知っておきたい自動車保険2010
【第6回】実際に事故やトラブルにあったそのときどうする?

契約するとできる自分専用のMyホームページで、進捗状況の確認や問い合わせもできる

 知っておきたい自動車保険。最終回は、実際に保険に加入して、事故やトラブルを起こしてしまった場合について。より話を具体的にするため、今回は筆者が自ら入っている「三井ダイレクト」を主な例にとって説明していく。

保険に入ったら最初にやっておこう
 まず保険に加入すると、保険証券が届く。証券省略割引を使った場合ははがきなどで引き受けの案内が届くはず。これに証券番号や緊急時の連絡先などが記されている。

 届いた証券やはがきは車検証とともに保管しておくとよいが、なにより大切なことは事故を起こした時やロードサービスを頼む時の連絡先を携帯電話に登録しておくこと。また、メモなどを財布の中に入れておくのもよいだろう。いくら車内に証券を常備していても、鍵を閉じ込めてしまえば、打つ手がなくなってしまうからだ。

携帯電話に情報を送信しておけばいざというとき安心だ

 三井ダイレクトの場合、契約者には「Myホームページ」という自分専用のWebサイトが作られるのだが、ここから証券番号や事故時の連絡先など、必要な情報を記したメールを携帯電話などに送付することができる。

 実はこれはぜひ使ってほしい機能。というのも三井ダイレクトでは、携帯電話のGPS機能を使って、利用者の現在位置を調べるサービスを用意している。このURLもメールには記載されているので、GPS機能のついた携帯電話にこのメールを保存しておけば、見知らぬ土地でのトラブルでロードサービスを呼びたい場合にもスムーズに対応できる。

実際に事故を起こしてしまったら……
 もし実際に事故を起こしてしまった場合、最優先するのは、けが人の救護。必要に応じて救急車の手配をしよう。救急車を呼んだ場合、こちらの連絡先を救急隊員に教えておくことで、搬入される病院が確定した時点でその病院の情報を連絡してもらえる。病院の情報は保険の支払いなどで必要になるので必ずメモしておくこと。

 次にすべきは安全の確保。後続車による多重事故を防ぎ、あるいは渋滞を起こさないためにも、クルマを安全な場所に移動させる。相手や同乗者がいる場合は、誘導を手伝ってもらうなどして、安全に行いたい。クルマが動かない状態の時は、発煙筒や三角表示板を使って、後続車へ注意を促す。

 けが人の救護、安全確保ができたら、必ず警察へ連絡する。警察による事故証明書がなければ自動車保険は使えないので、これは必須だ。けが人がいる場合はその旨も伝えること。また、もし仮に自分に非があると思っても、過失割合や賠償額について具体的な約束をしたり、まして念書を書くような示談行為はしないこと。もし仮に自分自身に過失割合が10割あると主張しても、過去の判例からあなたの過失割合が9割と判断されれば、保険会社は9割分の補償しか行わない。残りの1割は自己負担ということになる。

 相手の名前や連絡先、ナンバーや車種、相手の保険会社をメモすることも忘れてはならない。さらに道路の状況や信号の有無などを確認して、事故の状況を再度確認。もし目撃者がいる場合は警察の実況見分に立ち会ってもらうか、時間がない場合は連絡先だけでも聞いておきたい。

事故の連絡はMyホームページからもできる。また事故対応の進捗状況は専用のページが用意されいつでも確認可能だ

 ひととおりの対応が終わったら、保険会社の事故受付センターに連絡する。意外かもしれないが、保険会社への連絡は最後でも大丈夫。というのも事故現場の検証は警察の仕事で、保険会社は基本的には警察からの情報を元に動くから。そのため保険会社が現場に急行することもほとんどない。ただし何か聞きそびれていることがあるかもしれないので、相手がそばにいるうちに連絡はしておいたほうがよいだろう。

自走できない事故の場合
 もしも自分の車両が自走できない状況だった場合は、保険契約に付帯のロードサービスを利用できる。今はほとんどの保険会社が一定距離までの牽引も無料で行ってくれるので活用したい。またJAF会員の場合その旨を伝えれば、JAFに引き継いでくれる。なお、このような事故の場合は、多重事故を防ぐためにも、けが人の救護が終わった時点で保険会社に連絡し、いち早く車両を撤去したい。

 車両をレッカーしてもらうような場合は、持ち込む先の工場を決める必要がある。これも多くの保険会社は契約工場を全国に持っているので、特に決めた工場がなければ、保険会社におまかせするのがよいだろう。保険会社の指定工場であれば、そこまでのレッカー代が距離が遠くても無料になったり、代車の無料サービスや別途保険金がもらえたりする。

 また、遠方で事故に遭い、帰宅できずに宿泊する場合や、代わりの電車賃などが発生する場合、事故付随費用補償特約などに入っていれば、それらも補償される。詳しくは保険会社に連絡した際に確認してみよう。

追突などこちらに過失がない場合
 停車中に追突されたなど、こちらの過失割合がゼロの場合、自分の保険会社に連絡する必要はないように思えるが、その場合も連絡しておくとよい。搭乗者傷害保険は自分の過失割合に関わらず支払われるし、相手との賠償額でもめた場合、弁護士費用補償特約を付けていれば、ケースにもよるが弁護士を雇ってもその費用が賄われる(自分に過失がない場合、自分の保険会社は示談に介入することができないため、争う場合は弁護士を雇う必要がある)。

 どんな事故であってもとりあえずは保険会社に電話して、分からないことは聞いてしまうのよいだろう。ほとんどの人にとって、事故は不慣れなもの。対してコールセンターのスタッフはプロフェッショナルだ。実際筆者もお世話になったことがあるが、三井ダイレクトの場合は、事故対応サービスセンターに平均経験10年以上のベテランを配置しているとのことで実に頼りになった。

体に異常を感じたら、遠慮せずに申告
 最後に、警察が来たら警察の指示に従えばよいが、自分はもちろん、同乗者に少しでも体に不調を感じた場合は、その旨をちゃんと伝えること。警察は人身事故と物損事故で扱いが異なり、それによって使える保険も変わるからだ。とは言っても、現実には翌日になって首が痛くなるということもある。その場合はその旨を保険会社に相談しよう。また、病院に行く前に保険会社に連絡をすること。そうすることで治療費の請求を直接保険会社に回してもらい、自分で立て替える必要がなくなる。

保険金の支払い
 三井ダイレクトの場合、1事故ごとに人身事故・物損事故の専任スタッフが担当につくが、過失割合の交渉や治療費、修理費用の支払いなどは、自分や相手の病院、修理工場などがはっきりしていれば、後は保険会社に一任してよい。ただし相手に怪我を負わせてしまった場合は、自らお見舞いに行き誠意を見せることが、円満解決の近道に成るはずだ。

 解決までの進捗状況は、Myホームページに開設される事故対応専用のページで確認することができる。不明な点もインターネットを利用して問い合わせできるので、日中は忙しくて連絡できないという人にとっても実に便利だ。

 なお、実際に事故に遭った場合、具体的にどのような損害が補償対象となるか、意外と複雑で分かりにくい。そこで三井ダイレクトを例に、契約したクルマで事故を起こした場合、補償対象となる保険の種類とその割合を一覧にまとめてみた。ただし特約など契約内容によって異なる場合もあるのでご了承いただきたい。

ケース別補償対象となる保険

自分の過失割合5割10割0割自損事故
相手人身自賠責と合わせ対人5割自賠責と合わせて対人10割支払いなしなし
相手物損対物5割対物10割支払いなし対物10割
自分人身搭乗者傷害10割、人身傷害10割(内5割は相手の自賠責+対人で補填)、無保険車傷害特約搭乗者傷害10割、人身傷害10割搭乗者傷害10割、人身傷害10割(相手の自賠責+対人ですべて補填)、無保険車傷害特約搭乗者傷害10割、人身傷害or自損事故特約10割
自分物損相手の対物5割に加え車両5割(免責額除く)、身の回り品補償特約、レンタカー費用補償特約車両保険10割(免責額除く)、身の回り品補償特約、レンタカー費用補償特約相手の対物10割車両保険10割(免責額除く)、身の回り品補償特約、レンタカー費用補償特約
その他事故付随費用補償特約事故付随費用補償特約弁護士費用補償特約事故付随費用補償特約

 筆者はこちらに過失がある事故も、過失のない事故も経験しているが、自分の保険会社が介入しない過失ゼロの事故においても、搭乗者保険や人身傷害保険に入っていたため保険金が支払われたし、相手の補償額が適当かどうかなど、親身に相談にのってくれた。Myホームページからの質問に対しても一両日中には電話で回答をもらえ、非常に頼りになった。他のダイレクト系保険を試したことがないので断言はできないが、少なくとも筆者の経験において、ダイレクト系だからサービスに不満を感じることはなかった。

ロードサービス
 最近の自動車保険は、ほとんどの場合ロードサービスも行ってくれる。1年間に利用できる回数に制限があったり、レッカーできる距離に制限があったりするが、無料のケースがほとんどだ。

 筆者は昔高速道路上でガス欠になったことがあるが、レッカーで最寄りのPA(パーキングエリア)まで移動し、給油までしてもらったが無料だった。タイヤがパンクしてしまった場合、バッテリーが上がった場合、インロックした場合やガス欠した場合など、困った時にはぜひ頼ってみるとよいだろう。

歩行中の事故や他人のクルマを運転中に事故を起こした場合
 契約したクルマを運転している時以外にも事故に遭うことはあるし、保険を使えるケースはある。

 人身傷害保険に入っている場合は、自分だけでなく家族が歩行中や自転車を運転していた際などに起きた事故について補償してくれる(搭乗中のみ担保特約を付けている場合は除く)。その補償範囲は広く、たとえばクルマのドアで指を挟んでしまった、なんていう場合にも使えることはある。まずは相談してみるのがよいだろう。また、原付特約(ファミリーバイク特約)に加入していれば原動機付自転車を運転していての事故も補償の対象だ。

 さらに友人など他人のクルマを運転していて事故を起こしてしまうこともあるだろう。保険会社や契約内容によって異なるが、そういった場合も自分の保険を使うことができる。もちろん運転していたクルマに付けられた保険を使うこともできるが、そのクルマの保険の等級が下がってしまい、実質的にその契約者は損をすることになる。自分の保険で賄えば相手に迷惑を掛けることがないわけだ。他車運転特約というのがそれにあたるが、三井ダイレクトの場合はすべての契約に自動的にセットされている。これならば、年齢制限に見合わないクルマや家族限定特約を付けた他人のクルマでも安心して運転することができる。

 自分はクルマを持っていないが、他人のクルマを運転するというケースもあるだろう。そんな場合はドライバー保険という選択肢もある。通常の保険に入るよりも保険料を抑えられるので、マイカーは所有していないが、他人のクルマを借りて運転する機会が多い人は活用するとよいだろう。

総論
 これまで6回に渡り連載してきた「知っておきたい自動車保険」。実際には保険を使う機会はそう頻繁にあることではないし、保険のシステム自体、保険会社によって補償の範囲が異なるなど、決してシンプルとは言い難い。その中で、筆者の経験も踏まえて特に注意すべきポイントを記してきた。代理店を介さず直接やりとりをすることの多いダイレクト系保険だが、コールセンターなど、その分充実させているので、不明な点は電話やメールなどで問い合わせ、いざというときに後悔しない保険選びをしてもらえれば幸いだ。

自動車保険の種類から選び方、実際に保険を使う場合まで説明してきたが、多少なりともお役に立てたら幸いだ。

(瀬戸 学)
2010年 11月 4日