F1カメラマン熱田護の「気合いで撮る!」

第50回:エミリアロマーニャGPは大雨の影響で中止……現地の様子を交えつつ、アゼルバイジャン振り返り&イタリアまでの旅をお伝え

 もうご存知の方は多いと思いますが、エミリアロマーニャGPは中止になりました。

 理由は大雨の影響で、写真にあるように洪水のためにパドックの一部も冠水してしまっているし、あたりの街もあちこち水があふれていて道路も寸断されているためということ。

 今回はまずF1中止という大事件のことから書いてみようと思います。

 イタリア、イモラサーキットの周辺で洪水の影響があるかもしれないということは、日本からフランスのニース空港のホテルに着いてSNSを見て知りました。

 水曜日の朝にニース空港でレンタカーを借りてイモラに向けて出発。イタリアに入ったあたりからずっと雨が降っていました。

 その時点では、洪水の影響はあるかもしれないけど予定通り開催するのではないかと思っていました。

 目的地に設定してあるホテルまで200kmくらいのときに、僕のiPhoneをApple CarPlayでつないだナビ画面にFIAからのメッセージが来ていてなんだろうと思い、パーキングに入って確認してグランプリ中止を知りました。

 上の写真は、ボローニャ手前で高速道路が通行止めになってしまい、一般道に出たところで渋滞中です。

 多くの場所で道路が冠水しています。泊まる予定のホテルから何時に来るのだと問い合わせの連絡が何度も入ります。そのホテルに向かう途中にイモラサーキットがあるので行ってみました。その写真が最初の写真です。

 イモラの街中は通常と変わりないようでしたし、スムーズに通行できる感じでした。川の水の量と流れの速さが恐怖を感じるようでした。

 地図の左の街がイモラ、中央の街がアルファタウリがあるファエンツアで、僕の予約してあるホテルがある街が右のフォルリ。距離にして40kmくらいです。

 通常ならばSS9という国道を使えば40~50分くらいの道のりです。

 一番上の写真をイモラで撮ってからフォルリに向かいました。イモラの街を出てすぐに通行止めです。ファエンツアの手前で左折して畑の中を進みつつ向かおうとするのですが、少し走っては水が深くて通行止めUターン。その連続です。

 道は農道で、麦やブドウなどを作っている畑があります。その畑に水を引くための小川があふれてしまっているんですね。

 水の中、脱輪してしまったクルマの救出作業を待って進みましたが、その先すぐに進めない水深になり、戻った場所です。

 Google マップを駆使して、なんとかフォルリの街に近づこうとするのですが、全くどうにもならなくなってきたので、一度イモラに戻って高速で先に進めないか試そうと作戦変更。

 地図上のE45とあるのが高速道路。イモラからE45に乗ってしばらくするとフォルリ方向は通行止めで、上の方に分岐してコティニョーラで降りました。そこからがまた同じ状況で、行っては引き返しの連続。

 そして、やっとホテルまで3kmのところにきてこの状況になりました。ここを行って左折して進めばフォルリの街です。

 いちかばちか行ってみました。もう、そこまできているので、また引き返したくないという気持ち。

 サブサブと進みます。先の街路樹がなくなるところまで行くと、その先には水の中に大型トラックが脱輪して斜めに放置、乗用車が半分水に沈み数台放置してある光景を見た途端。

 やばいでしょ! エンジン止まったらどうしよう! 誰もいないし……。

 焦って、バックして戻りました。

 こうなっちゃったら、困りますからね。行けるんじゃないの? ってのはダメですね。

 また何度もUターンをして、そこにいたおじさんに「フォルリに行ける道はありますか?」と聞いたら、「大丈夫、私はフォルリから来たんだよ!」って笑顔。その笑顔が忘れられません!

 携帯を差し出してGoogle マップで道を教えていただきました! グラッチェ!

 やっとホテルにたどり着いたのが夜の10時前。40kmの道のりを2時間半さまよっていたわけです。

 当然開いているレストランなどないので、在庫のペヤングを食べました。安定のおいしさでした。でも、イタリアに来て最初の晩ごはんがペヤングってのは寂しい……。

 でもしかし、水というのは恐ろしいですね。東北の津波の被害を思い出しました。

 たった10m家の位置が違うだけで浸水したりしなかったりというのは、東北も今回のイタリアも同じです。農作物への被害も大きいでしょう。

 今後の行政からの支援や、募金などの支援も必要になると思います。早い復旧を祈ります。

 もしF1を強行したならば、まずお客さんがサーキットにたどり着けるとは到底思えません。どう考えても中止ですね。気合いを入れてきたんですけど、致し方ないですね。災害ですからね。

 では、アゼルバイジャンから振り返りたいと思います。

 アゼルバイジャンのご飯は、ここでチャーハンを買ってプレスルームやホテルで食べていました。

 エビチャーハン、800円くらいかな。おいしくはないけど、ケバブとかよりはいいかな……。プレスルームのパンはおいしくないし……。

 マックにも2回行った。

 ビッグテイスティバーガー。ビックマックはないのよね。1020円! 高い! しかもおいしくない!

 ご存知ポテトのM。320円。これも、おいしくない、日本のマックと全然違う??

 世界中のマックに行きますけど、アゼルバイジャンのマックはおいしくない……なんで??

 アゼルバイジャン名物の城壁の裏側はこんな感じ。観光地です。

 お土産やさんがあったり。

 いつもの映画館の屋上で記念撮影。今年から柵が設置されて安全になりました。

 街中は深夜までにぎわっています。

 日曜日のレースが終わって食べた、この天ぷら蕎麦がぶっちぎりで一番おいしかった!

 火曜日になったばかりの深夜にアゼルバイジャンを出てドーハ空港。もうコロナ前の旅行客の多さに戻りましたね。

 空港内にあるでかい像。なんで、ガックリしているんだろ??

 絢爛豪華に見えるドーハの空港内。

 ドーハから、日本行きには乗らず、フランクフルト行きです。満席でした。

 フランクフルト市内です。フランクフルトの街が見えます。これから着陸の絵。

 マックばかりですけど、フランクフルト空港で待ち時間にマックです。このマックは電源もあるのでちょうど仕事もできていいんです。こちらの味は世界標準のマックです。

 成田行きのJALの路線図。なんとなんと、滞在していたアゼルバイジャンの真上を通過してました。ものすごい無駄にも思えるんだけど、航空券の都合上致し方なし。

 成田空港着。コロナ禍以降、帰国時に何もしなくても入国できる初めての旅となりました。

 僕はコロナ禍が始まった2020年の後半から海外に行く旅をしてきました。当初は、行く国によって全く対応も違ったし、日本に帰ってくるのもままならないという異常事態になってましたね。

 2021年は5か月間ヨーロッパ滞在をしたりしてました。いやもう本当に大変な旅の連続でした。

 PCR検査、余裕で100回以上鼻に突っ込まれています、その料金のぼったくり具合は日本が一番ひどかった……。海外渡航のための証明書(といっても大した記述はないんですよ)込みで6万円とかありました。滞在していたアンドラで同じことをしてもらって6000円くらいでしたからね。なんでなんでしょ? ここ一番で儲けてやろうという業者が圧倒的に多かったということでしょうかね。情けないね。

 世界中どこの空港もガラガラ、当然飛行機はどんどん減便していきます。機内も当然ガラガラ、エコノミーシートは4席確保してフルフラット確実みたいな状況。

 国によっては、事前に届けなければならない申請の書類が大変なページ数の申請書というのも何度もありましたし、それをやらねばならぬ時間や手間も膨大なものがありました。入国後も現地の人と接しないように生活しなければならないような完全隔離のアブダビGPというのもありました。

 去年のモナコ帰りの羽田でコロナ感染が出てしまって、銀座のホテルで15日間一歩も外に出られないという経験もしました。つらかったなあ……。

 書き出すとキリがなくなるくらい、いろんな思い出があります。もう、あんな状況はごめんです! 普通がいかに尊いかということですね。

 入国。マスクしているのは日本だけという感じですが、これはいいのかわるいのかは置いといて、国民性なんでしょうね。感染予防のために少しでも有効ならば付けるという気持ちもあるでしょうし、みんなが付けているからという気持ちもあるでしょう。

 日本以外で言うと、外していいんなら絶対外すという人ばかりなんでしょうね。今いるイタリアでは、全くマスクしている人はいないです。空港でお年寄りの方がたまにしているくらいかな。

 マイアミGPはお休みしたので、大吉とドックランに行ったりしてました。

 お仕事で函館に行ったり。

 ジンギスカンを食べたり。

 鈴鹿サーキットにクラブマンレースの撮影に行ったり。

 鈴鹿の焼肉といえばみさき屋! 僕が鈴鹿にいた頃からある焼肉屋さんです。

 おいしくて安い!

 鈴鹿からの帰り道、御在所のSAで買った赤福。普通の方がいいかもね。

 函館で借りたご存知ヤリス。

 北海道なので四駆なんですね。オールシーズンタイヤです。

 鈴鹿に行くのに借りたご存知フィット。

 てっちんホイールの一番ベーシックなグレードだと思います。

 連続して乗ったので、その差がよく分かりました。2台とも走行距離が5万km弱で同じくらいでした。

 トヨタvsホンダでよく比べられる2台ですよね、圧倒的にヤリスの方がよく売れているらしいじゃないですか。乗ると全然違うんですよね、ヤリスは硬めでドタバタ、フィットは柔らかめ。乗り心地は圧倒的にフィットの勝ち。

 CVTのつながり方も車内での走行音もフィットの勝ち。ヤリスはアクセルを踏むとセンターコンソールの奥の方から異音がして、それが嫌だったというのも心象的にあるのかもですけど、室内のデザインやら車体のデザインも僕はフィットの方が全然好き。

 どっちも、もちろん面白いとかよく曲がるとか速いとかそんなカテゴリーのクルマではなく、普段のお買い物とかお出かけとかそんな使い方が大事になってくるクルマですから、アクセルやブレーキの踏み込み量、それがより普通に加減速してくれる感じがほしいです。

 そのような視点で見ると、僕にとってはフィットの勝ちです。

 唯一、ヤリスの方ががいいなと思ったのが、シフトのBモードを使ったときの減速感がよかったかな。

 でも、世間ではヤリスが圧勝という判断なんですよね。トヨタというブランド力なんでしょうか? 僕がズレているのかな? 分からんもんです。

 さて、羽田空港です。エミリアロマーニャGP、モナコGP、スペインGPの3連戦に出発です。

 ロンドン経由で、ニースまで行きます。北極回りです。

 ロンドンヒースロー空港のターミナル5。大勢のお客さんですね。もうどこもこんな感じ。

 ブリティッシュ・エアウェイズでニース空港着。

 今回は少し早い日本出発でした。行き先も最初のGPのイタリアではなくフランスのニース。その理由は、3つの国でそれぞれレンタカーを借りるのではなく、借りっぱなしにして移動を飛行機でなくレンタカーで行くという作戦。その中間地点でレンタカーを借りて動けばいいのではないかと考えたからです。

 なので、火曜の夕方にニースに着いて1泊して、水曜の朝にレンタカーを借りてイモラまで移動という旅程を組みました。航空券、ホテル、レンタカー、食費と全部大変高騰しているので少しでも安く行かねばということですね。

 ニース空港近くのホテル。レンタカー3連戦作戦は、行きと帰りに1泊ずつホテルに泊まらなくてはならないというマイナス面もあります。

 でも、移動をクルマで行くということは、機材を持って飛行機に乗るときのストレスがなくなるというメリットもあります。とかなんとか、一生懸命考えても、今回のGP中止とかなるとおいおいってなるんですけどね。

 ニース空港のレンタカー受付。今回はAVISレンタカー、予約はホリデーオートというサイトで予約しました。20日レンタルで12万円……。これでも安いんですよ。

 貸してくれたのは、ルノー キャプチャー。日本でも売っています。

 今回はいつもの一番安いカテゴリーではなく、1つ上のクラスを予約したんです。その理由は、長距離を1人で移動するので、僕のスーツケースとカメラバックをトランクに格納して外から見えないようにして、移動途中の高速道路の給油やトイレ休憩でたくさんいらっしゃる泥棒さんの標的になる確率を減らしたかったからです。

 だがしかし、このキャプチャーの荷室は狭く、てスーツケースだけしか入らんかった……残念……。

 走行距離が663kmのほとんど新車。ガソリンで6速MT。

 Apple CarPlayで日本語のナビ画面が出ます。ホテルまで556kmの道のりです。ずーっと高速道路で行けます。フランスとイタリアの高速道路は有料です。でも全部で6000円もしなかったかな。日本の高速は高すぎですかね。

 イタリアの海沿いの高速道路は工事区間が多くて渋滞が何度もあります。最高速は130km/hです。取り締まりカメラも多数、注意!

 イタリアの高速道路を降りたところで給油。何があるか分からんので、とりあえず満タンは安心ですからね。32.3L入って、8570円。リッター265円す……。燃費は約15km/Lですね。わるくないです。

 ホテルに着いたところ。何度も水の中ジャブジャブ進んだので汚れてしまいました。

 このキャプチャー、デザインはいいですよね。車体も内装もシートもいい感じ。1.3Lターボエンジンです。3000回転から上はいいんだけど、それより下のトルクが少ないのがちょっと残念。

 乗り心地はルノーだからいいんじゃないかと思っていたんですけど、低速ではそれっぽいんだけど、車速が上がって段差でゴツンゴツンくるのはフランス車としてどうなのよ? と思いました。あとは普通です。でも、今回はこのあとも長い付き合いになるので印象は変わるかもですけどね。

 今回のイタリアのホテル。きれいで静かで快適です。当たりです!

 イタリアにしては珍しく、朝ごはんが充実しています。やることがほとんどなくなってしまった今は、快適でありがたいです。

 昨日、少し街を歩いてきました。フォルリの街は全く普通の状態です。

 街の中心にある修道院。個人的にですよ、神様は本当にいるのかと思うことしばしば……。

 昨日の晩ごはんはピザにしました。Google先生に聞いて探しました。

 とってもにぎわっているレストランで活気あるイタリアって感じの店内でした。1人なんで寂しいのでテイクアウト。

 デカくて、お腹いっぱいになりました。当たり前ですけど、おいしかったですよ! 10ユーロ、1500円。

 という感じですね。やることがなくなってしまったので、あれこれ長く書いてしまいました。

 でも、長く取材していればいろんなことがあります。世界ではいろんなことが起こっています。ニュースでは、そのとんがったところを報道しがちですよね。

 例えば、今回の洪水のこと。

 もちろん大きな被害があってこの近所にも実際に自宅が浸水している方もたくさんいます。でも、実際の大半の人は普通に通勤して普通通りに生活している人がほとんどです。

 このホテルでは、たくさんキャンセルが出ていて、僕を含めて3組くらいしかお客さんはいません。そういう意味では、洪水の影響はあるんですけどね。

 で、何が言いたいかというと、被災された方には、それぞれそのニュースを見て知って、できる人は積極的に募金などで応援してしてほしいと思います。ただ否定的なとんがった意見でSNSで騒ぎ立てるだけで、具体的に何も応援しないのであればやめてほしいと思うのです。

 ウクライナの戦争でも続いていて、今も人が亡くなっていっていますよね。災害、戦争、神様、仏様、一体何をしているんでしょうと思うのです。今こそ、出番ではないでしょうか!

 時間がありすぎるのもよくありません……。

熱田 護

(あつた まもる)1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1985年ヴェガ インターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。1992年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行なう。 広告のほか、「デジタルカメラマガジン」などで作品を発表。2019年にF1取材500戦をまとめた写真集「500GP」を、2022年にF1写真集「Champion」をインプレスから発行。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。