2017 デトロイトショー

日産、セダンデザインの方向性を示唆するコンセプトカー「Vmotion 2.0」世界初公開

2017年春に米国で発売予定の新型エントリーSUV「ローグ スポーツ」も発表

2017年1月9日(現地時間)発表

デトロイトショーで世界初公開された新型コンセプトカー「Vmotion 2.0」

 日産自動車は1月9日(現地時間)、米国 デトロイトで開催されている「デトロイトショー」で将来のセダンにおけるデザインの方向性を示唆する新型コンセプトカー「Vmotion 2.0」を世界初公開。合わせてエントリーSUVの新型「ローグ スポーツ」をデビューさせた。

エントリーSUV「ローグ スポーツ」
日産自動車株式会社 CPO 北米マネジメントコミッティ担当 ホセ・ムニョス氏

 会場で行なわれた記者発表会では、最初に日産自動車の北米事業を担当するCPO ホセ・ムニョ氏が登壇。ムニョス氏は日産がグローバルで560万台を販売し、2015年の同時期と比べて、2016年12月は北米市場におけるシェアが0.4%増加して8.9%となったことなど、2016年の日産の好調ぶりを紹介。これは数ある自動車メーカーの中でももっとも早い成長を遂げたと言えるものであり、とくに「ローグ」は、12月の販売で北米全体で4万台超を販売して販売ランキングの第4位に入り、乗用車の中では並み居る競合車種を抑えて首位に立ったことをアピールした。

 また、北米日産はこの約5年間で9000人を新たに採用。生産台数は80%増加し、対外輸出は3倍増になったことなどを伝えた。その中でも、北米市場の指向がよりSUVに傾きつつあり、2014年にはセダンとSUVの販売比率が60:40だったところ、2016年には53:47と年々シフトが進んでいる動向であり、これを踏まえてSUVラインアップの充実を図るのが当面の課題と説明。その第1弾として、新たに「ローグ スポーツ」を市場投入することを発表した。

 これに加え、「タイタン」に既存のXDに加えて新たにノーマルモデルを設定し、新型モデルが登場予定の「アルマーダ」「パスファインダー」もあり、さらに「ムラーノ」などを合わせると、将来的には販売比率がセダンとSUVで逆転して40:60になるのではないかという予想をムニョス氏は明らかにしている。

 ローグ スポーツは、すでに欧州で販売している「キャシュカイ」の名称を変えたモデルであり、「エクストレイル」と共通性が高いローグよりもサイズが小さく、価格が安い。ローグよりも低い価格レンジをカバーする若者向けのエントリーモデルという位置付けとなる。発売は2017年春の予定で、生産は九州工場で行なうものの、日本市場への導入は未定。

2017年春に米国で予定のローグ スポーツ。車両のリアハッチに「SL AWD」のバッヂを装着している
ローグ(エクストレイル)の名前を持つが、実際には欧州で販売されているキャシュカイがベース。ボディサイズもコンパクトになり、手ごろな価格で若者層をターゲットにするモデル

「Vモーション」の進化形となる「Vmotion 2.0」

 ムニョス氏のプレゼンテーションに続いて、おなじみの日産自動車 専務執行役員でCCO(チーフクリエイティブオフィサー)の中村史郎氏とともに登場したのは、「ハイセンスなスタイル」「エモーショナルなデザイン」「広々とした空間」「快適な乗り心地」を実現し、移動が多く忙しいビジネスパーソンに向けた将来のモビリティを提案したという初披露のコンセプトカー「Vmotion2.0」だ。

 将来のセダンにおけるデザインの方向性を示唆するというVmotion2.0のデザインは、多くの日産車が採用しているフロントデザインシグネチャー「Vモーション」に、ボリューム感と立体感を与えて進化させたもの。さらには、幾何学的でありながら感情を込めたという、一見すると矛盾するように感じる、「エモーショナル・ジオメトリー」と名付けられた日産デザインの新しい形状表現を前面に打ち出しているのが特徴だ。

Vモーションに象徴されるシャープなラインと、アーチ形状のルーフラインや前後フェンダーなどによるエモーションな表現を合わせ持つVmotion2.0

「Vモーション」のフロントグリルを基点に、シャープでありながら表情豊かな面を構成するフロントデザイン。それに呼応して、ボディサイドを後方に向かって流れる鮮明なキャラクターラインや、湾曲したリアウィンドウと流れるようなCピラー、ワイド感を強調するブーメラン形状のテールランプなど、それらはすべて計算しつくされたものであり、これらが当面の日産のデザインテーマになっていくと説明された。

 また、鋭く傾斜したAピラーからトランクにかけて滑らかに流れるようなラインを持つフローティングルーフに、細いシルバースレッドを施した独自のカーボンフィニッシャーがアクセントを加えている。

 インテリアも、ドアを観音開きにすることで乗降性とスペースの確保を図り、クルマを移動手段のためだけでなく、パーソナルスペースの延長上として捉え、そのための居住性を考えて構成していると解説。

「グライディングウィング」デザインを採用したダッシュボードには、インストルメントパネルに加え、ドライバーと助手席向けのインフォテイメントシステムを搭載。横長の水平型スクリーンは、「プロパイロット」使用時に作動するグラフィックユーザーインターフェース(GUI)を搭載している。

ホイールベースは2850mm
カーボン素材を組み合わせた複雑な形状を持つホイールを採用
リアコンビネーションランプやドアパネルなどにブーメラン形状を導入

 さらにVmotion 2.0は、日産自動車が掲げる「ニッサン・インテリジェントモビリティ」ビジョンの3つの主要領域の1つである、将来的には渋滞時を含め、高速走行だけでなく交差点を含む一般道での走行時でも自動運転を可能にする「プロパイロット」などを通じて、安全かつ快適なドライビングを提供する、「ニッサン・インテリジェント・ドライビング」を体現するという。

 このVmotion 2.0に与えられた数々の要素が、今後の市販車にどのように盛り込まれていくのか、実に興味深いところだ。

Vmotion 2.0主要諸元

ボディサイズ:4860×1890×1380mm(全長×全幅×全高。全幅はドアミラーを除く)
ホイールベース:2850mm

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。