インプレッション

ホンダ「オデッセイ ハイブリッド」「オデッセイ(一部改良モデル)」

 待ち望んでいた人もかなりいるのではないかと思う。「オデッセイ」にハイブリッドモデルが追加発売され、同時にガソリンモデルにも一部改良が施された。2月5日の発売からの1カ月で販売計画の4.5倍となる9000台以上の受注があり、そのうち72%がハイブリッドモデルという好調ぶり。一部改良されたガソリンモデルはどう変わったのか? そして本命のハイブリッドモデルはどうなのかが今回の試乗テーマだ。

 まずはガソリンモデルの一部改良内容からチェックしていこう。こちらには運転席と助手席の間に大型のアームレストが新設されていて、これが走行中になかなかコンフォート感が増した感じ。ミニバンって、なんとなく肘をついてゆったりと運転するというイメージ(安全運転ではないので決してしないのですが)があって、ちょうどそんな雰囲気で心地よい。ただし、後席への移動ではアームレストを跳ね上げれば問題ないものの、以前ほどウォークスルーがスムーズではなくなっている。

 そして、安全機能の「ホンダセンシング」は適用が拡大され、ガソリンモデルにも標準装備するグレードが新設された。ホンダセンシングには新たに「歩行者事故低減ステアリング」が設定されたが、これはハイブリッドモデルの専用装備でガソリン車には採用されていない。歩行者事故低減ステアリングは、10〜40km/hで走行中に路側帯の歩行者を認識して、警告及び衝突回避のアシストを行なう機能。先日の大阪で起きた事故車両にこの機能が付いていれば、被害は最小限に留められたかもしれない。

「アブソルート EX Honda SENSING」。車両価格は345万円で、試乗車は4万3200円高の「プレミアムスパイスパープル・パール」「Advancedパッケージ(19万円高)」を装備して368万3200円
グレード名にEXと入るモデルでは、運転席に角度調節式の大型アームレストを標準装備
「アダプティブクルーズコントロール」「衝突軽減ブレーキ(CMBS)」「LKAS(車線維持支援システム)」などをセットにした安全運転支援システム「ホンダセンシング」の適用を拡大。「歩行者事故低減ステアリング」を採用する最新タイプとなっている

 では、ガソリンモデルのアブソルートとGグレードから試乗しよう。デビュー当時のアブソルート(ザックス製振幅感応型ダンパーを採用)は非常に引き締まったサスペンションのため、コーナーリング性能はこのサイズのミニバンとしてはスバ抜けたハンドリングだったけれども、2列目シート以降の乗り心地はかなりハードなものだった。そこで2014年に改良が行なわれ、今回はサスペンションはそのままに安全性能と室内装備(運転席大型アームレストとプラズマクラスターエアコン)の充実が図られている。

 筆者は初代と2代目のオデッセイに乗り継いだ経験があるために、3代目からの“低床オデッセイ”には馴染めず買い替えを諦めていた。しかし、だからといって本来の“背高オデッセイ”の基本に戻り、過去に切望したスライドドアまで装備して現れた5代目にぞっこんというわけにもいかなかった。ハンドリングは素晴らしいが乗り心地がきつかったからだ。それが、2014年に行なわれた改良でウソのようによくなっている。連続した凸凹路面を通過する際の上下動もかなり抑えられた。

 しかし、それでも飛びつきたいとは思わなかった。理由はエンジンの低速トルク。7人、8人乗車でこの低速トルクは厳しいのではないだろうか。多くて2人、3人乗車まではよくても、家族が多かったり友達が多いという人にはちょっとフラストレーションが溜まるだろう。エンジンの非力をCVTがよくカバーしてはいるものの、やはりそれにも限界がある。そこで私が切望したのは、かねてから噂のあった“ハイブリッド版オデッセイ”の出生を待つということだった。

 とはいうものの、ガソリンモデルのオデッセイを完全否定しているわけではない。それは最後に説明します。

アブソルートのFFモデルに搭載するK24W型の直列4気筒DOHC 2.4リッター直噴エンジンは、最高出力140kW(190PS)/6400rpm、最大トルク237Nm(24.2kgm)/4000rpmを発生。各ガソリンモデルのエンジンスペックは発売当初からとくに変更されていない

 ここからは、お待ちいただいたオデッセイ ハイブリッドについて。ご存知のように、「アコード ハイブリッド」の2モーターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-MMD」が移植されたわけである。プラットフォームのベースがアコードと共通なのですんなりとシステムが載るだろうと予想していたのだが、そのままだと3列目シートを収納したりするリアのラゲッジスペースがなくなってしまう。

オデッセイ ハイブリッドのベースグレードとなる「ハイブリッド」。車両価格は356万円で、試乗車は「ホンダセンシング(10万8000円高)」と右側のパワースライドドアなどを装備して374万3600円
16×6 1/2Jのアルミホイールを標準装備。タイヤサイズは215/60 R16
インパネデザインは従来モデルから大きな変更点はないが、メーターパネルは専用デザインとなる。本革巻ステアリングはG以外のグレードに標準装備
メーター中央にハイブリッドシステムの稼働状態や平均燃費、航続可能距離などを表示できるマルチインフォメーションディスプレイを設定

 そこで、駆動用のリチウムイオンバッテリー(容量1.4kWh)と制御用ECUなどのIPU(インテリジェントパワーユニット)をコンパクト化してフロントシートの床下に搭載。さらに発電用と駆動用の2つのモーターの電流、電圧をコントロールするPCU(パワーコントロールユニット)も小型化して、エンジンの隣にあるトランスミッションケース上に設置。つまり、追加要素はエンジンルームからフロントシートまでのスペースに収められたので、リアのラゲッジスペースや2列目、3列目シートなどはガソリンモデルと変わらないスペースが確保されているのだ。車内ではわずかに運転席床下が盛り上がっているのが分かる程度。このスペースも、もともと輸出仕様の場合にスペアタイヤが収まる場所なので、大幅なプラットフォームの変更もなく搭載できたのだという。

ハイブリッドモデルに搭載されるLFA型の直列4気筒DOHC 2.0リッターエンジンは最高出力107kW(145PS)/6200rpm、最大トルク175Nm(17.8kgm)/4000rpmを発生。駆動用に使われるH4型モーターは最高出力135kW(184PS)/5000-6000rpm、最大トルク315Nm(32.1kgm)/0-2000rpmを発生する
シートのラインアップも踏襲しており、セカンドシートが「プレミアムクレードルシート」となる7人乗りと、ベンチタイプの「6:4分割スライドシート」となる8人乗りを設定
リチウムイオンバッテリーと制御用ECUなどをユニット化したIPU(インテリジェントパワーユニット)をフロントシート床下に搭載。フロアは少し高めになっているが、もともと低床フロアからシートレールまで柱を伸ばしてフロントシートを支えていたため、座面位置は変わっていない

待ち望んでいたのはこの加速力!

 では走ってみよう。その前におさらいだが、アコードのハイブリッドシステムは走行のほとんどをモーターが受け持つ。エンジンは主にモーターを駆動するための発電に使われ、モーター走行での効率がわるくなる高速域で、トップギヤレベルのギヤ比でエンジン直結のドライブモードを行なう。つまり、いわゆる多段式、無段階変速といったトランスミッションがない直結式だ。そのエンジンはプリウスと同じようにアトキンソンサイクルを採用しているので燃費がいい。しかもオデッセイでは、アコード用2.0リッター i-VTECエンジンの出力を2PS/10Nm高めた145PS/175Nmにパワーアップして搭載している。

 アクセルを踏み込むと音もなくスルスルと、しかも力強く加速する。これだ! この出足なら7人、8人というフル乗車に十分耐える。編集担当とカメラマン氏の3人乗り状態だが、とても力強い。待ち望んでいたのはこの加速力! このEV走行で使うモーターも、15PS/8Nm向上の184PS/315Nmにパワーアップされている。しかも、モーターそのものを23%小型軽量化。巻き線を丸形銅線から角型銅線に変更して高密度化と磁石の小型化や磁気回路の最適化が行なわれた。細かく見ると、モーターが最高出力や最大トルクを発生する回転数が大幅に下げられている。

「ハイブリッド アブソルート Honda SENSING EX パッケージ」。車両価格は400万円で、試乗車は4万3200円高の「ホワイトオーキッド・パール」「Advancedパッケージ(19万円高)」「本革シート&フロントシートヒーター(21万6000円高)」「手動開閉リアエンターテインメントシステム(8万6400円高)」を装備して453万5600円
ハイブリッドモデルはヘッドライトユニット下側のサブリフレクターやフォグランプのリングなどがブルーに色づけされる。ヘッドライトはGグレードがハロゲンヘッドライト、そのほかのグレードはLEDヘッドライト(写真)が標準装備となる
ハイブリッドモデルのアブソルートは専用デザインの17インチアルミホイールを装着。タイヤサイズは215/55 R17となる

 オデッセイ ハイブリッドは、バッテリーに十分な電力が残っていれば基本的にエンジンが始動・発電をしない「EVドライブモード」が選択され、市街地走行はとにかくキビキビと走ることができる。

 そんな中でも、急加速が必要になったらアクセルを強く踏み込むだけでエンジンが始動して「ハイブリッドドライブモード」となり、電力が増強されてさらに強力な加速が得られる。そして高速道路では、「ハイブリッドドライブモード」とエンジン直結の「エンジンドライブモード」を状況によってコンピューターが切り替えて走行するのだ。

 つまり、走行モードは「EVドライブモード」「ハイブリッドドライブモード」「エンジンドライブモード」の3種類となる。

ハイブリッドモデルに搭載するパワートレーンのカットモデル
PCU(パワーコントロールユニット)はモーターやクラッチなどの上にレイアウトされている
フロア下に搭載されるIPUのカットモデル。アコード ハイブリッドの搭載品から11%小型化され、6%軽量化された
モーターのステータ構造では銅線を丸形から角形に変え、占積率を47%から60%に高めて高出力化したほか、小型・軽量化も実現している

 オデッセイ ハイブリッドのJC08モード燃費は、このクラスではライバルを大きくリードする24.4〜26.0km/L。3つのドライブモードのうち、エンジンの停止時間が長い「EVドライブモード」を多く使用する市街地走行で大きなメリットがあることは明白だ。しかも、ストレスのない加速感とガソリンモデルにはない静粛性は買いである。

 ただし、ハイブリッドモデルとガソリンモデルの価格差は約50万円。この差をどう受け取るかはユーザー次第で、ここにガソリンモデルの存在感がグッと浮き上がってくる。とはいえ、100V/1500W電源もあるし、ハイブリッドモデルに1度乗るとハンコを押してしまうかもしれないと思いますよ。

エンジンが始動しないよう抑制する「EVスイッチ」はセンターコンソール下側に設定
100V/1500W電源のコンセントをセンターコンソールボックス後方に設置。ハイブリッドモデルのEXグレード専用の装備となる

松田秀士

高知県出身・大阪育ち。INDY500やニュル24時間など海外レースの経験が豊富で、SUPER GTでは100戦以上の出場経験者に与えられるグレーテッドドライバー。現在60歳で現役プロレーサー最高齢。自身が提唱する「スローエイジング」によってドライビングとメカニズムへの分析能力は進化し続けている。この経験を生かしスポーツカーからEVまで幅広い知識を元に、ドライビングに至るまで分かりやすい文章表現を目指している。日本カーオブザイヤー/ワールドカーオブザイヤー選考委員。レースカードライバー。僧侶

http://www.matsuda-hideshi.com/

Photo:堤晋一