日下部保雄の悠悠閑閑

全日本エコドライブチャンピオンシップ

鈴鹿サーキットで行なわれたエコチャレンジカップに参加した。リーフで出走する直前の筆者を撮ってもらった

 毎年、8月の下旬は鈴鹿サーキットで行なわれるエコチャレンジカップに参加させてもらっている。元はと言えば自動車部の大先輩からのお誘いで、否応などあるはずもない。シャ部の掟は厳しいのだ。

 このイベントは鈴鹿サーキットを1日使い、車両はトータル60台を揃えるというかなり大規模なものだ。主催は全日本学生自動車連盟。そこから分かるように、前身は大学自動車部対抗燃費競技だったが、現在は環境省が共催し、後援には自工会(日本自動車工業会)や自販連(日本自動車販売協会連合会)、JAF(日本自動車連盟)など多数の一般社団法人などが名を連ね、各メーカーも協賛するビッグイベントだ。もちろん学生以外の一般参加チームも多くなり、存在意義が年々大きくなっている。

今大会の記念バルーンが作られていた

 使用車両は「リーフ」20台、「フィット」のガソリン車20台、「アクア」20台であり、それぞれ鈴鹿サーキットを6周する競技だ。各チームとも各3台のクルマに乗っての総合燃費を競う。

 走り方は燃費のみにフォーカスしてユックリ走ればいいかと言えば、1ラップの制限タイム枠があり、それを超えると失格になるし、早すぎても失格になる。基準タイム内での順位も付けられるので、タイムとのバランスも大切だ。つまり、燃費の順位とタイムの順位の両方を合わせた総合順位が結果になる。燃費の比重が倍と高くなっているので、なかなか頭を悩ませるところだ。

 最近のわがチームAJAJは、竹岡圭ちゃんがナビゲーターを務めている。結構浮き沈みの激しいレースを毎年繰り返しているが、残念ながら優勝はまだない。

ナビゲーターの竹岡圭ちゃん(左)とツーショット!

 今年の競技規則で大きく変わったのは、これまでは外周路を走ったり、フィギュアもあったり(狭い場所で方向展開したり車庫入れしたりする競技。自動車部時代は日課で、毎日フィジカルトレーニングを繰り返していた。もちろん、部車にはパワーステアリングなどない時代である)したが、今年はシンプルに鈴鹿サーキット フルコースのみでの燃費競技に変わったことだ。

 まず、フィットからスタートした。最初のラップ以外は4分以上、5分以内で走らなければならない。ここで使う技術はいろいろと勉強になるが、最近の燃費技術が必要とされる耐久レースなどでも応用できるのではないかと、ぼんやり考えていたことを実践してみるいいチャンスにもなる。

 メーター内に表示される燃費計とにらめっこしながら、極力マイナスに振れないように走る。速度も大切なので、そちらもある程度は維持しなければならない。結構忙しいのだが、自分のペースでは4分半前後で走ることになった。もしかしたらもっと速い方がいいのかもという疑心暗鬼はこの際、捨てる! 相手がいる競技なので考えても仕方ないと割り切って、規定時間内に抑えた燃費だけを考えた。

 燃料はアクセルOFFだとカットされるので、その時間をできるだけ稼ぐためにイニシャル速度はある程度必要だ。フィットは最初のクルマなのでいろいろとトライアルを繰り返す。ブレーキは踏まない。コーナリングラインなら長年の経験で分かるので、そのコーナーに合わせた速度でラインに乗せてからコーナーに入っていく。しかし、コーナリングはどうしてもエネルギーを食われて立ちあがりの速度が乗らない。単独ならまだしも、ほかに59台走っているのだから、必ずしも自分のラインを取れるわけでもない。このへんの駆け引きは普通のレースと一緒で、経験がものをいう。どうしても接近して抜きつ抜かれつが出てくる。前方に集団が現われると、どうやってかわすか、どのクルマがどのくらいのペースで走っているかを見極めるのも普通のレースと同様だ。ただ、ペースが遅いので時間軸が長くなる。

 エコランをやってみると鈴鹿はアップダウンが多いだけでなく、コーナーのカントも変わるコースであることが改めてよく分かる。このアンジュレーションを知っているとスピードレースでも役に立つに違いない。パワーが欲しいところと、抜いていくところのメリハリをつけることができるからだ。一般的なレースではクルマとタイヤの状態を見ながらアクセルやハンドル舵角、ブレーキングなどを経験値で判断しているが、エコランをやってみるとサーキットのコースからクルマを見ることができて新鮮だ。

 こんなことを考えながら走っていると結構ヘロヘロになった。たった6周なのに……。いつものサーキットと違う神経を遣う。

 次のリーフはまったくどうしていいか分からない。電気の使い方もガソリン車と変わらないと思うのだが、勝手が違うのだ。アクセルOFFで回生できる量はそれほど大きくなさそうだが、回生させないと損しそうだし……。速度をどこで乗せて、どこでアクセルOFFにするのか悩ましいところ。そうして悩んでいるうちに6周が終わってしまった。電費はどうだったんだ?

 エコランの難しいところは相手の戦略が見えないことだ。2台終わってもやはりこれでいいのかと疑心暗鬼にかられる。

 最後はハイブリッドのアクアだ。いつも失敗するので、エコゲージの真ん中を狙って走ることにしたが、ボトムダウンの1コーナーから上がっていくコースはなかなか痺れる。速度が予想以上に落ちてしまうのだ。そこで、コーナーの最後のところだけアクセルをちょっと踏むことにした。微妙なアクセルワークだが、速度の乗りが違って、S字もイライラ度が少なくクリアできるような気がする。

 そして、徹頭徹尾ブレーキを踏まないのは同じで、進入速度に合わせた速度しか出さないことにした。周囲を走る各車は極端に速度を落としたり、ブンブン追い越していったり、惑わされることおびただしい。グッと我慢するが各コーナーでどうしてもエコゲージはマイナス方向に振れてしまう。

 そして自分との神経戦にさらに疲れ果て、都合18周のレースが終わった。ホントに疲れたゾ……。

 結果は案の定、リーフが電費6.2で13位、フィットが燃費22.9km/Lで7位、慣れてきたアクアが燃費27.2km/Lで3位だった。一般の部で3位だったのは上出来だ。それにしても常連で1位と2位の東京都トラック協会チームには歯が立たない。脱帽。そして学生の部で1位、総合3位には慶応義塾大学が入り、自動車部の意地を見せた。ちなみに私たちは総合では4位だった。

一般の部で3位に入り、表彰状とトロフィーをいただいた。1番右に写っているのが大先輩の磯野先輩だ

 よし! これでメディア対抗レースのロードスターの燃費はばっちりだ! ほんとか??

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。