写真で見るポルシェ「911 GT3」


 ポルシェ911 GT3は、ワンメイクレースなどへの参戦を前提としたモデルとして、先代の996型をベースに1999年に初登場した。現行モデルは、997型をベースとし、水平対向6気筒エンジンの排気量を3.8リッターに拡大、吸排気バルブに可変バルブ機構「バリオカム」を採用するなど、NAながら最高出力は320kW(430PS)、最大トルクは430Nmを発生する。ハンドル位置は左側のみ。トランスミッションは6速MTのみとなり、PDKは用意されない。

 ボディー外観では、リアに追加されたGTウイング形状(バイプレーンタイプ)の大型ウイングのほか、各所に設けられた吸排気用ダクトがただの911とは違うことを主張する。フロント前方には、ラジエーターからの冷却気を排気し、フロントのダウンフォースを高めるエアアウトレットが設けられた。また、エンジンフードには、走行中の空気圧でエンジンへの吸気が加圧されるラムエアインレットを備える。

 通常モデルと比べ、ドアとフロントフードをアルミニウム製として軽量化したほか、市販車ながらGT3ではホイールにセンターロックシステムを装備し、軽量化に貢献している。また、標準でタイヤ空気圧を表示できるタイヤプレッシャー・モニタリングシステム(TPM)を備える。

 エンジン内部はチタン製コネクティングロッドや、ピストンの軽量化により振動マスが軽減され、油圧によるバルブクリアランス調整機能を備えた超軽量設計のバルブリフターが、吸気・排気バルブの開閉を制御することでレブリミットを8,500rpmと高めている。ギヤ比はサーキット走行に合わせ、低く設定されている。なお、先代モデルと比べパワーやトルクは高められているが、燃料消費量は先代モデルと同レベルとしており、排出ガスはヨーロッパのEU 5、アメリカのLEV IIを達成している。

 911 GT3としては初めてポルシェ・スタビリティ・マネージメントシステム(PSM)を装備した。トラクションコントロール(TC)と、スタビリティコントロール(SC)機能を備えるが、サーキット走行時にはPSMは2段階の解除が可能となっている。また、車高やキャンバー角、トー角、前後のスタビライザーも調整可能。ブレーキはコンポジットブレーキディスクに、アルミ製モノブロックキャリパーを備えるほか、オプションでポルシェ・セラミックコンポジット・ブレーキ(PCCB)も装着できる。マフラーは、スポーツエグゾーストシステムが採用され、ブラック塗装仕上げのセンター2本出しとなる。

 サーキット走行だけでなく、日常走行にも配慮され、オプションで低速走行時のみフロントのみ車高を30mm上げる「ライドハイト・リフトシステム」が用意されている。インテリアは2シーターとし、シートはメーカー純正の可倒式カーボン製フルバケットシートの「スポーツバケットシート」や、ルールケージや6点式シートベルトなどを含む「クラブスポーツパッケージ」がオプションで用意される。

 今回撮影したモデルの車両価格は1766万円。ボディカラーは鮮やかなガーズレッド、インテリアはレザレットインテリアブラックが採用されている。オプションは、ダイナミックコーナリングライト、ダイナミックエンジンマウント、ポルシェ・セラミックコンポジット・ブレーキ(PCCB)、ライドハイト・リフトシステム、スポーツバケットシート、スポーツフットレストが装着されている。オプション込みの価格は2064万7000円。

通常モデルとの違いはフロントでは排気用のエアアウトレットと、ブラックアウトされたリップスポイラー程度だが、リアにまわると、巨大なウイングや、追加されたエア抜き用ダクトとGT3ロゴが目を引く

 

ヘッドライトは、楕円形状のハウジングにプロジェクターランプ2灯を収めたもの。ヘッドライトウォッシャーを備えるフロントバンパー下には、ブラックアウトされたリップスポイラーが装着されるトランクフード前端にはポルシェのエンブレムが装着される
フロント上部にはエア抜き用&ダウンフォース強化用のエアアウトレットを備える。バンパー下部のエアインレットと共にメッシュグリルが設けられるワイパーブレードはオーソドックスなトーナメント式が採用されているフロントのトランクルーム。面積は小さめだが、奥が深く容量は多そうだ
トランク正面カバー内にはバッテリーがほぼ車体の中央に収められているトランクフード内左上部は小物入れスペースになっているトランク底部にはパンク修理キットやタイヤ空気圧ゲージ、着脱式の牽引フックなどが収納される
サイドミラーは固定式。ドライバー側のみ破線が描かれ、破線の外側がワイドミラーになっている
オーソドックスなドアハンドル。リモコンキーにドアの施錠機能はあるが、スマートエントリーには対応しないキーは内溝タイプ。イモビライザー機能と、施錠・解錠用ボタンなどを備える

 

フロントホイール&タイヤ。ホイールはワンピース構造の19インチホイール。タイヤサイズは235/35 ZR19。装着されていたタイヤはミシュラン パイロットスポーツ。走行中にタイヤ空気圧をモニターできるタイヤプレッシャー・モニタリングシステム(TPM)を備えるオプションで用意されるポルシェ・セラミックコンポジット・ブレーキ(PCCB)が装着される。対向6ポッドアルミ製モノブロックキャリパーを採用するリアは対向4ポッドアルミ製モノブロックキャリパーを採用。市販車ながらホイールの装着はレース仕様のセンターロック。リヤタイヤのサイズは305/35 ZR19
大型ウイングは、角度可変ウイング端にはGT3の排気量「3.8」という数字が記されているエンジンルーム上部には、ラムエア吸気用エアインレットが設けられている
水平対向6気筒エンジンは低い位置に収められている。エンジンフードは小さめで、電動ファンが装着されているのが分かる左右のリヤタイヤ後方および、リアバンパーにもエアアウトレットが設けられている
マフラーはセンター2本出し燃料給油口カバーは押し込むとポップアップする手動式
車速が50km/h以下の時に、ライドハイト・リフトシステムによりフロントのみ車高を30mm上げられる。左は動作前、右は動作後
ヘッドライト点灯パターン。左上からスモール、ロービーム点灯、ハイビーム点灯、ウインカー点灯時
リアコンビネーションランプ点灯パターン。左上から消灯、スモール、ブレーキランプ点灯、バックフォグ点灯時、ウインカー点灯時

 

インストルメントパネル。インテリア素材にはスエード調人工皮革アルカンターラが使用されているステリングにもアルカンターラが使用されている。ステアリングスポーツはスイッチ類などがないシンプルなもの5連メーターには、油温と油圧も表示される
ステアリング右にはワイパーレバーがある。レバー下のスイッチはヘッドライトウォッシャーステアリング左にはヘッドライト&ウインカーレバーステアリング左下にはタコメーター下のデジタルディスプレイの表示切り替え用スイッチレバーがある
キーシリンダーもオーソドックスなタイプ。ステアリングハンドルの左にレイアウトされるさらにその左にはヘッドライトスイッチステアリング下にはチルト・テレスコ用調整用レバーがある
ペダル類。アクセルペダルはオルガン式シフトレバーにもアルカンターラが採用される。トランスミッションは6速MTのみ
サイドブレーキレバーにもアルカンターラが使われる。サイドブレーキレバー脇には灰皿とシガーソケットが用意される
アームレスト内は2室の小物入れになり、コインホルダーも用意される。アームレスト内には電源用が用意されている
シートはオプションのスポーツバケットシートが装着され、運転席、助手席とも後面がカーボン製のフルバケットシート。後部スペース用に可倒機構はあるがリクライニング機能は用意されていない
ドアはピラーレス形状で、ドアの内張素材もアルカンターラが採用されているドアスイッチはウィンドー開閉スイッチとミラーの角度調整用スイッチのみ
アームレスト内には小物入れが用意される
ドアサイドシルにはGT3ロゴが配される。運転席側はその内側にはトランクフードとエンジンフードのオープンスイッチがある助手席側が細長い小物入れが用意される。折りたたみ傘の収納にちょうどよさそうだ2シーターとなっているため、リアはダッシュボードとなっている。ここにもGT3ロゴが配される
グローブボックスは小さめ。車検証や取扱説明書をいれるともういっぱいになる。上部にはETC車載器が設置される
グローブボックス上部に収められた収納式ドリンクホルダー。展開位置はエアコン吹き出し口前になるように設計されているようだ。ホルダー展開後は中央部のみフタが閉まるようになっている
ルームミラー後部には左右独立式のマップランプも備えているサンバイザー内側にバニティミラーは楕円形で、左右席に備えられている
カーナビは、クラリオンのHDDナビシステムが装着されるセンターコンソールのカーナビ下にはエアコン操作部、ポルシェ・スタビリティ・マネージメントシステム(PSM)の操作スイッチが並ぶ
ナビシステムのフロントドア開口部。SDメモリーカードスロットと、DVD/CDスロットが用意されるナビシステムの各種画面

 

(平 雅彦(WINDY Co.) / Photo:落合憲弘)
2010年 8月 10日