F1カメラマン熱田護の「気合いで撮る!」

第103回:2025年2戦目の中国GPでハースがダブル入賞! 一方、RBの角田選手は……

 第2戦、中国GP。上海で行なわれました。

 巨大なグランドスタンド、日曜日には必ず満員になります。

 今回もいろいろありましたが、一番うれしかったのがハース。

 オコン選手が5位、ベアマン選手が8位でダブル入賞14ポイント獲得というレースでした。

 これには、レース後の車検でフェラーリの2台が失格になって繰り上がりということもあるのですが、それにしてもですよ、開幕戦オーストラリアで予選、レースとも最下位だった2台が次の週に5位と8位に入賞するということを誰が予想できたでしょう!

 上の写真はFP1の開始前、下の写真は土曜日のスプリントレースでのグリッドでの小松代表。

 開幕戦での想定外のマシンの不調という事態から、上海に移動するまで、イギリス、イタリア、そしてアメリカと綿密に連絡を取りながらパフォーマンスの改善のために日夜奮闘していたそうです。

 それは、小松さん自身が冷静に正確にマシンの状況を把握して改善策を自分で構築できるというスキルがあるからであると思います。

 でも、それだけではチームを正しい方向には導けません。

 スキルの高い人を集め、正しいポジションに配置し、効率良く最高の仕事をしてもらってこそチーム力が上がってくるのです。

 ハースというのは、320人ほどの一番小さなF1チームです、1000人以上いるチームと同等以上に成績を出すためにはどうしたらいいのか、その舵取り役を任されているのが小松さん。

 それぞれのメンバーとできるだけコミニュケーションを取り、成績というものを指標に置きながら、円滑にチーム運営ができるように進めているはずでした。

 そこに、メルボルンでのマシンが遅いという大問題が発生したわけです。外から眺めている僕でも、えらいこっちゃ……という雰囲気が伝わってきます。

 上海の木曜日に少し話を聞いたときには、クルマのセットアップでできることは全てやってきたけれど、メルボルンでの問題を解決することはできていないという状況。

 そんな状況で上海に来たチームの雰囲気は、昨年までのハースとなんら変化がないように見えました。小松さんの表情も笑顔も見えるしいい感じなのかなと感じました。

 上海に合わせた現状でやれるセットアップをマシンにインストールし、あとはミスなくレースをやり切るだけという決意でしょうか?

FP1:ベアマン選手11位、オコン選手13位。
スプリント予選:ベアマン選手12位、オコン選手18位。
スプリントレース:ベアマン選手15位、オコン選手16位。
予選:オコン選手11位、ベアマン選手17位。

 ここまで見ると、メルボルンほどはわるくないどちらかのドライバーが10位近辺のタイムが出ているわけですからね。

 11番グリッドからレーススタートのオコン選手。

 レース序盤、オコン選手と角田選手の戦い。こう見ると、ハースのリアウイング大きい。

 レース後のパルクフェルメ。このときは、オコン選手が7位、ベアマン選手が10位で7ポイント獲得、ダブル入賞という場面でした。

 ベアマン選手の17位からハードタイヤを選択して19位という追い上げは、1ストップ作戦をミスなく完璧に走り切った成果です!

 通りがかったスタッフみんなと笑顔になれます!

 レース後、チームのブリーフィングが終わり、イギリス行きの飛行機に乗るための慌ただしい時間の中、小松さんの部屋で話を聞かせてもらいました。

 その話の途中で2人のドライバーもあいさつにきます。

 PC上のデータを見ながら、レース結果を踏まえてねぎらいの言葉を投げかけ、オコン選手、ベアマン選手の方からもありがとうという感謝の言葉がありました。

 いい雰囲気です。

「これがね、この仕事をやっていると思うんですけれど、ある意味ドラッグみたいなものだと思うんです。人生ってLOWの方が多くHIGHの方が少ないと思うんです。でもこの仕事をやっているとLOWとHIGHの差がすごくある。メルボルンで負けて、やられてしまって、無茶苦茶なLOWの状況からどう立ち上がるのか。その過程が個人やチームを洗練し、磨きをかけていくことになると思うんです」。

「そのときに他人のせいにするとか、喧嘩するとか、まとまらないとかではなく、そういうときこそ1つになり、全員で力を合わせていい結果を出せることが重要。昨年はこのチャンスを逃したことが多かったので、トラックサイドのメンバーを大幅に変更したんです。そのプロセスは完璧ではないですが、結果としてこの上海でチャンスがあるときに全てつかみ取れたということは大きな意味があります。自分で言うのもなんだけど、これはすごいと思う(笑)。非常に素晴らしい! まさに会心のレースができた、これがHIGHですよ!」

「スタート前は、何がなんでも1ポイント取りたいと思っていたんです、それが7ポイントですから(最終的には17ポイント獲得)。いいチームだと思います」。

「鈴鹿に関しては、なかなか難しいレースになると思います」とのことですが、そうは言っても期待してます!

 角田選手。マシンはいいことがメルボルンで分かった。

 スプリントレースで6位、3ポイント獲得。

 アジャー選手の予選アタックラップ、7位。角田選手の予選は9位。

 アジャー選手は、初めてのサーキットでこの予選結果は素晴らしいと思います。

 2台のRBは2ストップ作戦でした。アジャー選手が11位、角田選手が16位。

 たらればを言っても仕方ないと思いますけど、言いたくもなる気持ちです。

 ドライバーもマシンもいい。あとはチーム力ですかね。

 ローソン選手が不調のままでした。スプリント予選20位。スプリントレース14位。予選20位。

 タイムが伸びない理由はいろいろあると思います。これまでやってきた実力は多くの人が認めるところだし問題はないと思うのです。

 ただ、レッドブルのマシンで速く走る方法が見つからないのか、ほかに要因があるのか。公式なインタビューやホーナーさんやマルコさんが言う言葉以外に何かある場合もあるかもしれません。

 でも、結果こそ全ての世界であることは確か。

 交代ということになれば、動きそうなのが角田選手、アジャー選手、はたまたコラピント選手とかいろんなドライバーの名前が出てきますね。

 まあ、F1を楽しむ要素の一部分ではあると思いますが、当のホーナーさんとマルコさんにとって、コンストラクターズのポイントもあるし難しい判断をしなければなりません。

 レース結果は12位。上の写真はレース後の様子。その表情は硬い。

 どんな気持ちなのか、想像することすら難しい状況です。

 角田選手と交代か? というネットニュースは見ますが、もしそうなったら大きなニュースだし、トップチームのマシンに角田選手が乗りレースをするところを撮りたいし見てみたい気持ちはもちろんあります。でも、あのフェルスタッペン選手でも今年のマシンは難しそうです。

 そこにうまく合わせられるのか? 決して簡単ではありません。

 ローソン選手の将来のためにも、あと少しチャンスを与えてあげてほしいと思います。

 コラピント選手、アルピーヌのリザーブドライバー。いつでも乗る用意はできています感あります。

 ドゥーハン選手、チームメイトのガスリー選手との差も微差にとどまっていて、うわさされていたシーズン途中の交代はないのではないかと思います。

 アントネッリ選手、レースで6位入賞。ラッセル選手と比べてレースペースが遅いのが気になるけれど、8ポイント獲得はルーキーとしては立派。

 フェルスタッペン選手。オーストラリアで2位。

 中国のスプリントレースで3位、レースで4位。ランキング2位。チャンピオンを狙うには厳しさが増しているように思えてしまいます。

 スプリントレースで勝ったハミルトン選手。でもそのスピードは予選とレースでは見ることができませんでした。

 エディー・ジョーダンさんが亡くなりました。佐藤琢磨選手が乗った黄色のジョーダンが鈴鹿で大活躍したことが1番の思い出ですね。

 年に一度くらいしかお目にかかれないアストンマーティンの羽下さん。

 少しだけお話をお聞きしたら、今でもマシンのバウンシングが問題になるそうです。その原因は路面の形状によるところも大きいし、ラインどりやセットアップでも変わるそうです。

 アルピーヌのフロア。たくさんの配線が見えます……一体なんのためのセンサーなんでしょう?

 コースのマーシャルポストにある図。じーっと見てると、なんとなく読める……。どうぞ暇つぶしに!

 成田から夜便で上海へ。東京上空。たった3時間で到着できるのはうれしい。

 メディアセンターでご飯が出ること、本当にありがたい。

 去年までのご飯は、申し訳ないんだけど、中国の中華ってこんなにマズイのか! って感じでしたけど、今年はそのケータリング会社が変更になり、おいしくなりました!

 本当に助かる。

 ホテルの朝ごはんに出ていたイチゴ。世界中のイチゴを食べ歩いている僕に言わせていただけるのであれば、日本のイチゴが圧倒的に一番おいしい!

 その日本のイチゴとほとんど同じ味がしたこのイチゴ。

 上海の街はクルマと自転車&電動スクーターの道が完璧に近く分けられていて一定のルールがあるようで、日本のごちゃごちゃに中スクーターを走らせなければいけないのと比べると進んでいるように思うし、安全性も全然高いと思います。

 エンジンのスクーターは1台も見なかった。

 中国では外国人は運転できません。ですから移動はタクシーとシャトルバスでした。

 近くて遠い国、中国では、知らないメーカーの知らないクルマがたくさん走っています。デザインもいけているし、カッコいいじゃんて思うのは100%電気自動車。実際に運転してみないと分からないけれど、どうなんだろう?

 もちろん、メルセデス・ベンツやアウディ、フォルクスワーゲン、トヨタ、ホンダなんかも走っていますけど、日本車はそんなに多くはない印象でした。

 上の青いナンバープレートがガソリン車、下の緑のグラデーションのナンバープレートが電動車みたいです。7:3か6:4くらいでまだガソリン車のが多いかなという印象です。

 交通マナーもF1が始まった2004年と比べると普通になってきています。当時はクラクションの嵐。われ先に行くのだ! という運転。信号無視あたりまえ! って感じでしたからね。

 メディカルカーも中国製なんだな~って思って近づいてみると、ロータスだった……。ロータスらしからぬ、うすらデカさ……。

 ロータスって中国企業の傘下になっているんですね。時代は変わっていくのです。

 さあ、次は日本GPです! 皆さんの準備はいかがですか?

 いつものように、このコラムに写真を載せていいよって人はぜひ声をかけてくださいね!

 でもセッション中ですと、撮影するのが難しいので合間にお願いいたします! 桜は咲いているかな?

熱田 護

(あつた まもる)1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1985年ヴェガ インターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。1992年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行なう。 広告のほか、「デジタルカメラマガジン」などで作品を発表。2019年にF1取材500戦をまとめた写真集「500GP」を、2022年にF1写真集「Champion」をインプレスから発行。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。