F1カメラマン熱田護の「気合いで撮る!」

第78回:レッドブルのフェルスタッペン選手が勝利したラスベガスGP。きらびやかなレースの裏のあれやこれや

 ラスベガスGP。1981年に初開催、41年ぶりに開催されました。

 その2年前の1979年に機動戦士ガンダムのテレビアニメが始まったそうです。僕は高校生。見てました。忘れっぽい僕でも、覚えているくらい面白かったです。

 ですから、アルファタウリにガンダム! というSNSを見たときに「なぬ!」って反応してましたね。

 ネットでの盛り上がりがすごくてびっくりしたのと、知り合いの編集者も「写真撮るより、ガンダムのノベルティとかの配布があったらそっちを優先させた方がいい!」とかいう話も出るくらいガンダムファンは多いし影響力があるらしい。

 現地に行ってみると、ホスピタリティに大小1体ずつとガレージの後ろにど~んといました。ノベルティなどの配布物は一切なし。

 アルファタウリカラーのガンプラとかあればより盛り上がったように思うんですけれど、そこは契約とかいろいろあるから難しかったんでしょうね。

 ヘッドレストの両脇にステッカーが貼られただけでした。あとはガレージ内のスポンサーボードにガンダムの文字があるだけでした。

 1戦だけでロゴの大きさとかをみると、そんなに大きなバジェットを組んでいたわけじゃないみたいですよね。反応は大きくあったと思うので、今後もっと大きなコラボができたらいいなと思いました。

 木曜日の20時30分から始まったFP1は開始8分で赤旗で中断しました。

 その理由が、コース内にある送水バルブの金属製の蓋がF1マシンのダウンフォースに負けて吸い上げられてマシンの下部に当たってしまったということでした。

 340km/hで走行中のその衝撃は大きくサインツ選手のフェラーリのモノコック、PU、ギヤボックスなど全交換となってしまいました。オコン選手のマシンにも損害が出たそうですが、こちらはそこまで大ごとにならず済んだそうです。

 この写真は、その現場の穴です。

 どうする? どうしよう? という現場の話し合いの場面。

 蓋は、これと同型でコース上に40か所ありました。

 当然、これ以降の走行を続けることができないのでFP1は中止になり、再開の目処は立たないということでした。40か所あるわけですから、すぐには再開できないのは想像できたので、僕はその時間を利用してコースの下見を兼ねつつ歩きつつメディアセンターに戻りました。

 初開催のコースですし、一般道を使ったレイアウトですから、いろいろと問題が出るのはある程度仕方ないですが、高いチケットを買って楽しみにきた人がたった8分間しか見れてなかったことと、問題の穴を埋めて走行開始になったFP2の開始時間が夜中の2時30分~4時になってしまったことで無観客での走行時間となってしまったことです。

 もちろん世界中のテレビ観戦していた人も待ちの時間が果てしなく続いてしまって大変だったとも思いますし……。

 FP2はピットレーンの撮影から始めました。

 最初のアナウンスでは2時から開始となっていたのですが、回収作業が終わらず開始時間がどんどん延びて最終的には2時30分開始となりました。

 サインツ選手のマシンの修復も完了して走行可能となったのですが、交換部品多数になってしまったので10グリッドダウンというペナルティが下されます。

 そりゃあ、納得いかないですよね。コースの不備でマシンを壊されてペナルティまで付けられてしまったわけですからね……フェラーリ、サインツ選手はぷんぷんなわけですよ……。

 今後話し合いが持たれるそうです。

 走行開始まで時間があったのでリラックスムードの角田選手。

 気温は11℃~13℃くらい。事前に言われていたようなタイヤが機能しないような気温という感じではなかったですが当然日差しもないのでじっとしていると寒いです。

 ラスベガス特別カラーのアライヘルメット。真っ白に銅色のキラキラ艶あり。とっても美しいヘルメット。

 艶なしのカラーリングが多い中で、マシンもヘルメットも艶ありがいいと僕は思います。なぜならば、写真写りがいいから。

 このカラーリングはWOODEYE Designさんです。

 アルファタウリのカラーリングも変更になってました。これは、これまでのカラーリングの方が好きかな。

 FP1は最初だけ少しピットレーンで撮影してコースに出て撮影しました。セッションが90分と長めだったので初開催のコースを移動しながら撮影しました。

 初開催ですから、チケット買わず? 買えなくて? コース脇のいろいろなところから観戦する人が多数いました。

 コースのまわりはホテルや商業施設がたくさんありますから全部を見えなくするのは不可能かと思いますが、こんな感じで見れるのは最近のF1では珍しいことですね。まあ、初年度のあるあるかもしれません。

 エッフェル塔や凱旋門があったり、雰囲気はいいんですけど、実際には普段公道として使っているのでコース上には埃がたまっているわけです。

 特に最初に走り始めたFP2が終わってメディアセンターに戻って顔をふいたら真っ黒け……どれだけの埃の中で息をしながら撮影したかなどと深く考えてはいけません……。

 ラスベガスのアイコンにもなっているスフィア。高さ112m、幅157m。

 でかいです。

 120万個のLEDでプログラミングされた映像が次々に描き出されます。

 でも、問題はマシンが走ってきたときに、かっこいい画面になっているかどうかは時の運。最悪真っ暗な場合もあるし……。しかし、まあ、びっくりな施設です。

 アメリカっぽい感じです。

 上の写真を撮ったのが、このカメラマン用のホール。同時に3人のカメラマンが使える感じ。

 びっくりしたのが、すぐ前の若いカメラマンのカメラの構え方。のぞかずモニターを見ながら撮るんだね。

 ネオンバックに撮らないとラスベガスらしくならないし。金網を処理するのも難しい。

 土曜日、レース前のピット前。たくさんのお客さんです。

 ドライバーズパレードに出ていく角田選手。予選で失敗してしまって最下位の20番。走り出しからスピードもありませんでした。

 コースによってマシンのパフォーマンスがいいときとわるいときの差が激しい。

 ハミルトン選手の乗るはずだったクルマがトラブル。ペレス選手のクルマに乗ることになったんだけど、ペレス選手は席をチャンピオンに譲ってます。

 盛大にオイルをぶちまけてしまったのは、ピアストリ選手が乗るはずだったアメ車。エンジンがデカいからオイルも多い。

 こちら側からスタートするドライバーにとってみればおいおいって思うよね。

 ドラパレに使うクルマがこんな感じで壊れるというのは、珍しいことではありません。

 でも、オーナーにとってみれば晴れの舞台ですから、きちんとメンテナンスをしてから来ていると思うんですよね。

 それでも、古いですからね。壊れるわけです。気温が低いのに、長くアイドル状態でしたからオーバーヒートしているクルマもありましたし……。

 グリッドに向かう直前にフェルスタッペン選手を撮ろうと思って行ってみたら、レーシングスーツが白!

 あれ! ホンダの白?? なんで????

 ってよく見ると腰のところにエルビスって書いてある。何も知らなかったのでびっくりしました。

 角田選手のグリッド。分かりづらいけれど、少し曲がっていて下ってます。

 20番グリッドからスタートして、戻ってきたのは10番手! 素晴らしい!

 でも、そのあとはペース上がらずというか、コースで見ている感じではどんどん下がっていく感じ。

 そしてトラブルで止まってしまいました。

 いいときもあれば、全然うまくいかないときもある。全てが噛み合う可能性があるときに、最大パフォーマンスを出せるようにすること。

 残り1戦となってしまいましたが、次、期待しましょ!

 フェラーリも特別カラーリングでした。白い部分が多くなりました。

 すっきりした印象で好きなカラーリング。

 グリッドには多くのVIPがいたみたい。僕は、俳優やスポーツ選手などよく分からないので、人だかりのあるところに行って撮ってみました。

 ガンズ・アンド・ローゼズのアクセル・ローズさん。

 バスケットのシャキール・オニールさん。

 われらが、ホンダの方々とホーナーさん。

 グリッド上はとにかくたくさんの人たちでごった返していました。

 注目のラスベガス大会ですから、グリッドに行きたい人が多く、招待したい人も多かったんだと思いますけれど、スペインのときに多すぎるグリッドへのお客さんの数が問題になって、それ以降の人数が大幅に削られました。

 ところがどっこい、そんなことは全く関係ございませんという大にぎわい。

 まあ、そんなもんです。

 ノリス選手のヘルメット。蛇の皮の質感がすごかった。

 レースはクラッシュしてリタイアでした。

 50周のレーススタート。

 今回はアルピーヌが速かった。オコン選手が4位入賞。

 フェルスタッペン選手がレース終盤にトップに立ったところ。

 スタートでルクレール選手とぶつかって5秒ペナルティ、追い上げの途中ラッセル選手と接触するなどして追い上げのレースで優勝。今季18勝目!

 ゴールシーン。

 ルクレール選手が最終ラップにペレス選手を交わして2位! 素晴らしい見せ場を作ってくれました。

 ペレス選手は抜かれて3位になったものの、選手権2位を確定。ペレス選手が赤いレーシングスーツだったということは表彰式で知りました。

 初開催でいろいろあったラスベガス。思いのほか、いいレース展開で楽しめたお客さんが多かったのではないでしょうか?

 木曜日の20時30分開始のFP1から始まって日をまたぎ、FP2の開始が遅くなり終わったのが明け方の4時。メディアセンターに戻って写真を見て外に出たら燦々と照らす朝日が眩しい……。

 金曜日のFP3、そして土曜日になったばかりの夜12時からの予選。同じくメディアセンターに戻って仕事をして外に出たら、またまた朝の7時。

 ホテルに戻る途中のフードコートで朝ごはんなのか晩御飯なのかよく分からない状況の仕事のスケジュール。部屋に戻ってシャワーを浴びて、バタンキューするのが9時くらい。

 そこで問題なのが、セキュリティのためとか言って、各部屋に9時~14時くらいの間に、警備の服装したおじさんが勢いよくドアをどんどんするんですよ。

 こっちは疲れ果てて寝ているところですよ……「ドアを開けないで」の札をぶら下げているいない関係なし……。「ドアを開けなさい!」って叫びながらどんどん、ですよ!

 初日は、起きて出て開けたんです。そしたら入って部屋の隅まで行きカーテンを開け、風呂場を見て出て行きました。

 2日目は、無視。だって眠いんだもん。そしたら、合鍵で開けて入ってきた。どんなやねんと思った。無言で、見て出ていった。

 3日目は、開けて見てもらった。

 安めの僕のホテルだけかと思ったら、全てのホテルで同様のことが行なわれていたんだそうです。

 通常の時間帯でない時間帯で仕事をしなければならないチーム関係者や僕たちにとっては、非常にフラストレーションのたまる決まりごと。

 一体なんのためのセキュリティチェックなのかな? 薬物とかそういうことなのか??

 だから、関係者みんな就寝中に起こされるという理不尽。変わった国だよアメリカは……。

 ということで、レース後の日曜日の深夜2時にはサーキットを出て空港に向かわなければならず、このコラムを書くのが帰国後になってしまいましたのでアップが遅くなりました。

 残すは最終戦のアブダビのみになりました。これから、準備してまた空港に向かいます。

熱田 護

(あつた まもる)1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1985年ヴェガ インターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。1992年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行なう。 広告のほか、「デジタルカメラマガジン」などで作品を発表。2019年にF1取材500戦をまとめた写真集「500GP」を、2022年にF1写真集「Champion」をインプレスから発行。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。