F1カメラマン熱田護の「気合いで撮る!」

第98回:コンストラクターズポイントが大きく動いたアメリカGP。トヨタとハースの富士会見、小松代表の裏話も……!?

 アメリカGP、サーキット・オブ・ジ・アメリカズでの開催。

 スタートは1コーナーに。ポールポジションのノリス選手のイン側にフェルスタッペン選手がブレーキングでいこうかなって瞬間。

 このあたりは、やっぱりフェルスタッペン選手が一枚上手ですね。

 そして並びます。2人ともインを通っているから若干スピードが落ちます。

 ノリス選手はアウト側に立ち上がりますが、その隙をついて強力に立ち上がっていくのがルクレール選手。

 フェラーリ2台のレースペースは速かったですね。ルクレール選手、サインツ選手でフェラーリが1-2でした。

 フェルスタッペン選手は3位。

 これで、コンストラクターズタイトルで3位のフェラーリは2位のレッドブルと8ポイント差にせまりました。これは、やっぱり7位だったペレス選手の成績が影響しています。

 この写真はレース後にホームストレートでペレス選手のファンが集まっていて、その声に応じて出てきたペレス選手。

 エースのフェルスタッペン選手が3位にいれば、少なくとも4位の位置を走らなければその役目は果たせたとは言えません。

 次戦はペレス選手のためのグランプリ、メキシコGPです。いい走りを期待したいところです。

 振り返りになりますが、アメリカの前の週、スーパーフォーミュラのレースウィークの金曜日に、富士スピードウェイの富士モータースポーツフォレストでハースとトヨタのテクニカルパートナーシップの発表会がありました。

 小松さんはこの発表のためにイギリスから駆けつけました。

 何より、この大きなプロジェクトをまとめられてホッとしているようでした。

 今後、この関係がハースチームがトップチームに駆け上っていくための大きなステップになることは間違いないと僕は思います。今後が楽しみで仕方ない、日本のF1ファン、世界中のハースとトヨタファンの皆さんにもビックな発表でした。

 発表会の帰りに東京まで一緒に帰りました。

 朝から何も食べずに忙しくしていたので、高速のSAで蕎麦を食べたいとおっしゃるので、談合坂で食べつつ雑談しながら帰京しました。

 その車内で一番盛り上がったことをご披露するとですね。

 走行車線をゆっくりと走る白いクラウン。その後方から僕たち2人が乗るクルマが速度を落としつつゆっくり追い越していくときに、運転する僕が「怪しい、ものすごく臭う……」と言うと、小松さんは「え?何が?なんなの?」と。

 僕が「じゃあ、運転している人見てみてよ。きっと青い服着てるから……」と説明したら、「わ~、ほんとだ! なんで分かるの? すげ~~~、熱田さんすごい!」と、初めて小松さんに尊敬の目で見られた瞬間でしたし、一番盛り上がったのがこのときだったという……。

 COTAスペシャルカラーのハース。

 リアウイングにはGRのロゴ。

 トヨタの加地さんも来ていて一緒に撮らせていただきました。

 小松さんは富士の発表の前にボルダリングで足を怪我してしまって松葉杖でした。木曜日には1本、日曜日には松葉杖なしで歩けるまでに回復していました。チームのフィジオに毎朝見てもらって、トリートメント、テーピング、歩き方の指導もしてもらっているそうです。

 レースではヒュルケンベルグ選手が8位入賞で4ポイント。土曜日のスプリントレースでマグヌッセン選手が7位、ヒュルケンベルグ選手が8位のダブル入賞で3ポイント獲得。

 RBを抜いてコンストラクターズで6位になりました。

 レース後にヒュルケンベルグ選手を送り出すときの小松代表の表情が素晴らしい。

 このあと、少し話を聞いてきました。

小松さん:イタリア、アゼルバイジャン、シンガポール、アメリカと連続ポイント獲得ですし、今5番目に早いチームですからね、わるくない。

熱田:まず予選はどうだったんですか?

小松さん:マグヌッセン選手は9位、これは黄旗でパフォーマンス出せてないし、ヒュルケンベルグ選手は2回1コーナーでフロントロックアップさせて0.5秒失っているのでお話にならない。それがなければ余裕で2人ともQ3に行けているはずで、おそらく7位と8位は取れているはずなのに9位、12位ですごく残念でした。

 レースもペースがよかったのでヒュルケンベルグ選手が8位で頑張ってくれましたけど、マグヌッセン選手が11位だったのは本当にすごく残念に思います。

熱田:じゃあ、少し残念なアメリカGPだったってことですね?

小松さん:そうですね。土曜日がうまくいってダブルポイントを取れたのでよかったんですけれど、予選で失敗して、レースでヒュルケンベルグ選手がほぼベストでやれたけどマグヌッセン選手がうまくいかなかったのでダメですね。総合力でまだまだポテンシャルを出しきれていないという感じです。でもCOTAで7点取れて3ポイントビハインドから2ポイントアヘッドになって、選手権6位に来たのでよかった。残り5戦を残してここで6位に来れたので、あとは常に前を見てなるべくギャップを広げるようにしなければいけませんね。

熱田:今回のクルマのアップデートの効果はどうでしたか?

小松さん:ある部分では想定したよりよくて、ある部分ではわるかったんですが、トータルで速くなっていることは間違いないのでよかったです。これが来年のマシンのベースになるので、想定外にわるかった部分を改善していかないといけません。

 あと、アメリカのチームですからね。ハースのファンがすごく喜んでくれて、そういう喜んでくれる人たちの顔を見ていると、素直に本当にうれしい。

 そう話す、小松さんの笑顔を見れてこちらもうれしいよ。

 選手権7位に落ちてしまったRB。リカルド選手に代わってローソン選手となりました。

 レッドブルのジュニアチームという位置付けのRBですから、ペレス選手のパフォーマンス不足が問題になっている今、当然来季かもしくは今期でもドライバー交代の第一候補としてRBのドライバーからチョイスするというのが基本的な考え方に沿っていると思われますから、リカルド選手の代わりにローソン選手が乗ることではっきりしてくる要素は多いと思われます。

 ローソン選手の復帰戦、予選はPU交換で最後尾が決まっていました。グリッドは19番手。レースは9位入賞2ポイント獲得。初めて走るコースです。素晴らしい結果。

 パルクフェルメでホーナーさんとマルコさんの元へ歩き出したときの表情。

 TVのインタビューが終わって笑顔あふれる首脳陣との会話。いきなり結果を出せるというのは、F1ドライバーとして大きな武器。

 リアム・ローソン選手は日本でスーパーフォーミュラに参戦していてなじみある選手だと思います。

 来季のシートを確保するために自身の力を示さなければなりません。

 たった20席しかないF1のシートを得るためにはとてつもない才能を見せつけるか、とてつもないお金を積むか、とてつもないコネクションがあるかの3択ではないでしょうか。

 ともかく、とてつもないことが絶対条件となります。

 今回のローソン選手の19位から9位というリザルトはレッドブル首脳陣にとって、とても印象的なリザルトということになるんでしょう。

 新しいドライバーがどのようなパフォーマンスがあるのかを見極めるのは簡単ではないような気がします。

 例えば、レッドブルを見てみると、マルコさん、ホーナーさんが最終的な決定権があると思うのですが、デフリース選手を選び失敗して、リカルド選手を選び失敗したわけです。

 リカルド選手は世界中からの人気があるということもマーケティング上で有利に働いたということもあるとは思いますが、多くの関係者からの評価にもあるように往年のスピードは取り戻せないまま、シーズン途中交代ということになってしまいました。

 来季のシートは確保済みの角田選手。今回は10番グリッドから14位。ペナルティーやスピンしてしまったりとうまくいきませんでした。

 ローソン選手と同様にレッドブルのシートを目指す角田選手にとって大事な残りレース。結果を示さねばなりません。

 ローソン選手がこれまでいたところには、F2参戦中でランキング2位のハジャー選手が陣取ります。準備万端ということですね。

 HRC渡辺社長も来場。パドックで有意義な話し合いの結果が得られたことを願います。

 レッドブルとの時間も残り1年と少しになりましたし、2026年からのアストンマーティンとの仕事もあります。

 トヨタも参加してきて、日本の2大自動車会社がF1で戦うということになります。

 モータースポーツにはいろんなカテゴリーがありますが、大きなメーカーの参加こそ盛り上がりに直結すると思うのです。ウエイトハンディキャップやリストリクター制限などのあるレースより、ガチ勝負のレースの方が見る人にとってワクワク感がよりダイレクトに伝わると思うんです。

 もちろん、僕個人的な考えですけどね。

 参加していれば、順番で勝てるレースが巡ってくるレースは、イコールコンディションであるから面白いということもあるでしょうし、参加しているメーカーにとってもアピールできる場が設けられるから参加の意味があるというのも理解できます。

 F1やMotoGPの場合は速くて強いチームが、速いドライバーやライダーを乗せられて勝てる。そのほかのチームは切磋琢磨しながら上を目指して努力する。分かりやすくて人間性、ドラマ性を感じることができる。だからこそ、そこで得られる優勝、チャンピオンということに説得力がある。

 だからこそ、ホンダにもトヨタにもF1をもっと有効に活用してブランド戦略に使ってほしいと思います。

 HONDA CIVIC Type R チャンピオン獲得記念、HRCバージョン、限定500台、カーボンボンネット&フェンダー+25馬力、900万円、とかね……。

 チャンピオンシップ1位のフェルスタッペン選手は3位表彰台獲得。354ポイント。

 2位のノリス選手は297ポイントで57ポイント差。残り5戦。

 マシンの優位性がなくなってしまった今、ベストなレースができたアメリカだったんではないでしょうか。

 ますます、面白くなってきました!

 コラピント選手が10位、1ポイント獲得。

 アルゼンチンからの応援も増すばかり。大活躍ではないでしょうか?

 上の写真は、ファステストポイントをコラピント選手から奪ってしまったオコン選手が謝り(?)にきている場面です。

 コラピント選手、ベアマン選手、ローソン選手、アントネッリ選手の存在は、一つの波が来ているようにも思えますね。

 ビッグネームの選手もおちおちしていられません。

 ザウバーの新しい代表のビノットさんと来季未定なボッタス選手が立ち話。

 日曜日はまさに雲1つない快晴で27℃。素晴らしいコンディションでレースができました。

 お客さんも満員、アメリカ3レース開催は伊達ではありません。

 マクラーレンのギンギラ塗装。オレンジの部分もギラギラにしてほしかった。

 地上70mから下を向いて撮影。正直おっかない……怖くないと思ってシャッターを切る。

 スプリントレースのスタート。自由席の場所もたくさんありますね。

 夜に行われるコンサートはスティング、エミネムなどでした。

 コースの向こうに見えるのはキャンピングカーエリア。右の方向にも同じ大きさの駐車場あり。さすがアメリカって感じ。

 これだけアメリカで人気があるF1。アメリカ人ドライバーがいるとさらに加速するのですが、なかなか難しいところです。

 今回のレンタカーはヒョンデのソナタ。走行距離が10万kmくらいの車体でした。

 ブレーキを踏むと“どこどこどこ”と振動があって不快。でもそれ以外は距離を走っているのにちゃんとした普通のアメリカ風なクルマでした。

 ダラスからオースティンまで350kmあって高速道路で行くんですけど、毎度思うのは、デカいアメリカですから、ときには片側6車線とかあってジャンクションが同時にいくつも出てきて、ナビの指示に正確に従うのが一苦労する。道の舗装がよくないところもたくさんあるし、ゴミの散乱はものすごい。バーストしたタイヤはあちこち、右側からの落ち着きのない追い越しのクルマ多数。でも、渋滞していてと割り込みはみんな素直に入れてくれる。

 ガソリンは132円/Lでした。

 次戦はメキシコ。空気が薄いメキシコ。

 水曜日にダラスからメキシコシティに飛びます。

熱田 護

(あつた まもる)1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1985年ヴェガ インターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。1992年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行なう。 広告のほか、「デジタルカメラマガジン」などで作品を発表。2019年にF1取材500戦をまとめた写真集「500GP」を、2022年にF1写真集「Champion」をインプレスから発行。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。