日下部保雄の悠悠閑閑

大幅改良した日産「スカイライン」

新型「スカイライン」に試乗してきた

 日産の「スカイライン」が大きなマイナーチェンジを受けたのはご承知の通りだ。目玉は何といっても高速道路での運転支援である「ProPilot 2.0」。興味深いのは同時に発表された「400R」の人気が高く、受注開始後1か月の構成比では24%を占めているとのことだ。

「GT-R」の流れをくむ3.0リッターターボのVRエンジンがベースとなる「GT」系のエンジンを304PSから405PSにチューニングした400Rの受注が好調なのは、やはり日産ユーザーにはハイパフォーマンスモデルに惹かれる層が多いことを示している。GT-Rや「フェアレディZ」はあるものの、このところスポーティで元気のいいクルマから遠ざかっていた日産には、400Rのようなハイスペックを連想させるクルマが必要なのだと思う。

 ちなみに価格は約552万円と、ベースとなる304PSのGTに比べると約100万円ほど高くなるが、スカイライン史上最強の405PSにはそれほどの魅力があるということだろう。その半面、シャシー側はそれほど変えられているようには見えないので、400Rがどのようなポジションにあるのか気になる。今どきのハイパワーカーだからきっと乗りやすいんだろうと思いながら、妄想は膨らむばかりである。

 ちなみにハイブリッドは全体の半分くらいの49%。そして304PSのGTは27%となっている。

スカイラインの後ろ姿

 さて、ProPilot 2.0は3D地図を持つナビゲーションと連動した高速道路のインテリジェントルートということになる。

 プレゼンで簡単なレクチャーを受けてからハンドルを握るが、新しい機能のときはいつもそうだが、実際にProPilot 2.0を試せるのか心配だった。そしてその心配はやっぱりというか、うまく作動させられなかったのである。そもそも、試乗会日程を間違えてノコノコとやってきた時点でダメダメだったのだ。

 さて、ProPilot 2.0はナビに目的地を設定すると、高速道路上では分岐までも運転支援をしてくれるところがまったく新しい。

 システムとしてはProPilot 2.0になってこれまでの単眼カメラからそれぞれ見える角度が異なる3眼カメラに変えられ、ミリ波レーダーを追加している。それらのセンサーは車両周辺の360度をカバーして、7個のカメラ、5つのレーダー、12個のソナーでグルリと周囲を見ることになる。

高精度なメーター。センサーが後方を見ている

 高速道路に入ってから本格的にProPilot 2.0を使ってみる。ここの高速道路の最高速は80km/h。速度誤差も入れてプラス10km/hまではPropilot 2.0の守備範囲だ。クルーズコントロールはもっと高い速度まで設定できるが、ハンズオフにはならない。また、ダッシュボード上のカメラではドライバーの目や顔を見ているので、調子に乗ってよそ見をしていたり目をつぶっていたりすると警告が出される。

 直線が長いコースだったので他車の速度は結構速く、80km/hに設定するとどんどん抜かれる。つまり、追い越しのシーンになかなか遭遇しないのだ。では、としばらく設定速度でハンズフリー運転をしてみる。レーンキープ性能は高く、同一車線内を巧みに維持しながら、ハンズオフでもゆったりと車線をキープする。初期のProPilotでは同一車線内での方向性がビシッと決まらず、少しフラフラしながら走っていたが、それから比べると雲泥の差だ。もっとも最初のProPilotは3年前のセレナだったので、今回のスカイラインとは車高もシャシーも違うが、システムの進化は目を見張る。

 IC(インターチェンジ)手前で次のICで降りる旨を知らせてくる。ここでステアリング上の車線変更スイッチを押すのだが、間違えて長押ししてしまった。これでキャンセルになってしまったので台無しだ。なんてこった!

 では、と復路は同じルートを設定する。今度は緩い上りのルートなので、トラックなどは80km/h以下で走行している。やっと追い越し機能をトライできると思ったが、車線変更スイッチだけでなくウィンカーレバーも操作してしまったためか、うまくいかなかった。ちなみに、後方から速いクルマが来ている場合はキャンセルされる。なかなか思うようにはいかないものである。

 ただ、ProPilot 2.0はロードサインを見てそれに従うので、ICの減速表示区間に入ると実際の交通の流れと乖離してしまう。近い将来、ProPilotのような運転支援システムが普及すると、高速道路の合流地点などで滞留してしまうことがありそうだ。インフラ側の現実に即した表示がほしいと思う。ちなみに、同じ試乗会に来ていた同業者は、合流地点では自分の意思で速度をコントロールしたということだった。彼は追い越しもICでの出口もシステムに従ってスムーズに走れたというので、少し長めに乗れば恩恵にあずかれそう。渋滞でのストップ&ゴーも停車してから30秒間は自動で再スタートできるようになったので実用性も高くなり、渋滞時はドライバーにとって救いの新技術になりそうだ。

 とはいうものの、自分では機能の半分も確認できなかったのは悔しい。今度はもう少し長い時間試してみたいと心底思った。

スカイラインのトランク。ハイブリッドのため、奥行きがあまりない

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。