特別企画

【特別企画】日産のハイブリッドラグジュアリーセダン「スカイライン」でエコランに挑戦!

横浜市~静岡市間の167.9kmを走行。燃費は果たして?

筆者、編集担当、カメラマンの3名でエコランに挑戦!

目標は21.0km/L!?

 日産自動車のラグジュアリーセダン「スカイライン」のハイブリッド車で、神奈川県横浜市にある日産本社から静岡県静岡市の日本平ホテルまで片道160kmあまりを走行して燃費を競うというイベントが実施された。「世界最速のハイブリッド」を掲げるスカイラインだが、燃費の方もなかなか優秀であることを実証するよい機会だと思う。

 朝、日産本社に集合し、まずは説明を受ける。ぜひ上位入賞を目指したいところだが、早くも問題が。他チームの多くは2名で参加しているのに対し、我々は筆者、編集担当氏、カメラマンの3名と1人多い。しかも編集担当氏は見てのとおりの大男。彼を乗せて走るのは、燃費を競う上で大きなハンデになるのは間違いない……といっても、とにかくベストを尽くすしかない。目標はJC08モード燃費の17.8km/Lを超える20.0km/L、いや21.0km/Lだ!

 目的地は決まっているが、そこに至るまでの途中のルートは自由。日産本社を出てから東名高速道路まで、我々は首都高速道路と保土ヶ谷バイパスを使う、もっとも一般的なルートを選んだ。首都高速はアップダウンが多いので、最初はかなり低い数字も出たが、東名高速の横浜町田IC(インターチェンジ)に到達したあたりでの平均燃費は17.0km/L前後の表示。とても優れた数値とはいえないが、これからどこまで伸ばせるだろうか?

エコランには、最高出力225kW(306PS)、最大トルク350Nm(35.7kgm)を発生するV型6気筒DOHC 3.5リッター「VQ35HR」エンジン搭載の「350GT HYBRID Type P」(2WD)で挑戦。同モデルのJC08モード燃費は17.8km/Lで、目標はこれを超える21.0km/Lと大きく出てみた。目的地までのルートは自由と、エコランに際しての細かなルールはないが、制限時間は4時間で、超過した場合は1分につき0.1km/Lのペナルティが課せられる。あとはアクティブクルーズコントロールの使用が禁止されている程度
オプションの19インチホイール(タイヤサイズ:245/40 RF19)を装着する
首都高速道路と保土ヶ谷バイパスを経由して東名高速へ。大井松田ICを過ぎてからは比較的速度が緩やかな「左ルート」を選択した

 東名高速に入ると、渋滞こそしていなかったものの交通量は多め。3車線あるうちの一番左の車線を75~80km/hで走行する。今回の規則では、往路はアクティブクルーズコントロールの使用が禁止されていたので、細やかなアクセルワークを心がける。平均燃費は徐々に上がって、やがて18.0km/Lを超え、海老名SA(サービスエリア)の手前で19.0km/Lに達して、ちょっとうれしい。

 厚木JCT(ジャンクション)を過ぎると一気に交通量が減る。平坦なところや下りでは、できるだけEV走行になるようにアクセルペダルを戻し気味にし、上り勾配の坂では速度を落とさないように心がけつつも、アクセルを極力踏まないようにする。もちろん公道を走っているのだから、他のクルマに迷惑をかけないことが大前提。ウデ(足だけど)の見せどころだ。

 スタートからの走行距離が50kmを超え、中井PAを過ぎたあたりからは、走ったことのある人ならご存じのとおりアップダウンが激しくなり、高速道路としてはけっこうRのきついコーナーが続く。平均燃費もせっかく19.0km/Lに届いていたのに、アップダウンやコーナーが一段落する足柄SAのあたりでは17.5km/Lまで落ちてしまった。冷静に考えると、このあたりを走って17.0km/L台の燃費が出ていること自体、大したことなんだけどね……。

横浜町田ICあたりで平均燃費は17.0km/L前後(写真左)で、一時は19.0km/Lに届いたものの、足柄SAのあたりで17.5km/Lまで落ちた。燃費は落ちても気は落とさず、粘り強く燃費を意識して走行した

21.0km/Lを超えたのも束の間……

カーナビでは新東名高速道路を通るルートがひかれたが、なるべく平坦な道を選ぼうということでそのまま東名高速を走行することに

 足柄SAを越えてからしばらくは下り坂になる。気を取り直して頑張るのみ! 清水ICから目的地の日本平ホテルを目指すルートをひいたので、今回は新東名高速道路ではなく東名高速をチョイス。それまでよりもずっとEV走行になる時間が増えて、裾野ICのあたりで平均燃費は18.0km/Lを超え、ちょうどスタートから走行距離約100kmの地点でふたたび19.0km/Lに回復。わずか3kmほどの走行で平均燃費が0.5km/Lも上がるときもあった。軽くアクセルを踏んだ状態からスッと戻すと、多少の上り勾配であっても比較的EV走行になりやすいようだ。

 沼津ICを少し過ぎたところで、平均燃費は20.0km/L! さらには海沿いにある由比PA(パーキングエリア)の手前で21.0km/Lに達した! その後は上り下りあって一進一退を繰り返し、清水ICを出たところで平均燃費の表示は21.1km/L! このままできるだけ燃費を落とさずに行きたいところだ。目的地まであと13kmあまり。

 やや交通量の多い市街地を走りながら、平均燃費ではなく瞬間燃費の表示を見ると、概ね10.0km/Lより少し上という感じ。つまり市街地燃費もけっしてわるくないのだが、落ちるのは必至。そんなころに雨が降り出した。これが高速道路だと水の抵抗による燃費の落ち込みがより大きくなるところだが、高速道路を出てから降ってきたというのは幸運だったといえる。

高速道路を出てから雨が降り出した

 県道から右折して、日本平ホテルまであと4.5kmとカーナビに表示されたところで、平均燃費の表示は20.7km/L。そこから先は、かなりきつめの上り勾配が続いていて、アクセル開度を極力抑え、30km/h前後で走っていてもエンジンはかかりっぱなし。そんな状況でも、たまにEV走行になることには驚かされた。ただし、すぐにバッテリーが減ってエンジンがかかる。

 目的地まで残すところ2.5km! そこまできたところでついに平均燃費が20.0km/Lを切ってしまい、車内の会話のトーンが暗くなる……。さらに、そんなときに追い打ちをかけるように、後ろからバスがきてしまったので、迷惑をかけないよう少しペースを上げた。ここまで160kmあまりを走ってきたんだから、短距離の影響は限定的で、平均燃費はそんなに落ちないだろうと思っていたのだが、甘かった。表示される数字がどんどん落ちていくのを目の当たりにして、残念でならない気持ちになった……。そして、このままでは19.0km/Lすら切ってしまいそうだと思い始めたところで、ついに目的地の建物が見えてきた。これ以上落ちないよう、恐る恐るゴールまで走らせ、なんとか19.6km/Lを維持! 上位入賞にはほど遠い結果だったが、それでもこの燃費。スカイライン、立派である。

由比PA付近で平均燃費は21.1km/Lをマーク。残り13kmであとどれだけ燃費を伸ばせるか、車内では大いに盛り上がったが……
ゴール付近の上り勾配で燃費はいっきに落ち、結果的に19.6km/Lという結果に
往路で167.9kmを走行。EV走行率は80.8kmだった

 往路167.9kmのうち、EV走行率は80.8kmと、半分近くをモーターで走ったことが表示された。ただし、EV走行の割合が高ければ必ず燃費がよくなるというわけでもないらしく、いかにモーターが動いていないときに燃費を稼げるかが大事と、スタッフよりアドバイスをもらった。

目標の21.0km/Lに届かず、「お前の体重が重いからだ!」「いや、アンタのウデ(足だけど)がイマイチだからだ!」と喧嘩になったかどうかは秘密です

あらためて味わうスカイラインの優れたGT性能

 帰路はエコランから解放され、自由に走ることが許された。せっかく日本平にきたのに、雨で富士山の姿を拝むことができなかったのも惜しい話だが、せっかくここまできたので世界文化遺産にもなった三保の松原に行くことにした。

 しかし、さらにここでまた悔しいことが。三保の松原と聞いて誰もがイメージする砂浜があって、松がたくさん植わっている風景の場所には、クルマでは行くことができない構造になっていた……。ご覧の写真だけなんとか撮影することができた。

 そして東名高速に向かい、帰路につく。常に“プチエコラン”するのが身に染みついている筆者だが、朝一番に開発責任者の長谷川聡氏よりいただいた「スカイラインのGT性能を堪能してください」との言葉どおり、たまには「世界最速のハイブリッド」の本領を発揮させたくなるというもの。踏み込めば、それはそれは素晴らしいダッシュで加速力を披露してくれるのもまた、スカイラインの大きな魅力だ。

 そして、高速道路を長く巡行しても疲れを感じさせない。その理由はステア・バイ・ワイヤにある。ダイレクトアダプティブステアリングは、タイヤからの不快な入力をシャットアウトしてくれるというのが特徴の1つで、いささか人工的なフィーリングではあるが、メリットの方がはるかに大きいと思う。「スポーツ」モードを選ぶとギア比がクイックになり、中立付近が締まって高速道路でより走りやすくなる。

70km/h以上での高速走行時に車線(白線)に対する車両の向きをカメラで検知し、タイヤの角度と操舵反力を微調整する「アクティブレーンコントロール」を使用している際のモニター表示

 アクティブレーンコントロールは、ステアリングに軽く手を添えているだけで、車線間のちょうどよいところを自動的に維持して走ってくれる。普通なら轍に取られたりして修正舵が必要となるところ、それをあまり要しないところがよい。ゆるやかに曲がっているコーナーでは軽く舵角を与える必要はあるが、そこから先は細かく修正しなくて済む。たまにOFFにしてみると、いかにこの機能が頑張って働いているかがよく分かる。これについては、ぜひ多くの人に体験していただき、このメリットを実感して欲しい。本当に素晴らしい機能だと思う。

 この日は大雨に見舞われたのだが、まったく問題なく機能してくれた。また、アクティブクルーズコントロールの加減速の制御も非常に巧みで、なんら気になるところはなかった。そんなふうに、スカイラインのエコカーとしての実力と、GTとしての才能をたっぷり堪能した1日だった。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:中野英幸