F1カメラマン熱田護の「気合いで撮る!」

第15回:モナコ~日本への旅

 モナコ。世界で2番目に小さな国です。面積は2.02km 2 平方キロメートル。皇居と同じくらいしかありません。

 この小国に、世界一の人口密度でリッチな方々が住んでいます。

 フランスやイタリアでは、Yahoo! JAPANは見られないですが、モナコでは見れたり、携帯のつながり具合もモナコに入った途端につながりにくくなったりします。

 尾張さん行きつけの、モナコのイタリアンレストランで、ペペロンチーニ・コン・ボンゴレ。

 やっぱり、イタリアほどのおいしさを求めてはいけません。ピザも然り……。

 1人、3000円くらいだったかな。

 トンネルの中は、こんな感じです。

 セナさんが走っていた頃は、金網がなく、ガードレールも1枚でした。

 そこを轟音を響かせて向かってくるマシンの写真を撮るには、耳栓が絶対に必要だったし、世界で一番恐怖を感じる場所でしたが、今は耳栓はなくても大丈夫ですし、恐怖も感じなくなりました。

 ただ、走ってくるマシンの風圧に耐えつつ、金網にへばりつきながら30分も撮影すれば、ホコリで顔は真っ黒になります……。

 毎年、モナコにサービスデポを出してくれるキヤノンさん。センサーの清掃や、故障の対応など本当に助かります。

 機材が壊れて撮影できなくなるという事態だけは避けなくてはいけないので、それを助けていただける存在が近くにいてくれるというのは、われわれカメラマンにとって百人力であります!

 モナコに向かう途中の道で。マクラーレンのレンタカーなのかな??

 モナコのプレスルーム。広くはない。マスクは僕も含めて、誰もしていません。

 日本に帰るために必要なPCR検査結果。日本書式に対応してくれています。

 サーキットのパドックの端に検査ブースがあって、検査の翌朝にこの用紙ができあがっています。

 帰国にあたって、携帯にインストールしてあるMy SOSというアプリに、上のPCR検査の結果をアップロードしたり、いろんな項目に記入したりして申請して、審査が完了するとこの画面になります。

 この画面を、空港のカウンターで提示する必要があります。

 グランプリが終わって、月曜日のニース空港。多くの旅人でごった返しています。

 空港でも、90%以上はマスクしていません。あまりの人の多さにビビって、僕はマスクしていました。

 ニース空港のゲート前の売店で買ったサンドイッチ。1400円だもの……奥の方は2000円、円安怖い!!

 パンも好きだし、フランスのパンはおいしい。でも、もう飽きたし、ご飯頼むって気持ちであふれてました。アメリカ、ドイツ、スペイン、モナコという4週間の旅の後、やっと日本に帰れる!

 ニースからロンドンへ。ロンドンから、JALで羽田へ。

 羽田空港着の日付が、5月31日。この日が、全員PCR検査の最終日でした。6月1日からは、一部の国からの到着便以外、検査なしで入国が可能となります。

 こうして待合室で、自分の検査結果がモニターで表示されるのを待つのです。

 するとですよ、まわりの人は呼ばれて、先に進んでいくのに、僕の番号は全然表示されないのです……。時間とともに、もしや……と思うじゃないですか……。

 すると、館内放送で1958番の方は138ゲートまで来てくださいというアナウンス……。

 渡された健康カードに貼られたシールは、陽性。

 コロナ禍になって、少なくとも150回以上は受けてきたPCR検査。全て陰性、ネガティブでここまできました。

 そんなに驚きはしなかったし、いつかは感染するだろうという気持ちで旅を続けていました。と同時に、僕は感染しないのかもというような、変な自信というか思い込みみたいなものもありました。

 が、ともかく、ついに、やってきてしまいました。陽性。

 昨年は必ずどこに行くのもマスクをしていました。

 今年になって、あれほどうるさく言っていたF1のパドック内でもマスクなしで大丈夫というお達しが出るし、オーストラリア、イタリア、アメリカ、スペイン、モナコと、ほとんどノーマスクで過ごしていました。

 移動の飛行機内だけは、マスクしていましたけど、空港や街中は完璧にマスクなしです。まあ、マスクなしの方が快適ですからね。

 今回のこの陽性というのは、モナコGP期間中か帰国途中に感染したことになります。

 マスク、マスクというけれど、マスクをしていれば感染しないかと言えばそうとも限らないわけだし、実際に僕がいつどこでウイルスを体内に入れてしまったのかは正直、分かりません。

 そして、パーテーションで分けられたあちら側には、僕と同じ陽性判定の人が20人くらい座ってました。

 そこで、検疫の方が来てくれて、体温を測り、症状の有無を確認し、パスポートを渡して、スーツケースの特徴を伝えます。入国審査は、別ルートで済ませてくれて、スーツケースも持ってきてくれるそうです……。

 1時間くらいの待ち時間にお弁当が出ました! 全くの無症状な僕にとって、ものすごくおいしいお弁当でした! ご飯がおいしい!

 でもね、もし同じ状況で、1日、日本への入国が遅くなっていたら、この検査はなくてそのまま家に帰ってしまって奥さんに感染させることになっていたし、撮影の仕事もあったのでその関係者の方々にも移していたことになってしまっていた……。そう思うと、よかったとも思うけれど……。

 事前に入国審査が終わっていたので、待合室からいつもの検疫ゲートの隣の関係者用の出口の横に用意されていたスーツケースを持って、ゲート横から建物の中の通路とエレベーターを使って外に出ると紺色のハイエースが止まっていて、同年代のおじさん3人が乗り込み、銀座のホテルに向かうのでした。

 まあ、移送されていく感じですよね……。どうなっちゃうんだろう……って感じ。

 30分くらいのドライブで、ホテルに到着。ホテルの車寄せで、名前を呼ばれて1人ずつ建物の中に。

 すると、看護師の方が完全防備で透明の衝立越しに問診して、体温、血中酸素、血圧とかを測り、このホテルでの過ごし方を説明してくれます。

 僕の部屋は815号室。1人でエレベーターに乗り部屋に移動。

 ここが、お部屋でございます。むちゃくちゃ狭くはないけれど、広くはない。テレビと冷蔵庫、湯沸かし器はあります。

 この部屋から、一歩も出られません……。誰とも、会うこともありません……。

 受付でもらった書類など。

 毎日2回、8時と15時に体温と血中酸素飽和度を測ります。

 その結果を携帯のチャットで問診とともに報告します。それをもとに、毎日一度は看護師さんから部屋に電話があります。もし体調に変化があるとかすれば、すぐに対応してくれる体制が整っています。

 水やポカリなどは、なくなったら電話すると届けてくれます。

 洗濯用の洗剤もくれます。ですが、部屋の中で手洗いです。

 そして朝ご飯が8時、お昼ご飯が12時、晩ご飯が18時に届きます。

 外から届くものは、必ずこの白い台の上に置かれています。置かれると、電話か館内放送があります。その時だけ、ドアを開けることができます。

 朝ご飯。

 朝ご飯パターン2。

 お昼ご飯。

 まい泉の海苔弁当。お昼ご飯

 晩ご飯。

 一緒のパターンが続かないように工夫をしてくれているのは、本当にありがたいことです。これを書いているのが、9日目です。まあ、全部、冷たい弁当なんですけどね。

 あれだけ、パンに飽きて、ご飯がいいよって思っていたんですけど、毎日毎日続くとなると、これがつらくなってくるもんです。

 ウーバーを頼んでみました。はなまるうどん。1190円。

 空港で食べた、そんなにおいしくないサンドイッチが1400円だから、やっぱり日本の物価はとてつもなく安い。

 Amazonで、味噌汁を買った。まだしばらく出られそうにないので、もう少し買おうか思案中。

 のど飴は、コールセンターに言えば持ってきてくれます。

 MotoGPの年間パスも買ってしまいました。これで、どこにいても見られます。

 あと、iTunesであいみょんと綾香さんの曲を買いました。

 こういうTV、見てしまいますよね……。

 僕の症状は、このホテルに入って2日目くらいに微熱とせき、鼻水が少々出た程度で、今は回復しています。

 なんともね、元気になればなるほど、この部屋から出られない、誰とも会えないという軟禁状況というのはつらく長く感じます、こんなことは人生初です。というか、ほとんどの人は経験ないですよね。

 ここまで、やる必要があるんでしょうか? 例えば病院に入院しても、看護婦さんはきてくれるし、病室を出てトイレに歩いていくしね。

 僕が入国した5月31日に日本の空港で陽性判定されたのは104人でした。少なくとも、6月1日以降は入国の人数も増えるので、多くの感染者が街中に出て、本人も知らないまま行動をするわけです。

 その時に、どれだけコロナを拡散してしまうのか、どうなんでしょうね。

 まあ、ヨーロッパ、アメリカはとっくに観光にどんどん来てください状態ですからね。

 僕のように、オミクロンの場合はほとんど軽い風邪の症状の人が多いそうなので、そのまま治ってしまう人も多いでしょう。大局は、多少感染者が増えようとも、経済を回していきましょうよ! ある程度移って免疫を得ましょうという舵取りですね。

 そういう中で、僕はギリギリのタイミングで感染して、隔離されたという貴重な体験をさせていただいています。空港での検査、そこに関わる検疫の方々、係の方々の努力は大変だっただろうと思います。この隔離ホテルのシステムとか、看護師やホテルの清掃などに関わる方々。現場の方には感謝しかありません。その経費は莫大だと思いますし、元は税金です。そんなこんなで、このコロナ騒動、妙な儲け方をしているわるい大人がいないことを祈ります。

 運動不足は甚だしい。社会復帰ができるのか不安になってきています。早く、自由になりたい!

 ということで、アゼルバイジャンGPは欠席です。カナダには行けるのか??

熱田 護

(あつた まもる)1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1985年ヴェガ インターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。1992年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行なう。 広告のほか、「デジタルカメラマガジン」などで作品を発表。2019年にF1取材500戦をまとめた写真集「500GP」を、2022年にF1写真集「Champion」をインプレスから発行。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。