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GM、キャデラック新型「CT6」を日本初公開
“世界のラグジュアリーブランドの象徴”に返り咲くためのクルマ
(2016/4/28 11:30)
- 2016年9月発売
- 998万円
ゼネラルモーターズ・ジャパンは4月26日、キャデラックブランドのフラグシップモデルとなる新型「CT6」を発表。ステアリング位置は左のみで、価格は998万円。9月の発売を予定している。
同日、この新型CT6発表会を千葉県浦安市にあるシェラトン・グランデ・トーキョウベイ・ホテルで開催した。CT6は2015年3月に米国・ニューヨークで世界初公開されているが、日本での正式な公開は今回が初めてとなる。
モデル | エンジン | 変速機 | 駆動方式 | 価格 |
---|---|---|---|---|
CT6 セダン プラチナム | V型6気筒DOHC 3.6リッター直噴 | 8速AT | 4WD | 9,980,000円 |
CT6はキャデラックのフラグシップモデルと位置づけられているフルサイズ・プレステージセダン。キャデラックでは2020年までに8車種のニューモデルを市場に投入する予定で、CT6はその先駆けとなるモデル。120億ドルを投資した商品開発の最初の成果と言われている。搭載するエンジンは新開発のV型6気筒DOHC 3.6リッター。最高出力は250kW(340PS)/6900rpm、最大トルクは386Nm(39.4kgm)/5300rpmとなっている。トランスミッションは8速ATを搭載。ボディは13種類の異なる素材を組み込んだアルミ合金アーキテクチャで、フルサイズ・プレステージセダンながら1659kg(最軽量モデル。日本導入のプラチナムは1920kg)という軽量さと高い剛性を両立させている。
また、自動ブレーキやレーンキープアシスト、歩行者検知など最先端の安全装備も充実していて、リアの状態をカメラで撮影しそれをルームミラーへ映し出すことで、従来より300%後方視界を向上させる「リアカメラミラー」も装備している。静粛性が非常に高いと言われる室内の装備も、飛行機のファーストクラスをイメージした高級感のあるシートやボーズと共同開発した世界最高級のカーオーディオシステムを搭載して、ラグジュアリーブランドらしい快適さを誇っている。
発表会はゼネラルモーターズ・ジャパン 代表取締役の石井澄人氏の挨拶から始まった。続いてグローバル・キャデラックのチーフ・マーケティング・オフィサーであるウーベ・エリングハウス氏が紹介された。このエリングハウス氏はキャデラックのワールドワイドのブランド戦略とマーケティング部門を統括しているという。
そのエリングハウス氏から「ラグジュアリーブランドはトップレンジから創造していくもので、そのためにもダイナミックなフラグシップモデルは欠かせないものだ」と語られた。そしてラグジュアリーカーの購買層もここ数年で世代交代が行なわれているので、若い世代を取り込んでいきたいという想いを持っているとも語られた。ちなみにアメリカで1980年から2000年に掛けて生まれた世代では、キャデラックが市場を牽引していた時代を覚えていないという。この世代になると欧州車に乗っていた家庭も多いのがその理由だということだ。それだけに、キャデラックという歴史あるブランドを再び世界のラグジュアリーブランドの象徴にするため、この世代に強くアピールしていくことが重要だと語られた。
日本においてもキャデラックは101年の歴史を持っているだけにファンが多く存在し、なおかつアジアでは2番目に大きいラグジュアリーカーマーケットであるということから、日本においてもラグジュアリーブランドの象徴になりたいと思っているとのこと。
ラグジュアリーセグメントにはいくつかのブランドがあるが、それらに対してエリングハウス氏は「ただテクノロジーがあるだけではなく、創意工夫が生み出したクルマという部分がキャデラックの特徴です。このキャデラックはアメリカンブランドであるからには、アメリカの精神を体現しなければいけません。アメリカが誇れる1つの性格に、未来のほうが今よりいいものがあると考えることができる楽観的な思考があります。キャデラックはそういったアメリカらしさを持ちつつ、ユーザーの世代が変わっていくなかで、私どものクルマも変わっていかなけばいけない。そのためクルマ作りの各分野で再考を重ね、情熱を持ってブランド価値を高めていったのです」
「また、歴史のあるキャデラックだけにルート66などの古いアメリカのイメージとのつながりもありますが、新しい世代のキャデラックは違います。シリコンバレーやニューヨークのダウンタウンなど、クールでモダンなアメリカこそが“キャデラックの世界”です。それだけに、ラグジュアリーのメインストリームであるドイツ車とは違う、情熱的なクルマで自己表現をしたい方にピッタリだと思います」と語った。
このようにまずは新しいキャデラックの世界観について説明したあと、いよいよ新型CT6の紹介だ。特徴についてはアジリティ(高い俊敏性)とコネクト(クルマとのつながり)、そしてインダルジェンス(贅を尽くす)に分けて説明された。
最初はアジリティ。フルサイズ・プレステージセダンであるCT6のホワイトボディは軽量で高剛性のボディ構造を持っている。これはGMが行っているマルチマテリアル戦略に則って、アルミ合金に加えて13種類の異なる素材を組み込んだアルミ合金アーキテクチャによって実現している。強度とパフォーマンス、効率面では業界で最も先進的なボディ構造としている。また、その結果としてフルサイズ・プレステージセダンながら、最軽量モデルでは1659kgとミドルクラスセダン同等にまで軽くなっている。それだけに、室内スペースの広さと走りの楽しさが両立できるクルマとなっている。
さらに新しいステアリングシステムである「アクティブリアステア」も搭載。どのタイヤも操舵に関わることで敏捷性がより向上し、まるでミドルクラスのクルマを運転しているような軽快感も味わうことができるという。駆動方式はアクティブ・オンデマンドAWDを採用していて、あらゆるコンディションでハンドリングとスタビリティを確保する。
エンジンも新たに開発したV型6気筒 3.6リッターを搭載。これはGMのDOHC V6エンジンファミリーの第4世代にあたるもので、負荷の軽い状態では6気筒のうち2気筒の動作を一時的に休止して燃費を向上させる「アクティブ・フューエル・マネージメント」や、オートスタート&ストップ機能なども搭載。これらによって従来型エンジンと比べて9%燃費が向上しているとのこと。パフォーマンス面についても直噴システムや可変バルブタイミングの技術を進化させることで、最高出力は250kW(340PS)/6900rpm、最大トルクは386Nm(39.4kgm)/5300rpmとなっている。このエンジンは登場して間もないにも関わらず、アメリカの専門誌で2016年のベストエンジンに選出されているとのことだ。
次にコネクトについて。スマートフォンが一般化した現代では、クルマのなかでも同じ環境を提供する重要性を理解するという観点から、CT6は「Apple CarPlay」に対応。自分のiPhoneをクルマにつなぐことで、電話やメッセージの送受信、音楽再生、マップなどの機能を「CUE(キャデラックユーザーエクスペリエンス)」というキャデラック独自のインフォテインメントシステムの画面で操作できるようになる。画面サイズは10.2インチで、アイコンも大きいサイズになっているので確認しやすい。なお、Siriの音声コントロール機能もあるので、運転中でもより安全な操作を可能としている。
搭載している先進安全機能はレーンキープアシスト、フォワードコリジョンアラート、歩行者検知、自動ブレーキ、サイドブラインドゾーンアラート、リアクロストラフィックアラート、アダプティブクルーズコントロール、セーフティアラートシートと充実。さらにリアカメラミラーという機能も搭載している。このリアカメラミラーとはリアに取り付けたカメラの映像をルームミラーに映し出すことで、障害物のない後方の風景をルームミラーで見られるというもの。これによって後方視界は通常のミラーより300%向上し、死角を解消する効果がある。さらに次世代のナイトビジョンシステムも搭載。夜間走行時には車両前方にいる人を感知し、メーター内のドライバーインフォメーションセンターに表示できる。
最後にインダルジェンスだが、前出のボディ構造やエンジンの作り、そして独自のアクティブノイズキャンセレーションの技術を使うことで車内を非常に静粛な空間とすることを実現。これについてアメリカの著名なカージャーナリストから「今まで乗ったクルマのなかで最も静かなクルマの1つである」という評価を受けたということだ。そしてその静かな空間を生かして、世界最高というカーオーディオシステムをボーズと開発。なんと34個ものスピーカーを車内各部に組み込んでいる。
しかも、スピーカーは数が多いだけでなく、各スピーカーの向きや角度などがすべて新型CT6のために設計されているので、どの席でもコンサートの最前列に座っているような定位を作り出している。低音域についてもウーハー、専用アンプがセットになったエンクロージャーを運転席と助手席の下に配置。1つのユニットに2つのウーハーが仕込まれるが、これらを配置することで低音を十分に響かせながら共振などはきれいに消されているので、すべての音量で快適な音の再生が可能だ。
シートについても飛行機のファーストクラスを思わせる快適なもので、マッサージ機能も内蔵。リアシートも83mmのスライド量とランバーサポート、マッサージ機能、ベンチレーション&ヒーター機能などを備えている。そして前席背面にはリアシート用の格納式10インチモニターと外部接続端子でリアシートのエンターテイメントシステムを構築している。空調に関しても全席が快適に過ごせるクワッドゾーン空調システムを採用する。
エリングハウス氏の説明に続いて、ゼネラルモーターズ・ジャパン 代表取締役の石井澄人氏から日本市場におけるCT6の展開について説明された。まずはキャデラックの日本での印象についての話題が取り上げられた。日本では「年々よくなって魅力が増してきたという人もいれば、一方では大きすぎる、燃費がわるい、サスペンションが柔らかすぎるなどネガティブな印象を持つ人もいるのではないでしょうか。もしくは、まったくイメージがわかないと言う人もいるでしょう。そこで私がみなさまにキャデラックについて説明するとなれば、テクノロジーの先端に立ち、運転のしやすさと快適性を追求してきたクルマ作りを110年以上続けてきたブランドと表現します」とのこと。今ではあたりまえになっているATやパワステ、クルーズコントロール、オートエアコン、そしてセルスターターという装備をいちはやく投入したのがキャデラックなのだ。これらの装備によって、それまで使い勝手の面で難しかった「女性がクルマの運転をすること」の垣根を取り払ったのがキャデラックなのだ。日本でも101年前から高級輸入車の地位を確立し、1950年代には昭和天皇の御料車としてキャデラックの「75リムジン」が使用された。
そして現在は、セダンの「CTS」、セダン&クーペの「ATS」に加え、キャデラックレーシングの血統を受け継ぐ「CTS-V」「ATS-V」がある。注目度が高いSUVセグメントでも「エスカレード」「SRX クロスオーバー スポーツエディション」がある。販売網に関してはキャデラックの正規ディーラーは全国17店舗となっている。
そんなCT6の発売時期は2016年の9月を予定しているとのこと。発売までにはこの日のプレス向け発表会を含め、6月4日に東京オペラシティコンサートホールで「キャデラックプレゼンツ アメリカン新世界クラシックの旅」と称したコンサートを開催し、そこで一般向けに初公開される。7月からはキャンペーンを行なって、9月に正規ディーラー統一セールスフェアを開催するスケジュールになっている。