日下部保雄の悠悠閑閑

北の国から ~日産編~

雪が多い江別で行なわれた日産自動車の試乗会は、一時ホワイトアウトする天候に……

 日産自動車と三菱自動車工業はアライアンスを組んで今後の事業展開をしていく予定だが、広報雪上試乗会もその流れで行なわれた。最初は日産、翌日は三菱自動車だ。今回は日産の雪上試乗会についてお届けしたい。

 試乗コ―スは札幌からクルマで40分ほど北に行った江別の特設コースで、雪がタップリある地域だ。一般公道も単純なコースながら用意されている、はずだった……。

 しかし、北海道でも雪の多いことで知られる地域。わるいことに低気圧が接近し、吹雪状態。地吹雪が特設コースも公道も覆いつくし、仮設の待合所から外に出られない状態になってしまった。完全なホワイトアウト。クルマで走るなんてとんでもない状態だ。

 ちなみに、黄色いクルマで公道に出てみたが、ドライバー位置が高くて視界がいいはずのトラックも、ハザードランプを点灯しながらゆっくりと動いている状態だ。右折なんて怖く怖くて、である。そんな状況だと白いクルマなんて完全に保護色になってしまうと思った。

 そういえば20年以上前、冬の旭川によく来ていたが、リアバンパーにバギー車のように長い竿を立て、その先に赤い布を付けているクルマを見かけた。その効用は地吹雪に遭遇した時によく分かった。竿の先の赤い布が目立ち、その下にあるクルマの存在を確認しやすかったからだ。最近はサッパリ見かけなくなったが、地吹雪の確率が減っているのか、立体駐車場が多くなり長い竿は不便になったのか、はたまたかっこわるいのか?

 さて、室内でジッとしていたわれわれだが、地吹雪の合間に運営側の努力もあって特設コースの一部が開き、少しだけ走れることになった。何しろ時間帯によってはその特設コースに行くだけでも大変なのだ。

 円旋回では「スカイライン」と「リーフ」のハンドルを握った。いずれも2輪駆動だが、FRのスカイラインはESCの働く範囲で駆動輪をコントロールすると、低速だがコジンマリと回れる。ただ、何がどう作動しているのか正直分からなかった。

 リーフは微妙なアクセルワークに反応するのと4輪のコントロールはブレーキを使って行なうので、こちらも低速ながらジワリと安定した姿勢で旋回できる。アンダーステアなのは当然だが、意外と舵角が大きくても旋回してくれるのは発見だった。大きな挙動を出しにくいのであまり面白くないが、これがリーフの安定性だと思う。

 一方、続けて乗った「ジューク」と「ノート e-POWER FOUR」はいずれも4輪駆動。ノート e-POWER FOURは、発進時に後輪モーターのサポートで4輪駆動としてスタートし、速度が乗るとFFになるが、圧雪と一部アイスバーンのハンドリングコースは結構楽しかった。いずれの車両もパーキングブレーキがセンターコンソールにあるので心強い。やはりこうでなくちゃ!

 本当は真面目にコースをトレースして各機能を確認すべきなのだが、限られた周回数と気持ちよさそうな圧雪に誘われて、雪道を楽しんでしまった。ジュークは前後輪のトルクベクタリングをしながら、後輪外側に大きなトルクを配分することで曲がりやすくしている。コンパクトなジュークは軽快に雪道を駆け抜ける。姿勢の作り方も容易で走りやすい。姿勢を作るためのステアリング操作量が少なく、あまり大きな姿勢変化をさせない4駆らしいドライビングがジュークの楽しさだ。ターンのきっかけにパーキングブレーキを使ったが、正直に言うとストレス解消になった。

4WDらしく大きな姿勢変化をさせない走りを見せた「ジューク」

 e-POWER FOURは走り出してしまえば前述のとおりFFのEV(電気自動車)だ。アクセルのコントロール性がよく、スッキリとした走り方ができて結構力強い。こちらもパーキングブレーキを使ってターンのきっかけを作りながら走ったので姿勢変化は大きいが、FF流の走り方をすれば早めに駆動力をかけられる。予想以上に走りやすく、面白かった。

発進時にモーターアシストが入る「ノート e-POWER FOUR」。パーキングブレーキを使ってターンのきっかけを作りながら走った

 どのクルマもパワートレーンのチェックよりもドライバーのストレス解消の方が先に立ってしまったが、雪上を楽しく走れ、それぞれのパワートレーンの一端を感じられた雪上試乗会だった。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。