まるも亜希子の「寄り道日和」

「つくばエキスポセンター」で懐かしいクルマと再会

茨城県つくば市にある「つくばエキスポセンター」のエントランスから見えるロケットは、純国産ロケット「H-II」の実物大模型です。高さは50mあり、屋外ひろばから足元まで近くことができ、真下から眺めるとすごい迫力です

 秋の夜長。みなさん、何していますか? わが家はリビングでくつろぎながら、せっせとアリが巣を掘るところを愛でています(笑)。

 というのも少し前から、娘がいろんな実験に興味を持ちはじめ、三児の母である妹から「それならココに行ってみると面白いよ」と聞いて、茨城県つくば市にある「つくばエキスポセンター」に行ったのがそもそものはじまり。私がまだ小学生のころに開催された「つくば万博」を記念して建てられた施設で、科学技術などのいろんな不思議が遊びながら学べる「おもしろサイエンスゾーン」や、世界最大級のプラネタリウムなどが、ちょうど幼稚園児くらいから楽しめるというのです。

 施設の駐車場は1日500円。周辺にも有料パーキングがあり、クルマでのアクセスはいいですね。エントランスでは、すっくとそびえるH-IIロケットが出迎えてくれます。入館したら、まず1階展示場へ。ここが噂の「おもしろサイエンスゾーン」なんですが、入口を入った瞬間、私はとても懐かしい再会をしてしまいました!

覚えている方もいらっしゃいますか? 2001年に慶應義塾大学が中心となって開発された、高性能電気自動車「KAZ」(Keio Advanced Zero-Emission Vehicle)がこちらに展示されていました。当時はまだリーフもアイミーブも発売されておらず、航続距離300km、最高速300km/hというのは夢のような世界。2001年のジュネーブショー、デトロイトショー、東京モーターショーなどに出展されて、世界的に注目を集めたエポックメイキングなクルマでした

 なんとなんと、私がまだ駆け出しの編集者だったころに、東京モーターショーに出展されていて取材したこともある、8輪の電気自動車「KAZ」がいるではないですか。あれは2001年、まだプリウスなどハイブリッドカーが出た数年後のことで、電気自動車なんてもっともっと未来の乗り物だと思っていたころに、慶應義塾大学が中心となって開発され、航続距離は300km、最高速は300km/h、加速力は0-400mが14.5秒という高性能を実現。それはそれはビックリしたものでした。

 そんな「KAZ」がここで余生を送っているとは知らず、今見るとすっかり古びて見える姿にちょっとしんみり。性能だって、今ではリーフが航続距離400kmを達成しているし、充電方法や所要時間、エネルギーマネジメントもグンと進化しているはずです。「KAZ」が遠い遠い未来のクルマのように見えた自分から、確かに20年の時を歩んできているのだなぁと、あらためて実感させられてしまいました。

 でも、娘も「なにこのクルマ、すごーい」なんて言いながら、応接間みたいなKAZの車内に乗り込んでみたり、ほかの子供たちや女子高生たちまでもスマホで記念撮影をしていたり、クルマをよく知らなくても、どこかタダモノではないオーラが出ているのかもしれませんね。いつか、電気自動車が本当に私たちの暮らしに根付いたとき、こうした「KAZ」のようなチャレンジがあったからこそ、今の暮らしにたどり着いたんだと伝える、EVの伝道師のようになってほしいなと思いました。

 さて、私が懐かしい思い出に浸っている間に、娘はあっちこっちのおもしろ科学をかたっぱしから試して、夢中になっていました(笑)。例えば、ランニングボードの上を全力で走って電気を起こし、形状記憶合金の花に電気を送って花を咲かせる展示とか、空気を弾丸のような勢いで発射させて、壁の模様を変形させる展示とか、ドライヤーを当てて金属を曲げ、ドライヤーを止めると元に戻る展示などなど、手足を使って光や電気、風力や熱などの科学の不思議を体験できるようになっているんです。

 5歳の娘にはまだ、単に面白いゲームみたいなものかもしれないですが、小学生、中学生と成長するにつれて、「ああ、これが電気自動車に使われているんだな」なんて、知識がつながっていくんでしょうね。お恥ずかしながら、まるっきり文系の私も今回、いい年をして「えっ、そうだったの!」と初めて気がつくこともあったり(笑)。いや~、勉強になりました。

 そして、時間がなくて残念ながら見られなかった2階の展示室には、「生命への挑戦」「宇宙への挑戦」といった、もう少し深いお勉強ができるコーナーがたくさんあったようです。そのほか、科学者のお仕事がわかるコーナーや、宇宙や深海調査を立体映像で見られる3Dシアターなど、1日中遊べそう。私たちはもう1つのお目当て、プラネタリウムを体験。2020年2月にリニューアルオープンしたばかりで、新たに導入したという8K相当のマルチプロジェクションシステムによる映像はもう、素晴らしいのひと言でした。しかも、このプラネタリウムで再現できる天体の位置関係は、現在だけでなく前後100万年! すごいですよね。上映番組には、クレヨンしんちゃん、名探偵コナンによる子供向けの番組もあるんですが、今回は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をテーマとしたオリジナル番組を体験。娘にはちょっと難しいかな? と思いつつ、けっこう楽しかったようで、今では以前より星に興味を持つようになりました。

世界最大級の大きさと、最新の8K相当の微細な美しい映像が堪能できるプラネタリウムも、ここつくばエキスポセンターの目玉なのですが、その写真は写せなかったので、そこへ向かう途中に展示されていた、懐かしの万博ユニフォームを。1985年開催の国際科学技術博覧会(科学万博ーつくば'85)の記念品や関連グッズが展示されており、当時の映像なども見ることができるメモリアルコーナーがあるんです

 で、すっかり満喫してさぁ帰ろうか、と出口へ向かったところで、お土産ショップがあったわけです。まぁ当然、「なんか買いたい」となりますわな。そこで娘が食いついたのが、「アリの巣」の飼育・観察セットだったというわけなのです。帰宅するとすぐに、公園で10匹のアリを捕獲。飼育ケースに入れたら、あとは朝と晩の2回、ケースに空気を入れてあげるのが唯一のお世話です。説明書には、アリの種類によって3日から3週間くらいで巣を掘り始めると書いてあり、わが家のアリは1週間くらいグーたらとしていたと思ったら、8日目くらいにいきなり猛烈に掘りはじめました。

 日に日に迷路のようになっていくアリの巣、司令塔みたいなヤツや寝てばっかりいるヤツ、見張り役らしきヤツと、いろんなアリの動きがなかなか楽しく、こうしてあらためて身近にあるいろんな不思議を見つめ直す秋(笑)。たまにはそんな秋も、いいものですね。

もうひとつ、はたらくクルマが好きな人にはたまらない展示が、屋外ひろばにひっそりとありました。なんとこれは、南極で1988年から約23年にわたって活躍し、2011年に帰国したという、小型雪上車「SM25S」。南極の昭和基地での沿岸地域の調査・観測は、海氷上での活動になるため、脆弱な海氷に適した走行性能が求められたり、雪上車として初めてオートマチック方式が採用されたことも特徴だそうです

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z(現在も所有)など。