F1カメラマン熱田護の「気合いで撮る!」

第99回:フェラーリ今度はサインツ選手がポールからの優勝を決めたメキシコGP! 躍進中のハース小松代表にまたまたちょっとだけ話を聞いてきました

 3連戦の2戦目、メキシコGPは、フェラーリのカルロス・サインツ選手がポールポジション&優勝を飾りました!

 速さと強さが光る勝利。

 F1キャリアで3勝目。来季はウイリアムズに移籍。現在で言えば勝てるチームというのは、フェラーリ、マクラーレン、レッドブル、メルセデスということになります。その4チーム以外で勝てるチャンスはよほどのことがない限り不可能という厳しい世界。

 フェラーリでのレースはあと4戦残っています。

 そして今回好調だったのが小松代表のハース。

 予選ではマグヌッセン選手が7位、ヒュルケンベルグ選手が10位。

 レースでマグヌッセン選手は7位、ヒュルケンベルグ選手が9位。

 レース後に小松さんに話を聞きました。

 まず、開口一番。「ねえ! 今回うちのクルマのパフォーマンス、すごかったでしょ! ビックリした」というように、たった300人足らずの小さなチームがあのメルセデスとずっと一緒に走っていたり、チャンピオンレッドブルのペースより速かったりするといった痛快極まるレースをしたわけです。

 小松さんレース後インタビューです。

熱田:またまた疲れているみたいだから短めに話を聞かせてください。

小松さん:え? 疲れてます? まあ、そうですね……。でも戦いがタイトなので、緊張感あるところで戦えているというのがいいですよね。本当にありがたいことですし、そのためにやっているわけですから、この疲れは。この仕事が好きでやっているんですからね。

 本当にチームのみんなには感謝しています。チームの雰囲気がよくなったって外部の人から言われることがすごくうれしくて。なんか正しい方向にいっているんだなって実感できますからね。

 今年のマシンの開発はハースの歴史上最高ですから、5番目のチームになったということはトップチームのレートより数倍いいということを意味しているわけです。このうれしさというのがチームスポーツのいいところですよね。感謝の気持ちを忘れずにいかないとと強く思います!

熱田:予選から振り返ると、マグヌッセン選手が好調でしたが、走り始めから予感はありましたか?

小松さん:そう。ケビンはこういうサーキットが得意なんです。縁石の使い方をアグレッシブにいかなければいけないし、ハイスピードなセクションでバンピー、ハードブレーキングでスタジアムセクションの低速コーナーがある、空気が薄いからダウンフォースが効かない、空気が薄いから冷えないのでボディーワークの開口部を大きくしなければいけない、するとますますダウンフォースが減る。

 モンツァレベルのダウンフォース量で低速コーナーもまとめなければならないから、本当に高いレベルで1周をまとめるのはすごく難しいんですよね。

 そんな中、ケビンは本当によくまとめてくれました。ニコも12コーナーまではケビンと全く一緒のタイムで来ていたんですが、ブレーキングで少しミスをしてしまったんですね。本当に紙一重の差です。これまでケビンはプレッシャーのかかるところでまとめられないことが多かったんですが、オースティンのときから素晴らしい仕事をしてくれています。

熱田:レースでヒュルケンベルグ選手のペースが少し落ちていったように思うんですが、クルマに何か問題でもあったんですか?

小松さん:いや、今のところ問題は見つかっていないです、それよりも逆にビックリしたのが、ケビンのペースですよね。マックスに追いついていっていたし、ペースも上まわっていましたから。ピアストリがケビンの10秒後ろにいるとき、そのタイム差が0.5秒だったんです。残り周回数を見てもこのペースだったらいけると思って、その差を伝えると、0.2秒とか0.3秒とかで走ってくれるんですよね。その集中力はすごかったと思います。毎周クオリファイという感じ。だから本当、やればできるんですよね!

 今回のケビンは予選、そしてレースの第2スティントは本当に本当に最高でしたね!

 トップ4チームのパフォーマンスはすごいわけです。だから5番目を狙うんですけれど、4位と5位の差は大きい。でもその差が今回のように小さく感じたことがうれしい。

 素晴らしいレースが続いています。コンストラクターズポイントは6位になってRBに10ポイント差をつけました。

 角田選手、予選11位、レーススタートの1コーナーでリタイア。

 予選とレースでのクラッシュ。

 僕は、直接角田選手に話を聞いたわけではないし、モニターでその様子を見た限りでは厳しいメキシコGPになってしまったなという印象です。

 チームメイトのローソン選手にしても、いい流れを自ら断ち切ってしまったかのようなレース。

 終盤に接触でウイングを壊してしまって16位。

 地元の英雄に対して中指問題で怒られる……若さゆえのことですから、大目に見てほしいですけどね。

 ペレス選手にしても、自国で圧倒的人気を誇る自分が予選18位、レース17位という散々な結果。

 フェルスタッペン選手にしても、絶対抜かれたくはないノリス選手を2度も押し出しってしまって、20秒のペナルティ。その結果、6位。

 レッドブルのコンストラクターズポイントもフェラーリに抜かれて3位に転落。

 マシンの信頼性も出てきたり。

 今回のレッドブル2チームはボロボロの結果となってしまいました。無敵チームがあっという間に落ちていっているように思えてしまいます。

 でもね、いつもはチームメイトに勝てないサインツ選手やマグヌッセン選手が完璧なるレースをして輝く。

 フェルスタッペン選手、角田選手やローソン選手のピカピカの速さも全く見れなくなってしまうような週末もある。

 ではその差ってなんなんでしょう。たぶん、本当に少しの差なんですよね。

 そのほんの少しのマシンの合わせ込み、積み重ね、ドライバーの精神状況。そのほんの少しの差をいかに上向きにできるのか、そしていい状況をキープできるのか。

 ダメになったのなら、そこからはいあがるしかない。

 世界一のレベルで、そんな大人たちの人間模様を見るのもF1の楽しみ方の1つなのではないでしょうか?

 3日間のお客さんは40万4958人だそうです。土曜日にはブラッド・ピットさんも来て撮影していました。

 ノリス選手のレースペースは素晴らしかったですね。2位表彰台獲得。

 ドライバーズランキングも1位のフェルスタッペン選手と47ポイント差になりました。

 メルセデスはずっと2台でレースをしていました。

 レース終盤に、ハミルトン選手がサックリとラッセル選手を抜いて4位。さすがだなと思いました。

 ドライバーズパレードは、フォロソルに歩いて入場。クルマに乗ってコース1周。

 メキシコというとどんなイメージをお持ちですか?

 空気が薄いのは空港に着いたときになんとなく実感できますが、2日ほどで慣れます。

 メディアの食堂では毎日メキシカン料理が出ます。その中に寿司もあるんですけど、寿司ではありませんでした……。そろそろ、日本食が恋しい……。

 広大なフォロソルで僕が見つけられたのはたった1つの日本国旗。メキシコ以外ではアルゼンチンの国旗が多かったですね。

 ビールやピザ、ポテチを席まで売りに来ています。ポテチにソースがけで80ペソ、612円。

 左はタチアナ・カルデロンさん。今回のイベントアンバサダーで来場していました。

 今年はIMSAでNSX GTで走っていたそうです。来年は? って聞いたら決まっていないそうです。「日本でもう一度走りたいわ」って言ってました。

 どなたかレース関係の方、いかがでしょう?

 さて、次はブラジルGPでございます。セナさんの国、サンパウロです。

 一番緊張して移動しなければいけないサンパウロ。でも、サーキットは写真を撮るのには大好きなコースです。

 気合を入れて行きます。ではまた!

熱田 護

(あつた まもる)1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1985年ヴェガ インターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。1992年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行なう。 広告のほか、「デジタルカメラマガジン」などで作品を発表。2019年にF1取材500戦をまとめた写真集「500GP」を、2022年にF1写真集「Champion」をインプレスから発行。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。