F1カメラマン熱田護の「気合いで撮る!」

第114回:雨のベルギーGP。スパ・ウェザーを制したのはマクラーレン・ピアストリ選手!

 ベルギーGP、天候に翻弄されたグランプリでした。

 まず、角田選手。

 予選で7番手のグリッドを得ることができました。土曜日の予選前に新しいフロアを角田選手のマシンに装着できたことがパフォーマンスの向上に寄与したのは確かだと思います。

 恐らく、そのフロアは以前からフェルスタッペン選手用のスペアとしてあったものを使うという決断をメキースさんがしたのではないでしょうか。もちろん、レッドブルというチームのプライオリティはフェルスタッペン選手ですから、スペアパーツの優先権は彼にあるのは致し方ないところです。

 なんでフロアの用意がそんなに時間がかかるのか? って思われる方もいるかと思いますが、大きくて平滑性や剛性などとてもデリケートな部品で、作るのに3週間から5週間くらいはかかるそうなのです。

 レース序盤は7番手を走行していましたが、チームの指示が遅かったために、タイヤ交換のピットインのタイミングを1ラップ余計に走らなければならなくなってしまって、その時点で万事休す。角田選手が叫んでしまったのも当然だと思います。

 残念ながらチームのイージーなミスですよね、そういうチームになってしまっているということなんでしょう。

 ハンガリー以降のレースでは、パーツがそろって、フェルスタッペン選手との差をグッと縮めていくことを期待したいです。

 レッドブルは今回大幅なアップデートを投入したそうです。

 土曜日のスプリントレースでは優勝できたフェルスタッペン選手。しかし、日曜のレースで雨セッティングのマシンでは追い上げもできず4位入賞でした。雨のレースになるであろうという決断が裏目に出てしまったわけです。

 雨が降り、路面が濡れれば水煙が上がって後方のドライバーの視界が悪くなる。フォーミュラカーのレースでは昔から一緒の状況です。特にこのスパフランコルシャンでは過去に大事故が雨がらみで起こっています。事故のリスクをどこまで減らすのかという問題があるのは僕も承知しています。

 雨だから、素晴らしいレースが行なわれたということも多くありました。とかくマシン性能だけでレースの順位が決まってしまうという4輪レースの性質上、雨でドライバーの力量が発揮されて感動の結末となるということもありましたよね。

 僕個人的には、土砂降りの中でその水煙の美しさ、力強さに魅了されているので、最近の雨で前が見えないので走行中止ということが多くなってきていることにガッカリしているんです。

 もちろん、事故など起こってほしくないし、けがしてほしくないのは大前提です。

 ですから、今回の赤旗中断もガッカリでした……。雨量も、そんなに降ってなかったし、レースできる状況だったように思います。シルバーストーンの土砂降りの方が10倍くらいの雨量だったように思います。

 まあ、ドライバーサイドからしたら安全にレースしたいんだという主張はしたいし、主催者にしてもリスクは背負いたくないというのも分かるんですけどね。

 2台のレッドブルの雨セッティングのマシンで、もしレースが行なわれていれば、面白い展開になったんじゃないか……という妄想をしてしまいます。

 ということで、マクラーレンの速さ際立つレースとなりました。もう圧勝です。

 ピアストリ選手が優勝で266ポイント。ノリス選手が250ポイント、3位にはフェルスタッペン選手の185ポイントとなりました。

 ハース、土曜日のスプリントレースでオコン選手が5位、ベアマン選手が7位でダブルポイント獲得。

 しかし、日曜日のレースではノーポイントとなってしまいました。

 高速コースにも対応できたパッケージができあがっていたので、残念な結果となってしまいました。

 F2、宮田選手が日曜日のレースで2位でした!

 予選は2位で雨のレース、ずっと2位を走っていて終盤にコースアウトしてしまって4位のまま赤旗でレース終了。

 上の写真は、その赤旗でピットレーンで止まっていたところでメカニックさんがよくやった! というジェスチャーです。

 でも、恐らく宮田選手にとってはくっそー、勝てたレースだったかもしれないのにスピンしてしまった、という悔しさの最中だったのかもしれません。

 土曜日のレース。リバースグリッドで9位からスタートしました。

 昨年から今まで、成績が残らないレースが続いていました。ようやく結果が出たのが今回。

 F2とかF3って全車イコールコンディションという建前のカテゴリーですけれど、現実はそうじゃない。今までも多くの日本人ドライバーが参戦してきましたけれど、参戦してみて分かるチームの内外の格差や政治的な何かがあるんじゃないかとかいろいろあるみたいです。

 結果を出せるようになるまでの道のりは険しい。

 チーム内の雰囲気をこちら側に持ってこれるようにできるのも、ドライバーやサポートメンバーの努力なんですね。残りのレースも頑張って結果を出し続けてほしいですね。

 スパ・フランコルシャンと言えば、オー・ルージュ。写真ではなかなか伝わりづらい高低差。オー・ルージュの意味は赤い川。下の写真の黒いMSCの看板が並んでいる下にオー・ルージュがあります。川底が赤いです。

 この素晴らしいダイナミックな景観は、世界でもここだけです。圧倒的なスピードで駆け上がっていくコーナリングは、ぜひ生で見てもらわないといけません。

 動画でも写真でも、そのスピード感は伝えられないと思います。

 ヒストリックF1。スパでも走っていました。昔からのF1ファンにとって絶大な人気!

 ベルギーと言えば、フライドポテトとワッフル。

 今年は、パドック内でフライドポテト屋さんがあって、一度いただいてきました。油物&マヨネーズという超ハイスペックな宿敵に、すきっ腹でもあったし、1回くらいはいいかという甘々な心のささやきに完敗。

 すごくおいしくいただきました! ごちそうさまでした。ありがとうございます!

 この2枚の写真は、ほぼ一緒の場所から撮った写真。

 上の写真は、1984年か1985年のエディ・ローソン選手。僕の写真です。コダクローム64というポジフィルムです。

 下が、今年の日曜日、赤旗中断中の写真。iPhoneの写真。

 オー・ルージュをバックに撮っているんですけれど、40年という月日は風景を激変させますね。40年も毎年ほぼ欠かさず撮影で来られていることにも感謝しなければいけませんね。

 こうしてみると、コースも変化していますけれど、われわれカメラマンの入れる場所も変化しています。

 昔は、イン側もアウト側もガードレールの後ろであればどこでも大丈夫でした。

 今は、画面の右側は全面撮影禁止。アウト側もコンクリートウォールになって後ろに下がり撮影用の小窓からしか撮影できなくなってしまいました。

 なぜならば、危ないからですね。高速コーナーで、減速できないまま突っ込む事故が多発していますからね、致し方ないんです。

 でも、撮れる写真のバリエーションや、迫力は明らかに寂しくなってしまいました。これも致し方ないんですけどね。

 最近、ヨーロッパのサーキットで必ず会える、ナマズさんご夫婦とベアマン選手ファンの方。ナマズさんのワインに乾杯!

 今回のレンタカーはトヨタ・ヤリス。ハイブリッドモデル。ドイツのフランクフルト空港で借りました。レンタカー屋さんのカウンターで鍵を受け取ったときにヤリスだと分かって、正直ガッカリでした。

 これまで、僕が借りられる一番安いクラスのカテゴリーだとオペル・コルサやルノー・クリオ、プジョー・208とかが快適だったし、フォルクスワーゲン・ポロなんかマジ素晴らしい。

 日本車でアウトバーンを走ってガッカリなことばかりだったのでそう思ったわけです。具体的にはトヨタの先代のヤリスやホンダの初期のフィット。特に初代フィットはびっくりなくらいひどかった。やっぱり欧州車はすごいんだという刷り込みが僕の中にあるわけです。

 空港の駐車場から出るときに、あれ、普通にいいかもと思って、すぐにアウトバーンに乗って、おーいいじゃないか! まっすぐ走るし、乗り心地も素晴らしいし、欧州車に比べて車内が静かですごく快適に感じます! 160km/hくらいでも全然平気。

 いやほんと、びっくりなくらい素晴らしい! 毎回、ヤリスでもいいと思えるくらい快適で燃費もいいししっかりしています!

 ただ、カッコが好きではないですけどね。とうとう、日本車もヨーロッパでいい車になったという新たな発見でした。

 ということで、来週はハンガリーGP。暑くなるかな?

 ではまた!

熱田 護

(あつた まもる)1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1985年ヴェガ インターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。1992年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行なう。 広告のほか、「デジタルカメラマガジン」などで作品を発表。2019年にF1取材500戦をまとめた写真集「500GP」を、2022年にF1写真集「Champion」をインプレスから発行。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。