東京モーターショー2015

グッドイヤー、発電タイヤ「BH-03」やモーフィング・タイヤ「Triple Tube」を世界初公開

2015年10月30日~11月8日一般公開

発電タイヤ「BH-03」(ビーエイチ・ゼロスリー)
モーフィング・タイヤ「Triple Tube」(トリプル・チューブ)

 10月1日から米国グッドイヤーの100%出資会社として新たなスタートを切った日本グッドイヤーが、東京モーターショー2015の会場でプレスカンファレンスを行った。

 スピーカーを務めたアジアパシフィックリージョン 副社長 マイク・リトコスキー氏は冒頭で「グッドイヤーの未来の研究室へお越し下さいましてありがとうございます。グッドイヤー創設以来120年にわたって、運転の楽しさを追求してきました。そしてイノベーションはグッドイヤーの成功の要因となっていて、本日は2つのワクワクする未来のタイヤをお見せします」と語った。

グッドイヤーエンジェルとグッドイヤー・アジアパシフィックリージョン 副社長 マイク・リトコスキー氏(中央左)、コメンテーターのデーブ・スペクター氏(中央右)
フォトセッションに収まる日本グッドイヤー取締役の吉沢雄一氏(左)、グッドイヤー・グローバルセールス&マーケティング・バイスプレジデントのリチャード・ケアン氏(左中)、コメンテーターのデーブ・スペクター氏(右中)、グッドイヤー・アジアパシフィックリージョン副社長のマイク・リトコスキー氏(右)

 1つ目の未来のタイヤについては、「BH-03といって世界初の発電タイヤになります。未来のクルマを想像してください。ガソリンも要らなければ充電も要りません。なぜならタイヤが発電してパワーを供給するからです。BH-03は、タイヤが発する熱や圧力を電力に変えて利用します。タイヤは走行中に80℃まで発熱し、それをエネルギーに変換してバッテリーに充電します。また、タイヤがたわんだり変形したりするときの圧力も電力に応用するのです。このように革命的なタイヤがBH-03になります」と、タイヤによって発電を行うコンセプトモデルについて解説した。

 このBH-03は、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)への供給を検討しているモデルで、ルクセンブルグのイノベーションセンターで開発されているという。

 内部構造は、熱を電気に変換する「熱電素材」と、タイヤに掛かる圧力を電気に変換する「圧電素材」の2つを織り重ねている。構造はランフラット技術の代替としても使用することができ、パンク時にクルマの荷重を支える可能性を秘めているそうだ。

プレスカンファレンスにゲストとして招かれていたデーブ・スペクター氏は、「僕はずっとアメリカ車に乗っていて、必ずグッドイヤーを履いています。アメリカでは、サイドウォールに入った白いGOODYEARの文字が自慢の1つです」といい、コンセプトタイヤについては「最近は、世の中でクルマ離れが口癖になっていますが、スマホ世代の若者はハイテクなクルマや技術には魅力を感じているはずです」と、2つのコンセプトタイヤが市販されることを期待していた

 もう一方のコンセプトモデルについては、「路面の状況にタイヤが合わせる新しいテクノロジーを取り入れたのが『Triple Tube』になります。内部には3つのチューブが入っていて、エアポンプが内蔵されています。路面状況に応じて3つのチューブにそれぞれエアを送ることで、ハンドリングや燃費といったタイヤに求められる性能を高めます。例えば、長距離を走るときで燃費を重視した走りをしたいとき、ワインディングでワクワクするドライビングをしたいときは、状況に合わせてポンプからチューブにエアを入れて対応します。また、ウェット路の場合には、真ん中のチューブにエアを入れることでハイドロプレーニング現象を抑制することも可能です。調整方法は検討中ですが、自動と手動の両方にしたいです」と、3つのエアチャンバーを独立して制御する「Triple Tube」について解説した。

 BH-03と同様にルクセンブルグのイノベーションセンターで開発が行われている「Triple Tube」は、タイヤ自体が路面に合わせて変形する新発想のモーフィング・タイヤになる。3つのエアチャンバーはセンターと左右に配されていて、3つの走行モードを想定している。

 1つ目の「エコ・セーフティー・ポジション」は、3つのエアチャンバーの圧力を均一化することで、最適な剛性を保ち転がり抵抗を低減する。2つ目の「スポーティー・ポジション」は3つのエアチャンバーを段階的にアクティブコニカル(円錐)形状にすることで、路面との接地性が最適化されハンドリングが向上する。3つ目の「ウェット・セーフティー・ポジション」は、トレッドセンター部分のエアチャンバーをせり上げることで、タイヤのトレッドを狭幅し大径形状させ、ハイドロプレーニングを抑制するという。

 両モデルとも市場での発売予定はないということだが、グッドイヤーが考えるタイヤの技術進化について知ることができるブースとなっている。

発電タイヤの「BH-03」。走行中の熱と圧力を電気に変換してバッテリーに蓄電することを想定している
「熱電素材」と「圧電素材」の2つの素材を織り重ねた構造になる。停止時には太陽光の熱を吸収し、電気に変換することも想定
ブース内では圧電と熱電を実体験できるコンテンツも用意されている
3つのエアチャンバーを内蔵した「Triple Tube」。エアポンプによりチューブに空気を送り込む
チューブは、センターと左右に3つ内蔵される。それぞれのチューブのエア圧を独立して調整することで、路面状況やドライバーの望んだハンドリングを生み出すことができる
グッドイヤーブース内にはエコタイヤやハイグリップモデル、オフロードモデルなどの市販タイヤも展示されている

真鍋裕行

1980年生まれ。大学在学中から自動車雑誌の編集に携わり、その後チューニングやカスタマイズ誌の編集者になる。2008年にフリーランスのライター・エディターとして独立。現在は、編集者時代に培ったアフターマーケットの情報から各国のモーターショーで得た最新事情まで、幅広くリポートしている。また、雑誌、Webサイトのプロデュースにも力を入れていて、誌面を通してクルマの「走る」「触れる」「イジる」楽しさをユーザーの側面から分かりやすく提供中。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。