東京モーターショー2015

バスを模したシアターでのVR体験もできるバス・トラックブース

いすゞ自動車、日野自動車、三菱ふそう、UDトラックスブースリポート

2015年10月30日~11月8日一般公開

 東京モーターショーで隠れた人気を誇る商用車メーカー。新型スポーツカーは大人で人だかりになる一方で、子どもたちが行列をなすのはトラックやバスで、普段はなかなか座る機会のない大型トラックのコクピット試乗は大変な混雑となる。

 バス・トラックではいすゞ自動車、日野自動車、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックス、ボルボ・トラックが出展、今回のショーではいずれも東1~2ホールに集められている。

【いすゞ自動車】大型路線バスと大型トラックをフルモデルチェンジ

 バス・トラックメーカーの中では新型車が多いブースがいすゞ自動車。大型路線バス「エルガ」を8月に、大型トラック「ギガ」をモーターショーに合わせた10月28日に新型を発表するなど、大型車の新型づくし。

 エルガは外見ではフロントフェイスが変わり、従来のイメージを保ちながらも2灯ヘッドライトとなり印象を変化させている。ボディーは全長を保ちながらホイールベースの延長がなされ、左側の座席を前向き配置可能とした。ステアリングの切れ角を大きくすることでホイールベース延長による取りまわしの悪化を防いでいる。また、エンジンはさらにダウンサイジングが進み、4気筒で250PSを発生する4HK1-TCSディーゼルエンジンを採用した。さらに従来のトルコン式ATに加えてAMT方式も用意、全車2ペダルでの運転が可能になった。

 ギガはトラクターを除く単車系を一新。フロントフェイスだけでなく、キャビンのインテリアはもちろん、メカニズムまで手を入れるフルモデルチェンジ。いすゞ車のフロントデザインで共通する6つの穴も維持しながらまったく新しい印象へと変更した。

 運転席のダッシュボードはラウンドデザインを採用。操作系がドライバー側を向く配置になったほか、国産大型トラックでは初というステアリングホイールへの操作ボタンの配置など、大きく変わっている。

 また、いすゞは毎回、アジア諸国で展開するピックアップトラックやそれをベースとしたSUVを展示している。展示の「D-MAX」は国内非導入モデルではあるが、いすゞはトラックだけの会社ではないことを国内でアピールするために展示しているとのこと。仮に導入する場合は排気ガス規制など基準を日本国内向けに変更しなければならず、ハードルは低くないという。

いすゞの大型トラック「ギガ」
いすゞのトラックのグリルといえば6つのホールが並ぶ形状だが、かろうじて継承している
ステアリングホイールに情報表示やクルーズコントロールの操作ができるボタンを装備するのは日本初
ブレーキペダルは、従来のオルガン式から乗用車などと同様の吊り下げ式に変更された
シート形状が変更となり、ドライバーの肩の部分のサポートが大きくなった
ドア形状もデザインされ、ボトムラインは大きく弧を描く
メーターパネルも新しいスタイルとなった
いすゞの大型路線バス「エルガ」
新型のヘッドライトは従来の縦型の4灯スタイルから異型2灯に変更された
運転席
トランスミッションはAMTかトルコン式ATのどちらかとなり、クラッチペダルは廃止。こちらはAMT車となる
ホイールベースが長くなり、進行方向左側のシートが前向きに設置できるようになった
スロープは折りたたみ式
エルガに新搭載するターボ付き4気筒エンジン。従来はターボ付きの6気筒エンジンだったが、さらにダウンサイジングされた
AMTのトランスミッション
フォワード Fカーゴ。安全装備満載仕様で車線逸脱警報(LDWS)、IESC(横滑り防止等の車両姿勢制御)、プリクラッシュブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)、ミリ波車間ウォーニング(車間距離警報)を搭載
エルフ ハイブリッド
D-MAX X-SERIES Hi-Lander 4-door。海外で販売している車両で、現状は国内販売の見込みはなし
歴史的車両として「TX80型5トン積みトラック」を展示。昭和20年代の車両

【日野自動車】燃料電池バスやハイブリッド大型トラックを世界初公開

 日野自動車は世界初公開となる燃料電池バスのコンセプトモデル「FUEL CELL BUS」や、ハイブリッド方式の大型トラックなど先進技術をアピールするほか、「日野レンジャー ダカールラリー2014参戦車」の実車を展示した。

会場では「FUEL CELL BUS」をプラットフォームに停めた状態で展示。バス停をホーム形状にすることで、車いすやベビーカーであっても誰かの手を借りずに段差なく乗り込むことが可能となる提案を行った。

「FUEL CELL BUS」の内部は都市の移動インフラとして、短時間乗車の際の効率を追求したシートなど、新しい試みも盛り込まれている。また、バスの後ろには電動自転車が積み込めるトレーラーを連結し、外部給電が可能なバスの仕組みを活用して、電動自転車もセットにした交通システムを提案している。

 大型トラックのハイブリッド版「プロフィア ハイブリッド」は、単にハイブリッドシステムを搭載するだけでなく大型車で問題となる空力特性にも注力し、側面から後方にかけてエアロパーツで覆ったり、キャビンと荷台の隙間をなくしたりしたほか、フロントの大きな空気抵抗となるミラーを特殊形状にするなどの工夫が見られる。

 そのほか、海外モデルのトラック「HINO 500シリーズ」を日本初公開。サイズや排出ガス規制などを現地仕様にしたほか、維持がしやすいよう現地で調達しやすいタイヤサイズやパーツの採用、メーカーとして推奨はしないものの過積載など現地で習慣的に行われてる使い方に対応した耐久性を備えるなどのローカライズを行っている。

燃料電池バスのコンセプトモデル「FUEL CELL BUS」
プラットフォームに停車することで、乗車時の段差をなくすことができる
リアには連結しているものがある
運転席
車内の様子
立つでも座るでもない、腰でよりかかるシート。短時間乗車の効率を追求したもの
ベンチ型のシート。これも短時間乗車の都市交通に対しての提案
段差なく車内からホームに降り立つことができる
リアには電動自転車のラックがある小型トレーラーを連結。走行しながら自転車の充電が可能
「プロフィア ハイブリッド」
空力性能を追求したエアロパーツを装着したことが特徴
リアタイヤの後ろに空気の流れを処理するダクトがある
ミラーも空気抵抗を考慮してこのような形状となっている
運転席
トランスミッションはAMTの12段
ドライバーズシート
海外向けの「HINO 500シリーズ」。2015年1月からインドネシアで販売開始
現地で調達しやすいサイズのタイヤを装着するとともに、リーフスプリングも現地で扱いやすい形状のものにしている
日野レンジャー ダカールラリー2014参戦車
大きなカーゴスペース
運転席も間近で見ることができる
大型観光バスの「セレガ」。安全装備が充実した仕様
中に乗り込むことが可能

【三菱ふそう】エアロクイーンの安全装備をVR体験できる

 三菱ふそうの展示は3台のトラックのみだが、事前に内容が公開されて注目の集まる「スーパーグレートV スパイダー」をはじめ、VR体験ができるバスを模したシアターなど、インパクトのある展示を行っている。

 シアターでは、エアロクイーンの運転席をVRヘッドセットのOculus Riftをかぶることで再現する。運転操作そのものはできないが、周回路の高速走行から急ブレーキやスピン、衝突回避に始まり、さらにお楽しみのコンテンツを体験できる。単なる3D映像とは異なり、顔の向く方向によって映像が変化するため、まるで運転席にいるような感覚だ。

 また、「スーパーグレートV スパイダー」は「ナックルブームクレーン」を4基搭載しており、まさにクモの足を生やしたような外見。4基のクレーンの先にはそれぞれ異なったアタッチメントが装着されており、穴あけや掴みなど、1台でさまざまな作業ができるようになっている。

 大型トラックのスーパーグレートVはバン仕様の2016年モデル。新たにD-ER(Drive Economy roll)とオートクルーズEcoモード機能を搭載しており、運転席に座ることが可能。小型トラックのキャンターはハイブリッド仕様で、発電機能を活用して電源供給車として利用するコンセプトモデルとなっている。

 これら3台はいずれも黒を基調としたカラーで統一されており、スーパーグレードVとキャンターは青のラインと青のホイールを装着、スーパーグレートV スパイダーはレッドのカラーでまとめられている。

バーチャルリアリティーで安全技術を体験できるシアター
シートは座る場所によって3タイプがある
VRヘッドセットのOculus Riftをかぶって体験する
リクライニングやマッサージなどのシートの機能を試すこともでき、タッチパネルで操作する
クモのような形をしたクレーン4本装備のスーパーグレートV スパイダー
アームは4本あり、それぞれ別形状となっている
土砂を運ぶバケット
丸太をつかむアーム
穴をあけるドリル
スーパーグレートVの2016年モデル。新たにD-ER(Drive Economy roll)とオートクルーズEcoモード機能を搭載
ブルーのステアリングホイールはショー用の特別仕様で市販仕様ではない
機械式A/T 前進12段のトランスミッション
スイッチが並ぶ。D-ER(Drive Economy roll)のスイッチがあるのが2016年モデルの特徴
ブースではスーパーグレード顔になれる「お面」が配られる
コンセプトモデルのCanter電源供給車。リアから電源を供給していることが分かる

【UDトラックス】大型トラックのコンセプトモデルを展示

 大型トラック「クオン」のほか、トラクターのコンセプトモデル「Quon Vision」やEV化した中型トラックの「UD Electric Demonstrator」、グループであるボルボのトラック(トラクター)が展示された。

「Quon Vision」はUDトラックスが考える次の時代の大型トラック。燃費のため空力改善にエアロパーツの装着は有効だが、これまでの検討から実用的なアプローチアングル、ディパーチャーアングルを確保した上でのサイズのエアロパーツを装着する。また、フロントはスタイルリングも重視し、すっきりとした大型フロントグリルを装着した。さらに大きな空気抵抗となるミラーの装着を止め、小型カメラによる映像映し出しに変更するなどした。カメラによるミラーなど基準で認められにくいものもあるが、乗用車では普及が進む360度映像表示など、課題を先進技術でカバーするような試みが多く含まれているという。

 EV化した「UD Electric Demonstrator」は、既存のディーゼルエンジンのトラックをベースにEV化したもの。リアミッドに電気モーターとバッテリーを搭載した。もともとエンジンのついている場所は補機類を収める場所としたが、将来、コスト的にもEVに特化したシャシー設計を行うようになれば、キャビンの形状は変わっていく可能性があるという。

 ボルボのトラックは「New ボルボFH」を展示した。国産とは違うスタイリッシュな内外装のほか、中央にエンジンの張り出しが少ないキャビン構造など、ボルボのトラックならではの特徴がある。

コンセプトカーの「Quon Vision」
エアロパーツを装備。すでにさまざまな検証をして、サイズなど実用的な形状となっているという
フロントグリル。あくまで見た目重視で検討されたスタイリングなので、冷却に十分なエアは今のところ取り込めていない
サイドミラーがない代わりに小さな棒が出ており、その先にカメラが装着されている
EV化した「UD Electric Demonstrator」
EVなのでシフトレバーのかわりに変速ボタンが並ぶ
スマートフォンが装着できる
モーターとバッテリーが搭載される
NewボルボFH。国内メーカーのトラックと比較して大型のキャビンも特徴の1つ。場合によっては天井が高く、入れない場所があるのが導入のネックだという
北欧らしいデザインの内装
ドアのパワーウインドースイッチもしっかりデザインされている

正田拓也