東京モーターショー2015

発売間近の「イグニス」やミニバンコンセプト「エアトライサー」で未来を示すスズキ

「SUZUKI NEXT 100」に向けた「スズキらしさ」を強調

2015年10月30日~11月8日一般公開

 スズキは東京モーターショーにおいて、6月に代表取締役社長に就任した鈴木俊宏氏によるプレスカンファレンスを行い、そのなかでワールドプレミアを含めた日本初公開モデルとして、13台の4輪モデル、3台の2輪モデルを紹介した。

スズキ 代表取締役社長 鈴木俊宏氏

 車両の紹介に先立って語られたのは、鈴木氏の社長就任後に掲げられた「SUZUKI NEXT 100」について。このスローガンの大きなポイントは「会社を挙げてもの作りの強化に取り組んでいくこと」だ。

 これまでもスズキは4輪、2輪ともに他のメーカーとは違ったこだわりを感じるモノ作りを進めてきた印象が強いが、そこをさらに強化していきたいという意気込み。なにしろスズキは2020年に創立100周年を迎えるので、その記念すべき年に向けて力が入るのは当然のことだろう。そして最高の状態で創立100周年を迎えたあとは、次の100年に向けてさらに力を入れていくということだった。

 東京モーターショーに出品した参考出品車は、その目標に向けて製作されたもので、スズキが人とモビリティのこれからの100年に向けた新しい技術や提案のカタチであるということ。

 ただし、未来へ向けたものであっても「スズキらしさ」を重視した鈴木社長は、スズキの社是から「お客様の立場に立って価値ある製品を作ろう」という部分を重視。これまでもスズキには2輪車では「カタナ」「隼」。4輪車では「ジムニー」「ワゴンR」「ハスラー」などユーザーの期待を飛び越えたものを作り出してきたが、今回の参考出品車も「走る喜び」「使う楽しみ」「持つ幸せ」につながるものとなっているとのことだった。

 それでは、その一部を紹介していこう。ミニバンのコンセプトカー「Air Triser(エアトライサー)」は、これまでにない発想のシートアレンジが可能なモデル。通常時はいわゆる3列シートミニバンであるが、エアトライサーでは駐車するとシートが電動で対面配置にできたり、自宅のリビングのソファーのようにコの字型にセットされる「ラウンジモード」などのシートアレンジを備える。キャンプや遊びに行った先など、通常の3列シートミニバンではできない車内スペースを生かし切る革命が盛り込まれた。また、太めのBピラーから天井までが大きなモニターになっているので、スマホなどに入っているコンテンツをモニターに表示することができるのだ。

シートアレンジに特徴があるミニバンのコンセプトカー「Air Triser(エアトライサー)」は、出掛けた先で、クルマの持つパーソナルスペースを十分に生かす作りになっている。スタイルも独特でサイドミラーの変わりのサイドカメラが付いていた

 次にクルマの楽しさや使い方を提案する「MIGHTY DECK(マイティデッキ)」。このクルマの特徴は、使い方にあわせて稼動するオープンデッキ(荷台)とキャンバストップを備えているところ。これは都会と自然、ウチとソト、ONとOFF、リラックスとプレイフルといった相反する2つのシーンを行き来する「アーバンアウトドア」をコンセプトとしている。

異なる2つのシーンで使いまくれることを狙った「MIGHTY DECK(マイティデッキ)」は、道具としてのクルマの便利さやワクワク感を演出するもの。ヘッドライトはLEDで、こちらもサイドミラーの変わりにバックカメラを装備

 そして、発売間近のコンパクトクロスオーバー「IGNIS(イグニス)」をベースにラフロードイメージを高めた「IGNIS-Trail Concept(イグニス トレイル コンセプト)」。標準車と比べると車高を含めかなり違うようにも見えるが、実はサスペンションは同じものが使われていて、タイヤ外径を大きくすることでロードクリアランスを上げていた。それに加えてルーフレールの装着、ルーフのブラック仕上げ、サイドストライプ、そしてフェンダーアーチモールなどがイメージを大きく変えていた。

 スズキの説明員も「イグニスは素材がよいので、あまり大がかりなことをしなくてもさらに魅力的なスタイルになるのです」「カスタマイズの楽しみもあると思います」というひと言もあった。このイグニス、発売が待ち遠しい1台だろう。

標準車のイグニスをベースにしたカスタマイズモデル。とはいえ、大がかりな作り込みをしたわけではなく、大径タイヤの装着やルーフレール追加、デカールなどでイメージを大きく変えていた。このルーフレールは市販仕様にオプション設定されるかもしれない。
室内の作りも標準車と同じでカラーを変えている。シートには内装にあったシートカバーを装着している

 さて、スズキにとっては挑戦となる1台の新型車を紹介していこう。それが「Baleno(バレーノ)」である。ボディーサイズは3995mm×1745mm×1470mmというコンパクトハッチバックで、クラス的には「スイフト」より上、「SX 4」より下というポジションとなる。搭載するエンジンは新開発の1.0リッター直噴ターボ「ブースタージェットエンジン」と1.2リッター「デュアルジェットエンジン」だ。スズキ車のこのクラス参入は珍しいので、スズキファンはこのバレーノについてもチェックしてほしい。また、別記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/event_repo/2015tokyo/20151028_727936.html)にターボエンジンに5速MTの「アルト ワークス」が展示された情報を掲載しているので、そちらもぜひ読んで頂きたい。とにかく東京モーターショーのスズキブースは見どころが多いといえるだろう。

参考出品で展示されていたBaleno(バレーノ)」。ボディーサイズは3995mm×1745mm×1470mmで、エンジンは新開発の1.0リッター直噴ターボ「ブースタージェットエンジン」と1.2リッター「デュアルジェットエンジン」の2タイプを用意している
バレーノはスタイリングがエレガント。それにあわせてインテリアも落ち着きと高級感のある作りになっている。黒の本革を基調としたデザインはキザシのときのようなシンプル&ハイクオリティなイメージ
スズキと言えば大人気の軽トラック「キャリー」がある。今回は移動市場のイメージで製作したコンセプトカーを展示。荷台にあるアイテムのうち、据え置きになるのはベースの台とそこから出ている引き出しのみ。閉店後(?)はテント等は片付ける作りというのが働くクルマっぽい
スズキの環境技術の展示もあった。フルハイブリッドよりも汎用性の高いスズキ独自のハイブリッドに、デュアルジェットエンジン、オートギヤシフトなどの作りが分かる

「コンセプト GSX」や「ハスラースクート」など2輪モデルの展示

「GSX」の名を冠する高性能バイクの象徴として製作されたオブジェ「コンセプト GSX」
日常の足である原付きスクーターは荷物の積載性も求められる存在。そこでシート下に大きなスペースを作っただけでなく、専用トランクをステップボード部にはめ込むアイデアを盛り込んだ「ハスラースクート」
自転車のクロスバイクに50ccエンジンを積んだ「フィール フリー ゴー!」という乗り物。ハンドルグリップ式のギアチェンジ機構も備えている。リアカメラも装備していて後ろの風景はハンドル部のメーターに映る。また、走行中は自車の存在を示すため路面にライン状の光を照射できる。
今年から復帰したMotoGPを戦う「GSX-RR」も展示。マーベリック・ピニャーレス選手の#25号車は跨がることも可能だ。
東ホールのスズキブースには4輪車が22台。2輪車が12台展示されている

深田昌之