飯田裕子のCar Life Diary

ダイハツ「コペン」のプロトタイプに乗ってきました

先代コペンから操縦安定性と乗り心地を向上させるためD-フレームを採用

新型コペン開発責任者の藤下修さん

「軽自動車としての理想を追求することが大事でした。車両のベース素材にミラ イースのプラットフォームを使ったのは、コペンは量産メーカーが作るスポーツカーだからなのです。すべてを新規で作っても、それが1000万円にもなるスポーツカーであっては意味がない。先代(初代)コペンで達成できなかったことをどうクリアすればよいのか、いま一度振り返って先行開発すれば(新しい軽オープンスポーツの境地に)辿り着けるんじゃないかという思いがありました」。

 2014年6月に「COPEN(コペン)」がフルモデルチェンジします。それに先立ち、メディア向けに行われた事前試乗会で新型コペン開発責任者の藤下修さんと、商品企画本部の殿村裕一さんにお話をうかがってきました。冒頭のコメントは、私がお話をうかがった中でもっとも今回のコペンのフルモデルチェンジに対して強い思いと自信を感じた、藤下さんの言葉でした。

 今回の試乗会は限られたスペースと時間の中で行われ、その目的は走行性能の事前アピールという印象。デザインなどについては6月の発表まで一切おあずけの状態。そのため試乗車のボディーにはデジタル・カモフラージュのラッピングが施され、内装もまだ試作状態でした。しかし、お2人は「6月にお話することがなくなってしまいます」と言いつつ、開発からクルマづくり、そして注目の交換可能な外板パネルのお話を聞かせて下さいました。

試作段階の新型コペンの内装

 まず、冒頭のコメントにもあった先代コペンで達成できなかったことを聞いたところ、「操縦安定性と乗り心地の向上です。それを解決するため、新たにD-フレームを使ってオープンカーとして目標に掲げたボディー剛性を確保しました。しかもただ硬くするだけでなく“いなし”も含めて考えたのです。そういうボディーができ上がった上でサスペンションをしっかりと動かす、それだけです」と藤下さん。新型コペンでは、ミラ イースのボディーに補強を加えた、フレーム構造とモノコック構造をベースにした「D-フレーム」と呼ばれる新骨格構造を採用しました。これにより、ボディー剛性は先代コペンに対し上下曲げ剛性で3倍、ねじれ剛性で1.5倍という強度を達成しているそうです。

新型コペンはボディーの骨格だけで剛性を確保するべく、新骨格構造「D-フレーム」を採用

 では開発中にD-フレームの手応えを感じた瞬間がいつだったかを聞いてみると、「クルマに横力が発生したときのリアの踏ん張りと、理想とする操舵応答が出せたときにこの構造でいけるなと思いました」(藤下さん)。確かに試乗をしてみたところ、ボディーはしっかりと造り込まれているのが分かり、S字コーナーなどで右へ左へとハンドルを切るとリアタイヤが踏ん張り、次のステアリング操作を躊躇なく行えるので、軽快さが際立って感じられました。中速コーナーなどでしばしステアリングアングルを一定に保ち、アクセルコントロールでコーナリングする感覚が気持ちいい。

 藤下さんはさらに、「あとは必要以上に軽量化しないことでした。燃費や動力性能、コスト、作り方について色々な人が色々なことをいうわけです。しかしこの操縦安定性と乗り心地を実現するために、こうした意見に耳を貸しませんでした。コペンチームの設計をしている皆さんにも“妥協するな”とずっといい続けてきたのです」ともおっしゃっていました。

 そうとう強気で開発してきたことがうかがえます。いや、理想のクルマを造るために、強固な意志を何としても貫かなければならなかったのだろうと想像します。現時点で新型コペンのJC08モード燃費の正式な数値(社内測定値ではCVT車が25.2km/L、5速MT車が22.2km/Lとアナウンス)は公表されていませんが、私がコペンを電気自動車(EV)にしても面白そうですねといったところ、「ダイハツのポリシーとしては低燃費、低価格をベースに“もっと軽自動車にできること”を表現したモデルなので、そこはしっかり守りたい」とのことでした。コンベンショナルなエンジンでも免税レベルをクリアできるようです。

新型コペンの車重は5速MT車が850kg、7速CVT車が870kg(ダイハツ社内測定値)とアナウンスされている

“着せ替え”ボディーを採用した背景

新型コペンは外板を交換できる「ドレスフォーメーション」と呼ばれる着脱構造を採用

 一方で、ただ走りのよい軽オープンスポーツカーというだけでは、走行性能に興味のある方にしか注目してもらえない。新型コペンが出るとアナウンスがあったのは2013年の東京モーターショーでした。その際も“着せ替え”ができるボディーに注目が集まっていましたが、そもそもなぜ新型コペンを外板パネルが交換できるスポーツカーにしようと考えたのか。

 先代コペンは軽オープンスポーツカーとして2002年6月に発売され、2012年の生産終了まで累計5万8400台を販売しましたが、平均すると5840台/年と低空飛行状態。そのため、スポーツカーが欲しいという方のみならず「なにか面白そうなクルマだから乗ってみたい」と思わせるクルマに新型コペンをしたかったというのは理解できます。

 このことについて、殿村さんは「トヨタが86に対し『エリア86』のような展開を行って30代の獲得にも成功していますが、新型コペンを販売するにあたっては既存ユーザー(40代以上が多いとのこと)はもちろん、もっと若い方にも乗っていただきたいのです。そのためにはもう少し抜本的で、ドラマチックな変化が必要だと考えたのです」といいます。

「ドレスフォーメーションの考え方は例えるとiPhoneのカバー」と商品企画本部の殿村裕一さん

 そこで登場するのが、同社が「DRESSFORMATION(ドレスフォーメーション)」と呼ぶ“着せ替え”ボディーなのです。このドレスフォーメーションについて殿村さんは、「今は走る喜びとか、誰もがスポーツカーに憧れるとか、クルマを持つことがステイタスという時代ではないですが、そんな時代でもクルマを身近なものに感じて欲しいのです。ドレスフォーメーションの考え方はちょっと大袈裟に例えるとiPhoneのカバーです。人それぞれの個性に合わせて外板パネルを纏えばいいという感覚です。今は身近にあるものもそのように楽しむ時代。『何か面白そう』と思ってもらえることが大事なのではないでしょうか。もちろん果たしてこれがいいのか……とも思ったのでさまざまなアプローチからリサーチをたくさん行いました。感触を得たのは、クルマのドレスアップをしている人は市場の7%にとどまりますが、『愛車のほんの一部ながら変えてみたい』と興味を抱いている人は80%もいたのです。その人たちに向けて上手く打ち出していけばよいのではないか」といいます。

 ところで新型コペンは外板に樹脂を採用するとともに、ダイハツで初めて樹脂燃料タンクを採用しており、適切な軽量化にも努めたことは間違いなさそう。実際に走らせていても660ccターボエンジン+CVTの組み合わせはスムーズかつ力強さも十分。そこで重たいと感じることはありませんでした。軽量化を進める中でボディー骨格とドアには鉄板を使用。高い衝突安全基準もしっかりと満たしているそうです。

 クルマはカッコや雰囲気が大事。特にコペンのようなスポーツカーだと、なおさら期待値も上がります。6月になってみないとスタイルの全容もカラーバリエーションも分からない状況では、正直まだ懐疑的な部分も否めません。そんな中でも興味深いのが、樹脂外板は鉄板よりも発色がよいという点。ジェルタイプのネイルを楽しむ女性なら想像しやすいかもしれませんが、新型コペンは樹脂を使うジェルネイルのように色の劣化が遅くて発色もよいことが予想されます。新型コペンのボディーをネイルサロンで仕上がった我が指先にウットリするように眺めることができるのか? 楽しみが増えます。

 先代コペンは女性比率が3割もあるモデルでした。先代コペンの“カッコ可愛い”というかボディーのコンパクトさからくる“健気カワイイ系”の雰囲気に母性本能をくすぐられた方も少なくないはずです。そもそもオープンスポーツカーに乗る女性って多そうでいて意外と貴重。スタイリッシュでクルマを含むライフスタイルにこだわりが感じられてカッコいいのに……。軽モデルのコペンなら、扱いやすいボディーサイズなので運転がしやすいでしょうし、“乗りこなす”カッコよさも期待できます。電動開閉ルーフの採用も嬉しい。日常、通勤用の1台として選ぶには魅力的な要素がいくつもあります。

 果たして新型コペンはますます女性に注目してもらえるのか? 確かにドライビングは試作車とはいえ仕上がり良好でした。ただ1つ、シートリフターが装備されていなかったのは残念。スポーツカーらしい低めの着座位置は、小柄な女性には前が見づらいかもしれません。扱いやすいサイズのスタイリッシュなオープンスポーツモデルを女性が運転するのなら、ドライバーである女性に颯爽とした姿でドライブしてほしい。同性としてもそんな女性ドライバーが増えたらいいなぁと思います。少々の難を申しましたが、ぜひ女性にも注目していただきたいモデルです。

飯田裕子