【2011ジュネーブショー
スバル「ボクサー スポーツカー アーキテクチャ」開発主査インタビュー

ボクサーとFRレイアウトが奏でるハンドリングが見どころ

今回お話を伺った、スバル商品企画本部 上級プロジェクトゼネラルマネージャー 増田年男氏と「ボクサー スポーツカー アーキテクチャ」



 トヨタ自動車とスバル(富士重工業)が共同開発を行っているFRスポーツカー。外観については、モーターショーなどで公開されてきたが、パワートレーンについての発表はこれまで全くなかった。ターボなのか自然吸気なのか、シャシーやサスペンションの取り付け方法はどうなのか? さまざまな噂があったが、ジュネーブショーでようやくスバルから正式な発表があった。

 そこで、先代レガシィ(発売期間2003年5月~2009年5月)の開発責任者を務め、現在はボクサー スポーツカー アーキテクチャの開発主査であるスバル商品企画本部 上級プロジェクトゼネラルマネージャー 増田年男氏に、コンセプトやFRスポーツカーの特徴を語ってもらった。

 


 

──今回のジュネーブショーで初めて動力部分が公開されることになりましたが、まずその経緯を教えてください
増田氏:これまでトヨタさんと共同開発を行ってきましたが、技術的な基本ディメンションが決まったので報告することになりました。シースルーモデルを展示することで、ボクサー(水平対向)エンジンを搭載することによるレイアウトの優位性や、パッケージ全体を見てもらいたかったのです。

──カンファレンスでは、「ハンドリング・ディライト」という言葉で運転する楽しさを訴求していましたが、ボクサー スポーツカー アーキテクチャのコンセプトを教えてください
増田氏:コンセプトの1つに「クルマの運転はこんなにも楽しい、ということを世代を超えて体感してもらえる」ことを掲げています。その楽しいハンドリングを実現するためにボクサーエンジンが選ばれました。

──ボクサーエンジンは、ハンドリングのよさを実現するための武器ということでしょうか?
増田氏:もともとボクサーエンジンは低重心にできていて、FRレイアウトとしたことでさらにその優位性が磨かれました。AWD(4WD)モデルに比べて、エンジン搭載位置は低く、そして中央に寄っています。搭載位置を低くできたので、ボンネットも低くすることができ、よってドライバーの着座位置も低くすることが可能になりました。ボクサーエンジンを搭載したことによるメリットはたくさんあります。重心が低く中央に寄ったことで、ハンドリングはゴーカートのように楽しんでもらえるはずです。

──よくハンドリングがよいと言いますが、増田さんの思う優れたハンドリングのクルマとは何でしょうか?
増田氏:ヨーロッパのクルマなどは長い歴史の中でよいものを作っていると感じます。ポルシェなどを筆頭に乗っていて楽しく、確かなフィーリングがある。そして安心して乗れる。この面ではさすがだと思うところがあります。スバルとしては、欧州車が持つこれらの長所をどうやってテクノロジーに落としこむかを考えてきました。このFRスポーツでは、その感覚を手ごろな価格で実現できています。

──エンジンですが、搭載されるのは昨年に発表された第3世代のFB型エンジンでしょうか?
増田氏:生産ラインでは「FBファミリー」と呼んでいますが、スポーツカーコンセプトなので、その性能に合わせて特別に手を加えています。

──特別な技術とは、直噴化であったりターボでしょうか?
増田氏:具体的に導入する技術は今の段階では話せませんが、このクルマ用のアイコンとなる技術をたくさん盛り込んでいます。ターボ化などは期待されていますが、まずはFRレイアウトとボクサーの素性のよさをシンプルに味わって欲しいと思っています。

──シャシーに関しては、レガシィやインプレッサで定評のあるSIシャシーを使っているのでしょうか?
増田氏:SIシャシーというのはスバルのテクノロジーであって考え方です。なので、クルマの性能や方向性によって変わってきます。それはこのクルマでも同じです。スポーツカーでFRレイアウトなので、ディメンジョンがAWDとはだいぶ変わっていて、新たに設計したところがほとんどです。それでも、フレームワークやサスペンションの支持方向なのでのノウハウはSIシャシーから活かされています。

──ドライブトレーンに関してはコンベンショナルなトランスミッションが採用されるのでしょうか?
増田氏:こちらも詳細についてはお話できませんが、トヨタさんとクルマにマッチした性能を持ったものを選んでいます。ポテンシャルを活かすために、新たに開発を行いました。

──最後に、このクルマのよさはどんな環境で味わうことができるのでしょうか?
増田氏:スバルのクルマはどれも同じで動き出した瞬間からよさを感じてもらるはずです。FRスポーツカーだからって身構えて走ることもないですし、通勤や買い物などで運転していても楽しさが味わえるように作っています。ドアを開けてクルマを降りたらどんなドライバーでも笑顔になる、そんなクルマに仕上がっていると思います。

ジュネーブショー 2011 レポートリンク集
http://car.watch.impress.co.jp/backno/event_repo/index_c270s1157.html

(真鍋裕行)
2011年 3月 10日