まるも亜希子の「寄り道日和」

わが家にあったスカイラインのお話

夫が中学生時代から憧れ、ようやく手に入れて溺愛していたR32 GT-R。私も遅ればせながら、「もう2度とこんなクルマは生まれないだろうなぁ」と、その偉大さに気付いた本物の名車だと思います。これは泣く泣く手放した日の記念写真。娘にはNISMOのツナギを着せました(笑)

 初めて高速道路での「手放し運転」を実現した新型「スライライン」が話題ですが、実はわが家にもかつて、スカイラインがあったんです~。しかも、2台! いや、厳密にはもう1台、現役でまだスカイラインがあるんですけどね。

 最初の1台は、R32 スカイライン GT-R。1989年にデビューしたモデルです。私も夫も当時は中学生。まったくその存在すら知らずに育ってきた私と違って(笑)、夫はず~っと「いつか愛車にしたい」と憧れてきたらしく、ようやく状態のいい個体を見つけて手に入れて、もう溺愛状態。私もこの仕事を始めてからはさすがにR32 GT-Rの偉大さを知り、ジャーナリストの大先輩たちからこぞって「1度は乗るべし!」と指南されていたので、運転してみたいな~と思っていたのですが、なんせ溺愛状態だからなかなかハンドルを握らせてくれないんですよね(笑)。

 でもある日、R32で出かけた帰りに飲み会があり、夫にビールを飲ませて私はノンアルで我慢。ついに運転するチャンス到来ですっ。いや~、体がコクピットの一部に組み込まれる感覚とか、エンジンが吹け上がっていくとゾクゾクする興奮とか、もう衝撃のひと言! これは間違いなく、後世に残すべき名車だと実感したのでした。

 とてもいいクルマなので、できればずっと所有していたかったけど、残念ながらいろんなところにガタが出てきて、維持費が莫大な金額になりそうだと判断した夫は、泣く泣く専門ショップに引き取ってもらい、お別れすることになりました。

 それからしばらくして、わが家にまたスカイラインがやってきたのですが……。なんとそれが、ゴリッゴリに改造されたドリフト仕様車! 私には、言われなければそれがR34スカイラインだなんてまったく分からないくらい、ハッキリ言って昔の「ヤンキー車」って感じ(笑)。排気音もけっこううるさくて、えっ、これ、ウチの前に停めるの? って躊躇するくらいでした。

わが家の2台目のスカイラインは、R34のドリフト仕様車。どこにもスカイラインの面影がなく、私は言われなかったら分からなかったかも!? ドアロックを解除すると「ヒュンヒュン!」とヘンな音がして、乗るのが恥ずかしかったです……。でも、ドリフトはもっと練習したかった~!

 夫の仲間内でもドリフト走行会が流行っていたこともあって、最初のころはけっこうマメに練習に通っていて、現地で撮った動画を見せてもらうと、なかなか腕を上げている様子。見ているうちに私も、「せっかく家にドリフト車があるんだから、練習してみようかな」と感化されてしまって、おそるおそる那須ドライビングパレットでの練習会に同行してみたんです。

 いや~、コテンパンにやられましたね(笑)。こんなに難しいの? って悔しくなるくらい、クルマを思い通りに動かせないっ。基本中の基本である定常円旋回をマスターしたかったんですが、半周くらいすると外に飛び出しちゃうんです。ハンドルの重さに腕が耐えられないってのもあるんですが、アクセルの調整とかもほんっとに微妙なところでキープしなければならなくて、1日やってようやく「なんとなくできてるかな~?」くらいのところまでしかいけませんでした~。

 で、2回目の練習は富士スピードウェイのドリフトコース。プロのレーシングドライバーがたくさん走っていたので、上手な人たちの技を見よう見まねでやってみたんですが、ま、最初からできるわけないですよね。でも、まぐれで1回できたら気持ちよくて、それだけでもすっかり楽しくなっちゃいました。

 私はもっと練習したかったのですが、けっこう上手になった夫は満足したのか、それからだんだんとドリフト熱が冷めていき、またもやお別れすることに。代わりにわが家には、新しくお熱になった初代ロードスターがやってきたのでありました。

 そして、厳密にはもう1台、まだスカイラインがあると言ったのは、義母が20年乗り続けているR34 スカイライン。早くに亡くなった義父が乗るはずだったクルマということもあってとても大切にされているので、まだまだきれいでよく走るんです。娘を預ける時にもこのR34で迎えに来てくれて、ブオンといい音をさせて走り去っていく義母はカッコいいんですよね。

 私もたまに運転させてもらうのですが、もうドリフト仕様車だったあのR34と同じ型式とは思えない(笑)。古いからエンジンの振動とかは大きいし、パワーの出方もレーシングな感じなのですが、どこか品があると言いますか。乗っていて安心感があるところがいいんですよね。ただ、やっぱりハンドルは重いし、発進直後はかったるい加速フィールなので、街中のストップ&ゴーはちょっとしんどい。それでも、直線基調のボディはとても見切りがよくて、狭いクランクでもスイスイ走れるのはいいところですね。

 というわけで、なにかとスカイラインにはご縁の深いわが家。新型スライラインはどんな世界を見せてくれるのか、楽しみにしていたいと思います。

現在も元気に走っている、義母のR34スカイライン。走行距離もまだ7万kmで、ATじゃなければ息子(夫)のドリ車にされていたところだったとか(笑)。素のまま残ってくれてよかった~。パワフルかつ品のある走りは、スカイライン黄金時代の名残を感じさせてくれます

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。17~18年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。女性のパワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト(PWP)」代表。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦している。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968など。ブログ「運転席deナマトーク!」やFacebookでもカーライフ情報を発信中。