F1カメラマン熱田護の「気合いで撮る!」

第4回:サウジアラビアGP

 3月27日に決勝を迎えたサウジアラビアGP。

 金曜日に国営の石油会社のアラムコの施設がイエメンからのミサイルで炎上という、平和の世の中で暮らしてきた僕にとってびっくり仰天な事態になりました。

 この写真は翌土曜日にサーキットに向かうバスの中からiPhoneで撮影した写真です。2日間ぐらい燃えていた感じでしょうか……。

 近くにミサイルが落ちてくるということ。でも、地元の人たちは全然普通にしています……。

「あ、またか……」という感じ。

 ミサイルが飛んできて、普通な感じという状況が、ミサイル攻撃がきたという事実と一緒くらいびっくりです。

 金曜日、FP2の開始の時間が15分遅れました。

 これは、このままレーススケジュールを続けてよいのかという疑問がパドックにあふれたからだと思います。

 その夜の深夜に、ドライバー、チーム関係者で長いミーティングがありました。その結果、レースはやるということになりました。政府とFIAから納得する回答が得られた結果だろうと思います。

 平和な日本に暮らしてきた僕にとっては、イエメンとサウジアラビアとの間にどんなことがあって、現在どのような状況なのかちょっとググっただけで理解できていませんが、不穏な世界状況の中、今後どのように平和が維持できていくのか不安になるには十分な出来事でした。

 ともあれ、レースが開催されてよかったです。

 しかし、角田選手にとっては忘れてしまいたいグランプリになりましたね。予選ノータイムでグリッドは最下位。レースもグリッドに着く前にトラブルでコース上に止まってしまいました……。何が原因だったんでしょうね……。

 こういうこともあるし、次から期待しましょうと言うしかないのが寂しい。

 ジェッダのコースは、昨年に比べて細かいところが整備されていて施設も充実していました。

 ポールポジションは、なんとペレス選手でした! 初ポール獲得! おめでとう!

 うれしそうな表情がサーキットモニターに映し出されて、こちらもうれしくなった!

 予選で、びっくりしたのがこのシーン。

 好調ハースのシューマッハ選手のアタックラップ。少しだけオーバースピードで縁石に乗りすぎた結果、オーバーステアになってマシンが左を向いて壁に激突しました。

 鈍い大きな音がしてマシンは大破。

 もちろん、赤旗でセッションは中断。

 レスキュー隊がシューマッハ選手の救出にあたります。

 大事には至らず、翌日にはドライバーズパレードにも参加していました。マシンの安全対策もしっかりとしていたおかげです。

 高速コーナーが続くのこのサーキットは、コースアウトが即・壁という現代のコースにしては危ないと批判もたくさんあります。

 でも、僕は数あるサーキットの中で、このようなヒリヒリするようなコースもあっていいのではないかと思います。

 レーススタートは、1コーナーの外側にあるゴールデンタワーというビルの45階から撮影しました。

 上から見るとゴージャスな感じがしますが、よく見ると、もうすぐスタートなのに多くの人がグランドスタンド裏を歩いています。日本GPとは明らかに違いますよね??

 まあ、人それぞれの楽しみ方なのでいいんですけどね。

 これは、セーフティーカー明けの1コーナーと2コーナー。

 ハースのマグヌッセン選手は今回もいいレースができました!

 9位入賞で2ポイント獲得。ハースのマシンは本物の速さを備えています。

 マグヌッセン選手は、シーズンが始まる直前までシートがなかったのですが、ロシア人ドライバーのマゼピン選手がウクライナの戦争のためにシートを喪失することで急遽レギュラードライバーに抜擢されたんです。

 もし、戦争がなければアメリカでレースをしていたかもという状況を考えると、巡り合わせが吉と出る場合もあるんだな~と思います。

 ハースにとっても、この人が乗ってくれたおかげでこの成績があるので、マゼピン選手には申し訳ないけれど、成績を出すということに関しては現状がよかったということになります。

 ピンクのアルピーヌ2台の争い。 どうしても、フォースインディアに見えてしまって……。

 オコン選手が6位入賞。アロンソ選手はリタイアでした。

 今期、今ひとつ調子が出ないのがアストンマーティンの2台。

 ベッテル選手は、開幕戦に続いて新型コロナ感染の影響でお休み。オーストラリアには復帰できるといいですね。

 代役のヒュルケンベルグ選手は、いい仕事したと思います。ストロール選手より1つ前の12位完走。

 優勝はフェルスタッペン選手!

 レース終盤にルクレール選手をかわしての勝利。でも、僕はそのとき、グランドスタンド裏をダッシュしていました……。

 だから、見ていませんし、当然、撮っていません……。

 僕がようやく、パドック裏にたどり着いたときに見たモニターは最終ラップでした。

 なんとなんと!

 さらにダッシュして、ピットレーンに出たときはチェッカーフラッグの最中。もう、息も上がりきってレンズを変えてやっとの思いで撮りました。汗だく……。

 パルクフェルメで優勝争いの2人の表情をどうぞ!

 昨年までのハミルトン選手との戦いで見た雰囲気とは全く違います。

 僕は、どちらもいいと思いますね。

 ピリピリの昨年のこのヤローという感じと、今年のレース後にあのときどうなった、と笑顔交えて話す優勝争い。

 まずは、1勝目。

 強いフェルスタッペン選手のレースでした。さすがチャンピオンです! 日本で作ったホンダPUがいい仕事できています。

 レース後のインタビューセッションでのペレス選手。少し残念そうな表情。

 ポールポジションが1つのきっかけとなって、予選での速さを維持できれば、今後の活躍も期待できることにつながるんじゃないでしょうか。

 予選、Q1落ちというハミルトン選手。

 レースは10位完走。とても納得いくレースではありませんでした。

 メルセデスの不調は、普通に考えればチーム力を考えると挽回してくることになるんだと思います。でも、あの常勝チームがこんなことにもなるんだなあと、F1というカテゴリーの厳しさを感じますね。

 今年から、大きく変更になったF1マシンの形。

 フェラーリが上がり、レッドブルとガチ勝負。メルセデスは不安です。

 ハースとアルピーヌ、アルファロメオもいい感じ。アルファタウリも悪くはないのかな……。

 マクラーレンとアストンマーティンはちょっと大変そう。ウイリアムズは去年よりはよさそうなんだけど。

 次は、3年ぶりのオーストラリア、メルボルン。4月8日が楽しみですね!

 F2の岩佐選手。開幕戦のバーレーンでのマシンの出来と比べると、今回は少し勝手が違ったようです。

 レース1が6位、レース2が7位で、ランキング10位。レースペースが厳しそうに見えました。

 佐藤選手。レース1が8位、レース2が17位となりました。突然のレース2の失速の原因を解決して、次戦に期待したいです!

 F2、次戦はイモラです。

熱田 護

(あつた まもる)1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1985年ヴェガ インターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。1992年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行なう。 広告のほか、「デジタルカメラマガジン」などで作品を発表。2019年にF1取材500戦をまとめた写真集「500GP」を、2022年にF1写真集「Champion」をインプレスから発行。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。