写真で見る トヨタ自動車「86(ハチロク)」 |
ここ最近、クルマ好きの注目を集めたモデルと言えば、間違いなくトヨタ自動車の「86(ハチロク)」だろう。2009年の東京モーターショーで開発発表がされて以来、FT-86、FT-86 IIとコンセプトモデルが登場。そして、昨年の東京モーターショーではプロトタイプとはいえ、ついに量産車と思われるモデルが登場した。
オレンジメタリック。グレードはGT Limited。サイドウインドーのグラフィックやリアフェンダーのキャラクターラインなど、トヨタ2000GTを思わせるシルエット。低いボンネットフードも低重心パッケージだからこそ実現したもの |
続く東京オートサロンではTRDとモデリスタによるカスタマイズモデルが展示され、2月には4月6日の発売が決定。「写真で見る」では、これまでプロトタイプモデルなどを紹介してきたが、ようやく市販モデルの詳細をお届けできることになった。
同車のスペック面についてはすでに食傷気味と思われるので、トヨタから提供された開発ストーリーを元に少し深いところを追ってみたい。
「86」はトヨタとスバル(富士重工業)による共同開発モデル。2005年に同社との業務提携を実施したのを受け、そのシンボルとなるクルマをということで、スポーツカーに白羽の矢が立った。
「086A」の開発コードを得た新型スポーツカーの基本コンセプトは「直感ハンドリングFR」。その原型となったのはかつての名車、ヨタハチ(トヨタスポーツ800)だ。エクステリアデザインはトヨタ2000GTにインスピレーションを受けたものだが、2気筒水平対向エンジン+FRレイアウトの組み合わせは、まさに86の源流ともいえるものだ。
そのメリットは直列エンジンに比べ重心高が低いこと。重心高は460mmと成人男性の膝より少し低いぐらいの高さに抑えられている。同時に搭載位置も前輪車軸より後方に配置する「フロントミッドシップ」レイアウトを採用した。これによりクルマそのものの基本特性としてロール量を抑えると同時にヨー慣性モーメントの低減を実現。ハイグリップタイヤに頼ることなく高いコーナーリングパフォーマンス、そしてFRならではの高いコントロール性を手に入れている。
エンジンは当時開発中だった新世代ユニットFB20(インプレッサに搭載)を予定していたが、自然吸気を前提とするとパワーと燃費の点で力不足。当初からの目標だったリッター100PSを実現するためにはボア84mmの同ユニットではバルブ径が確保不可能だったのだ。そこでボア径をアップするとともに、トヨタが開発を進めていた燃料噴射システム「新世代D-4S」を採用。現状、86(およびスバルBRZ)専用となる直噴エンジンのFA20を新開発することになった。
その結果、奇しくもボア×ストロークは車名と同じ86mmのスクエアに。このボアとストロークがスクエアというスタイルは、2000GTの3Mをはじめスープラなどの1G-G、MR2などの3S-Gと、2リッタースポーツエンジンの伝統となっている。
こうして生まれたFA20は最高出力が7000rpmで147kW(200PS)、最大トルクは6600rpmで205Nm(20.9kgm)を実現。クラストップレベルの動力性能を手に入れるとともに、燃費もJC08モードで13.4km/L(RC/6MT)と、バランスのよい仕上がりとなった。
用意されるグレードは実質4タイプ。走りにコダわって開発されただけにパワートレインには違いがなく、装備だけが異なる。ただ、兄弟車となるスバルBRZより、グレード間の差別化がハッキリしているのが特長だ。
もっとも低価格なモデルとして用意されているのが、カスタマイズベースとして位置づけられている「RC」。スバルBRZにも同様の「RA」グレードが用意されているが、こちらはさらに割り切った仕様だ。前後バンパーとドアハンドル、さらにサイドミラーはブラックではなく「素地」。バンパーは「塗装処理を前提とした素地状態での出荷となるためこすり傷が付いている場合がある」との注意書きまで付いている。
インテリアではなんと助手席前のインパネカバーまで未装着という徹底ぶり。現車による確認はできていないが、BRZ RAと同じくラゲッジのトリムやランプも省略されているようだ。また、エアコンはオプションでも用意されないので注意が必要。反面、車両重量はもっとも軽く、それに伴い燃費も最良となっている。
一般ユーザー向け(?)の実質的なベースグレードといえるのが「G」。16インチアルミホイールやマニュアルエアコンが標準となるものの、ヘッドライトがハロゲンだったりLSDがオプションだったりと、もう一声欲しい感じ。
ミドルグレードとなるのが「GT」。17インチアルミ、LSD、ディスチャージヘッドランプ、フルオートエアコン、本革巻きのステアリング&シフト&パーキングブレーキレバーなど、ほぼ全部入りと言った装備内容となる。
トップグレードとなるのが「GT Limited」。カタログ的にはGTの装備充実モデル的な扱いだが、スポーツブレーキパッドやリアスポイラー。リアフォグランプ、本革/アルカンターラのシートなどが標準となるなどかなり豪華。車重はRCより40kg重くなっている。
グレード/変速機 | 6速MT | 6速AT |
RC | 199万円 | - |
G | 241万円 | 248万円 |
GT | 279万円 | 287万円 |
GT Limited | 297万円 | 305万円 |
■販売店は、トヨタ店・トヨペット店・トヨタカローラ店・ネッツ店
ボディーカラーはメーカーオプションとなるサテンホワイトパールのほか、スターリングシルバーメタリック、ダークグレーメタリック、クリスタルブラックシリカ、オレンジメタリック、ギャラクシーブルーシリカ、ライトニングレッドの全7色で、グレードを問わず選択が可能。インテリアはブラックが基本で、GT以上のグレードではレッドも選択できる。今回の撮影車両は、GT Limited。
ヘッドライトの形状自体はBRZと変わらないが、バンパーやフォグランプまわりなどの違いにより思った以上に表情の印象が異なる | GTグレード以上にはディスチャージヘッドランプが標準。BRZではウインカーがあった場所はLEDクリアランスランプとなる | フォグランプ上にウインカーが位置する |
バンパーの開口部はBRZと逆の台形。86の随所に配置される「Tメッシュ」パターンのカバーが装着される | ワイパーはフレームがあるタイプだがラバーのカバーが付くタイプ | フェンダーには車名と水平対向エンジンをモチーフにしたエンブレム。写真の赤いタイプはGT以上のグレード用で、そのほかはブラックになる |
サイドミラーをドアマウントとするとともに、三角窓を設けることで死角を減らしている | 燃料は無鉛プレミアムガソリンでタンク容量は50L | アンテナはロッドタイプ |
リアビューはBRZと変わらず。メーカーロゴと車名エンブレムの有無が異なる程度 | リアコンビランプはBRZと共通のように見える。サイド部に設けられたボルテックッスジェネレーターもそのままだ |
リアスポイラーはGT Limitedに標準装備となる |
左から消灯、ポジション、ロービーム |
フォグランプとウインカーも点灯させた状態 | バックランプはバンパー下部中央。中央部の三角は国内仕様のBRZではリフレクターだが、86のGT Limitedではリアフォグとなる。GTとGグレードにもオプション装着が可能だ |
リアコンビランプの点灯パターン。順に消灯、ポジション、ブレーキ、ポジション/ウインカー |
2リッター水平対向のFA20エンジン。スペックはグレード間で共通 | バッテリーは34B19Rと小型 |
トヨタとスバルの共同開発であることを示すインテークマニホールドカバー。RCグレードには装着されない | 次世代D-4Sのキモとなるのがシリンダー内に直接燃料を噴射する「筒内直接噴射」と、吸気ポートに噴射する「ポート噴射」のツインインジェクターの採用だ |
GT系グレードは17インチアルミホイールを装着。タイヤはミシュラン・Primacy(プライマシー) HPの215/45 R17 | Gグレードは16インチのアルミホイールにヨコハマ・dB E70の205/55 R16を履く。RCグレードのホイールは「鉄チン」 | マフラーは左右2本出し。GT系グレードはマフラーカッター付 |
6速MTモデルのインストルメントパネル。上面はフロントウインドーへの映り込みを減少させるためグロスシボを採用している | ステアリングホイールはトヨタ車としてはもっとも小径となるφ365。本革巻きはGT系のみだがチルト&テレスコピックは全車に標準装備 |
ステアリングコラムのレバーは右側がライト系、左側がワイパー系と一般的な設定 |
タコメーターをセンターに配置した3眼メーター | 260km/hスケールのスピードメーターはTメッシュパターンをベースに白文字を配置 |
白文字のタコメーターおよびデジタルメーター、REVインジケーターはGT系のみの装備。下部のマルチインフォメーションディスプレイには走行距離や瞬間/平均燃費などが表示可能 | マルチインフォメーションディスプレイの表示切り替えはメーター右のボタンで行える |
6速MT車のシフトまわり。GT系のノブとブーツは本革製で赤ステッチ入り | シフト後方にはVSCのスイッチ。左の「OFF」スイッチと右の「SPORTS」スイッチの組み合わせで、VSCとTRC(トラクションコントロール)の動作を5パターンから選択できる |
GT系に標準装備となるプッシュスタートスイッチはセンターコンソールに。スタート~シフトブレーキ解除~シフト操作が左手だけで行える | マニュアル車のペダルまわり。GT系はスポーツアルミペダルが標準。既報のとおりアクセルペダルの形状がプロトタイプから変更になっている |
6速ATモデルのインパネまわり | ステアリング形状はMT車と同じ |
GT系にはパドルシフトが追加される |
6速AT車のメーターパネル。6速MT車との違いはマルチインフォメーションディスプレイ内のシフトポジションインジケーターがAT仕様になる程度 | AT車のシフトまわり。マニュアル操作可能な「M」モードが用意されている | VSCスイッチの中央には走行シーンに応じてシフトタイミングが変更できるモード選択スイッチが追加される |
プッシュスタートスイッチは6速MT車と同じ | GT系はAT車もスポーツアルミペダルを採用。GとRCは樹脂製になる | オーディオ&ナビは全車オプション。スピーカーはGT系が6個ー、Gが2個、RCは非装着となる。写真のモデルはカジュアルナビ「NSDD-W61」 |
GT系には左右独立温度調節が可能なデュアルオートエアコンが標準。ピアノタッチスイッチの「DUAL」ボタンを使えば左右連動させることもできる | エアコン吹き出し口は風向調節の自由度が高い丸形 |
ステアリングコラム右側にはトランクのアンロックスイッチとメーターの照度調節ダイヤル | センターコンソールはシンプルなバスタブ形状。脱着式のカップホルダーはG以上のグレードに標準 |
GT Limitedはシートヒーターまで標準装備 | フロントシートはセミバケット形状で調整はすべて手動式となる。GT Limitedの表皮は本革とアルカンターラのコンビネーションタイプ | 86のワンポイントが入ったフロアマットは全車に標準装備 |
GT系に装備されるフレームレスインナーミラー。フレームレスと名付けられているが実際は淡いグリーンのクリアフレームがある | シンプルなルームランプ | バニティミラー&照明付のサンバイザー。Gはバニティミラーのみとなる |
助手世紀前にはTメッシュカーボン調のパネル。カンタンに取り外しが可能な作りだが、RCでは最初から未装着となっている | グローブボックスの奥にもアクセサリーソケットが用意されている |
GT系はセンタージュラスター左右とドアパネルにニーパッドを装着 | GT系はアルミ製のスカッフプレート。その横には乗降時に手を添えるためのアシストパッドが設けられている |
リアシートも用意されているが2+2仕様のため成人男性にはキツイスペース。前倒し時はシートバック上にあるボタンを左右それぞれ押す必要がある | 前倒しすればタイヤ4本と工具類、またはゴルフバック2個の積載が可能 |
トランクはクーペとしては十分な広さ | フロア下にはパンク修理キットと工具類が収納されている |
オプションとなるレッドのインテリアカラー。シートのカラーリングはGT Limitedのものでグレード(シート表皮)によってパターンが若干異なる |
■86 TRD Performance Line
トヨタグループの一員であり、モータースポーツ活動や特装車を手がけるトヨタ テクノクラフト。86においてもドレスアップから機能パーツまで数多くのアイテムをラインナップしている。
東京オートサロンではボディーカラーがスターリングシルバーメタリックの車両を展示していたが、こちらはクリスタルブラックシリカの車両。より精悍な印象だ |
純正バンパー下部に装着するフロントスポイラー | サイドスカートはワイド感と低いスタイルを演出 | リアにはアンダースポイラーとトランクスポイラーを装着 |
純正のパワーロッドに追加して装着するタワーバー。軽量かつ高剛性なカーボンシャフトを採用している | オイルフィラーキャップ、オイルフィルター、ラジエターキャップもラインナップ |
全長調整式のサスペンション。出荷時は車高を15mmダウンするセッティングとなっている。減衰量調整は40段階 | リア側。ロール量を抑制するスタビライザー(黄色)とボディ剛性を高めるメンバーブレースセット(赤色)も装着 |
左右4本出しとなるハイレスポンスマフラーVer.R。純正バンパー装着時は加工が必要となるため、アンダースポイラーとの同時装着が推奨されている | ハイレスポンスマフラーVer.R装着者に適合するステンレス製のリアディフューザー | 鍛造1ピースの軽量アルミホイール「SF2(18×7.5J)」。トヨタ販売店ではミシュラン「Pilot Super Sport(225/40 R18)」とのセット販売も行われる |
ブレンボ製キャリパーを採用するモノブロックキャリパーキット。フロント用が対向6ピストン&ローター径φ355mm、リア用が対向4ポッド&ローター径φ345mm。装着時はSF2ホイールとの同時装着が必要になる |
TRDロゴ入りのプッシュスタートスイッチ。赤いカラーがスポーティな印象を高める | 本革巻きのシフトノブ。同型状のAT用もラインナップする |
ちょっと面白いのが剛性アップアイテムとなるドアスタビライザー。ドアとボディの隙間を減らすことでドア開口部のヨレを抑える。ストライカー側に付けるプレートがスライドすることで密着度を高める仕掛けだ |
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http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/photo/
(安田 剛)
2012年 5月 8日