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写真で見る スズキ「アルト ターボRS」

 3月11日にスズキは新型「アルト ターボRS」を発表した。アルトシリーズとしては久しぶりのスポーツモデルで、スズキの「多くの人に本格的な走りを届けたい。心からクルマを楽しんで欲しい」という想いを実現させたクルマということである。

 そのために用いたのが新開発のプラットフォーム、軽量高剛性の車体、高性能なサスペンション、そして環境性能とハイパワーを両立させたエンジンである。これらの要素は「スイフトスポーツ」をはじめとするスズキのスポーティカーの開発によって培われたノウハウにより高バランスに仕上げられ、ドライバーが楽しさ、気持ちよさを感じられるようになっている。

 まずエクステリアだが、アルト標準車をベースにメッキパーツや赤色のアクセントラインを組み合わせて高級感とスポーティさを演出。エアロパーツもフロント、リア、サイドに装着している。ヘッドライトはオートライト付きのディスチャージ式で、フォグランプも装備する。ホイールはエンケイ製の「all one」をベースにして、新型アルト用に新開発した軽量15インチモデル。それを専用に切削加工仕上げしたものになっていて、タイヤもアルト ターボRS専用のブリヂストン「ポテンザ RE050A」(サイズ:165/55 R15)を履く。

 エンジンは従来からある直列3気筒DOHC 0.66リッターターボ「R06A」だが、アルト ターボRS用に改良が施されている。そのポイントはまず吸気ポート。高タンブル吸気ポートにすることで燃焼の効率が向上。これによって対ノッキング性が上がり、通常ドライブで多用する低中速域のトルクをアップさせている。さらにタービンにも手が加えられていて、過給側のコンプレッサーはインペラーの羽形状を見直すことで、低回転域から効率よく過給できるように改良。排気側も排気の流れをよくする形状とした。さらにタービン軸を支えるベアリングもより抵抗の少ないものを採用。アクセル操作に対してターボがよりレスポンスよく反応する特性を作り出した。

 この改良型のR06A型吸気VVTターボエンジンのスペックは、最高出力が47kW(64PS)/6000rpm、最大トルクが98Nm(10.0kgm)/3000rpmとなっている。ちなみに従来からあるR06A型ターボエンジンのスペックは47kW(64PS)/6000rpm、最大トルクは95Nm(9.7kgm)/3000rpmだ。

 このエンジンに組み合わせるのはMTをベースにクラッチ、シフト操作を自動で行う電動油圧式アクチュエーターを用いた5速オートギヤシフト(以下AGS)だが、これもアルト ターボRS用の変速チューニングが施されている。スポーツモードを選択するとシフトレバーだけでなく、ステアリングのパドルでマニュアル操作も可能で、その変速レスポンスも素早い。そしてクラッチディスクがあるMTベースながらクリープやPレンジがあるので、AT感覚で乗れるイージーさもある。ちなみにAGS車はクラッチ操作がないのでAT限定免許で乗ることができる。

 アルト ターボRSのボディー形状は先行で発売された新型アルトと共通デザインだが、アルト ターボRS用は車体剛性を高める補強が施された。変更点はストラットタワーバー装着、フロントバンパーメンバーの追加、カウルトップやサスペンション取り付け部まわりの板厚アップなど本格的なものだ。これによってアルト標準車のボディーに対して、ねじり剛性で5%、ストラット取り付け部の横剛性で14%も向上している。さらにボディー鋼板の接合時に用いられるスポット溶接も、標準車より溶接箇所を増やしている。増やしている位置はドアやリアハッチなど大きな開口部の要所だ。なお、このボディーは衝突時の衝撃を効率よく吸収、分散する軽量衝突吸収ボディー「TECT」である。

 高剛性ボディーと組み合わせるサスペンションも、アルト ターボRS専用にチューニング済み。ショックアブソーバーはフロント、リアともに専用のKYB製ショックアブソーバーを採用。フロント側はアルト標準車のサイズよりもシリンダーとロッドのサイズを太くしてある。これによって剛性アップと高い操縦安定性を生み出している。リアはサスペンションの動きのよさを重視して、フリクションロスの少ない専用バルブを採用している。またショックに合わせてスプリングレートも変更されたほか、ストラットサポート、サスアーム、ステアリングギヤボックス、リアトーションビームなどのブッシュも専用品が使われるほどの凝りようである。

 インテリアも走りを意識したもので、ブラックを基調としたスポーティな配色となっている。ステアリングは本革巻きでレッドのステッチが配された。そのステアリングにはAGSマニュアルモード用のパドルシフトも装備されている。エアコンは抗菌処理タイプエアフィルター付きのフルオート式。フロントシートもアルト標準車と比べるとサポート部スポンジを硬いモノに変更、加えて張り出しを高くし、ホールド性を向上させた作りになっている。デザインも黒基調のファブリックに赤のステッチ入り。さらに運転席にはシートヒーターも装備している(4WDでは助手席にも装備)。

 安全装備に関しては、衝突被害軽減ブレーキのレーダーブレーキサポート、誤発進抑制機能、エマージェンシーストップシグナル、車両走行安定補助システムのESPなどを装備。アイドリングストップ付きで、JC08モード燃費は2WD車が25.6km/L、4WD車が24.6km/Lとなっている。燃費基準はともに2015年度+10%/2020年度達成。よってエコカー減税率は取得税が80%(3月まで)と60%(4月以降)、重量税が75%(4月まで)と50%(5月以降)となる。

ボディー形状は標準車の新型アルトと共通だが、エアロパーツやメッキパーツ、赤色ストライプなどが加わり、かなりスポーティなイメージに仕上がっている
赤色のアクセントラインが効いている。フェンダー部のデザインもオーバーフェンダー風に見えるので、よりスポーティさを出している。サイドにもデカールが入り、サイドステップも装着しているので腰高感を感じさせないデザイン
LEDサイドターンランプ付きのミラーは、ボディーカラーにかかわらず赤く塗られている。ボディーカラーが赤の場合も同様なので、この場合は同色ミラーとなる。ドアノブはボディー色で塗装される
フロントバンパーにはフォグランプを装備。こちらはマルチリフレクター式
リアゲートの上部にもエアロパーツが付く。ここも赤く塗られている。リアガラス下にはメッキ仕様の大型モールが付く。2層式のスポイラーにも見えるデザインだ
リアバンパーは標準車のものをベースに、異なる造形に仕上げた。センター部をブラックで塗り分けすることでさらにスポーティさを演出している
サイドとリアにターボRSの文字が。最近はステッカーで表記されることが多いが、リアは立体エンブレムを装着。こういう細かい部分にもスズキの本気が垣間見える
タイヤはアルト ターボRS専用のブリヂストン「ポテンザ RE050A」を履く。サイズは前後とも165/55 R15。ホイールはエンケイ製の専用切削加工仕上げ。軽量なall oneがベースになっている
ヘッドライトはオートライト付きのディスチャージ式。ポジションランプは外側。ウインカーは内側に付くデザインになっている
リアコンビネーションランプの点灯パターン。小振りだが視認性はよく、小振りゆえにリアまわりをスッキリと見せている。いちばん外がテールランプ&ブレーキランプ、センターがウインカー、内側がバックランプという並び
エンジンは従来からあるR06Aをアルト ターボRS専用に改良した仕様。この改良型R06A型吸気VVTターボエンジンのスペックは、最高出力が47kW(64PS)/6000rpm、最大トルクが98Nm(10.0kgm)/3000rpmとなっている。インテークは右がインタークーラー用、左がエアクリーナー用となってる
トランスミッションはAGSのみの設定。これもアルト ターボRS専用チューンが施されたものだ。マニュアルモード時はシフトレバー部のほかに、ステアリングのパドルでシフト操作が行える
ブラックで締められた内装。起伏が少ないデザインなので圧迫感はない。ステアリングは本革巻きで赤いステッチが入れられている。スポーク部にはオーディオ類のコントローラーが付く
ステアリング右下にはスターターボタンやレーダーブレーキサポートなどのON/OFFスイッチが付く。その下にはシートヒーター用のスイッチがある。キーレスリモコンは電波式で、アンサーバックもある。キーホルダーは撮影車用で市販車には付属しない
小物入れは多くはないが、一般的な収納力はある。ドリンクホルダーは乗車定員である4名分装備する。こういう部分も評価したい
エアコン吹き出し口やエアコンパネルは形状や素材に凝っていて高級感がある。シフトブーツも革仕様。ドアパネルは樹脂だが、異なる表面仕上げを組み合わせて視覚的な変化を出している
ルームランプはシンプルな作り。サンバイザーは降ろすとチケットホルダーがあり、そこを開けるとバニティミラーとなる。ランプは付いていない
サイドサポート部の素材硬度を上げて、さらに張り出しも多くしたバケットシート。シートリフターも付く。2WD車は運転席のみ、4WD車は運転席/助手席にシートヒーターが標準装備される
リアシートの形状は標準車と同じ。足下はかなり広く取られている。助手席シートバックにはレジ袋などを掛けられるフックが付く。折りたたみ式なので不要なときは閉まっておける
視認性のよいメーター。9000rpmまで表記されるタコメーターが付く。右側のインフォメーションディスプレイにはギヤポジション、距離計、燃料計のほか平均燃費や後続可能距離、アイドリングストップ積算時間などが表示される
4名乗車でのラゲッジスペースは普段の買い物くらいなら事足りる容量。リアシートを倒すと折りたたみ自転車も搭載できるスペースが出現。リアガラスはスモークガラスを採用する
スポーツモデルらしくフロアにはフットレストが付いている。アクセル下にもヒールを支える凸がある。乗車時はこの上からフロアマットが付く
レーザーブレーキサポートは標準装備。誤発進抑制機能、エマージェンシーストップシグナル、車両走行安定補助システムのESPも装備している
標準車より高められたボディー剛性はスポーツ走行向け。安全面でも衝突時の衝撃を効率よく吸収、分散する軽量衝突吸収ボディー「TECT」を採用している

(深田昌之)