ」は、4月26日と27日の2日間にわたり、ツインリンクもてぎ内のハローウッズにて開催される。

トニー・ボウ選手が乗るモンテッサ COTA 4RT。車両重量は70kg以下

2013年の大怪我から復活した藤波選手

 藤波選手は、1996年から世界選手権に挑んでいるトライアルの日本人トップライダーだ。“フジガス”の愛称でも知られ、2004年には同世界選手権で年間チャンピオンにも輝いた。19年目となる2014年はRepsol Honda Teamのワークスライダーとして参戦している。

 一方のトニー・ボウ選手は、2003年からトライアル世界選手権に参戦し、2007年に初めて年間チャンピオンを獲得して以来、圧倒的な強さで7連覇を達成しているスペイン人ライダー。2014年は藤波選手とともにRepsol Honda Teamに所属し、8連覇を目指す。

現在ランキング2位の藤波貴久選手
7連覇中で今年8連覇に挑むトニー・ボウ選手

 4月12日、13日にオーストラリアで行われた第1戦では、1日目に藤波選手が、2日目にトニー・ボウ選手がそれぞれ優勝を果たした。年間ポイントランキングでも1位ボウ選手、2位藤波選手と続き、全8戦で争われるチャンピオンシップでRepsol Honda Teamは今のところベストポジションにいると言える。

 第1戦1日目の優勝について「僕もちょっとびっくりした」という藤波選手。2013年9月のトレーニング中に負った前十字靱帯断裂という大怪我を乗り越えての勝利ということもあり、「60%くらいしか回復していないが、それでも優勝できたというのは自分にとっても力強い」と手応えを口にした。負傷後は2カ月もの間まったくバイクに乗れなかったものの、その間に上半身を中心に肉体改造に取り組んだことも好結果につながったのでは、と話した。

 藤波選手はこれまでもワークスチームと同じマシンで戦っていたが、2014年からはワークスライダーになったことで、「勝たなければいけないという重圧を一層感じている」と言いながらも、「まだ開幕戦しか走っていないのでどうなるかは分からないが、全力、全開で走っていきたい」と力強く語った。

 ボウ選手は第1戦について、「1日目2位に終わったのは難しい結果になったが、次の日に優勝でき、1年のスタートとしては意義の大きいレースになったと思う」と振り返った。また、8連覇がかかる2014年のレースに向けては、「最初のタイトル獲得より2度目の方が難しかったし、8度目はそれまでよりもっと難しくなる。他のライダーも強く、ルール変更があったり、レースごとに異なるセクションにも難しさはあるが、ファンやチームのために全力を尽くしたい」と話した。

トライアルは一番近くで見られるモータースポーツ

 ボウ選手が触れたように、トライアルでは、2013年シーズンから「ノンストップルール」という新たなルールが加わった。これは、セクション(コース)内においてバイクの動きを止めると大きな加点(ミス)となり、そのセクションについては事実上の棄権扱いになるというもの。止まっているか止まっていないかの判断基準が非常にシビアなことから、ライダーたちの間で混乱が生じているとも言われている。

 このノンストップルールについて藤波選手は、「(コース内で減点の有無をチェックしている)オブザーバーが国によって違い、セクションによっても違うので、止まったか止まらなかったかでもめてしまうことはある」と打ち明ける。ただ、レース中にバイクが完全に止まることがないため、「流れるようなきれいな走りができているのかなとは思う」と前向きに捉えているようだ。また、「オブザーバー1人1人の特徴を早くつかまないと」という発想の転換も口にした。ボウ選手は、「同じセクションでも、オブザーバーによっては止まったと判断する人もいるし、止まっていないと言う人もいる」ことから、「僕にとってもすごく難しいルール」だと語った。

全日本トライアルの柴田暁選手は、世界選手権第2戦のみスポット参戦する

 その後、全日本トライアル選手権参戦中の柴田選手も記者会見に加わった。スポット参戦する世界選手権について柴田選手は、「日本のライダーとはずっと一緒に走っているが、(世界選手権では)動画でしか見たことない方々ばかりが走る」ため、「勉強という意味でもスポット参戦しようと決めた」という。2人のワークスライダーに対しては、「トニーはワザのキレ、テクニックが他の人と違うと思い、以前から注目していたライダー。藤波さんはトライアルを始める前からトップを走っていた人。それを見てトライアルを始めたので、今横にいるだけでも緊張するくらいあこがれの選手」と興奮気味に話した。

 トライアルの魅力は、と聞かれた藤波選手は、「ほかのモータースポーツと違って一番近くで見られる。フルフェイスヘルメットではなく顔が見えるので、失敗した時にライダーの表情が見られたりして、お客さんと一体になれるのがトライアルの魅力。声援もすぐ近くで感じられるし、悔しがればお客さんも悔しがっているのが分かる。みんながチームとなって走っている感覚がある」と話し、柴田選手は「ライディングにもそのライダーの性格が表れているのが、すぐ間近で確認できる。初めての方でもいろんな楽しみがあるので、ぜひ見に来てほしい」と話した。

3人が並んで会場からの質問に答えた

 最後に、同じRepsol Honda Teamに所属するMotoGPトップライダー、マルク・マルケス選手とダニ・ペドロサ選手とともに、4人でトライアルの練習をした際の映像(http://www.crash.net/motogp/news/199687/1/day-in-the-dirt-for-marquez-pedrosa-video.html)が1月に公開されたことについて、会場から質問が飛んだ。

 藤波選手によれば、マルケス選手がトライアルにチャレンジしたいと話していたことをきっかけに4人が集まったと話し、「マルケスはあの日初めてトライアルバイクに乗ったが、彼のMotoGPでのライディングを見ても分かるとおり、勢いがすごくあるので、僕らが危ないといって止めないとならないくらい」だったとのこと。トライアルでいえばすでに国内A級クラスだとし、4年ほど前からトライアルをトレーニングに取り入れているペドロサ選手と同等の高いレベルで、「ペドロサはもう4年やっているのにと、ムッとしていた」という裏話も披露した。

 ボウ選手も、その日の練習について「ファンタスティックな1日だった」と言い、「マルケスはトライアルが初めてで、難しいコンディションで学んでいたが、すごく速く、すばらしいライディングをしていた。自分にとってもいい練習になったし、すばらしい経験だった」と笑顔を見せた。

ホンダ本社ビル前で行われたデモ走行の様子

(日沼諭史)