F1カメラマン熱田護の「気合いで撮る!」

第51回:大雨で大変だったイタリアからモナコへ移動。ホンダのF1復帰について思うこと

 イタリア、フォルリのホテルに1週間いました。これは、予定通り。

 その間に考えたのは、また大雨が降って周辺の状況が悪化してしまうとフランスへの移動が困難になってしまうかもしれないということ。たどり着くまでパニックにも似た状況でクルマを走らせたくないという気持ちです。

 天気予報を見ると、雨量が少ない雨の日は時々あるけれど、おおむね晴れで気温が上がるという予報。ですので、たまっていた原稿書きをやってました。ホテルが快適でよかった。

 食事は、中華にも行ったり、ピザを食べたりしてました。

 この写真はピザ屋さんです。といっても、頼んで焼いてくれるわけじゃなくて、ピザはケースの中にあって、好きなものを頼むとすぐ出してくれて包んでくれます。すごく繁盛していて地元の方がひっきりなしにやってきてましたので、僕も行ってみました。

 四角いピザです。フンギ(きのこ)ピザ。ポモドーロ(トマト)ピザ。モッツァレラピザです。とってもおいしかったし、3切れで5ユーロ、750円。安い!

 街中は至って普通です。でも、歩いている人たちの中には、長靴で泥だらけの人たちもよく見ました。

 移動する前の月曜日、1週間分の洗濯にコインランドリーを探して行ってきました。

 このゴミ袋は、1人の女性が持ち込んだもの。中は泥だらけになった洗濯物です、聞いてみたらこのフォルリの郊外の街からでした。2mの水が家に押し寄せたそうです。とてもとてもたくさんの水が来て、とても大変だと言っていたような気がします。イタリア語だったので……なんと、声をかければいいのか……。

 月曜日にイモラに行ってみることにしました。

 これはフォルリの街中です。この向こうには川が流れています。水に浸かった家財道具が道に移動してあります、これらの瓦礫を回収するトラックも多く見ました。

 この雰囲気は、福島県の沿岸部で見た雰囲気と全く一緒です。ただ、その範囲と規模は当然、あそこまで大きくはありません。この写真だけだと、そんなイメージに取られるかもしれませんが、街の一部です。

 多くの若者が、こんな感じでスコップを担いで復旧にあたってました。
頑張っていました。国道がまだ通行止めだったのでファエンツアには向かうのを諦めて、高速道路でイモラに向かいました。

 その途中で、911 タルガ。水没しちゃったのかな? 修理できることを祈ります。

 先週より随分水量が減っていました。まだまだ平常時よりも多いですけれどね。

 サーキットは撤収作業が行われていました。グリッドの位置が前方に変更になってました……。これがF1のものなのかどうかは確認できていません。

 スタートしてすぐのところには、これまでなかったスタンドも作ってありました。

 橋を渡ったところにあるフェラーリのモニュメントは保護シートがかけてありました。

 セナさんの像まで小道を歩いて行くのですが、その途中にあった売店……。

 セナさんの像の周辺やそこに至る道は川とは反対側にあって、全く洪水の被害はありませんでした。フェンスに取り付けてあるフラッグの数は3倍くらいに増えてました。ここに写っている人たちはブラジルから来たそうです。リオデジャネイロだって言ってました。セナはNo.1だって。僕も、そう思います。

 ここに来るまでパドックからだと、ゆっくり歩いて15分くらいかな……。何度歩いても、何度来ても、胸が苦しくなりますね。

 29年になるんです、そんなに前のことなのに、思い出すとつらいですね。また、この像の表情がね。

 それにしても、このイモラというサーキットはいろんなことがあるサーキットですね……。来年こそ安全で無事に開催されますように。

 グランドスタンド下にあるセナさんの写真。だいぶ色あせてきてます。

 火曜日に予定通りニースに移動。工事が多くて途中何度も渋滞でしたけど、6時間ぐらいでニースの定宿に到着しました。ずっと天気よくて、クルマの外気温計だと29℃くらいでした。

 水曜日にモナコまで行ってみることにして、ニースで給油しました。

 39Lくらい入って、1万1000円って……むむう……リッター290円だもんね……厳しい……。

 水曜日にホンダとアストンマーティンの発表がありましたね。うわさ通りでした。

 よかったですね。よかったと思いますけどね。いいことなんですよ。そうあってほしいことだし、嬉しいこと。

 でも、ずっと現場にいて感じることはですよ、なんで、こんなことになっちゃったんだろうって思うんです。たぶん、多くの方もそう思ってますよね。

 F1の世界でチャンピオンになるって、ものすごいことです。HONDAがチャンピオンPUになったのは、ものすごいこと。それはレッドブルというチームとフェルスタッペン選手と共に戦えたからこそ。アルファタウリにも同じPUが載っているわけですからその差が分かりやすいですよね。

 レッドブルホンダはぶっちぎりに速くて、アルファタウリホンダはポイントを取れるか取れないかという明確な差。PUだけ速くてもチャンピオンにはなれないんです。現状のその最強のドライバーとチームと共に戦えるという事実を自ら放棄してしまったわけです。

 カーボンニュートラル燃料とモーターの2026年レギュレーションなどは、2020年時点に決断する時点である程度は予想できたこと。2022年8月に正式のレギュレーションが出るずっと前にほぼ分かっていたことです。だから正式な発表を待って準備していたアウディも参戦発表したわけですしね。

 それを今、レギュレーションがわれわれの目指す方向と合致したからということを復帰の理由にあげられても説得力がないし。アメリカでのF1人気爆発も、もうずっと前からそのきざしは鈍感な僕でも感じるほどでしたし……。

 なのに、そのやめる決断をなぜしてしまったのか? 2年とか3年先のことをなぜ、冷静な判断をできなかったのか??

 それがホンダだと言ってしまえばそれで済んでしまいますけどね……。現場やサクラ、多くのサプライヤーの人たちの努力、苦労を一体なんだと思っているんでしょうか?

 浅木さんの言っていたように、こうなってしまった以上、次のアストンマーティンと一緒にチャンピオンを再び目指すというチャレンジに注目くださいということなんですけどね。

 今、そう言ったところでどうなるわけではないんですけどね。超絶もったいないと思うわけです。三部さんの会見を見ていて、イタリアの災害にお見舞いの言葉がありましたけれど、ひと言でいいのでホンダF1ファンに向けて右往左往したことについての言葉もほしかったですね。

 ともあれ、レッドブル、フェラーリ、メルセデスにはホンダPUは載らないですから、そうなると現状のアストンマーティンというのは一番よさそうです。

 でもね、もう少しだけ、すみませんね。

 アストンマーティンだとドライバーの枠が1席しかないじゃないですか。どうするの? って思いますよね。

 車体も素晴らしいパフォーマンスを示しています。今、アロンソ選手というスーパードライバーがいるから輝いているという部分もあるわけです。仮にペレス選手がいたとするとここまでではないわけです。

 もちろん、お父さんの明確なビジョンでトップチームの一翼に食い込むところまできているし、正しい方向に向かって動いていることは他の中段チームに比べて
も明らかです。そうか、お父さんに頼んで、もう1チーム用意してもらうか……。

 ということで、ホンダ第5期! の新しいチャレンジが明確になりました。また、頑張っていく姿を見せていただけることを楽しみにしてます。

 大幅なアップデートがあるという話のメルセデス。当然、今日は全く見えません。

 ホンダの会見がモナコ前にあったというのも、がぜん世界から注目が集まるのがこのモナコだからです。そこでスペシャルカラーのマクラーレン。

 真正面から見ると真っ黒なんじゃないかと思うんですけど?? どうでしょうか?

 ガレージの中では各チームマシンのメンテナンスです。F1の天気予報では雨は降らないという今の時点での予報です。

 パドックでは、トラックを磨き上げたり。

 TVのインタビューエリアの組み立てをしていました。

 モナコ。多くの注目が集まる1戦です。抜けないモナコ。予選がどうなるか注目です。

 アロンソ選手がポールとか取ったら、ひょっとするかもしれない!!

 さあ~。イタリアで休憩、充電バッチリだから気合い入れて頑張るぞ!

熱田 護

(あつた まもる)1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1985年ヴェガ インターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。1992年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行なう。 広告のほか、「デジタルカメラマガジン」などで作品を発表。2019年にF1取材500戦をまとめた写真集「500GP」を、2022年にF1写真集「Champion」をインプレスから発行。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。