インプレッション

ヤマハ「TMAX530」2017年モデル

「どこまでも速く走れそう」なスポーツスクーター

TMAX530 DX(XP530DA):135万円(4月7日発売)

TMAX530 SX(XP530A):124万2000円(4月7日発売)

TMAX530 SX

 ヤマハ発動機は、スポーツコミューターと呼称する大排気量スクーター「TMAX530」2017年モデルを4月7日より発売した。同社が静岡県・修善寺の日本サイクルスポーツセンターで開催した試乗会で、このTMAX530を試すことができたので、インプレッションをお届けしよう。

カラーリングは「DX」がマットブルーとダークグレイ、「SX」がマットシルバーとダークグレイ

電子制御、軽量・ロング化でさらなる運動性能を獲得

 2001年に日本市場に登場した「TMAX」は、スクーターとしては大排気量のエンジンを搭載するモデル。積載性が重視されがちなスクーターにあって、それまでにない高い運動性能を誇ったことから、世界的に人気を博しロングセラーとなっている。

SXのダークグレイ
前後から
DXのマットブルー
前後から

 その最新モデルとなるTMAX530は直列2気筒530ccエンジンを搭載。2017年モデルのTMAX530では、同社スクーターとして初めて電子制御スロットル「YCC-T」を採用。今回同時に試乗したネイキッドモデル「MT-10」などと同様にTCS(トラクション・コントロール・システム)や出力特性を変える走行モード「D-MODE」といった電子制御技術も装備した。メーターパネルには、速度・回転数を表す2連のアナログメーターに、時刻、走行モード、残り燃料や水温などを表示する液晶画面が組み合わされる。

ハンドル周り
立体的でサイバー感もあるメーターパネル

 装備を充実させる一方で、新設計のアルミフレーム、幅を縮小したドライブベルト、4.50インチ幅に変えたリアホイールなどによって軽量化も果たし、リアアームの40mmロング化と新作リンク式リアサスペンションともあいまって、さらなる運動性能を獲得したとしている。

フロントは4 POTラジアルマウントブレーキキャリパー
ベルトは25mm幅に縮小された
リアアームは40mmロングに
リンク式リアサスペンション

 スタンダードな「SX」と、プレミアムな装備を施した「DX」の2モデルを展開。DXでは電動調整式スクリーン、グリップヒーター、シートヒーター、クルーズコントロールなど、主にロングツーリングを快適にする工夫がいくつも用意されている。

ヒラヒラ走れ、コーナーも速い、所有感を満たす1台

視点はやや高めで、軽々とライディングできる

 実際に試乗してみると「どこまでも速く走れそう」というのがTMAX530の感想だ。一般的なビッグスクーターよりも高めの800mmというシート高で、視点は高く、操舵時のヒラヒラ感も強い。シートはコシが強めで、それでもスクーターらしい厚みはある。その分路面から伝わってくる情報は得にくいところもあるけれど、きっちり前後への荷重移動を意識しながら加減速、コーナリングしていけるコントロール性は、他のスクーターと違いスポーツバイクのそれと同じだと言える。

 好きなタイミングで変速できる一般的なギア付きバイクとは、アクセルレスポンスの面ではやはり異なるところもあり、エンジン回転数(音)と加速感が完全に同期しないCVTならではのアクセルの付きの鈍さ(のように感じる部分)はある。けれど、その分コーナリング中の速度維持が圧倒的にしやすく、バンク角も十分にあり、自分でも驚くほどのコーナリングスピードで駆け抜けていける。おそらく、今回の試乗会に用意されたMT-10とTMAX530のどちらも初めて乗る人であれば、TMAX530の方が断然ハイペースでコーナーをクリアしていけるに違いない。

 コーナリングのしやすさは、扱いやすいエンジンやCVTの特性だけでなく、新しくなったリアアームやサスペンションによるところも少なからずあるだろう。バンク中の安定感に加え、必要なだけ向き変えできる回頭性の高さもあり、タイトなコーナーでも自信をもって曲がっていける。

ワインディングのコーナーも、タイトなターンも、楽にこなせる

 DXの電動調整式スクリーンは、身長177cmの筆者の場合、最大高さにするとほぼ完全に正面からの走行風を感じなくなる。高速道路を長時間走り続けるなら高く、下道で風を感じながらトコトコ流したいなら低く、というように、シチュエーションに合わせてスイッチ1つで簡単に調整できるのは便利だ。

 近未来な雰囲気のあるメーターパネルや、高級セダンをイメージしたという内装のシボ加工、よりエッジの効いたシャープなスタイリングに変わった外観は、所有感を満たすうれしい要素。シート下収納にジェット型ヘルメットを2個格納でき、ユーティリティ性能にも死角はない。スクーターとして使いたい時、ツーリングに行きたい時、あるいは元気にワインディングを駆け抜けたい時……などなど、あらゆるシーンで存分に実力を引き出して走れそうなマシンだ。

電動調整式スクリーン。最も下げたところ
最大の高さまで上げたところ
シートのクオリティは高く、クッション性、下半身のホールド性も良い
内装のシボ加工も高級感を演出する
フットレスト
リモコンとして使えるスマートキーとなっている
シート下はジェット型ヘルメット2個を収納できる容量

日沼諭史

日沼諭史 1977年北海道生まれ。Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。IT、モバイル、オーディオ・ビジュアル分野のほか、四輪・二輪や旅行などさまざまなジャンルで活動中。Footprint Technologies株式会社代表取締役。著書に「できるGoPro スタート→活用完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)など。2009年から参戦したオートバイジムカーナでは2年目にA級昇格し、2012年にSB級(ビッグバイククラス)チャンピオンを獲得。所有車両はマツダCX-3とスズキ隼。

Photo:政木 桂